国会質問

<第186通常国会 2014年05月30日 経済産業委員会 20号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 小規模企業振興基本法案について質問をいたします。
 大臣にお尋ねしますが、今回、小規模企業、小規模事業者が果たす役割、意義、これについてどのように位置づけられているのか。その点について、基本の点でお尋ねしたいと思います。

○茂木国務大臣 全国三百八十五万の中小企業、そこの中でも、その九割を占めます小規模事業者は、地域の経済、そして雇用を支える極めて重要な役割を担っていると思っております。
 また、先ほど来、るる答弁をさせていただいておりますけれども、地域のコミュニティー、地域の社会を維持し発展させていく意味でも、その構成員として極めて重要な役割を担っている、こんなふうに考えておりまして、こういった地域の小規模事業者の発展、それから地域の活性化、これは表裏一体の取り組みである、このようにも考えております。

○塩川委員 中小企業の果たすべき役割、そういう中でも小規模企業の果たすべき役割があるということで、今回改めて位置づけもし、そういった点で、今回の法改正で、中小企業基本法の基本理念である成長発展のみならず、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持等を含む事業の持続的発展を位置づけた。
 そういう点では、小規模企業、小規模事業者の事業の持続的な発展ということを位置づけたことの意義について御説明いただけないでしょうか。

○茂木国務大臣 中小企業基本法においては、今御指摘のように、成長発展、こういったことも引き続き理念として定められておりまして、例えば上場を目指すベンチャー企業、これは成長発展を目指す典型的なケースだと思っております。
 その一方で、地方の現状、こういったものを見てみますと、人口が減少する中で、商店街や町工場に代表されるような小規模事業者を取り巻きます環境は厳しくなってきておりまして、現在の事業であったりとか雇用を維持するだけでも大変な努力が必要である。こういった観点から、こういった中小企業の方々が直面する課題、これを正面から支援していきたい、こういう考え方のもとで、成長発展のみならず、事業の持続的な発展、これを新たに小規模企業の振興の基本原則として位置づけたところであります。
 本基本法を通じて、地域経済の発展、そして国民生活の向上に貢献している中小企業の方々をしっかりと支援していきたい、そんなふうに考えております。
 なお、ここで申し上げます事業の持続的な発展とは、事業規模や売り上げの拡大に限らず、技術であったりとかノウハウ等の維持向上、また、顧客との信頼関係を生かした付加価値の向上、さらに、安定的な雇用の維持といった、事業の充実を図ろうとするさまざまな取り組みも含む概念である、このように考えております。

○塩川委員 そういう点では、いわば事業を継続、雇用を維持する、そのこと自身が困難な中で、それをしっかりと支える小規模企業に光を当てていく、そういう点での積極的な役割があると承知をしております。
 こういった小規模企業の事業の持続的発展という位置づけというのは、現行の中小基本法にはなかったわけであります。一九九九年の中小企業基本法改正によって、中小企業政策の基本理念というのが、大企業と中小企業の二重構造を前提とした企業間の格差是正から、活力ある中小企業の成長支援へと転換をしたわけであります。
 この点で、先日の参考人質疑でも、石沢全国連会長は、平成十一年の中小企業基本法の改正後は、中小企業の中でも比較的大きな中規模企業に焦点が当てられがちだったと述べており、地域で地道に事業を継続している多くの小規模企業に焦点が当たっていなかった、こういう趣旨でお述べになっておられました。また、こういった中で、したがって補助金や施策もどちらかというと小規模企業向きではなかった、加えて、平成十三年には、それまで中小企業庁にありました小規模企業部が廃止になってしまったというふうに述べております。
 この小規模企業部というのは、今はどうなっちゃったんでしょうか。

○北川政府参考人 お答えいたします。
 中小企業庁の小規模企業部、これは昭和四十九年に設置されておりまして、そこには小規模企業政策課そして小売商業課の二課がございました。
 小規模企業部は平成十三年の省庁再編時に廃止されましたが、小規模企業政策課の担っていた業務のほとんどは現在の経営支援部経営支援課に引き継がれております。一部、小規模共済等に関します部分は事業環境部の企画課に引き継がれてございます。
 それから、小売商業課の担っておりました業務につきましては、現在、経営支援部商業課に、そしてまた、一部、事業調整に関する部分につきましては事業環境部取引課へそれぞれ移管されております。
 それで、今回、基本法の議論もございますけれども、小規模事業取り組み強化ということでございまして、平成二十六年度中に小規模企業支援課というのを新設を予定しております。

○塩川委員 今まで小規模企業部という名前を冠した担当部があったわけですけれども、それが平成十三年になくなって、今言ったように、経営支援部の経営支援課とか商業課とかどことか、要するに、それぞれに業務そのものは引き継がれたということなんだけれども、小規模企業そのものの名前が残っているというのは、経営支援部経営支援課小規模企業参事官室という状況になったわけです。
 ですから、やはり、全国連を初めとした小規模企業者の方々にすれば、小規模企業と銘打った役所そのものが小さくなったというふうに受けとめられても仕方がないような状況でもあったわけで、私は、それが施策の面でも、個々には分担して仕事が引き継がれているといっても、小規模企業に着目をした政策をつくるという点では後退になったんじゃないかということは率直に思わざるを得ないんですが、大臣はその点、いかがですか。

○茂木国務大臣 恐らく、産業という観点でいうと、その時々の状況によりまして、かつて通産省の時代には繊維局であったりとか重工業局、こういう局もあったわけでありますけれども、当然、今はそれが製造局とか変わってきているわけであります。
 一方、中小企業施策のように、ある意味、横展開をして機能的にさまざまな支援をするもの、これは、単純に名前だけによって、言ってみますと支援機能が強くなった、弱くなった、こういうことにはならない、そのように思っております。
 ただ、平成十一年の改正、先ほども申し上げたように、二重構造、格差の是正ということから、ある意味、中小企業の持っているポテンシャルに注目をして支援を行っていくということにしましたが、それ以降の状況、確かに改善をしている中小企業もありますけれども、さらに、地域において小規模企業が大変厳しい状況にあるという中で、それに光を当てた施策が必要であるということで、昨年、八本の関連法案を一括して小規模企業活性化法、こういった形で制定をさせていただきまして、今回は、政策全体の枠組み、そして体制をつくる、こういった観点から振興基本法をつくらせていただいた。
 やはり、事業者の皆さんに正しいメッセージを送るということは極めて重要でありまして、今回の基本法案は、商工会、商工会議所を初め小規模企業の経営者の皆さんの期待も極めて大きいわけでありまして、ぜひ、御審議の上、できるだけ早く成立を願い、そして、明確な正しいメッセージを全国の中小企業、小規模事業者の皆さんにお送りできればと思っております。

○塩川委員 小規模企業部がなくなって、今回、小規模企業の名を冠した課をつくるというところになっているわけですから、そういう点でいえば組織の問題というのは大きいわけで、そういう点でも、我々として、こういった小規模企業の支援がやはり十分行われていなかったという反省というのが今回の中に含まれていると理解をしております。
 あわせて、やはり大企業と中小企業の格差というのは現にあるわけですから、そういった格差是正を脇に置いて、成長発展、そういう企業の支援というふうにかじを切りかえた中小企業基本法のもとに小規模企業振興基本法が置かれている、追加的な位置づけとなっているということについては、この点はやはり留意をする必要があると率直に思っております。
 あわせて、今回、小規模企業の中から、さらに小企業者に着目をするということが取り上げられております。小規模企業者の多数を占める従業員五人以下の小企業者を取り上げていることについて、小企業者というのはどういうものか、小企業者に着目した理由は何なのかについて御説明をいただけますか。

○北川政府参考人 お答えいたします。
 今般、法案の第二条におきまして、従業員五名以下の事業者を小企業者として定義いたしました。
 小企業者というのは、イメージで申し上げれば、ものづくりを支えておられる町工場、みずからの技術を生かして活躍する職人の方、一人親方ですとか、あるいは、一人でお店あるいはオフィスを借りてやっている、創業している方、こういったさまざまな方がいらっしゃると思います。
 特に、こういった小さな規模でやっておられる事業者の方は、基本的に個人の技能、経験、これをもとに多様な事業を営んでおられるという点で我が国経済の重要な担い手であると思ってございますけれども、一方で、企業としての組織体制といいますか、規模が小さいということでございますので、環境変化に脆弱な面もあろうかと考えております。
 このような観点から、小企業者に対しまして、政府としても特別な考慮を払う必要があると判断いたしまして、本法案の第三条の基本原則におきまして、個人事業者を初めとする小企業者が、自己の知識及び技能を活用して多様な事業を創出する旨を明記いたしました。
 また、第四条におきましては、小企業者が経営資源を有効に活用して事業を運営できるよう考慮されるべき、こういった旨を規定しているところでございます。

○塩川委員 わかりました。
 こういった小企業者は、実際、従業員五人以下というと、家族経営的なものも当然多くを占めるわけであります。中小企業憲章の基本理念においても、「小規模企業の多くは家族経営形態を採り、地域社会の安定をもたらす。」と、小規模企業の多くを占める小企業、そういう中での家族経営の役割というのを評価しておるわけです。
 大臣はこの家族経営が果たす役割についてどのように評価をされておられるのか、お聞かせいただけないでしょうか。

○茂木国務大臣 二〇二〇年に、再び東京オリンピック・パラリンピックが日本にやってくるわけでありますけれども、前回が一九六四年。その当時を映しております「ALWAYS 三丁目の夕日」は、本編、続編、そして六四年版と三つあるわけでありますけれども、ずっと家族経営なわけですね。鈴木オートという会社、あそこは、奥さんの薬師丸ひろ子と、六ちゃんという役の堀北真希の三人で、ようやくシリーズの三回目になって若い男の子が出てきて、四人という形でありますけれども。
 二〇一四年の中小企業白書によりますと、おおむね、あんなイメージの、従業員五人以下の小規模事業者のうち、個人事業者は六六%、うち、個人やその家族が事業に参加している、いわゆる家族経営の形態をとる個人事業者は六三%を占めております。
 このような個人事業者は、個人の技能や経験をもとに多様な事業を営んでいる点で我が国経済の重要な担い手である一方、企業としての組織体制は整っていないために、環境変化に脆弱な面もあります。このため、このような個人事業者を含む小企業者に対して、政府としても特別の配慮が要る、そのように判断をしたところでありまして、こうした考え方のもとで、本基本法案の第三条の基本原則におきまして、個人事業者を初めとする小企業者が自己の知識及び技能を活用して多様な事業を創出すると位置づけを明記したところであります。
 なお、鈴木オート、あの堀北真希は親戚ではないんですけれども、東京のお父さん、お母さんと呼ばれておりまして、あれが家族経営に当たるのかどうかというのは、なかなか判断の難しいところであります。

○塩川委員 そういう意味でも、日本の経済社会を支えてきた、家族経営を中心とした小企業者の役割というのを位置づけるということが本当に重要で、全国商工団体連合会、全商連が日本版小企業憲章というのを発表しておりまして、小企業政策の根本的転換を求め、小企業、家族経営の役割を正当に評価して、その経営環境を改善する政策方向を示しております。こういうのもぜひ大いに参考にしていただきたいと思います。
 時間がなくなりましたので終わりますが、小規模企業の持続的発展を進めるのであれば、大きな負担となる消費税増税については、これはやめるべきだということをきょうは申し上げて、ここで終わりにいたします。