国会質問

<第187臨時国会 2014年11月18日 総務委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今議題となりました私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律案につきまして、提出者に何点か質問させていただきます。
 元交際相手の性的な写真や動画などを嫌がらせ目的にインターネット上に公開する、いわゆるリベンジポルノが深刻な社会問題となっております。
 その点で、この被害の実態についてはどのように把握をされておられるのか、また、元交際相手等との私的な事柄を刑罰対象とするという点では、他に類似の処罰法律があるのかどうか、従来、わいせつ罪や名誉毀損罪、児童ポルノ禁止法等の現行法があるわけですけれども、こういうものでの対応はいかがなのか、本法案の立法趣旨とあわせ御答弁をいただければと思います。

○平沢委員 お答えいたします。
 まず、被害の実態でございますけれども、ネット上のトラブル相談を受け付ける全国webカウンセリング協議会というところがあるわけですけれども、ここの資料によりますと、二〇一二年には年間十件程度であった同協議会へのリベンジポルノに関する相談件数が、ことしの場合、二〇一四年に入りまして一月から三月の間に、毎月三十件程度に急増しているということでございます。
 警察の方は、リベンジポルノに特化した形での統計をとっていませんのでわかりませんけれども、警察の方でも相当ふえているということでございまして、この種のものは、当然のことながら、暗数が相当あるわけでございまして、実態はかなり深刻ではないかなと考えております。
 この法案で新設する罰則でございますけれども、撮影対象者の私生活の平穏、特にその性的なプライバシーを保護しようとする目的の規定であるわけでございまして、このような目的で元恋人等との私的な事柄を刑罰の対象として規制する法律は、これまで我が国には存在しませんでした。
 この犯罪自体が、携帯とかスマホが急速に普及しまして、どこでも簡単に写真が撮れるようになったという社会的な背景があるということも、これに関連しているのではないかなと思います。
 諸外国の例を申し上げますと、例えばドイツ、フランスでは、性的なものに限らず、プライバシーを侵害する行為を処罰する規定が存在しているところでございまして、例えば米国のカリフォルニア州では、性的なプライバシーを侵害する行為を処罰する規定を近年新設したということで聞いております。
 それから、我が国でも、この種のものを取り締まる既存の法律というのはいろいろあるわけでございますけれども、例えば、わいせつ物やわいせつ画像に当たらない場合であっても撮影対象者の権利が害される場合というのはあるわけでございまして、既存のわいせつ物頒布罪では必ずしも十分対応ができないところ、それから、例えば児童ポルノ禁止法では十八歳以上の者を対象とする行為には対応ができないという問題があること、さらには、名誉毀損罪に該当する行為は人の社会的評価を低下し得るものでなければならないという問題があるわけでございます。
 こういった既存の法律ではカバーできない、いわば既存の法律の間隙のところを今回の法律でカバーしよう、そういうことによりまして私生活の平穏を保護、守っていこうというのが今回の法律の狙いでございまして、その辺についてぜひ御理解をいただければと思います。

○塩川委員 今回の法案を出す趣旨が、現行の法律の間隙をカバーするというお話でございまして、現行法で十分に対応できないということが本法案の立法の趣旨ということを改めて確認いたしました。
 被害の実態把握のところは、民間の団体の方の相談件数ということが例示的にはあるわけですけれども、警察におけるさまざまな問い合わせ等々含めて、被害の実態の全容を把握するということについても、関係当局への働きかけをぜひ求めていきたいと思っているところであります。
 次に、本法案は親告罪でありますが、その点で、捜査権の濫用につながることはないのかどうかということについてお尋ねをいたします。
 私事性的画像記録であることを認識していない場合に拡散した、そういう場合も公表罪や公表目的提供罪として捜査対象となります。
 この認識の有無を判断する根拠とは具体的にどのようなものなのか、捜査機関の恣意性を排除する、その保証は何か、この点についてお尋ねしたいと思います。

○平沢委員 まず、被害の実態についてでございますけれども、先ほど申し上げましたように、警察はリベンジポルノに特化した形での統計はとっていないようですけれども、この辺について、リベンジポルノに特化した統計をとるように申し入れを今しているところでございます。
 それから、今御指摘がございましたように、本法案の罰則というのは、公訴が提起された場合には、事件に関する事情が法廷等において明らかになりまして、改めて被害者の性的プライバシーが害されるおそれがあることから、親告罪としているところでございます。
 捜査機関としては、告訴を受理した場合には捜査を行う責任があることになるわけでございますけれども、当然のことながら、捜査機関においては、被害者の性的プライバシーが害されるおそれを考慮して親告罪とした趣旨を踏まえて、適切な対応がなされるべきでありまして、関係者のプライバシーや名誉の保護に十分配慮した形で捜査が行われるということで考えております。
 また、本法案の罰則でございますけれども、過失犯の処罰規定は設けていないわけでございまして、公表罪や公表目的提供罪の犯罪事実を認識、認容していた故意犯のみが罰せられることになるわけでございます。
 この故意について、犯罪事実を認識、認容していたかどうか、これについてのいわば立証でございますけれども、これは、個別具体的に判断することになるわけでございますけれども、関係者の供述だけでなく、客観的、外形的な証拠によっても認定されることになるということで考えておりまして、また、実際の捜査においては、強制処分は裁判官の事前の令状審査のもとで行われることになるわけでございます。
 いずれにしましても、提案者としては、捜査機関において、客観的、外形的な証拠に基づいて適切な運用がなされるものと考えておりまして、恣意的な捜査はあってはならない、このことについては、捜査機関には十分注意して捜査を行っていただきたいということで考えております。

○塩川委員 犯罪事実の認識につきましては、今御答弁いただきましたように、関係者の供述だけではなくて、客観的、外形的な証拠によっても認定されるということで、いわば公開された画像等の客観的、外形的な証拠によって認定される、そういう趣旨ということで御説明をいただきました。
 最後に、今後の支援体制の問題についてお尋ねをいたします。
 今、簡単にインターネットで画像等が大きく公開されてしまう情報通信機器などの発展、社会情勢の中で、インターネットを通じた性暴力、性犯罪をどう防止していくのか、この点をきちんと押さえて後押しをする支援策や体制の整備が必要ではないかと考えます。
 この支援体制の整備として、具体的にどんなことをしていくことが求められるのか、この点について提出者のお考えをお聞かせください。

○平沢委員 今委員御指摘のとおりでございまして、インターネットを通じた性暴力、性犯罪の防止は極めて重要でありまして、社会全体でこういった行為が許されないという認識を醸成していくことが重要ということで考えております。
 したがいまして、本法は、私事性的画像記録の提供等の行為をインターネットを通じて流す、そういった性的犯罪に関連するものでございますけれども、本法案では、私事性的画像記録の提供等に関しまして、被害者の支援体制の整備等、これは第五条でございますけれども、及び被害の発生を未然に防止するための教育及び啓発、第六条でございますけれども、こうした規定を設けているところでございます。
 支援体制の整備等については、具体的に申し上げますと、警察における女性警察官による女性被害者への対応などの相談窓口の体制整備、あるいは、法務局の人権擁護機関における人権相談、削除依頼等の方法の助言、プロバイダーへの削除要請、それから、法テラスにおける適切な相談窓口に関する情報提供、被害者支援に精通した弁護士の紹介、あるいは、総務省におきましては、総務省が設置、運営している違法・有害情報相談センターにおけるプロバイダー等への削除要請方法等の助言、こういったことを今各省庁に対応を求めているところでございまして、被害者に対する支援策が一層充実されるものと考えております。
 加えて、これら関係機関等が一層連携を強化して、それぞれの取り組み内容や窓口について相互に情報を共有し、相談内容や相談者の意向等を踏まえ、最も適切な関係機関等に速やかに引き継ぐことが可能となるよう、連携体制の構築が図られることになると考えております。
 また、被害の未然防止のためには、学校を初め、さまざまな場を通じ、児童生徒のみならず、被害者等も含めた、私事性的画像記録の提供等の被害者、加害者とならないようにするための教育及び啓発が重要でありまして、関係機関等による取り組みの充実を求めているところでございます。
 いずれにしましても、委員が御指摘のとおり、こうした犯罪に巻き込まれないようにすることが極めて重要なわけでございまして、そして、万が一に起こった場合には、そうした方々に対する相談体制の充実、救済が重要になってくるわけでございまして、その点については、委員の御指摘も踏まえてしっかり対応していきたい、そして、そのことをまた関係当局に求めていきたいと考えております。

○塩川委員 プロバイダーへの即時削除要請などの取り組みを行いやすくする、こういう取り組みの重要性の問題もあります。
 いずれにせよ、有識者の方など国民の声に広く耳を傾けて、この支援体制の充実、整備を整えていくために、関係機関に特段の取り組みを改めて申し上げまして、提出者への質問を終わります。
 ありがとうございました。