国会質問

<第187臨時国会 2014年11月07日 経済産業委員会 7号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、地域資源活用促進法に関連しまして、企業立地政策の総括と自治体の地域経済振興策について質問をいたします。
 地域資源活用促進法は、二〇〇六年六月に取りまとめられた新経済成長戦略大綱で、地域資源を活用した新事業を五年間で一千創出するとされたことを受けて、翌二〇〇七年の通常国会で、経済成長戦略大綱三法案として産活法の改正案と企業立地促進法案とともに提出されたものであります。第一次安倍内閣のときでありました。
 当時、我が党は、この地域資源活用促進法には賛成しながらも、地域産業集積活性化法を廃止するかわりに提案された企業立地促進法は、地方自治体を大企業の工場誘致競争に駆り立てるものとなっており、全体として一握りの多国籍企業が成長すれば日本経済がよくなるとした誤った成長神話を加速させるものになっていることを指摘しました。地域ブランドの取り組みも、単に個社支援にとどめずに、産地全体の取り組みにつなげることで、地域経済の活性化につなげるよう求めてきたところであります。
 今回、この地域資源活用促進法の改正案が提出されたことを踏まえ、これらの施策の総括と今後の政策方向について議論をしたいと思っています。
 十月十四日の本会議で、私、地方創生法案の質問をいたしました。このときに、企業立地促進法についても取り上げたわけであります。私は、「企業立地促進法は、都市と地方の格差縮小、地方の所得と雇用拡大を掲げましたが、多国籍企業の地方進出を後押しし、自治体の企業誘致の補助金競争をあおるものとなりました。肝心の雇用は、非正規がふえるばかりで、最後には、シャープなど大企業の身勝手な工場の縮小、撤退が繰り返され、その結果、産業の空洞化や産地の崩壊を招いたのです。」このように指摘をしたのに対し、安倍総理は、企業立地促進法では、「産業空洞化という課題に対して、地域の強みを生かした地域経済の活性化と産業集積を図るため、企業の立地計画に対して支援を行っています。 現在、四十七都道府県が百九十三の基本計画を策定し、この計画のもと、四千社が六・三兆円の設備投資計画を進めています。これらの企業が、地域の雇用を支える中核企業となって、取引関係のある協力企業とともに地域経済を底上げしていくものと考えております。」と答弁をされました。
 そこでお聞きします。現在策定されています百九十三の基本計画のうち、一期目の計画を更新して二期目に入っている百四十六地域の基本計画においては、一期目の基本計画終了時に評価レポートが自治体から国に提出されることになっています。そこには、基本計画に掲げた目標に対する実績も記載をされているわけです。その目標と実績についてお尋ねします。
 この基本計画に基づく付加価値額の伸び率の目標と実績はどうだったかをまずお答えください。

○井上政府参考人 お答え申し上げます。
 企業立地促進法、平成十九年に施行されて以降でございますけれども、これに基づいて地方自治体におきまして策定をされた基本計画は、委員先ほど御指摘のとおり全部で百九十三ございまして、この中で計画の当初の目標期間が到来をしました計画が全部で百四十六ございます。この百四十六の計画の全体につきまして、集積を目的とした産業の付加価値額の伸び率でございますけれども、目標が一八・二%の伸び、実績はマイナス一・八%ということになってございます。

○塩川委員 法の目的が産業集積ということでありまして、その度合いをはかる指標としてこの付加価値額の伸び率を示したわけですけれども、今お答えありましたように、目標一八・二%に対して実績はマイナスの一・八%ということです。
 次に、製造品等出荷額の増加額についての目標と実績を教えてもらえますか。

○井上政府参考人 同じく計画期間が到来しました計画につきましてのトータルの製品等出荷額の増加額の目標でございますけれども、この合計が二十七兆九千七百三十二億円が目標でございまして、実績はマイナス五兆七千六百六十二億円でございます。

○塩川委員 目標が約二十八兆円の増加額に対して、実績はマイナス六兆円ということです。
 総理の本会議答弁に、六・三兆円の設備投資計画額とあります。これは、基本計画をベースにしまして、企業立地計画、事業高度化計画を事業者が出します。その際の事業者の設備投資計画額の総計だと思うんですけれども、この六・三兆の設備投資計画額に対する実績がどうかというのはわかりますか。

○井上政府参考人 企業立地促進法でございますけれども、企業の立地を通しまして付加価値の増大を目指し、雇用を生み出すことを目指しておりまして、先ほど申し上げましたように、付加価値額、製造品等出荷額のほか、企業立地件数や新規の雇用創出についての数字はございますけれども、投資額の実績については集計をしてございません。

○塩川委員 どういうことでしょうか。本会議でわざわざ総理が答弁をされて、六・三兆円の投資計画があるんですと言っているんですよ。それなのに、実績を調べていないんですか。まさに総理の答弁に根拠がないということを言っているようなものじゃないですか。
 加えて、基本計画に基づく目標と実績を続けてお聞きしますけれども、新規企業立地件数の目標と実績はどうなっておりますか。

○井上政府参考人 新規の企業立地件数の目標は九千四百十四件、実績は七千七百七十五件でございます。

○塩川委員 この間、大企業の工場の進出もあったわけですけれども、同時に、短期間での撤退も相次ぎました。
 こういった企業立地促進法の支援を受けた計画の中で、このような大企業の工場の立地、それが直後に撤退をした、こういう事例というのは把握できているんでしょうか。

○井上政府参考人 基本計画ができて以降進出をして、その後撤退した企業の件数というのは把握をしてございませんけれども、当初計画をされたものの中で、企業の立地が実際には行われなかったというような点につきましては、先ほどの企業立地件数の目標値と実績との差分の中に含まれているという状況でございます。

○塩川委員 例えば、大阪府堺市における企業立地計画を出して進出をしましたシャープは、その後撤退をしているわけです。こういう事例があるにもかかわらず、目標と実績で、これだけ立地しましたということは言うけれども、立地したけれども撤退した、こういう数というのを把握していないということでは、実態を反映できるのかということを極めて疑問に思わざるを得ません。
 もう一つお聞きしたいのが、新規雇用創出数についてですけれども、この目標と実績はどうなっていますか。

○井上政府参考人 新規の雇用創出数でございますけれども、目標値が三十五万三千六百三十六人、実績が十七万六千四百七十七人でございます。

○塩川委員 目標に対して実績が半分です。
 こういった企業立地において、特にこの間、二〇〇〇年代などにおきましては、製造業の地方の立地が行われた際に、確かに雇用は一時的にふえるけれども、非正規ばかりだということが大問題となりました。派遣もそうですし、請負もそうですし、もともと期間従業員という形での直接雇用ではあっても非正規、こういったものも多数あったわけですけれども、例えば、実績でいう十七万人余りのうち、正規雇用がどのくらいで、非正規がどのくらいか、こういうのはわかりますか。

○井上政府参考人 新規雇用創出件数の中での正規と非正規につきましては、計画の中でもそのような区分がされない形になっておりましたので、そうした区分での把握は現時点ではしてございません。

○塩川委員 要するに、安定した雇用を生み出すということが問われているのにもかかわらず、正規雇用がどれくらいかということについてはつかんでいないんですよ。
 やはり、企業が進出し、特に大手の企業の事業所ができた場合に、実際には非正規が中心で短期の就労を繰り返す。ですから、住民票も移さない。ですから、実際の自治体の住民がふえていかない。結局、事業所が撤退でそういう人もいなくなる形で、結果とすれば、自治体にとってみれば、何が残ったのかということが問われているわけであります。
 こういった基本計画に基づいて、今言った評価リポートが出て実績がわかる百四十六地域について、今丸めてお答えいただいたわけですけれども、実際には一つ一つの計画においてどうかという検証が必要なわけですよね。それが現時点ではまだいただいておりませんので、個々の計画に基づく検証というのは引き続き求められているということを申し上げ、それにかかわる資料の提出を引き続き求めたいと思っております。
 お話ししましたように、個別の計画を見れば、進出した大企業の工場が撤退をしたり、雇用創出といいながら正規雇用がほとんどなくて非正規ばかり、それも工場撤退によって失われるという事態も生じています。
 例えば、兵庫県尼崎市、ここも基本計画もつくられておりますけれども、パナソニックのプラズマディスプレイの工場がつくられました。御存じのとおり、非常に勢いがあるときはもてはやされたところでありますけれども、二〇〇五年に第一工場が稼働をし、二〇〇七年に第二工場が稼働をし、二〇〇九年に第三工場が稼働をする。ところが、ことしの三月末で閉鎖、撤退、パナソニックとしての閉鎖、撤退ということです。
 ですから、この間の雇用といえば、正規の採用はほとんどなくて、本社から異動で来るような人、出向で来るような人だけに限られていたわけですし、実際、大半の非正規の方々は雇用を失って、現状、再就職もままならない、こういうことを兵庫県議会において我が党の議員も取り上げ、県も認めているところでもあります。
 大臣にお尋ねします。
 二〇〇七年の企業立地促進法の審議において、私は、設備投資減税ですとか立地の規制緩和などが盛り込まれているけれども、安定した雇用を確保する方針が示されていない、また、進出企業の撤退への歯どめ策もないと指摘をしたわけですけれども、実際、今七年たって見たときに、まさにそのとおりになっているんじゃないでしょうか。大臣の認識をお聞かせください。

○宮沢国務大臣 今いろいろやりとりを承っておりましたけれども、正直、この間は大変日本は大変動の時代で、十九年の次の年、平成二十年の秋がリーマン・ショック、二十三年の三月が大震災ということで、大変な大変動で経済が大揺れに揺れた中ですので、なかなか思いどおりにいかなかったということもあったんだろうというふうに思います。
 そういう中で、今おっしゃった企業がやめるのも自由というところは、まさにそれが地域経済に及ぼす影響というのは本当に大きなものがあって、そうはいっても、税制の優遇といったものもありましたけれども、では、税制の優遇に撤退しないことを条件にするというのも正直言ってなかなか難しいのかなと。逆に、地方が、いろいろ地元が補助を出したりしている条件としてはあり得たのかなというような思いで伺っておりました。

○塩川委員 進出企業の撤退の問題について、実際、まさに産業集積ですから、産業集積を行うときにその中核となるような大手の企業の事業所がなくなるということ自身が本来あってはならないはずでありまして、そういうことが想定されるような仕組みということであれば、それ自身が問題だったと、そここそ総括して問われているんじゃないのかと思うんですが、いかがですか。

○宮沢国務大臣 リーマン・ショックにしましても大震災にしましても、これは想定外といいますか、本当に史上空前のようなことが二回起こっているわけでございまして、なかなかそこまで責め切れないだろうなという思いがいたします。

○塩川委員 実際には、もともと撤退の話というのはリーマン・ショック前から含めても現にあったわけですから、そういったところも含めて、改めてこういった企業立地政策のあり方そのものが問われているということを申し上げたいと思いますし、やはり大企業の工場誘致を競い合うような企業立地政策というのは、そもそもそういう方向では、地元事業者の仕事づくりとか安定した雇用につながらないんじゃないのかという声が上がっているということを正面から受けとめる必要があると思います。
 その点で、自治体が雇用の確保などのために補助金を出すということなどはあり得るという話もされました。でも、それは国の方としても応援してきたわけですね。
 総務省の方にお尋ねしますけれども、こういった自治体における企業誘致に対しての優遇策に関して、地方交付税措置がとられているわけであります。
 一つが、企業立地促進法に基づく措置として、財政力の弱い自治体が企業誘致のために不動産取得税または固定資産税の減免を行った場合に、普通交付税において当該減収分の補填措置を行っております。この実績がどうなっているのかについてお答えください。

○橋本政府参考人 お答えいたします。
 企業立地促進法に基づく普通交付税の減収補填措置についてですが、地方団体が基本計画に定められた集積区域内に工場等を設置した事業者に対して不動産取得税または固定資産税の課税免除または不均一課税をした場合、これによる減収の一部を普通交付税で補填する仕組みでありまして、平成十九年度に創設をいたしました。
 その実績についてですが、平成十九年度及び平成二十年度は実績がございません。平成二十一年度は、不動産取得税が〇・一億円、固定資産税が二億円、平成二十二年度は、不動産取得税が七億円、固定資産税が五億円、平成二十三年度は、不動産取得税が十三億円、固定資産税が十三億円、平成二十四年度は、不動産取得税が十七億円、固定資産税が二十億円、平成二十五年度は、不動産取得税が二十二億円、固定資産税が十九億円、平成二十六年度は、不動産取得税が二十四億円、固定資産税が二十億円、このようになっております。
 以上です。

○塩川委員 企業誘致のために自治体が地方税の減免措置を行う場合に、その減収補填という形での支援策というのを国としてつくっているというのがこういう数字にあらわれております。
 もう一つ、立地促進法に基づく措置とは別に、特別交付税において、企業立地に伴う地方税の増収分、企業誘致をして地方税が増収になりました、しかし、増収になっても財政需要との関係で、それは一方で地方交付税が減るだけということでは頑張りがいがないじゃないかという声なども踏まえて、地方税が増収となった場合でも、それに対応する一部については特別交付税で措置しましょうという制度がつくられたわけですけれども、その実績はどうなっておりますか。

○橋本政府参考人 お尋ねの特別交付税の関係ですが、企業立地に伴う固定資産税の増収分の一定割合を財政需要として算定する措置を講じております。
 その実績ですが、平成二十年度は四百万円、平成二十一年度は一億円、平成二十二年度は四億円、平成二十三年度は六億円、平成二十四年度並びに平成二十五年度はそれぞれ七億円となっております。なお、二十六年度分については、現在、算定作業中であります。

○塩川委員 このように、自治体が企業誘致のために地方税の減免を行うですとか、あるいは誘致をした際についての結果として、それがきちんと財政に反映できるような仕組みというのを特別交付税でもとるということを行ってきたわけですけれども、これは、そういった地方税の減免措置と同時に補助金の引き上げ競争というのが大々的に行われたというのが二〇〇〇年代のことでありました。
 この点については経済産業省の委託の調査があります。平成二十三年度地域経済産業活性化対策調査、平成二十四年三月の取りまとめですけれども、その中で自治体と企業へのアンケートを実施しています。
 その中身について教えていただきたいんですが、このような自治体による企業誘致のための補助金、地方税減免競争についてはどのように指摘をしておるでしょうか。

○井上政府参考人 お答え申し上げます。
 経済産業省におきましては、企業立地促進法、これは十九年度に制定されて以降、十年後に見直しを行うという条項がございまして、その十年間の中間に当たる五年目の平成二十三年度に、地域経済産業活性化調査という名目で、自治体に対して、それからまた企業に対して、企業誘致施策として最も効果のあったものは何かといったような項目を初めとするアンケート調査をしてございます。
 その中では、自治体の回答として、最も効果があったとする企業誘致の施策としては「税制・補助金等の優遇措置」というのが挙げられておりまして、一方、企業の回答の中におきましては、最も重視する事業所の立地理由は「労働者の確保が容易である」といったことが挙げられているところでございます。

○塩川委員 ですから、自治体側と企業側にアンケートをとってみると、そこでもう乖離があるわけですね。自治体の方はとにかく補助金とか税の優遇でといいますけれども、企業側は必ずしもそれをインセンティブとして立地をしないということがはっきりと見てとれるわけです。
 二〇〇七年の企業立地促進法案の審議のときにも、あの時点で、自治体の補助金による企業誘致制度というのは、都道府県レベルで見ましても全国四十三の道府県でありました。補助金の引き上げの動きも加速をして、例えば、大阪府などは百五十億円とか和歌山県は百億円とか、補助金の上限額が百億円を超えるような、そういう自治体なども生まれたわけであります。兵庫県は上限なしというものなんかもあったわけであります。
 それがその後どうなったか。
 三重県亀山市のシャープの亀山第一工場に対しては、当時、北川知事だったと思いますけれども、企業立地補助金をつくりまして、三重県が九十億円、それから亀山市が四十五億円、これは固定資産税相当分についての補助金を出すというやり方だったと思いますけれども、合わせて百三十五億円という上限での補助金がシャープに示されて、しかし、結果とすれば、今はもうシャープの亀山工場はないわけであります。
 ですから、その後、補助金を出したのに撤退したということで、県としては補助金の返還要求をして、一部ではあれ、六億四千万の返還を行っているというのが実態でありまして、補助金を使っても結果としてはうまくいかなかったという実態が残った。
 同様に、兵庫県の尼崎工場、先ほど言ったパナソニックのプラズマディスプレイ社についても、県の補助金総額は約九十五億円に上りました。それが結果として撤退をしたということで、県への返金が現時点で約三十億円余りということだそうであります。
 大臣にお尋ねしますけれども、こういった事例を見ても、自治体の企業誘致における補助金競争、いわば企業誘致を競わせるようなやり方というのは結果として失敗だったんじゃないのかと思いますが、大臣はどのようにお考えですか。

○宮沢国務大臣 幾つか今のやりとりを伺いながら考えておりましたけれども、企業側は労働力確保が最優先、一方で、自治体は、ある意味では金目の話。
 企業というのはやはりずるいんじゃないかなと正直思ったのは、労働力をある程度安定供給できる会社というのが幾つかあって、それを優先するんだけれども、あとは金目の話を実は競わせたんじゃないかなという想像をしながら実は承っておりまして、なかなかずるいことをやっているんじゃないかなという思いがいたしました。
 そして、補助金の話でありますけれども、やはり地域の雇用をつくりたいということ、我々は、日本国内の雇用をどれだけ確保するか、ふやすかということが恐らく最も大事な仕事であるのと同時に、地方の首長さんからいいますと、自分の地域の雇用をどれだけ確保するかということは本当に一番大事な仕事で、ある意味では、背に腹はかえられなく、そういうことをされたんだろうと思います。
 今考えてみれば、大量生産で、ある意味では付加価値の低いものをつくっている企業がなかなか日本で続けていけないという状況は、今となってみればある程度わかりますけれども、その程度は恐らく、そういうことも考えられなかった。
 そういう中で、首長さんが、ともかく千人の雇用、二千人の雇用というのは町にとっては大変大きな話でありますから、本当に必死の思いでやられた。経済状況等々が悪くて結果的にこういうことになっているわけですが、当初の目的等々からすれば、ある意味では当然のことをされたんだろうと私は思います。
 そういう中で、もう少し、撤退したときに補助金等が返ってくる条項をもうちょっとちゃんとやって、たくさん返ってくるようなことにしておかれたらよかったなという思いがいたします。
 ということですから、競い合うといいますか、今でも、私の地元でも、やはり首長さんたちは企業誘致をしたいということで、ある意味では走り回っておりまして、それ自体が悪いことであるとは私は思っておりません。

○塩川委員 でも、巨額の補助金の引き上げ競争というのはやはり間違いだったんじゃないのか、その点はどうですか。

○宮沢国務大臣 少なくとも、三重県も亀山市も、シャープの工場が来てくれたときには大変うれしかったし、ある意味では、我々も成功モデルとして承っておりましたから、一概にそれが悪いとは言えないと思っております。

○塩川委員 でも、亀山市に私はその当時行きましたけれども、まだ撤退する前ですけれども、住民票を移していないんですよ。ワンルームマンションとかはたくさんできているんですよ、アパートとか。そこにたくさんの人が来ているんだけれども、みんな期間工の方ですとか派遣の方で、住民票を移していないんですよ。落とすのはごみばかりだと。そういう意味で、自治体の負担ばかりがふえていたというのが実態ということで、補助金を出したけれども、撤退しちゃったじゃないかと。要するに、これが今の企業誘致競争のてんまつだということをしっかり受けとめていただかないと、今後の地域経済の振興策を過つことになるんじゃないのかということは申し上げておきます。
 こういうときだからこそ、要するに、大企業の工場の誘致競争というのは失敗だった、こういう立場から今後の地域産業振興策を考える必要がある。その点で、やはり小規模企業振興基本法などを生かした小規模企業への面的な支援を行っていく、こういう取り組みこそ重要だと考えております。地域資源の活用を最大限に進める立場で、小規模企業や産地支援に全力を挙げるべきときであります。
 そこで、今回の地域資源活用促進法の改正案についてですけれども、この改正案では、もともと二〇〇七年につくった法律の効果というのが個別の企業、個社の取り組みで地域経済への波及も限定的だったということを受けて、地域全体での取り組みと販路の開拓への支援策を拡充するために、市区町村の関与や小売、ネット業者等との連携を図ろうとするものが今回の法案の改正の趣旨であるわけです。そういう意味では、地域全体を面として支援することが重要だというのが強調されている。その意義が再認識されているというところがポイントだと考えております。
 そうであるならば、私は、産地に対してのしっかりとした実態調査を踏まえた支援が必要なんじゃないのか、産業集積、面としての支援。もともとやっていたわけですよ。この地域資源活用促進法が制定されたときには、産地を面として支援してきた地域産業集積活性化法が廃止をされているんです。そのために、年間生産額がおおむね五億円以上の産地を対象とした産地概況調査も廃止になってしまいました。ですから、法の廃止をもって調査も廃止をされているということで、産地の生産額ですとか従業員数とか輸出額などの基礎的データがつかめなくなっている。
 大臣にぜひこの点を要望したいんですけれども、地域全体の取り組みを支援するというのであれば、このような産地概況調査の、同じ形とは言いませんけれども今日的な復活も含めて、産地の実態を正確につかむための調査を行う、こういうことが必要なんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○北川政府参考人 御答弁申し上げます。
 六月に指摘をいただきまして、そのときは検討しますと申し上げました。今後、御指摘を踏まえて復活して、また調査をしていきたいと思います。

○宮沢国務大臣 十七年度に終了しましたけれども、五年後、二十二年度に調査を一回いたしまして、また五年後ということを考えております。
 これは、言いますと、産地の状況というのが毎年毎年大きく変化するような状況ではなくなってきたというようなことがあるという話で、考えてみますと、私の地元は備後表という日本で一番いい表の産地ですけれども、もうほとんどイグサをつくらなくなって、熊本につくっていただいて持ってくるとなってしばらくたっていますし、熊本ももうかなり中国にいっているみたいな、そういう産地も結構多いんだろうなと思いますが、ともかくやらせていただいて、しっかり調査してみたいと思います。

○塩川委員 ぜひ、その点については、産地概況調査に相当するものとして要望したいと思っています。
 それと、小規模企業振興基本法の基本計画では、地域における魅力の面的、横断的な掘り起こしを強調しています。
 自治体はこの点での取り組みの具体化が求められているんですけれども、国としてどのような支援を行っていくのか、このような地域における魅力の面的、横断的な掘り起こし、こういうことについて考えておられることについて、お答えいただけますか。

○宮沢国務大臣 面的ということになりますと、商工会や商工会議所が地域の小規模事業者と連携して行う特産品開発や観光集客の取り組みなど、面的に地域全体の活性化を図る取り組みを国としても支援してまいります。
 また、今回の改正におきまして、市町村が旗振り役となって地域ぐるみで、ふるさと名物の製造や販売に取り組む中小企業、小規模事業者を応援する面的な取り組みを促進する、こういうことで面的、地域ぐるみの応援をしていきたいと思っております。

○塩川委員 商工会議所、商工会の役割をぜひ積極的に果たしていただきたいと思いますし、それにとどまらず、市町村自身が事業者をしっかりと把握し支援を行っていく。まさに自治体としての面的な支援というところに大きく踏み出す。ですから、ふるさと産品にとどまらず、まさに地域の産業の集積の状況を把握した、そういう取り組みが必要であります。
 その点で、中小企業白書では、地域経済活性化の鍵を握るコネクターハブ企業、地域中核企業と言っています。ちょっと時間が押していますので少し飛ばしますけれども、このコネクターハブ企業、地域中核企業が地域経済活性化の鍵と言っているんですけれども、私は、小規模企業振興基本法の基本計画の中にも書かれている小規模企業の振興と地域経済の活性化は表裏一体だ、こちらがそもそも大もとなんじゃないのか。つまり、地域中核企業が鍵というのではなくて、小規模企業の振興というのが地域経済の活性化の鍵なんじゃないのか。
 その点についてはいかがですか。

○北川政府参考人 地域活性化の際に小規模企業が鍵であるということは、前回、通常国会におきまして、私どもが小規模企業振興基本法を御提案したときに強く申し上げ、お願いしたところでございます。そういう意味では、それぞれの地域地域で持続的に頑張っていく、これがまず第一義だろうと思っております。
 ただ、そのときに、域外の需要を取り込んで域内に持ってくる、あるいは域内のものを外に売り出すというのも一つの地域の活性化のやり方ではないかというふうに考えまして、地域中核企業ということを申し上げました。
 地域中核企業につきましては、中と外をつなぐだけではなくて、自治体それぞれのようでございまして、外へ売り出すのを地域中核と思っている場合、あるいは中、地域内で仕入れる、そういったことをしているところをハブ企業と呼んで重視しているところ、あるいは雇用をたくさん生み出しているところ、あるいは利益を生み出して納税という格好で地域に貢献している、四つぐらいのパターンで地域ではお捉えのようでございます。
 いずれにいたしましても、小規模企業の活性化の観点から、地域中核企業のみならず、全体が面的に発展していくような方法をとっていきたいと考えております。

○塩川委員 地域経済分析システム、ビッグデータを活用して、まさに地域の活性化の鍵となる地域中核企業を見出して、あるいは育て上げていくということを今経産省としては強調もされ、地方創生法案の総合戦略でも、そういう経済分析をやりましょう、自治体にデータも提供しましょうとなっているわけです。
 そのときに、そういった地域中核企業に大いに頑張ってもらいたいと思っています。同時に、それにとどまらずに、実際、自治体に所在をする、まさに雇用を維持し、仕事をそもそも維持することに積極的な意味がある小規模事業者への支援を行う上でも、その実態はしっかりと把握する必要があるんじゃないのかということなんですね。
 そういう点でも、ビッグデータで、帝国データバンクの企業情報を活用するということなんですけれども、三百三十四万社の小規模事業を全部網羅できないと思うんですけれども、この点で、小規模事業のそういった実態を把握して自治体が施策に生かしていくというのに、この地域経済分析システムというのは十分活用できるんでしょうか。

○北川政府参考人 お答えいたします。
 地域経済分析システム、今委員は、帝国データバンクの七十万社のデータを軸としてというふうにおっしゃられました。それは一つのデータの塊ですけれども、それに加えまして、公的なデータ、例えば、私どもといたしましては、経済センサスあるいはさまざまな大型統計、そしてまた観光に関しますれば人の移動のデータ、こういったビッグデータも活用しながら、組み合わせてやっていきたいというふうに思います。
 具体的には、それぞれ、経済センサスによりますれば、各地の小規模事業者の構造もわかりますし、それと中核企業がどう結びつくのかというのも推測できていくと思います。また、観光地における人の動き、こういったものが、それぞれの小規模の商業、サービス業、こういったものへ与える影響というものも見えてくるのではないかというふうに考えておりまして、さまざまなデータを組み合わせて小規模企業の活性化を図れればというふうに考えております。

○塩川委員 最後に、大臣に一問お尋ねします。
 今、帝国データバンクの資料も活用し、経済センサスなどいろいろな経済統計なども活用して地域の実態を把握する、そういうのを提供しよう、これ自身は大いに活用が求められていますし、もちろん企業情報ですからいろいろな制約もあり、そういった機微情報などについての配慮というのが必要だということは当然の前提であります。
 そういうときに、実際、帝国データバンクが集めた七十万社の情報というのも、千七百人の調査員の人が足で歩いて取引情報なんかは集めているんですよ。実際には現場で回っているんです。これと同じことを自治体が行えれば、まさに自治体の企業情報をしっかりと把握して産業政策に生かすことができるんじゃないのか。
 例えば、墨田区が早い時期から中小企業振興条例をつくってやったことは、悉皆調査なんですよ。全事業所訪問をして、そういう事業所の取引先の情報なども集めて、それをカタログにしているわけですね。そのカタログを持って、うちの企業を使ってくださいと区の職員が営業で回る、こういう活動にもなっているわけで、まさに、区の職員が調査で地元企業を回って、その企業の大変さ、あるいは、こういう得意分野、魅力があるということをつかんで、そこに誇りを持って実際にその地域の産業政策に生かしていく、こういうことこそ必要なんじゃないのか。
 ですから、中小企業振興条例も重要です、各分野、階層の事業者を集めた産業政策会議、こういうのも立案の上では重要です、あわせて、その前提が、こういった全事業所の実態調査なんじゃないのか。こういう取り組みが行われてこそ、自治体の産業政策を生きたものにしていく。小規模企業振興基本法に基づく、まさに小規模企業が地域経済の活性化の鍵となるような、こういう役割を発揮することにつながるんじゃないのか。
 この点をしっかりと、自治体にも応援をするような、こういう取り組みで旗を振っていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○宮沢国務大臣 まさにおっしゃるとおりだろうと思います。
 中小企業振興条例も大事でありますし、また、悉皆的といいますか、商工会、商工会議所を通していろいろやるのではなくて、やはり自治体の職員が自分の足で企業の生の姿を見ていただいて、そして、それを応援していく。それは前向きの話もあれば、後ろ向きな話からどうお助けするかという話もいろいろあると思いますけれども、まさにそういうことを自治体の方でやっていただくように、私も、国としてどういう方策があるか、考えてみたいと思います。

○塩川委員 大企業や外資の誘致への依存ということじゃなくて、やはり、小規模企業の面的な支援、こういうことこそ内発的な発展と地域経済循環の力だということを改めて申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。