国会質問

<第186通常国会 2014年05月28日 経済産業委員会 19号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 四人の参考人の皆様から貴重な御意見、本当にありがとうございます。
 まず、石澤参考人にお尋ねいたします。
 小規模企業、つまり現状維持、持続志向型の小規模企業をしっかりと支援する意義についてお尋ねしたいんです。
 石澤参考人は、法案の特徴として、法案の基本原則において、成長志向型の小規模企業の支援とあわせて、特に現状維持、持続志向型の小規模企業も施策の対象としている、事業の持続的発展を支援するという発想は現行の中小企業基本法の理念にはありませんでしたと述べておられますけれども、こういう現状維持、持続志向型の小規模企業を施策の対象とすることの重要性、意義について、ぜひお聞かせください。

○石澤参考人 先ほどもお答えいたしましたように、平成十一年に改正された中小企業基本法は、いわゆる成長株に光を当てようと。しかし、事業経営には二つありまして、大きく飛躍する企業、それから現状を何とか継続して次の世代に伝えていこうという二つがあります。その持続のところに光が当たってこなかったという意味であります。
 したがいまして、将来志向するところに光を当てなくてもいいわけじゃないので、それと同等以上に、持続をする、地域コミュニティーを守る、そういう大事な企業に光を当てていこう、そのことを商工会が後押ししていこうということでありますので、商工会の使命と考えております。

○塩川委員 地域経済を支え、雇用を守る、そういう意味では地域コミュニティーを支える役割が小規模企業にあるんだというお話でございます。大変重要なポイントだと思っております。
 関連して、法案では、小規模企業者とともに小企業者が定義あるいは基本原則に盛り込まれております。その意義についてですけれども、基本原則では、個人事業者を初めとした小企業者の振興に当たっては、円滑かつ着実な事業の運営の確保を掲げております。
 ここに小企業者と言うのは、当然、個人事業主、家族経営が含まれておると思いますけれども、小企業者を取り上げた、こういう積極的な意義づけというのはどのようなものなのか、この点について御説明をいただけないでしょうか。

○石澤参考人 いわば零細企業の部類に入ると思いますけれども、実は、廃業をする、そういう現象のあれは、主としてそのような立場の人たちであります。もちろん、そういう人たち、そっち側へ行くとなかなか相手にされない小さな企業を支えるのが我々商工会の役割だ、このように考えております。その人たちの一番の課題は、実は資金繰りに頭を痛めておる、あるいは後継ぎがいないという状況でありますので、これは商工会がお世話する以外にはないであろう、そういう使命感を持っておりますので、頑張りたいと思っています。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、国吉参考人にお尋ねいたします。
 中小企業憲章については、他の委員からの質疑にもございまして、改めて理解を深めたところであります。
 あわせて、今回の法案は地方公共団体の責務の規定もありまして、中同協におきましては、地方公共団体の取り組み、中小企業振興基本条例の取り組みなどについてのお話もいただきました。
 この点で、国吉参考人は、中小企業振興基本条例と、中小企業の実態調査、悉皆調査、それに加えて産業振興会議、このいわば三点セットで自治体における中小企業振興策が重要だということを指摘されておられますけれども、この三点セットの意義といいますか、このことについて御説明いただけないでしょうか。

○国吉参考人 私ども、振興条例、全国の同友会、いろいろな形で頑張っているところでございますけれども、やはり、つくられている過程、プロセスがさまざまでございます。一つは、首長選挙において、条例をつくるよということを公約に掲げたところは、首長主導のもとで一気につくられる。それから、議員さんが、中小企業関連に熱心な方があちこち視察に行って、議員立法といいますか、そこが主体になってつくられているという形態もございます。
 最終的には議会で決議していただかなくてはいけないですし、首長さんがその気になって、そして行政の皆さんを動かして、うちの首長は勝手にあんなものを公約に掲げて、俺らの仕事がまたふえるばかりではないか、そんなふうな担当の行政マンが多いようでは条例の心がやはり伝わらないわけでございまして、そうした点で、私どもは、おっしゃった第一番目は、振興条例をつくるプロセスが極めて大事だ。
 それは、主体になる会議所さんや商工会さん、あるいは我々のような同友会、あるいはJCなんかも入っていただいて、さらにはそれに関心を持つ市民団体の方も加わっていただいて、この地域をどうするのかという議論をしながら、そして当然、議員の方も加わって、うちの地域にはこんな中小企業があるんだなということを議員の方も御理解いただいて、行政の方はさまざまなデータを持っておりますから、それも勉強させていただきながら条例として制定していくということがまず大事かと思うわけでございます。
 そのプロセスでもその後でもよろしいわけですけれども、全国いろいろございますけれども、まず三十数年前に墨田区が、区の職員を商工部に限らず三、四百人動員して、数千社の事業所の悉皆調査をやって、それを全部データ化するわけですね。そうしますと、その調査にかかわった行政の方の意識が変わるわけですね、墨田にはこんなすばらしい中小企業がたくさんあるんだと。ですから、いざ、さまざまな苦境に陥ったとき、あそこの会社にはあっちの方から仕事をとってきたらいいのではないかということに実際に墨田の行政の方は、前ですけれども、動いているわけですね。
 したがって、私どもは、先ほど愛媛の東温市の条例のお話をちょっと紹介させていただきましたけれども、ここは愛媛大学と連携をしまして、そして愛媛大学の学生さんや行政の方も加わって、数百社にわたる悉皆調査をやって、それをデータにして、次の施策につなげていく。これは私は、大学生を悉皆調査に動員すると、まさしく実地の勉強にもなるというふうに思うわけです。
 三番目は、やはり行政、施策を進めていく上での恒常的な機関として振興会議は絶対必要でございます。さまざまな名称がございますけれども、行政、議員の方、そしてさまざまな経済団体が加わって、定期的に、できれば毎月ぐらい会議を開く、その中に部会もつくるとか、そういったところで施策に反映させていくことが大事だというふうに思う次第でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、中嶋参考人にお尋ねいたします。
 参考人は、開業率を高めるよりも廃業率を低くする施策が第一優先だ、全国中小企業四百三十万社の半数近くが経営不振に陥っていると思われると述べておられ、同時に、全国から視察団の方がたくさん板橋にいらっしゃるということで、そういう視察団の方の関心というのも、創業をあおるよりも廃業させないという板橋モデルに学びたいということでお見えだということも、お話として紹介されておりました。
 その点で、開業率を高めるよりも廃業率を低くする施策が第一優先だ、このことの意義について、視察団の皆さんの関心の持ちどころも含めて、少し御紹介いただけないでしょうか。

○中嶋参考人 私も含めて、皆さん開業が、廃業がふえていきますので必要だということで、冒頭に申し上げましたけれども、やはり創業自体の失敗も多いということもまず認識していただいて、ですから、今やっと、廃業させないことの方が従業員を守ったり地域のいろいろなものも守れるという形で、できるだけ廃業させないようにという形で我々は力を入れていきます。
 いずれにしても、自然に縮小していく場合もございますので、開業はできるだけ力を入れてやっていくんですけれども、だからといって廃業をあおるようなことは、我々、区の立場としてはできないので、そこはしっかり守っていくという形で区ではやっております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 それでは、諏訪参考人にお尋ねいたします。
 諏訪参考人は、大田区、そして日本の町工場と一緒に勝ち残っていきたいというふうに述べておられるということで、大田区では九人以下の町工場が九割を占める。そういう意味では、非常に産業集積も大きな大田区ですが、お話にありましたように、事業所の数はどんどん減っているという現状でもあります。ものづくりのネットワークを強みとして生かす、そういう点でも小規模企業の果たす役割は大変大きいと思います。
 冒頭のお話の中で、大企業とのかかわりについて、やはりこの間、変化が生まれているというお話がございました。この辺について教えていただきたいんですが、当初より、ティア1、メーカーがあって重層下請構造があった、それが崩れてきて元請制が導入される、商社なども入ってくる、こういう構図というのが、どのような変化が生まれており、下請の小規模企業、小企業者にとってどんな影響が出ているのかについて、現場の話をお聞かせいただけないでしょうか。

○諏訪参考人 大企業とのかかわりについては、我々中堅企業とのかかわりが本当に変化をしておりまして、昔は商社さんというのは、ある意味、いろいろな商材を、いろいろなルートを使ってお客様に提供するというのが本来の業務目的であったにもかかわらず、今はやはり元請制というところで、我々みたいな小さな企業を抱えて、そこに一斉に図面を流して、一番安いところを選定する、そこをお客様に値段を提示するというところでやっております。
 そうなってきますと、我々は昔は直に購買さんと御連絡をとって、どこから仕事が出てくるのかというのも把握できましたので、現場におりていって、今何が困っているのかだとか、そういうことのニーズだとか、どういう動向に行くのかだとか、そういう情報が入ってきたんですね。また、こういう製品開発が始まるというのも入ってきました。
 ただ、やはり、元請制が導入されますと、メーカー様と我々の距離ができてしまいますので、現場になかなか行くこともできない。本当に昔は顔が見えたんですけれども、今は全く見えない、情報が入りづらい状況です。ですので、我々は逆に協力メーカーさんの方から、どうなっているんだ、どうなるんだと言われるんですけれども、我々も今、先が読めないという状況が生まれています。
 なので、価格競争とコストに関しては、原価低減活動などもあった上での元請制になっていますので、利益を出すのが非常に厳しい状況、プラスアルファ原価の高騰などもございますので、本当に小規模企業、中堅企業というのは今厳しい状況に置かれている。
 あと、二極化ともよく言われるんですけれども、二極化も、こういうピラミッドの崩壊が招いているものだというふうに考えています。

○塩川委員 そういう点では、生き残っている企業自身は、非常に強みもあるようなところではあるんでしょうけれども、しかし、もともとの発注者、大手企業の発注がどういう意図なのかということも読み取れない、そういう構造の変化というのもやはり背景にあるんだろうなということを改めて感じました。
 あわせて、ダイヤ会についてなんですけれども、これだけではなかなかよくわかりませんで、私も、済みません、ウィキペディアは拝見しておりませんので、この辺について、その特徴、ポイントについてもうちょっと説明していただけますか。

○諏訪参考人 これは大手の協力会と同じような考え方で、地域の九人以下の工場を支援していこうという先代からの流れでございます。ここでグループ化をつくっていただくことにより、我々がオーバーフローしたものを手伝っていただく、そこで横流しをしていただいて連携をとっていただく。
 また、後継者支援ですとか、二人、三人でやられていると、忘年会だとか旅行会だとか、そういったところもなかなかできないので、そういったものも当社で一緒にやっていただくだとか、あとは技術発表会などに来ていただいたりして情報の共有だとか、そういうことで、技術の維持と継承と発展という形でこういう会を持っています。

○塩川委員 大手が協力会を壊しているような時代でありますので、そういう流れというのに改めて注目したいと思います。
 きょうは本当にありがとうございました。