国会質問

<第187臨時国会 2014年10月31日 地方創生に関する特別委 7号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 まち・ひと・しごと創生法案、地方創生法案について質問をいたします。
 まち・ひと・しごと創生法案では、東京圏への人口の過度の集中を是正することを解決すべき課題の一つとして掲げております。
 総理にお尋ねしますが、この理由は何なのか、この点について御説明をいただけますか。

○安倍内閣総理大臣 現在の東京一極集中については、地方を支える人材が東京に流出するとともに、出生率が低い東京への人口集中が我が国の人口減少にもつながっている、こういう大問題があるわけであります。
 また、東京では、その過密化を背景に、住宅価格が高い、あるいは通勤時間が長い、待機児童が多いといった問題が生じています。大規模な災害リスクの問題があります。このようなさまざまな問題がある、こう認識をしているわけであります。
 こうした中におきまして、都市部、この東京においても、四割の方が、チャンスがあれば地方に住みたい、こう願っているわけでありまして、そうした願いを阻害している要因がさまざまあることも事実であります。
 そうした方々にとっては、もし地方で自分の人生を送ることができればより豊かな人生が送れるのではないか、こう考えているわけでありますから、そうした希望が実現することを阻害している要因を取り除いていくことによって、地域も活力を回復し、そして都市においても一極集中による弊害がなくなっていくということになるのではないかと思います。

○塩川委員 今、総理の御答弁にありましたように、東京圏への過度の人口の集中が、住宅価格が高い、通勤時間が長い、待機児童が多いといった問題とともに、大規模な災害リスクの問題もあるというお話でございました。この東京圏への過度の人口の集中というのがさまざまな弊害を生んでいるということであります。
 そういう現状にありながら、さらに人口が集中する動きがあります。
 パネルを用意しましたけれども、超高層ビルの増加に象徴される大規模再開発プロジェクトの拡大であります。
 この棒グラフですけれども、東京消防庁の統計書によるものです。
 二〇〇二年末では、六十メートルを超える二十一階建て以上の超高層建築物は三百十三、うち百メートルを超える三十三階建て以上の超高層は七十八。これが二〇一三年末になりますと、二十一階建て以上が七百十三、三十三階以上が二百一ということで、二〇〇二年以降、十年余りで、二十一階建て以上は二・三倍に増加をし、三十三階建て以上は二・六倍に増加をしております。
 このような超高層ビルについては、全国に占める東京の割合は、今、四割に上るような大変大きなものとなっております。
 そこで、総理にお尋ねいたしますが、そもそも東京には、企業の本社が集中をし、外国法人の拠点も多く、金融機能や情報関連業務が集中、集積をしております。このような状況で超高層ビルが建ち並ぶような大規模再開発プロジェクトを進めれば、仕事も人もさらに東京に呼び込むことになり、東京圏への人口の過度の集中が一層深刻になるのではないのかと考えますが、総理のお考えをお示しください。

○安倍内閣総理大臣 東京圏への人口の過度の集中の原因については、今委員が御指摘もされましたが、文化施設やイベントが豊富であること、あるいは多様な商品にあふれ、流行の先端を行く消費生活が楽しめること、あるいは大企業や会社の本社機能が集中し、就職に有利であることなどがあります。そうしたものが人を引きつけ、東京圏への人口の過度の集中につながっていると考えられますが、こうした中で、地方創生を進めることによって、生活面でも仕事面でも魅力ある地域づくりを進め、地方に住み、豊かな生活を実現したいという人々の希望を実現していきたい、こう思っているわけであります。
 東京も国際社会の中において大都市としての競争力を十分に生かしてもらいたい。ある意味では日本の経済成長のエンジンの一つでもあるわけでありますから、その意味における東京の再開発と競争力を強化していくことはしっかりとやらなければならない、このように思います。
 他方、今申し上げましたように、地域がそれぞれの地域のよさを生かして発展をしていくということについても、国がしっかりと地域が主役の政策を進めていく必要があるんだろうと思います。
 どっちがということではなくて、これは十分に両立し得ると私は確信をしているところでございます。

○塩川委員 総理が冒頭お答えになりましたように、東京圏への人口の過度の集中というのはさまざまな弊害を生んでいるんです。それをさらに拡大する方向での、人も仕事も呼び込むようなこういう大規模再開発プロジェクトを進めたら、さらに弊害が大きくなるんじゃないのかという問題であるわけです。
 東京都内の超高層ビルは、港区や千代田区、台東区、この三区で五割を占めて、東京都内の五割ですよね、まさに東京都心部に集中をしているわけです。丸の内や六本木や汐留など、東京都心部での再開発が大きく進んでおります。
 大規模開発プロジェクトが進められているわけですが、その背景には、やはり二〇〇〇年代以降の規制緩和政策があります。
 このパネルにも、棒グラフのところにも書きましたけれども、二〇〇二年には、都市再生の特措法で都市再生緊急整備地域の指定ですとか、また、同じ二〇〇二年、ここには書いておりませんが、東京都の環境アセスメント条例の改正もありました。二〇一一年には、改正都市再生特別措置法があって、特定都市再生緊急整備地域の指定などが行われております。さらに、昨年、二〇一三年には、国家戦略特区法で国家戦略特別区域の指定が行われております。これらは、税制や金融や予算上の支援措置とともに、大規模再開発を可能とする規制緩和措置を行うものです。
 総理にお尋ねしますが、このような容積率や高さ制限の緩和、環境アセスメントの適用除外の拡大といった規制緩和策が、大規模再開発プロジェクトを推進し、東京圏への人口の過度の集中をもたらしてきたのではないのか。このような規制緩和政策を見直すお考えはありませんか。

○安倍内閣総理大臣 まさに、先ほど申し上げましたように、東京という大都市には世界の中の東京という位置づけがあって、その中で、東京に世界から人々が集まってくる、あるいは東京からアジアにというゲートウエーの役割も果たしているわけでございます。そうした機能を生かしていくことは、日本全体にも結果的に裨益していくというふうに考えているわけであります。
 東京の活性化はしっかりと行っていきたい。しかし、先ほど申し上げましたように、東京に住んでいる人の中にも、四割、自分は地方に住みたいという人たちがいるわけでありますから、その彼らの望みを生かしていく。何も東京と地方、同じ水準で比較することは不適切であろう、このように思うわけでありまして、東京には東京のよさ、あるいは生かしていくべき点があるわけであります。例えば長野県には長野県のよさがあって、そのよさを生かしていく。むしろ長野県に住んだ方が自分の人生が豊かになる、そのために阻害要因があるとすると、それをなくしていくという努力は我々はしっかりとやっていきたい。
 同時に、東京が世界の都市間競争に打ちかっていけるような、そういう施策はしっかりと前に進めていきたいと考えているところでございます。

○塩川委員 総理自身が東京圏への人口の過度の集中というのは弊害があるとお認めになっているのに、それをさらに拡大するような、人も仕事も東京に集中するような、こういう大規模再開発プロジェクトを進めるということでは、かえって深刻な事態をさらに拡大するだけだと言わざるを得ません。こういった規制緩和政策こそ見直すべきです。
 もう一つ、公共投資においても東京の比重は高まっているんです。総務省の行政投資実績を見ても、全国の行政投資額に占める東京の割合が二〇〇二年度の七・四%から二〇一〇年度には一一・三%に増加をしている。
 まさに、国際競争力強化の選択と集中によって、東京外環道や国際コンテナ戦略港湾、羽田空港拡張など、交通インフラ投資を東京に重点投資する政策が東京への集中を進めてきたし、今後もさらに加速させることになるわけで、大企業優先の国際競争力の強化が東京一極集中の弊害を拡大しているということを認識し、東京圏への公共投資の集中と大規模再開発プロジェクト推進の規制緩和政策の転換こそ必要だということを申し上げて、質問を終わります。