国会質問

<第187臨時国会 2014年10月14日 本会議 5号>




○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表し、地方創生関連法案について質問します。(拍手)
 安倍総理は、今国会を地方創生国会と位置づけ、国民が安心して働き、希望どおり結婚し子育てができ、将来に夢や希望を持つことができる、魅力あふれる地方を創生するとしています。
 それでは、伺いたい。
 地方から、安心して働く場や、結婚し、子育てができる環境を奪ったのは誰か。地方から魅力や活力がなくなったのは、農業を破壊し、福祉を削り、全総計画、市町村合併推進などで地方を切り捨ててきた歴代自民党政治に原因があるのではありませんか。見解を求めます。
 まち・ひと・しごと創生法案は、地方創生の中心問題として、人口減少の克服と東京一極集中の是正を挙げていますが、それぞれの原因をどのように把握しているのか。
 第一に、人口減少はなぜ起こったのか。
 今日、若者が結婚し、出産、子育てをしていくことが難しい状況に置かれています。若者と女性の二人に一人が、非正規など異常な不安定雇用と低賃金、長時間労働を強いられているからです。それは、自公政権による労働法制の規制緩和によってつくり出されてきたのではありませんか。そのことへの反省はありますか。
 安倍内閣が今国会に提出している労働者派遣法改正案は、若者に生涯派遣を押しつけ、正社員化どころか、逆に、正規から非正規への置きかえを進めることになりませんか。さらに、残業代ゼロ制度の導入や裁量労働制の拡大を進めようとしていますが、これらは、長時間労働を一層ひどくするものではありませんか。
 こうした雇用政策が、どうして人口減少の克服につながるのか、明確な答弁を求めます。
 第二に、総理は、東京一極集中の是正を言いますが、そもそも、なぜ集中してきたのか。
 一つは、地方から東京圏への人口流出は、地方の産業が壊され、雇用が失われてきたことによるものです。
 地方の中心的な産業であり、雇用の場である農業や林業は、輸入自由化によって潰されてきました。大店法廃止後のまちづくり三法はまともに機能せず、郊外大型店の身勝手な進出と撤退で、シャッター通りが全国に拡大したのであります。
 二つは、企業立地促進法は、都市と地方の格差縮小、地方の所得と雇用拡大を掲げましたが、多国籍企業の地方進出を後押しし、自治体の企業誘致の補助金競争をあおるものとなりました。肝心の雇用は、非正規がふえるばかりで、最後には、シャープなど大企業の身勝手な工場の縮小、撤退が繰り返され、その結果、産業の空洞化や産地の崩壊を招いたのです。
 三つは、国策として進められた平成の大合併によって、一九九九年三月末三千二百三十二あった自治体は、ほぼ半減しました。自治体の面積は平均で二倍になる一方、地方交付税は大幅に削減され、地方の疲弊を加速させたのであります。
 四つ目に、国際競争力の名で都市関連法制の規制緩和を進める都市再生政策や道路、港湾、空港など大都市部の大規模開発を推し進め、地方の人口を吸い上げたのであります。
 総理、これらの自民党政治の政策に原因があると考えますか。それぞれの政策をどのように総括しているのか、伺いたい。
 安倍内閣は、本当に東京一極集中の是正をやる気があるのでしょうか。
 既に、市場任せの政策で米価が大暴落し、農家経営が立ち行かない事態が起こっています。日豪EPAやTPPを推進すれば、農畜産業を初め、地域経済に壊滅的な打撃を与えるのは明白ではありませんか。
 物価、原材料が高騰する中、消費税の増税が中小企業の経営を厳しく圧迫し、倒産、廃業にも追い込むことになるという認識はありますか。
 東京、大阪、名古屋の三大都市を結ぶスーパーメガリージョンとは一体何ですか。その中心に据えられているリニア中央新幹線を整備すれば東京一極集中が加速することは、リニア整備を認めた審議会でさえ指摘しているではありませんか。
 東京を外資誘導で再生するという国家戦略特区構想も、東京圏への人口の集中を加速させるのではありませんか。
 地方から産業と雇用を奪った原因を放置し、一極集中を加速する政策をとりながら、どうして東京一極集中を是正できるのですか。
 最後に私が指摘したいのは、国民が生活する全ての地域を自治体とともに支えていくこと、それが国の役割であるということであります。
 農林水産業や再生可能エネルギーなど地域資源の活用を進めて雇用と所得をつくり、医療と介護を確保して地域の安心を築く取り組みに応えること、条件不利地域への地方交付税を大幅に拡充することであります。大都市圏への大型開発を見直して、地域密着、防災、維持管理優先の公共投資に振り向けるべきです。
 ところが、安倍内閣は、人口二十万人以上の地方中枢拠点都市に都市の機能と住民サービスを集約しようとしています。集約によって周辺地域が衰退すれば、拠点の都市も維持できなくなることは明瞭です。
 地方の縮小、撤退を前提にして、どうして地方に安心と魅力がつくれるのですか。さらなる市町村合併推進、道州制導入など、認められません。
 また、地方創生本部の基本方針は、大都市圏で増大する高齢化、単身化に対して、地域包括ケアの推進を強調しています。これは、社会保障費の支出を減らし、必要な医療、介護などは自助、互助で行えというものではありませんか。
 その上、学校や保育園、公民館などの公共施設の統廃合をPPP・PFI事業と連動させようとしています。これは、企業のもうけを優先するものではありませんか。公共施設やまちづくりは、住民意見を大切にして進めるべきではありませんか。
 以上、答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。
 歴代自民党政権が地方の活力を奪ったのではないかとのお尋ねがありました。
 地方の活性化に関し、全総計画や合併推進等、これまで歴代自民党政権が行ってきた政策は、その時々の状況を踏まえ、適切に実施されたものであると考えています。
 今回の地方創生に当たっては、私のもとに創設したまち・ひと・しごと創生本部のもとで、私が先頭に立ち、今までの地域再生関連の政策を含め検証、総括した上で、客観的な現状分析と将来予測を踏まえ、政策目標を明確に設定していきます。
 また、これまでの政策の効果検証や今後の政策の枠組みに関し、現在、有識者の方々や地方関係者からの知見をいただいているところであります。
 これらを踏まえ、地域の活性化と人口減少克服をあわせて解決する取り組みを集中的に進めてまいります。
 若者の労働環境についてお尋ねがありました。
 労働法制については、経済産業構造の変化に応じ、雇用の安定を図りつつ、働く方々の多様なニーズに対応した働き方の実現を目指し、改正を行ってまいりました。
 一方、将来を担う若者については、その可能性を最大限発揮できる環境を整備することが重要です。このため、賃金不払い残業や過重労働などに対し重点的な監督指導を行うとともに、法に違反するものには厳正に対処してきたところです。
 また、非正規雇用の若者について、キャリアアップ助成金などの支援により処遇改善を進めるとともに、正社員を希望する若者に対して、正社員への転換を推進しています。
 安倍内閣としては、将来を担う若者が生きがいを持ち、安心して働くことのできる環境づくりに全力で取り組んでまいります。
 労働者派遣法改正案及び労働時間制度の見直しについてお尋ねがありました。
 労働者派遣法改正案は、キャリアコンサルティングや計画的な教育訓練を派遣会社に義務づけるなど、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援するものであり、若者に生涯派遣を押しつけるものではありません。
 新たな労働時間制度の創設や裁量労働制の見直しは、時間ではなく成果で評価する働き方の導入を進めることにより、日本人の創造性を解き放ち、付加価値を高めていくものであります。当然、長時間労働を強いられることがあってはならないと考えており、企業等に対する監督指導など、働き過ぎ防止のための取り組みの強化を図ってまいります。
 以上のように、安倍内閣としては、全ての人が生きがいを持って働くことができるようにすることが重要と考えております。若者が安心して働ける環境を実現すること等により、人口減少の克服を図ってまいります。
 貿易交渉やまちづくり三法が東京圏への人口流出に与える影響についてお尋ねがありました。
 貿易交渉においては、これまでも、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の結果を追求してきたところです。また、国境措置の変更に伴う国内の農林漁業への影響が最小になるように措置してきたところであります。
 地方の商店街が衰退している要因としては、郊外大型店との競争のみならず、経営者の高齢化による後継者不足を初めとするさまざまな要因が複合的に関連していると認識しております。
 政府としては、商店街の空き店舗への誘致を支援することなどにより、商店街の新陳代謝を進め、商店街の活性化を図ってまいります。
 いずれにせよ、東京圏への人口流出に歯どめをかけるためには、地方に住み、働き、豊かな生活を実現したい人々の希望を実現することが重要であると考えています。
 企業立地促進法についてお尋ねがありました。
 産業空洞化という課題に対して、地域の強みを生かした地域経済の活性化と産業集積を図るため、企業の立地計画に対して支援を行っています。
 現在、四十七都道府県が百九十三の基本計画を策定し、この計画のもと、四千社が六・三兆円の設備投資計画を進めています。これらの企業が、地域の雇用を支える中核企業となって、取引関係のある協力企業とともに地域経済を底上げしていくものと考えております。
 市町村合併が地方の疲弊を加速させたとのお尋ねがありました。
 平成の合併について、市町村の規模が拡大したことにより、行財政基盤の強化が図られ、住民サービスが向上したという効果が認められます。
 今後、合併をした市町村がさらに一体感を強める努力を続け、名実ともに一つの自治体となり、その地域が発展していくものと考えており、御指摘は当たらないと考えております。
 都市再生と一極集中についてお尋ねがありました。
 都市機能の強化は、都市を我が国経済の牽引役としていく上で重要な課題であり、都市再生特別措置法に基づき、さまざま支援をしております。例えば、大都市を中心に国際競争力を強化するため、東京だけでなく全国の六十二地域を指定し、容積率の緩和、金融、税制面での支援などの措置を講じています。
 一方、地方部を含めた全国の都市の再生を図るため、まちづくりに資するプロジェクトに対し、交付金による財政支援や金融支援などを講じており、これまで数多くの地方都市で活用されています。
 このように、これまでの地方都市再生政策は、東京等の大都市のみを対象として行ってきたものではなく、広く全国の地方都市を含め支援してきたものであり、御指摘は当たらないと考えております。
 東京一極集中の是正への意欲と、経済連携や消費税の増税についてお尋ねがありました。
 人口急減という我が国が直面する課題に正面から取り組むに当たり、東京圏への人口の過度な集中の抑制は必須であると考えております。
 また、地域の重要な産業である農業の活性化は待ったなしの課題であり、農業を若者に魅力ある成長産業としていくことが重要だと考えております。
 経済連携の推進に当たっても、地方の産業の存立及び健全な発展を含め、守るべきは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求していく考えです。
 さらに、地域を支える中小企業の影響を抑えるため、消費税や原材料、エネルギー価格の転嫁対策や、政府金融機関による資金繰り対策、省エネ設備導入支援などを講じてまいります。
 リニア中央新幹線についてお尋ねがありました。
 御指摘の審議会答申は、リニア中央新幹線の整備について、利便性向上により地域の活性化をもたらす可能性について言及する一方、さらなる東京一極集中を招く可能性にも触れ、開業を見据えて、沿線地域が独自の魅力を発揮する地域づくりを実施していくことが重要である旨指摘していると承知しております。
 したがって、東京以外の地域が、その創意工夫により、魅力を大きく向上させることが重要と認識しております。その際には、過去の新幹線整備の際の経験なども生かしつつ、さらに地域が活性化するようにしてまいりたいと考えております。
 国家戦略特区についてお尋ねがありました。
 国家戦略特区は、岩盤規制改革全般について突破口を開くものであり、東京圏だけでなく、新潟市、養父市などの地方の改革拠点も指定しております。
 特区法の改正案には、やる気のある自治体や事業者から提案された、地域の起業や高齢者の雇用につながる具体的な規制改革事項も盛り込む予定であります。
 次に、地域を支えるために必要な国の役割についてお尋ねがありました。
 地方創生に関する政策の検討、実施に当たっては、防災や生活基盤の整備、医療、介護の充実など、地域ごとの課題の解決を図る取り組みを行うこと、人口減少の克服と地域経済の成長に資する税制、地方交付税、社会保障制度などの制度改革について検討を実施すること、おのおのの地域ならではの資源やよさを生かすことにより、地方に仕事をつくることを重視することといった点に留意し、支援を行ってまいりたいと考えております。
 いずれにしても、地域の特性を踏まえた地域主導の提案を支援していくことが国の役割であると認識しています。
 地方中枢拠点都市への機能集約により、周辺地域が衰退し、拠点の都市も維持できなくなるのではないかとのお尋ねがありました。
 地方中枢拠点都市圏は、住民が安心して快適な暮らしを営んでいける元気な地方をつくるため、広域連携により、地方の経済を牽引する中核的な役割を果たす都市圏として創設したものであります。いわば、中心的な都市と周辺の地域の取り組みの相乗効果により共存共栄を目指していくものであり、御指摘は当たらないと考えております。
 地域包括ケアと社会保障のあり方についてお尋ねがありました。
 住みなれた地域で暮らし続けるためには、医療や介護のほか、住まいや食事など生活全般にわたる支援を包括的に確保する地域包括ケアシステムを構築することが重要であります。
 安倍内閣としては、社会保障について、自助自立を第一に、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べることを基本姿勢としています。
 地域包括ケアシステムも、自助や互助だけで成り立つものではなく、医療保険や介護保険などの共助のほか、公助も組み合わせて、住みなれた地域での暮らしを支える仕組みとしてまいります。
 PPPやPFIについてお尋ねがありました。
 公共施設の整備、維持更新と財政健全化を両立させるためには、公共施設の統廃合を含め、民間の資金、ノウハウを最大限活用することが必要です。
 このため、今後もPPPやPFIを推進し、できるだけ税財源に頼ることなく、民間投資を喚起しながら必要な公共施設の整備、維持更新を行い、地域の活性化や住民福祉の向上、我が国の経済成長につなげてまいりたいと思います。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――