国会質問

<第187臨時国会 2014年10月29日 経済産業委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 宮沢新大臣にお尋ねをいたします。
 宮沢経済産業大臣の東電株六百株の保有の問題というのが、大臣の職務権限との関係で大きな問題となっております。
 まず、東電株保有の事実関係についてお尋ねをいたします。
 大臣は、昨日の参議院経済産業委員会の質疑の中で、東電株は三十年前から持ち続けていると答えておられます。そうなりますと、大蔵官僚の時代なのか、いつ、どのような理由で保有されたのか、この点についてお聞かせください。

○宮沢国務大臣 ちょうど学生時代から勤め始めてしばらく独身の時代に、正直、今持っている株、東電と、三菱石油だったのがJXになったんでしょうか、それと川崎重工。ですから、三十年以上前に買った株であります。
 インサイダーかと言われますと、実は、私自身は、一九八八年の法律ですか、インサイダーの法律というのは、実は私、課長補佐で中心になってつくった人間でございまして、当時の自民党に行きますと、厳し過ぎる、もっと緩くないと株取引はできないとか、野党の皆さんに行くともっと厳しくしろと言われて、大変苦労しながらつくった法律でございますが、そのつくった立場から言いますと、インサイダーというおそれは全くない状況で購入したと思っております。

○塩川委員 学生時代から勤め始めたころに購入されたということで、インサイダーかどうかというのは今後の話としてもあるわけですけれども、どういう理由で購入されたのかというのはいかがですか。

○宮沢国務大臣 学生時代にアルバイトをして少しお金ができたり、まだ独身で少しお金があったときに、株でも買おうということで買った株でございまして、実は、その後、全く売買しないまま、ずっとその三種しか持たずに議員になりました。
 そして、経緯だけ申し上げますと、ちょうど二〇一〇年の十二月、たまたま特定口座に入れておりましたりして、キャピタルゲインのもとになる数字が、昔の株で購入価格がわからなかったので、一回売って買い戻して取得原価をはっきりさせておいた方がいいですよという証券会社の勧めがちょうど二〇一〇年の十二月にたしかあったんだと思います。そのときについでに、東京電力株については、五百八十八株だったので、単位株に端株整理しておいたらどうですかというので、たしか六百株にしたんだと思います。それでまた、その後一切売買していない、こういうことでございます。

○塩川委員 三つの株について、お金があるときに購入された。その後、二〇一〇年の十二月の話を今されまして、五百八十八を六百にする、その理由、経緯については、今お話しのように、簿価を把握するためということと、単位株との関係で六百にそろえたというお話であります。
 このように、三十年以上東電株を売らずに持ち続けた理由というのはどのようなものなんですか。

○宮沢国務大臣 正直、株式取引に全く関心がなくなったからだったと思います。

○塩川委員 その上で、それでは、経済産業大臣としての権限との関係で、東電株のことについて質問をいたします。
 過去、経産省では職員による株取引に係る事件が続発をしております。例えば、この十年で見ましても、二〇〇五年にチノン株に係るインサイダー事件がありました。産業再生法に基づく事業再構築計画の審査、認定作業に従事する過程において知り得たチノン株のTOB情報を入手し、その公表前に自分と妻名義で同株四万一千株を購入し利益を得たという事件もあります。
 また、二〇一一年には、エルピーダメモリとNECエレクトロニクスの株に係るインサイダー取引事件もあって、商務情報政策局の担当審議官だった人物が、半導体業界を担当していた二〇〇九年に、産活法の認定を受け経営再建中だったエルピーダメモリとNECエレクトロニクスの株を公表前の情報をもとに購入したというものです。
 いずれも企業再建支援策にかかわってのインサイダー取引の不祥事だったわけであります。
 大臣にお尋ねしますが、このように、経済産業省というのが、個別企業への再建支援策を行っている、こういう企業再建にかかわる法制度を企画立案し執行する、当然その企業の機微情報にも接する、こういう役所だからこそこのような不祥事が生まれたんだと思うんですが、その点についての認識をお聞かせください。

○宮沢国務大臣 いわゆる職務上知り得た秘密の大変多い役所であるということは、私は経産省については言えると思います。したがって、こういうような規制をかけているんだろうと思います。

○塩川委員 経産省がそういう企業秘密を知り得るような、そういう中にある役所だということで、実際、その企業再建にかかわるこういった法制度の企画立案、執行し、機微情報を扱う役所だからこそ起きた不祥事であり、そういう点でいいますと、今、経産省において一番の企業再建の案件といえば東京電力であります。
 大臣にお尋ねしますが、経済産業大臣は、この間、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の担当大臣でもあります。ですから、経産大臣は、機構、そして東電への国債の交付に関する認定権限を持っているわけであります。
 つまり、東電がお金が必要だというときにこれを出すといった点では、いわばこの経産大臣の権限というのは、東電の存立に直結するような、生殺与奪にかかわるような重要な権限であり、まさに経産大臣が東電の生き死にを左右するような権限を持つということについては、認識はお持ちですか。

○宮沢国務大臣 東京電力の再建について、非常にいろいろな権限を持っていることは承知しております。

○塩川委員 この間、実際、一連の東電への支援策も行われてきました。
 例えば、東電の福島原発事故に伴う廃炉費用を電気料金に転嫁しようとする仕組みであります廃炉会計規則の省令改正というのも、まさに、事故を起こした東電に対しても廃炉に係るこういう規則を適用することによって負担軽減を図る、そういう仕組みになっておりました。
 また、この前の電気事業法の改正におきましては、発送電部門の分社化をして持ち株会社化を図る、こういったホールディングカンパニー制に移行する、東京電力は既に今カンパニー制に向けての移行を始めておりますし、これ自身が総特にも盛り込まれていることですけれども、東京電力の現行の社債の発行についても優遇する措置を継続するという規定も盛り込まれたところであります。
 そういう点でいえば、まさに東電への個別の支援策につながるような施策の具体化を図ってきたというのが経産大臣の仕事だったわけであります。
 そこで、昨年の十二月に、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」、いわゆる福島復興指針が閣議決定をされました。
 ここの中の、「国と東京電力の新たな負担の在り方」として、「機構が保有する東京電力株式を中長期的に、東京電力の経営状況、市場動向等を総合的に勘案しつつ、売却し、それにより生じる利益の国庫納付により、除染費用相当分の回収を図る。」とあります。
 つまり、機構を通じて出資をした金額が株として上がる、上がった場合のその売却益を除染費用に充てるというのがこのスキームになっているわけです。
 ここでお尋ねしますが、機構が保有する東電株式については、どんな株式なのか、幾らで購入したのか、この点について事実関係を教えてもらえますか。

○上田政府参考人 原子力損害賠償・廃炉機構でございますが、平成二十四年の七月に、廃炉等を担う東電の財務基盤強化のために、一兆円の東電株式の引き受けを行いました。
 具体的には、優先株式という形で、議決権つき株式を一株当たり二百円で十六億株、それから議決権なしの株式を一株当たり二千円で三・四億株引き受けております。

○塩川委員 合わせて一兆円ということであります。
 そこで、福島復興指針によると除染費用というのは幾らで見積もっておられるか、大臣は御存じですか。

○宮沢国務大臣 たしか二・五兆円ぐらいだったと思います。

○塩川委員 「環境省の試算等によれば、」という仮置きの部分もありますけれども、二・五兆円という額が示されています。つまり、プラス二・五兆円ということは、一兆円を三・五兆円にしようということになるわけです。
 このように、機構が保有する東電株の売却益で二・五兆円の除染費用相当分を回収するために必要な株価というのはどのぐらいになるものなんでしょうか。

○上田政府参考人 これは今、新・総合特別事業計画におきまして、機構は二〇二〇年代半ばには一定の株価を前提に保有株式の売却を開始し、二〇三〇年前半を目途に保有する全株式を売却するということになっていると承知をしております。
 そして、その売却益はお話しのとおり除染費用に充てることになっておりますけれども、その具体的な売却価格を示唆するような株価の水準を申し上げるということは、それ自身が市場に影響を与える可能性がございますので、大変恐縮でございますけれどもお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

○塩川委員 これは単純な数字の話だと思うんですけれども、もちろん幅もありますから当然株価の上がり下がりもあるでしょう。
 しかし、二・五兆円を出すということが必要な額というのは当然見込まれるわけで、例えば、報道ベースにおいても、政府は一株百円で売れば除染費用を賄えるとはじくけれども、売り出し前の株価は千円を超えなければ平均九百円での売却は見込みにくい、こういうのなんかは妥当な話だと思うんですけれども、大臣はいかがですか。

○宮沢国務大臣 単純計算をすると、恐らく先生がおっしゃったような額の前後になるんだろうなと、私も先日、役所が説明に来た紙を見ながら、暗算で線を引くとそんな感じかなという思いはしておりました。

○塩川委員 千円前後というお話ということです。
 今、東電株価が三百九十円前後でしょうか、そういう意味では、千円ぐらいにするという点で、これはやはり国の後ろ盾なしには東電株価が上がらない。東電の、先ほども言ったような生殺与奪の権限を持っている経産大臣ですから、その果たすべき役割というのが大変大きいという問題にもなってまいります。
 福島原発事故後に東電株の最高値がついた、それがいつぐらいで、幾らぐらいの額というのはおわかりになりますかね。

○宮沢国務大臣 恐らくそのときにも私は株主だったと思いますけれども、全く見ておりませんでした。

○塩川委員 これは、昨年の五月二十一日に八百四十一円というのがついております。ですから、千円との関係でも、八百四十一となるともう少しという話になるわけです。
 では、こういうタイミングで八百四十一円がついたのはどういう背景があるのかということを見ると、この二〇一三年五月二十一日の前々日の十九日付で読売新聞が、柏崎刈羽原発の一号機、七号機の運転再開について、原子力規制委員会に東電が申請をする方針を固めたという報道があった。また、一週間前の十四日には、安倍首相が、原発事故の後処理など、全てを東電に押しつけるのは間違っているという報道があった。つまり、市況においては、原発事故の原因者である東電の責任と負担を軽減、棚上げするということ、それと原発の再稼働をするということが東電の株価を引き上げているということになる。
 ですから、率直に言って、東電の株価を引き上げるという方針を貫くとなったら、東電の負担を減らして、国、国民の負担に転嫁をする、利用者に転嫁をする、また、原発の再稼働をする、そういうことに行かざるを得ないのではありませんか。

○宮沢国務大臣 まず、電力の価格につきましては、しっかりと厳正に対処をしていきたいと思っております。
 一方で、再稼働の話につきましては、実はこれは私どもに全くと言っていいぐらい権限のない話でございまして、そういう申請が出た後ですけれども、原子力規制委員会において新規制基準で御判断をいただく、そして、その後、最終的には事業者が判断する、もちろん地元の理解というプロセスはございますけれども、そういう中で経産大臣として何かを決めるという立場でないことは確かでございます。

○塩川委員 東電の役職員に経産省が出向して、こういった再稼働を求めるような総特の計画もつくっているわけですよ。あるいは、川内原発においても、前任の小渕大臣が手紙まで出して、応援しますという中身まで書いているわけですから、こういう点では深く深くかかわっているのが経済産業省、経済産業大臣の原発再稼働の問題なんじゃないでしょうか。
 そういう点でも責任というのがまさに問われるわけで、今、東電を初め電力業界というのが原発の再稼働を強く求めています。しかし、世論調査を見ても、国民の多数は反対の声を上げているわけですね。
 大臣は、二十三日のマスコミの取材に対して、東電の応援といった意味があるので売らずに持ち続けたと述べておられます。しかし、原発再稼働問題のように、東電の利益と国民の利益が一致をしない、東電の利益と国民の利益が反するような場合があるわけで、こういった東電の応援という発言は、東電を監督する立場の経産大臣としては極めて不適切ではないかと考えますが、いかがですか。

○宮沢国務大臣 応援をするといった発言をしっかりとお話をそのままにさせていただきますと、私は、発災した後、東電の株価が大変低くなったわけでありますけれども、もちろん、その後、いろいろな機会に売るというチャンスが恐らく、八百幾らというのは知りませんでしたけれども、あったんだろうと思います。
 しかし、東電が、まさに国策会社として、原子力の補償であり、また廃炉、汚染水処理というようなことをやっていかなければいけない、大変大切な会社だと私は思ったものですから、この株は一生持っていこう、このまま持っていこう、そして、ある意味では、大変少ない株かもしれないけれども応援していこう、そういう気持ちでずっと実はおりました。
 ただし、今回、経産大臣ということになりましたものですから、先ほどのインサイダーのお話もございました。信託を既に済ませまして、取引は在任中は自粛するということにいたしました上で、先日、国会の場で申し上げましたけれども、大臣をやめたときには、直後に東電の株は処分いたしまして、これを福島復興のために、どちらの財団法人等がいいのかこれから考えますけれども、寄附をさせていただこう、そう思っております。

○塩川委員 原発事故を起こした東電のステークホルダーの責任が問われたのかというのが一貫して議論になっているわけであります。そういう点でも、経営責任なり株主責任なり貸し手責任の問題が問われたのか。そういう点で、株主の責任が不問に付されている。それどころか、東電株引き上げ方針によって、株主が利益を得るようなことというのはどう考えてもおかしい。
 東電株を保有する宮沢大臣に経産大臣の資格があるかどうかを問われる問題だということを重ねて申し上げておかなければいけません。
 株を売りますと言って、それについて、寄附をします、それについてはちゃんと説明しますというのであれば、それ以前の話として、こういった、東電に対しててこ入れをするかどうかという問題について透明化を図って、疑念が持たれないような、そういったスキームについてきちんとした説明責任を果たすとか情報の開示を果たすとか、そういうことこそ行うべきじゃありませんか。
 この点のことを重ねて求めておきます。

○宮沢国務大臣 今、疑念を起こすようなスキーム云々という御質問があって、私も中身がいま一つわからなかったんですけれども、疑念を抱かせないような透明的な手続というものは非常に大事だと思っております。

○塩川委員 引き続き質問します。
 終わります。