国会質問

<第186通常国会 2014年06月04日 経済産業委員会 -21号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 小規模企業振興基本法案について、二回目の質問をいたします。
 最初に大臣に伺いますけれども、小規模企業の振興に当たって自治体の果たす役割についてですけれども、小規模事業者の支援に当たっては、要するに、個社の支援だけではなくて面的な支援が必要だということも大臣はおっしゃっておられました。
 そういった面的な支援に当たって、自治体の果たす役割が極めて重要ではないかと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○茂木国務大臣 まさに御指摘のとおりだと思っておりまして、小規模企業の活動は地域に根差した活動であり、同時に、そういった小規模企業が地域の経済や雇用を支えている。
 小規模企業が活性化することが地域の活性化にもつながる、さらには、地域の底上げそのものがそこの地域における中小企業の活性化にもつながる、こういう表裏一体の面があると思っておりまして、今後施策を進める上では、国の役割、そして地方公共団体の役割、きちんと役割分担のもとで連携をとっていかなければいけないと思っております。
 国につきましては、小規模企業振興基本計画を策定するなど、全体的な方針を定めるとともに、施策の実施状況であったりとか目標の達成状況をレビューし、それをまた国会の方に報告させていただく、こういう役割を担うことになります。
 一方、地方公共団体は、国と連携を図りつつ、それぞれの地域の特性に応じた施策を企画立案して実施することを責務とするとともに、小規模企業に対する地域住民の理解を深める、こういったことを求めていきたいと思っております。
 その上で、国、さらには地方公共団体、そして商工会、商工会議所、地域の金融機関等の支援機関が適切に連携をして面的な支援を行っていく、こういったことが重要であると考えております。
 本法案、成立をさせていただいて、その上で実際に施行するに当たりましては、全国知事会であったりとか市長会、それから町村会の会合であったりとか、個別自治体への説明等々を通じて周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

○塩川委員 小規模事業者支援に当たっての自治体の役割について答弁をいただきました。
 自治体が小規模企業を支援する根拠というのは、そもそも、職住近接、職住一致という環境のもとで、やはり、地域経済の担い手であるだけではなくて地域社会の担い手ともなっているという点でも、この小規模事業者の支援というのは自治体にとっては大変大きな意義のあることだと思っております。
 そういう中で、今、各地で自治体の独自の取り組みも進んでおります。高度なものづくりの集積もあります東大阪市も、一九九九年に中小企業の悉皆調査も行って、二〇一三年、昨年には中小企業の振興基本条例もつくりました。
 そういった中で、地元の労働組合や団体などがつくっております東大阪産業政策会議というのがありまして、東大阪市のものづくりを発展させるための調査報告書をことしの三月にまとめております。
 その実態調査、従業員九人以下の小規模事業者を中心とした調査ですけれども、その実態調査が明らかにしたのは、ものづくり産業集積の力、ネットワークの重要性だった。そういう点でも、個社の支援だけではなく、面的な整備、ネットワーク、産業集積への支援が必要だということであります。
 そこで、経済産業省にお尋ねしますが、この法案の参考人質疑におきまして、中小企業家同友会全国協議会の国吉副会長から、自治体の取り組みにおいて、中小企業振興基本条例、悉皆調査、産業政策会議、この三点セットの重要性が強調されましたが、政府としてはどのように認識しておられますか。

○北川政府参考人 お答えいたします。
 地方公共団体の取り組みは大変重要だと考えてございます。そのうち、今御指摘いただいた三点につきまして、いずれも中小企業庁としても重要と考えてございます。
 まず第一の振興条例でございます。
 これは、中小企業家同友会全国協議会によるお調べによりますと、現在、三十一の道府県、百十六の市区町村において中小企業振興条例が制定されておりまして、特に三重県におきましては、中小企業・小規模企業振興条例と、小規模企業を特記した条例を制定したと承知してございます。このように、小規模事業者振興に積極的な自治体との連携を強化してまいりたいと思います。
 第二に、実態調査についてでございます。
 今般の基本法案におきましても、国として、機動的に実効的な施策を講ずるため、毎年、我が国の小規模事業者の動向を把握し、国会に報告することといたしております。これに加えまして、各地方公共団体において実態調査を行われるということは、実情を踏まえた効果的な施策を講ずるという観点からも有用な取り組みであろうと考えております。
 第三に、会議体ということでございます。
 国といたしましては、昨年二月から、中小企業、小規模事業者、そして地方公共団体、中小企業団体、士業団体、さまざまな方と一緒に意見交換を行う“ちいさな企業”成長本部、これを五十四回開催してございます。基本法第七条におきましては、地方公共団体は小規模事業者に対する地域住民の理解を深めると定めてございます。地方公共団体が地域の関係者を集めていただいてさまざまな方向性を共有されるということは望ましいものと考えてございます。
 以上でございます。
    〔委員長退席、江田(康)委員長代理着席〕

○塩川委員 三点についての答弁をいただきました。
 東大阪のものづくりを発展させるための調査報告書でも、東大阪市役所の行政職員に対して求めることは、中小企業の状況をもっと知ってほしい、こういう回答が事業規模を問わず最も多かったということです。
 そういう点では、基本条例をつくることに多くの関係者が参加をすること、施策を練り上げていく上で関係者が集まった恒常的な機関としての産業政策会議を位置づけるということ、そういう取り組みを進める上でも、やはり、悉皆調査を行うことによって、行政マンが、地元の企業にこんなにすばらしい値打ちがあるんだ、あるいはこういう深刻な実態にあるんだ、こういうことをつかむということが施策に生きていくという点でも、この三点セットの重要さというのを改めて感じているところです。
 そこで、第七条に地方公共団体の責務が規定されております。これは中小企業基本法の規定と同じ書きぶりではありますけれども、施策の策定や実施の前提として、地方公共団体の区域の自然的経済的諸条件に応じた施策、自然的経済的諸条件を述べておりますけれども、これはどういうものを指すのか。商業集積とかものづくりの集積とか産地といった産業集積も含まれるのか。この点について御説明いただけますか。

○北川政府参考人 お答えいたします。
 法案の第七条、地方公共団体の責務を規定してございます。そのうち、御指摘の自然的経済的社会的諸条件、これは、例えば、自然的条件としては天候、地形、地理的環境、また経済的条件としては、各都市などからの距離、交通網、産業の発達程度、こういったもの、あるいは、社会的条件としては、人口の構成の度合い、社会資本の整備状況、こういったものを勘案してございます。
 御指摘のものづくり産業の集積あるいは商業集積といった経済状況、産業集積につきまして、地域の諸条件に応じて形成されるものでございますので、このような規定の諸条件に含まれるものと考えております。

○塩川委員 先ほどの引用で社会的が抜けておりました。失礼しました。
 今のように、それぞれにおいての諸条件を把握するという点におきまして、こういったものづくりや商業の集積、産業集積も当然当たるということであります。
 そこで、第十一条では、国による小規模企業の実態調査とその公表を義務づけております。先ほどの答弁でもございました。
 国として、商業集積やものづくりの集積、産地とか企業城下町といった産業集積の実態調査をきちんと行うということなんでしょうか。この点についてお答えください。

○北川政府参考人 お答えいたします。
 より効率的、効果的な政策を展開していくためには、実際の企業間取引あるいは産業集積、こういったものをしっかりと把握しておくことが必要不可欠と考えてございます。
 さまざまな調査をやってきておるところでございますけれども、今般、経済産業省といたしましては、民間調査会社の企業間取引に関するビッグデータを活用いたしまして、全国の企業間の取引ネットワーク、そしてまた、それぞれの地域の産業集積の実態を把握するシステムの開発に着手したところでございます。これは、今般の中小企業白書にもその概要を紹介してございます。これから深めてまいります。
 このシステムでは、産業別に、企業間取引、産業集積を地図上で空間的に見える化することとともに、五年程度の時系列でも分析することが可能となりますので、産業集積の生成過程、衰退過程も追いかけることができると考えております。
 この企業間取引、産業集積は、市町村、都道府県といった行政区域と関係なく形成されるという実態もございます。こういったことを反映した政策も打てると思いますし、これを用いますと、地域活性化の切り札と今後なると考えていますコネクターハブ企業、地域中核企業ですけれども、域外から付加価値を獲得して域内取引をしていく、こういった企業も発見できると考えてございますので、そこを応援するような施策が今後の地域活性化の観点から重要であろうと考えてございます。
 こういうところも含めて、産業集積を十分調べてまいりたいと考えております。
    〔江田(康)委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 今紹介されたのは、地域産業構造分析システムの開発ということだと思いますけれども、そういう点では、コネクターハブ企業を抽出することで国や自治体の効果的な政策資源投入につなげるという説明であるわけです。これも一つの方法でありましょう。
 同時に、コネクターハブ企業、中核企業を支えているのが、その周辺にもあります小規模企業でありまして、この前の参考人質疑でも大田区の諏訪参考人が述べていましたように、小規模企業が存続してこそ地域の中核企業も生き残れる、そういう点での、面として存在する小規模企業ネットワークの実態把握こそ必要だということで、コネクターハブ企業が、いわば小さなトリクルダウン的な発想ではなくて、やはり面的な、そういう小規模企業の集積、そこに大きな意義がある、こういう角度での調査というのをしっかりやっていただきたいと思っております。
 そういう点でいいますと、やはりそれぞれの歴史的な経緯で地域の産業も集積をされております。そういう意味では、以前は産地についての概況調査というのがあったわけですけれども、年間生産額五億円以上の産地を対象とした調査結果を取りまとめていたこの産地概況調査は、二〇〇六年度に廃止をされたままであります。ぜひ、産業集積というんだったら、こういう産地概況調査を今日的にしっかりと行っていくということも必要じゃないかと思うんですが、この点などいかがですか。

○北川政府参考人 委員御指摘の、かつては産地実態調査と呼んでいたと思いますが、産地概況調査はずっと長い間やってございました。ただ、さまざまな御意見もあり、産地というものもだんだん時代によって変わってきているという実態もございましたので、一旦廃止をしております。
 今後、産業集積の実態を調べる中でどのような方法が適切か、また考えてまいりたいと思います。

○塩川委員 もともと地域産業集積活性化法の中で位置づけられていて、それが二〇〇六年で廃止をされて、その後は企業立地促進法の中に位置づけるんだという説明だったわけですけれども、実態としては何もされなかったということでありますから、本来引き継がれるべきものであったはずが、なくなっているわけですから、これは改めて位置づけし直す、やはりそういった角度でしっかりと取り組むことが必要だと思うんですが、改めていかがですか。

○北川政府参考人 今後、どういった調査が必要かも含めて、改めて検討してみたいと思います。

○塩川委員 この間、下請中小企業の短期動向調査も二〇〇五年度で廃止をされております。自治体の施策の具体化に生かせるように、国が小規模企業の重層的なネットワークを実態把握するということは欠かせないと思います。技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持等を含む小規模企業の持続的な発展のために、ぜひとも国として力を尽くすことを求めるものであります。
 次に、税のことについてお尋ねをいたします。
 小規模企業の持続的発展を脅かすのが消費税増税であります。
 トヨタ自動車が四月二十三日付で広告を出しておりました。この広告では、「この四月から消費税が八%に上がった。家計のやりくりは大変だが、これを機会に生活を見直せば、ムダはいくつも見つかるはず。」「節約は実は生活を豊かにするのだと気づけば、増税もまた楽しからずやだ。」ということで、増税を楽しむというのがトヨタだそうですけれども、大企業の元請から、乾いたタオルをさらに絞るようなコストダウンを迫られる重層下請の事業者は、消費税の価格転嫁も困難だ、こういう声も上げているわけであります。赤字でも消費税は納税をしなければならない、何が増税もまた楽しからずやだ、こういう声が上がっているわけであります。
 昨年の消費税転嫁法案の議論の中でも、安倍総理は、こういった重層下請構造のもとで、やはり大企業と下請事業者という関係においては、大企業が納入業者に対して相当強い立場に立っているのは事実ということを認めておりました。
 茂木大臣にお尋ねいたしますけれども、こういった重層下請構造のもとでは、やはり下請事業者にとっては消費税の価格転嫁そのものが困難だという実態に置かれているんじゃないのか、こういう実態について経産省として把握をしているのか、この点をお尋ねいたします。

○茂木国務大臣 まず、自動車を初めとする産業構造でありますけれども、日本の場合は、一台の自動車をつくるのに、恐らく数千社から万に及ぶ多くの企業の技術や人材があってつくられる。これだけすばらしい日本の自動車がつくれるというのは、そういった中小企業の集積があってこそ、そういう思いを持っております。
 そこの中で、この四月から、増大する社会保障費の財源を捻出すると同時に、日本の財政状況を改善していく、こういう観点から消費税の引き上げをお願いしたところであります。
 五月の消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査、いわゆるウエブ調査では、全て転嫁できていると答えた事業者が全体では八一・九%でありまして、四月の調査と比べて二・五%改善をいたしております。このことを踏まえますと、消費税の転嫁がおおむね円滑に行われている状況にあると認識をいたしております。
 一方で、全く転嫁できていない、こういうふうに答えた事業者の方も全体で三・一%でありまして、四月の調査と比べて〇・六%改善が見られるものの、依然として転嫁ができていない事業者が一定程度存在することも事実であります。
 したがって、引き続き、消費税の引き上げ分を適切に転嫁できるように、現在、全国に四百七十四人配置しております転嫁対策調査官初め、省を挙げて転嫁対策に取り組んでまいりたい、こんなふうに考えております。

○塩川委員 重層下請構造のもとで恒常的にコストダウンを強いられている下請事業者が消費税の転嫁は困難だという実態の把握についての直接のお答えではありませんでした。
 四月増税前の二月、愛知県労働組合総連合が、愛知県の西三河地域の中小企業アンケート調査に取り組みました。消費税が価格転嫁できないという事業者が三割という回答だったそうですが、その事業者に、転嫁できない、あるいは転嫁しない理由を聞くと、その半数が親企業からの要請と回答しています。
 アンケートの中では、末端企業が単価を下げることに協力し、親企業が収益を上げた、自分たちだけ給料を上げて喜ばず、少しは潤いを分けてください、円高のときに単価を下げ、円安になっても知らぬふりか、また、賃上げどころか企業自体の廃業も考えるこのごろです、現に近辺の同業も多く廃業しています、下請単価引き下げばかりで消費税の価格転嫁も困難だ、適正な下請単価への是正とともに営業破壊税の消費税増税には断固反対でありますと。
 一方、二〇一四年三月期の決算で、豊田章男社長は、この四年間懸命に努力したことにより日本においても税金を納めることができる状態になってうれしいとおっしゃったそうでありますが、トヨタの連結ベースの税引き前の当期純利益は、平成二十二年三月期が二千九百十四億円、二十三年三月期が五千六百三十二億円、二十四年三月期が四千三百二十八億円。この間、利益を上げているのに法人税の納税がなかった。これは、一連のこの間の大企業減税の結果でもあるわけで、外国税額控除ですとか、研究開発減税ですとか、外国子会社配当益金不算入制度、欠損金の繰越控除制度などが積み重なる中でこういった事態が生まれている。
 大臣、最後にお尋ねしたいのが、政府・与党では、さらなる法人税の減税の代替財源として、法人事業税の外形標準課税や法人住民税の均等割の拡充などを検討されていると報道で承知をしておりますが、中小企業四団体の税制改革要望では、外形標準課税の中小企業への適用拡大には断固反対としております。さらなる大企業減税のための財源対策として、中小企業増税は許されないと思いますが、大臣の答弁を求めます。

○茂木国務大臣 まず、日本の競争力を高め、企業のさらなる投資を促し、経済を本格的な成長軌道に乗せていくためには、法人税の改革、法人税減税、そして、国際的に見て遜色のない法人税実効税率、これを一日も早く実現していくことが日本経済にとって極めて重要であると考えております。
 その財源として外形標準課税を使うということになりますと、御案内のとおり、外形標準課税は主に支払い給与に対して課税をするものでありますから、安倍政権が目指しております経済の好循環、賃金の上昇、雇用の増加、こういった方向性に逆行するものである。また、特に中小企業は、付加価値額の八割が従業員への給与に充てられるということでありまして、相当な重い税負担になる。こういう観点もしっかりと踏まえて、慎重な上にも慎重な検討が必要だと思っております。

○塩川委員 黒字の大企業に減税で、赤字の中小企業に増税ということでは日本経済の基盤を掘り崩すだけだということを申し上げて、質問を終わります。