国会質問

<第187臨時国会 2014年11月12日 経済産業委員会 8号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、製鉄会社の精錬の過程で出てくる鉄鋼スラグが群馬県内におきまして道路などの公共工事に使用される、これに環境基準値を超える有害物質が含有されているということが大きな問題となっております。この問題を取り上げます。
 この鉄鋼スラグは、大同特殊鋼の渋川工場で生成されたものです。このスラグは強アルカリ性で、弗素や六価クロムなどの有害物質が含まれ、環境汚染、健康被害が懸念をされております。
 これまで、大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグに起因する土壌環境基準値以上の有害物質が検出された場所として、例えば水資源機構の調査においては、前橋市内の群馬用水と言われる用水路、農業用水などに使われているような。この群馬用水の脇に設置をされた管理道路に使われているですとか、国交省においては渋川市内の国道改良工事とか、また渋川市においてはスカイランドパークと言われる遊園地などでも、こういう有害物質、基準値を超える鉄鋼スラグが使用されているということが明らかとなっております。
 このように、現時点でも多くの箇所で環境基準を超える有害物質を含む鉄鋼スラグが公共工事に使用されてきたことがわかります。
 大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグの使用場所というのはさらに広い場所にありまして、国道のバイパス工事ですとか八ツ場ダムの代替地の造成地にも使われておりますし、前橋市内で土地改良を行ったような水田に接するような市道においても使われておりますし、渋川市では、先ほど言った遊園地の駐車場に限らず、保育所の駐車場ですとか自然公園の遊歩道とか土地改良事業の市道など、広範囲に及ぶ極めて重大な問題であります。
 そこで、まず国交省にお尋ねをいたします。
 大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグの出荷が始まった平成三年度以降、群馬県内で国交省の直轄工事が三千八百カ所行われているということですが、この三千八百カ所において、渋川工場の鉄鋼スラグの使用実態については全容を把握しているのか。露出している部分についての一部の調査ということもお聞きしたんですけれども、露出していないような場所の調査を行っているのかどうか。この点を教えてください。

○山田政府参考人 お答えいたします。
 関東地方整備局が大同特殊鋼株式会社に対して聞き取り調査を行ったところ、同局が施工いたしました四十七工事の施工箇所に対して鉄鋼スラグを出荷した記録があるということと、出荷先不明の鉄鋼スラグがあるということが判明をいたしました。
 鉄鋼スラグは必ずしも有害というわけではありませんけれども、このことを踏まえまして、関東地方整備局におきましては、同局が群馬県内で実施しました約三千八百工事のうち、砕石等が現時点で露出した状態となっている九十二工事の施工箇所につきまして、鉄鋼スラグの混入を確認する調査を実施しているところです。
 このうち、鉄鋼スラグと類似する材料が確認された二十六工事、それから鉄鋼スラグの出荷記録がある四十七工事を合わせ、重複の十七工事を除きます五十六工事の施工箇所につきまして、現在、群馬県の環境森林部からの助言を踏まえまして、有害物質の含有量などについて分析を実施しているところです。
 これらの取り組みは関東地方整備局が先行して実施しているところですけれども、鉄鋼スラグに関する課題については、このスラグが群馬県内の公共事業等に広く使用されてきたことから、今後、国、県及び関係市町村が一体となって取り組む必要があるというふうに考えております。このため、関係者が相互に情報共有を図りまして、連携して対応等を行うため、関東地方整備局と群馬県及び渋川市が共同で連絡会議を設置することとしております。
 御指摘の点も含めまして、今後につきましては、群馬県の環境部局を含む関係機関と情報共有を図って、連携して適切に対応していきたいというふうに考えております。

○塩川委員 私、質問で、鉄鋼スラグの出荷を大同特殊鋼渋川工場が始めた平成三年度以降、群馬県内の直轄工事三千八百カ所について、露出していない場所の調査も行っているんですかと聞いたんですけれども、イエスかノーかでお答えください。

○山田政府参考人 現在、出荷先不明の鉄鋼スラグの場所等を調査するかどうかにつきましても、今後、国、県及び関係市町村が一体となって取り組んでいく必要があるというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 第一次の調査では露出していない部分のところも一応やっているわけですけれども、今度広げたわけですから、そういう点で、まだそういう全容の解明に至っていないという状況があります。
 鉄鋼スラグが必ずしも有害というわけではないというお話もありました。その面ももちろんありますけれども、ただ、この大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグについては問題があったということは、既に、土壌環境基準を超えるそういう鉄鋼スラグがあったということは、調査、分析で明らかなわけであります。
 そういうのも、渋川工場でつくっているものが、愛知の知多工場などの自動車製品に対して、この渋川工場では航空機用品の特殊な製品をつくるということになりますと、当然、ステンレスなども多いものですからクロムを使うことになる。それが結果として生成過程の中で鉄鋼スラグに六価クロムを含むということにもなります。また、溶かす電炉でいろいろなものを入れますから、流動性を高めるために蛍石という石を入れると、弗素がたくさん出てくるわけですよね。それが結果として、弗素や六価クロムがたくさん出るということにもなっているわけであります。
 こういったものが広く、道路用の資材など公共工事に使われてきた。経産省が大同特殊鋼側にこの面で問い合わせもし、聞き取りした調べの中でも、公共工事だけではなくて民間工事でも使われているということもあるそうであります。影響が広範囲になる懸念があるわけであります。
 そういう意味でも、繰り返しますが、全容が明らかになっていないので、こういった大同特殊鋼の鉄鋼スラグ使用場所の全容を明らかにすることに対して、国の方が群馬県や当該市町村と連携して、この取り組みをさらに進めることを改めて強く求めておくものであります。
 そこで、環境省にお尋ねをいたします。
 鉄鋼スラグのリサイクルの使用との関係でお聞きしますが、土壌環境基準を超えるような有害物質を含む鉄鋼スラグというのは、廃棄物の定義における物の性状という面から見れば、当然、廃棄物に当たるのではないかと考えますが、いかがですか。

○鎌形政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の鉄鋼スラグが廃棄物に該当するか否かという点でございますけれども、個別具体的な判断につきましては、産業廃棄物の適正処理に関する指導監督権限を有する、この場合ですと群馬県において適切に判断するということになりますが、その判断の考え方について申し上げますれば、物の性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思を総合的に勘案して判断するということになります。
 御指摘の土壌環境基準については、そのうち、物の性状の判断の要素ということになるということでございます。

○塩川委員 総合的に判断する、それぞれの要素の一つとして物の性状があります。
 この物の性状という面から見た場合に、土壌環境基準を超える有害物質を含む鉄鋼スラグというのは、当然のことながら、廃棄物ということにつながるのではないかと思うんですが、改めていかがですか。

○鎌形政府参考人 繰り返しになりますが、個別具体的な判断につきましては、産業廃棄物の指導監督権限を有する群馬県においてなされるということでございますが、物の性状に関しましては、例えば、生活環境保全上の支障が発生するかどうか、そういう観点から吟味するということになりますので、土壌環境基準を超えているかどうかというのはそういう判断の材料になるということでございます。

○塩川委員 まさに水田に接するような農業用水の管理道路に使われている、そういうことについての懸念というのも当然ありますし、遊園地や保育園の駐車場にあるという点においても、健康面についての不安が広がるという点での問題点も当然あるわけであります。
 そういった意味では、実際にそれが、物の性状という面で見れば有害物質を含む鉄鋼スラグというのが、これをそのままリサイクルしていいのかという問題にもなってくるわけであります。
 個別具体的な話と言われるんですから、一般論として、土壌環境基準を超える物質が含まれる鉄鋼スラグについて、有害物質を薄めるというような目的で自然砕石とまぜ合わせて再生砕石をつくり、販売、使用するような場合というのは、当然廃棄物の投棄に当たると考えますが、この点はいかがですか。

○鎌形政府参考人 御指摘は、廃棄物と認識されるものを廃棄物でないものと混合するという行為についてということだと解釈いたしますけれども、廃棄物につきまして処理という行為がございますが、廃棄物の処理につきましては、物理的、化学的または生物学的な手段によって形態、外観、内容等について変化させるということでございますので、御指摘のようなスラグを希釈目的で自然砕石と混合する、このような行為は廃棄物の処理には当たらないということでございまして、混合されたものにつきましては、廃棄物と廃棄物でないものを混合したものとして取り扱っていくべきもの、こういうことと解釈してございます。

○塩川委員 廃棄物ということを前提でのお話です。
 そういう点でいいますと、過去、建設汚泥の処理物の廃棄物該当性の判断基準指針というのが出されております。建設汚泥に対して、廃棄物に土砂をまぜて、いわば土砂との混合物にすることで土砂と称して埋立処分をするという問題について、要は、廃棄物と土砂をまぜても、それは土砂にはならない、土砂のまざった廃棄物でしかない、こういう通知も出されているわけです。
 そういう趣旨でいえば、鉄鋼スラグが廃棄物ということになれば、当然のことながら、鉄鋼スラグを薄めるような目的で自然の砕石とまぜ合わせて再生砕石と称しても、それはいわゆるリサイクル品にはならないよねということだと思うんですが、この点はいかがですか。

○鎌形政府参考人 今御指摘の通知におきましても、建設汚泥または建設汚泥処理物に土砂を混入した場合のことの御指摘がございました。これにつきましては、混入させた場合には、廃棄物と廃棄物でないものの混合物として取り扱われたい、こういう通知を出して対処しているというところでございます。
 その意味で、先ほど、鉄鋼スラグが廃棄物と認識される場合のことでございますが、鉄鋼スラグと自然砕石とを混合するということになりますと、廃棄物と廃棄物でないものの混合物ということでございますので、廃棄物でなくなるということではございません。

○塩川委員 まずは、鉄鋼スラグそのものが、具体の話でいえば群馬県における大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグが廃棄物ということになれば、それを自然砕石とまぜ合わせて再生砕石ですよということにはならない、廃棄物に当たらないということは言えないということであります。現に、廃棄物であるかどうかの判断基準の重要な要素である物の性状の面で見れば、有害物質を含むわけですから廃棄物に当たることは当然だ。加えて、逆有償取引も行われていたわけですね。取引の面においても実際には問題のある行為を行っていたわけです。
 ですから、実際、群馬県が適切に判断するということであるわけですけれども、その際に、総合的に判断して、結局、この大道特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグというのは廃棄物に当たるということは明らかではないでしょうか。改めていかがですか。

○鎌形政府参考人 申しわけありません、繰り返しになりますけれども、個別具体の事例の判断につきましては、産業廃棄物の指導監督権限を有します群馬県において適切に判断されるということでございますが、先ほど来るる申し上げましたとおり、鉄鋼スラグが廃棄物に当たるかどうかの判断、そして混合物が廃棄物に当たるかどうかの判断については、先ほど来申し上げたとおりの考え方に従って判断されることと考えます。

○塩川委員 群馬県の適切な判断という際に、やはり廃棄物処理法に基づいた廃棄物としての認定の作業をしっかり行ってもらう。その点で、国の方が必要なアドバイスなどを行うことを改めて求めるものです。
 あわせて、次に国交省にお尋ねしますが、前橋市内の上武国道の工事であります。
 上武国道の工事に当たって、再生砕石を使用することになっているのか、なっていないのか。その点について、道路の場合には、アスファルト舗装面の下に路盤があって、その下に路床があって、さらには路体という盛り土部分があるわけですけれども、こういった路盤、路床、路体というのは、この上武国道の工事においては材料はどのような仕様を指定しているんでしょうか。

○山田政府参考人 お答えいたします。
 道路に使用する材料の仕様につきましては、それぞれの工事ごとに定められているわけでありますけれども、例えば上武道路の小神明地区ほか改良工事におきましては、国が示した契約図書のうち、工事数量総括表で、路体部分の材料の仕様はれき質土というふうに記載をされているところでございます。(塩川委員「路床、路盤はどうですか」と呼ぶ)路盤のデータは持っておりません。済みません。

○塩川委員 少なくとも路体部分はれき質土ということですから、再生砕石、つまり、鉄鋼スラグも含めたリサイクル品をまぜ合わせたものということになっていないわけであります。
 実際に国交省の調査においても、盛り土部分に相当する路体の部分に鉄鋼スラグが使用されているという事例があったわけであります。これは、路体はれき質土だという仕様の指定に反している事例ではありませんか。

○山田政府参考人 れき質土という仕様でございますので、仕様には合っていないということが言えると思います。

○塩川委員 仕様で指定されたもの以外を実際は使用しているということになるわけであります。
 その上で、このように仕様書に反するような事案が既に発生している。こういった鉄鋼スラグは、路体部分だけではなくて路床部分にも使われているという指摘もあって、それのエージングの措置がきちっと行われていないために、膨張して、結果、壁面が膨れ上がるような事態が現に上武国道などで生まれているんですよね。そういったこともしっかりと調査が求められておりますし、そもそも仕様に違反するような事例があるのであれば、撤去を含めた必要な是正措置を行うべきだと考えますが、いかがですか。

○山田政府参考人 お答えいたします。
 まず、一般論といたしまして、発注者は、工事目的物に仕様に反した材料の使用などの瑕疵がある場合には、受注者に対してその瑕疵の補修を請求するか、損害の賠償を請求することができます。しかしながら、実際にどのような請求をするかということにつきましては、瑕疵の程度を総合的に検討し、判断することになります。
 今回の案件等につきましては、廃掃法に基づく調査が今群馬県において行われております。この結果も瑕疵の程度を判断する材料の一つになると考えておりますので、群馬県の調査結果あるいは対応を踏まえて、関係機関と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。

○塩川委員 最後に大臣にお尋ねします。
 群馬県内において、広範囲に大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグが使われておりました。その中には、今の国交省の工事のように、仕様に合わないものを使うという形での、仕様に反するような事例も現に起こっている。これはこれとしての是正が必要であります。さらには、何よりも、土壌環境基準を超えるような有害物質を含む鉄鋼スラグというのが、住民の生活の身近なところで大量に使われているという問題があるわけであります。
 こういった鉄鋼スラグがリサイクルとして使われてきたということがそもそも問われるわけで、この点での大同特殊鋼自身の責任というのが大いに問われるということについての大臣のお考えをお聞きしたいのと同時に、こういったリサイクル品の活用を促進する政府の政策そのものがこのようなひずみを生み出したんじゃないのか。結局は、コストダウンを図るために、廃棄物に回すと金がかかるからリサイクルにしてという形でコスト削減を図るような企業のこういう行動を、政府のリサイクル推進の姿勢が結果として後押しをするようなゆがみになっているんじゃないのか。
 こういう二点についてお答えください。

○宮沢国務大臣 私も、地元が広島県の福山市で、JFEの大変大きな工場がありまして、鉄鋼スラグというのはある意味で大変大事なものだということだと私自身は思っております。
 ただし、今回の事案というのは、あってはならないことが起こったわけでありますので、まず一点、大同特殊鋼自身については、国交省、環境省とも連携しながら、しっかり指導監督をしてまいります。
 また一方で、同様の事案の再発というようなことが一番いけないわけでございますので、再発防止のために、業界に対して、今、自主管理基準の見直しをお願いしております。それでしっかり対応していきたいと思います。

○塩川委員 コスト優先の企業体質とリサイクル品の使用拡大を進めてきた政府、国の意図というのがこういう結果につながったんじゃないのかということを改めて強く指摘して、質問を終わります。