国会質問

<第186通常国会 2014年05月21日 経済産業委員会 18号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、きのう、きょうの朝日新聞で報道されております、政府事故調が作成をした吉田昌郎福島第一の所長の聴取結果書、この中身について、関連して質問いたします。
 きのうの朝日の一面の記事では、「所長命令に違反 原発撤退」「政府事故調の「吉田調書」入手」とあります。東電の事故調査報告書を拝見いたしましたら、東日本大震災四日後の二〇一一年三月十五日の朝、第一原発にいた所員七百人のうち約九割が十キロ南の第二原発に避難したことが記載されております。
 そこで、東電の廣瀬社長においでいただきました。事実関係の確認ということで御答弁いただければと思います。
 この第二原発に避難をしたメンバーの中には、現場で事故対応を指揮するはずのグループマネジャーと呼ばれる部課長級の社員もいたというのは事実でしょうか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 当時は、大変厳しい状況になってきたというのを吉田は判断しておりまして、まずはとにかく安全なところに一時的に退避をしようという命令だったというふうに思っております。
 そうした中で、引き続き事故対応に当たる必要な人数、約七十名でございますけれども、これらを残し、ほかの者を退避させたということでございますので、必要な対応メンバーというんでしょうか、これについては七十名確保されていたというふうに考えております。

○塩川委員 必要な対応メンバーは確保されていたということですけれども、そうしますと、避難をした中にはグループマネジャー、事故対応を指揮する、そういうメンバーの人たちも第二に避難をしていた、そういう人も含まれるということはどうですか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 事故対応といいましても、食事の準備をする人間から、もう本当に総出でやっていたのは事実でございますので、いろいろな係の、GMというのはいわゆる普通の会社で言う課長クラスの職種でございますけれども、グループマネジャーと申しますけれども、そうした人間がもちろんいたのは事実ですが、最低限必要な七十名を残して、そのほかの人間を一時的に退避させたということでございます。

○塩川委員 政府事故調の聴取に対する吉田氏の発言が報道で紹介されていますが、本当は私、二Fに行けと言っていないんですよ、福島第一の近辺で、所内にかかわらず、線量が低いところに一回退避して次の指示を待てと言ったんだ、これはそのとおりでしょうか。

○廣瀬参考人 この点に関しては、今回、当時免震重要棟にいて吉田の指示を直接聞いた人間から改めてその点を確認し、ヒアリングをいたしましたところ、吉田の指示は、線量の少ない一Fの敷地内がもしなければ、二Fも避難先として検討せよという指示だったというふうに申しております。

○塩川委員 ここでは、二Fに行けと言っていないというふうに吉田所長の言葉が紹介されているんですけれども、それは違うということですか。

○廣瀬参考人 私ども、吉田の政府事故調での聴取内容というのは存じ上げているところではございませんけれども、今回改めて、聞いた側の人間にどうだったんだろうかという確認をいたしましたところ、先ほど申し上げたようなことを聞いて、その上で二Fへの一時退避を行ったということでございました。

○塩川委員 廣瀬社長の答弁の中にもありましたけれども、二Fに全部行けという指示ではなかったということですよね。ですから、そういう意味では、所内の線量の低いところも含めて避難をするという指示ではあったということですね。

○廣瀬参考人 先ほど、当時いた人間に確認しましたところ、もちろん、当然、一Fの構内で避難ができるような線量の状況があればそういうことだったんだと思いますけれども、そこがなかった場合には二Fも考えろということでございました。
 今、翻って考えてみて、当時、十五日の朝というのは非常に危険な状態で、前の日からいろいろな準備が行われているという中で、当然、吉田も免震重要棟の中におって、爆発音を聞いて、大変なことになったということで避難命令を出すわけですけれども、その中で、一Fの構内のどこが線量が少ないのかというようなことをわかった上でそうしたような指示をしているわけではないと思っております。したがいまして、私どもの認識は、吉田の指示は、とにかく安全なところに一時的に避難をしろということだったというふうに思っております。
 一方で、そうした中で、結果として二Fに避難するわけですが、問題となっている一時避難については、私どもは安全に行われたというふうに思っておりますので、これはこれで一つ、安全に行われたということです。
 なお、一方、先ほども申しましたけれども、必要な人間は一Fにとどまり、事故対応を行っておりましたし、また、一旦二Fに退避した人間も、数時間の休憩をとった後、一Fに戻り、そこでまた事故対応を継続しております。したがいまして、この間、九割方の人間が二Fに退避をしたということによって一Fの事故対応が滞ったであるとか、そうしたようなことはなかったと私どもは認識しておるところでございます。
 したがいまして、また、そうした二点のことも踏まえて、私どもの事故調査報告の中でも、今回の問題となっております一時退避の行き先、どこに退避をしたのかということについて、議論にはなっておりません。要するに、安全に一時退避行動がとられた、その間、特に、人が遠くに行き過ぎてしまったので事故対応ができなかったという事実がないということをもって大きな話題というか、議論になっておりません。
 一方で、先ほども言いましたように、改めて吉田の発言内容について、聞いた側の人間から先ほどのようなことをヒアリングしておりますので、私どもとしては、今回の御指摘の件について、二Fに一時的に退避したことが吉田の所長命令の違反だというふうには考えておりません。
 御存じのように、今一Fでは大変な厳しい作業が行われておりまして、汚染水問題、それから一Fの廃炉問題について、当時残っていた人間のかなりの多くが引き続き今そこで、厳しい環境のもとで作業を行っております。彼らのそうした心情を考えますと、今回、九割の人間が所長命令違反だという報道がされたことに対しては、極めて残念なことだというふうに私は思っております。
 今後も、頑張って、気持ちを切らさずに、そこで高い使命感、責任感を持って仕事をしていただかなければいけないんです。社長としても、その辺を腐心して、そうしたことがないように、しっかり今後とも作業に当たっていただけるように取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 一点確認ですけれども、七十人の方が残った、残りの九割の方は二Fに皆さん避難をされた、そういう整理でよろしいですか。

○廣瀬参考人 九割の人間は二Fに一時退避をしたということでございます。

○塩川委員 その点でも実際どうだったかという検証が問われるわけで、東電としてのお話はそういうことかもしれません。そういう点でも、政府事故調の、これも後で政府の方に開示を求めたいと思いますけれども、事実関係の検証が必要であります。本当に必要な人員が確保されていたのかという問題については、まさにあの事故の局面ですから、高い放射線量下の過酷な環境の中でどういう実態だったのかということ、それが指揮命令との関係でどうだったかということについて、民間の東電の社員が対応するという局面でのこの問題点についてしっかりと明らかにしていくということが必要であります。
 あわせて、ドライベントの話がありました。きょうの報道では、「吉田調書などによると、三号機は十四日未明、注入する水が枯渇して危機を迎えた。東電はウエットベントで格納容器の圧力を下げようとしたが下がらず、十四日午前六時二十三分、次善の策としてドライベントの検討を始めた。」これはそのとおりでよろしいでしょうか。

○廣瀬参考人 当然、いろいろなケースを考えていろいろな策を考えておくということだと思います。そうした一環で、ウエットベントをしながら、ドライベントをどうしていくのかということについての検討も始めていたというふうに思っています。

○塩川委員 その検討に当たりまして、いわゆる放射性沃素がどれぐらい放出されるかという予測を行っていたということも報道されておりますけれども、「午前七時前の時点で甲状腺がんを起こす放射性ヨウ素が南南東の風に乗って北北西方向に広がり、三時間で福島県北部の相馬郡付近が二百五十ミリシーベルトになると予測。」をした。その後も、「再度、ドライベントを実施した場合の放射性物質の拡散を予測していた。」こういう拡散予想を繰り返し行っていたというのもそのとおりでしょうか。

○廣瀬参考人 あらゆるケースを想定して、どういうことになるかということは当然のことながら慎重に検討していたというところだというふうに思っています。

○塩川委員 二百五十ミリシーベルトになる、こういう予測もあったということでしょうか。

○廣瀬参考人 いわゆるシミュレーションでございますけれども、そうした数字で行われていたということでございます。

○塩川委員 こういった、三号機で、放射性物質の拡散予測を含めて、ドライベントの実施を検討したということであります。
 これについて、住民に知らせるという考えはなかったんでしょうか。

○廣瀬参考人 まず、そもそも今のシミュレーションは、そうなった場合にどういうことになるかということを、あらかじめ事前にいろいろなケースを検討しておくということでございました。
 その以前に、三号機の場合は、四回にわたりウエットベントを行ってきておりますので、そうした段階では、当然のことながら、地元の自治体であるとか政府の関係機関には通知をして、そうしたことをやってきた。
 そういう中において、そうでないケースも考えておこうということでございますので、まだその段階に至っていないという、それをせずに済んだということだというふうに認識しております。

○塩川委員 結果としてドライベントということを行わなかったわけですけれども、こういうドライベントを行う、まさに環境に放出するわけですから、そういったドライベントを行うという選択肢が具体的に検討されたときに、住民に知らせようという考えはなかったということですか。

○廣瀬参考人 これについては、どの段階で、どのぐらいの状況でそうした判断、通知をするかという問題だというふうに思っております。
 これについては、状況状況によって刻々と変わりますし、もちろん政府関係機関とも当然御相談をしていかなければいけないと思っておりますけれども、そうしたことについての事前の予行演習的なことでしょうか、そうしたようなことについては今後ともしっかりやっていかなければいけないと思っておりますけれども、あの時点でそうした判断はしなかったということだというふうに認識しております。

○塩川委員 当時、政府による情報規制もあったわけであります。そういう点でも、政府の情報規制のあり方の検証も求められておりますし、住民に知らされなかったという点が、やはり、今後の対応を考えても、重大な点だろうと思います。
 こういった一連の報道が、政府事故調の吉田所長からのヒアリングの記録、聴取結果書ということのようですけれども、こういった記録について、当然、東電側についても、関係者からのヒアリングもあるでしょう、吉田所長からのヒアリングもあるでしょう、そういった関連の資料をしっかりと東電として開示をしていく。今答弁されたような中身について、具体的なヒアリングの調書とかそういうことを含めて、きちんと開示をいただきたいんですが、この点はいかがですか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 御存じのとおり、私どもも事故調査をやり、事故調査報告書というのを公表させていただいております。
 その調査の段階では、さまざまなデータを収集して、分析して、調査をして、解析をする、あるいは、関係者の証言をいろいろ、聞き取り調査するということをやっていくわけですけれども、そうした中で、しっかり、矛盾がないかとか、あるいは合理的に説明がつくのかというようなことを検証してまいったわけでございます。その結果、そうしたことを反映して、事故調査報告書として、東京電力として取りまとめて、公表させていただいているところでございます。
 もちろん、この取りまとめに当たりましては、私どもだけでなくて、第三者の先生方に入っていただいて、そうした取りまとめを行い、東京電力の事故調査報告書として公表させていただいているところでございます。

○塩川委員 今やりとりした詳細までは事故調査報告書には書かれていないわけですから、その点も含めて、しっかりとした、背景となるような資料を明らかにしていただきたいと重ねて申し上げておくものです。
 内閣官房にお尋ねします。
 この件について、菅官房長官が記者会見でも述べておられます。この吉田昌郎所長が政府事故調に答えた記録である聴取結果書の開示をぜひ求めたい。
 その際に、報道によると、官房長官が、現在、事故があったときに対応する人には、この調書を職員立ち会いのもとで開示して対応できるようにしていると述べているんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。どういう人が対象なんでしょうか。見た人がいるんでしょうか。

○鎌形政府参考人 お答え申し上げます。
 政府事故調が行った吉田元所長へのヒアリング記録についてのお尋ねでございますが、政府事故調及び国会事故調のそれぞれが、そのヒアリングの内容も踏まえまして、報告書を取りまとめ、公表しているところでございます。
 吉田元所長を含め、政府事故調が行った関係者からのヒアリングにつきましては、非公開を前提に、任意の協力を得て行ったものでございます。
 また、吉田元所長の公開についての考え方でございますが、政府事故調が行ったヒアリング記録について、国会事故調から政府事故調に対して提出依頼がございました。その際に、吉田元所長は、第三者に向けて公表されることは望まないこと、また、ヒアリング記録は国会事故調にて厳重に管理し、調査終了後は政府事故調に返却することなどの条件を付す旨、上申書を提出されています。
 このように、吉田元所長は、ヒアリング記録の外部への開示を望んでおらず、政府としては非公開の扱いとしているというところでございます。
 それからもう一点、政府事故調の資料についての政府内の扱いでございますけれども、政府事故調の資料につきましては、事故原因究明の観点から、政府職員の閲覧が必要な場合には、担当職員、私どもの部屋の職員の立ち会いのもとに資料が閲覧できるという扱いはしてございまして、これまでの実績につきましては、原子力規制庁の職員が閲覧したことがございます。
 以上でございます。

○塩川委員 田中原子力規制委員長は、知らない、読んでいない、出れば読ませていただきたいと言っているわけですけれども、少なくとも、規制委員長とかであれば見ることができるという説明ということでしょうかね。

○鎌形政府参考人 もちろん、どなたがというよりはどういう目的でということで、事故原因の究明ということであれば閲覧が可能だというのが今の取り扱いでございます。

○塩川委員 事故原因の究明を求めているのは国民全体なんですよ。国民の要望なんです。そういう点でも、きちんと開示をするということこそが、国民の、あの事故から学ぶ、そういうことであれば、行うべき政府の対応じゃないでしょうか。
 ですから、そういう点でも、泉田新潟県知事などが、事故の検証のためにも公表すべきだと。多くの所員が撤退したことについて、労働法制の制限があり、一定の放射線量を超えると使用者が労働者を働かせると違法になる、こういう問題もあるわけで、あの事故の局面でどうだったのかということをはっきりと明らかにすることこそ、今行うべき点です。
 そういう点でも、大臣にこの点、政府全体として、こういう情報について開示をして、真相究明を求めていく、教訓化を図っていく、こういうことをぜひ図っていただきたいと思いますが、一言。

○茂木国務大臣 原発については、その安全性を最優先して、二度と過酷な事故を起こさないように全力を挙げていく、このことが基本だと思っております。
 その上で、万が一原子力事故が発生した際の、オンサイトの事故の収束については原子力規制委員会が担当しており、また、政府事故調査委員会に関しましては、先ほども答弁がありました内閣官房が担当しておりますので、私がお答えする立場ではないかと思いますが、あえてコメントということで求められましたら、大変厳しい環境のもとで困難な作業を続けている作業員の方々が事実に反して批判されることがあってはならない、このように考えております。

○塩川委員 まさにその現場の状況をリアルに明らかにしてほしいというのが要求なんですから、それに応えるような対応をぜひお願いしたい。
 委員長に要望ですけれども、こういった政府事故調の資料について委員会として開示を求める、この点について、ぜひお取り計らいをいただきたいと思います。

○富田委員長 後刻、理事会で協議いたします。

○塩川委員 原発事故時の政府や東電の対応をしっかりと明らかにするということが今求められているということを最後に申し上げて、質問を終わります。
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