国会質問

<第189通常国会 2015年03月25日 内閣委員会 2号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、最初に、河野談話に基づく政府による日本軍慰安婦問題の資料収集についてお尋ねをいたします。
 戦後七十年、いわゆる日本軍慰安婦問題の解決が求められております。きょうは河野談話以後の政府による関係資料の収集状況について質問をいたします。
 政府は、一九九一年十二月より関係資料の調査を開始し、元軍人等関係者や元日本軍慰安婦の人たちから聴取を行い、一九九三年八月、慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話、いわゆる河野談話を発表しました。河野談話は、「政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。」とし、一九九六年七月には、内閣官房の外政審議室長名の通知、「いわゆる従軍慰安婦問題に関連する資料等について(依頼)」、室長名をつけて平林通知と略称しますけれども、この平林通知を発出しております。この内閣官房内閣外政審議室の業務は、現在、内閣官房副長官補室に引き継がれております。
 最初に内閣官房にお尋ねをいたしますが、この平林通知の内容について御説明いただきたい。これは現在も生きている、有効だと思いますが、その点の確認もあわせてお願いします。

○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、慰安婦問題について、政府といたしましては、当時、関係資料の包括的調査を行いまして、平成四年七月六日と平成五年八月四日の二度にわたり、政府として全力を挙げて誠実に調査した結果を発表しているところでございます。
 御指摘のいわゆる平林通知でございますけれども、平成五年八月四日の河野元官房長官談話にございますように、資料の収集に関心を払うものとされていることから、平成八年に当時の内閣外政審議室長名で、平成五年八月四日の政府調査結果発表後も、慰安婦問題に関連する資料や情報の存在が判明した場合には、内閣官房において公開の手続をとるため、関係省庁等において内閣官房に報告すべき関係資料に該当するか否かを適切に判断された上で、関係省庁等に対して内閣官房に報告をするように求めているものでございます。
 現在も、この通知については効力を有しているものでございます。

○塩川委員 関係府省に日本軍慰安婦関連の資料があれば内閣官房に報告することを求めており、写しを送付してもらう、内閣官房は写しを保管し、公開の手続をとるということで、今も有効だということでありました。
 重ねて内閣官房にお尋ねしますが、この平林通知発出後の資料の収集状況がどうなっているか。関係省庁から提出された年度別及び関係省庁別の件数を明らかにしていただきたいと思います。

○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
 平成五年八月四日に河野元官房長官談話が発表された後も、関係省庁等から新たな慰安婦関連資料と判断されたものが発見された旨の連絡は受けているところでございます。
 現時点における機関別の件数を申し上げますと、警察庁より平成八年度に二件、防衛庁、当時または現防衛省でございますけれども、平成六年度に一件、平成七年度に六件、平成八年度に十九件、平成九年度に三件、平成十年度に十一件、平成十一年度に九件、平成二十六年度に二件の計五十一件、厚生労働省、当時でございますけれども、平成五年度に一件、国立公文書館、当時でございますけれども、平成十年度に二件、国立国会図書館より平成七年度に一件、外務省より平成八年度に四件の総計六十一件の報告を受けております。
 委員御指摘の平林通知発出後ということでございますと、少し時期が特定できない報告がございますけれども、平成八年度以降の状況に限って申し上げれば、総計五十二件の報告を受けているところでございます。

○塩川委員 このように、一連の文書について内閣官房に報告があったところであります。
 省庁別にまとめてお話がありましたから、年度別の推移についてがよくわかりませんでしたけれども、整理すると、平成十一年度までは各省庁からの文書もあった、それ以降は少し間があいて、防衛省において平成二十六年度に二件が提出されるという経緯になっております。ですから、生きているからこそ、昨年度、防衛省から二件という形での報告があったということにもなるわけです。
 そこで、防衛省にお尋ねをいたします。
 防衛省は昨年度、二件の資料を内閣官房に報告しておりますが、そのうちの一件は、特殊慰安施設、いわゆる慰安所を営外施設として部隊が設置、運営するための営外施設規定であります。この資料について防衛省が内閣官房に報告するに至るプロセスには、その規定が関係資料であるとの外部からの指摘もあったんだと思うんですが、その経緯について説明をしていただけますか。

○武藤政府参考人 お答えいたします。
 防衛省におきましては、内閣官房からの依頼に基づきまして、平成三年十二月からいわゆる従軍慰安婦に関連する資料の調査を行ってきております。
 昨年は、今御指摘ありました営外施設規定、それからもう一件、森川史料と呼ばれるものを内閣官房に提出いたしたところでございます。
 いずれの資料も、防衛省防衛研究所の戦史研究センター史料閲覧室において、一般の方からの御指摘等を受けまして、同センターの職員が改めて確認をいたしましたところ、いわゆる従軍慰安婦関連の資料に該当するということが判明をいたしましたことから、内閣官房に提出をしたところでございます。

○塩川委員 一般の方、研究者の指摘で職員が確認をしたところ、該当する文書だったということで報告をしたということであります。研究者が発見をしましたこの営外施設規定を、その関係者と我が党の赤嶺政賢議員が指摘をしたことで、昨年五月、政府によって新たにいわゆる従軍慰安婦に関連する資料として確認されることとなりました。
 昨年、このように指摘を受けて、十数年ぶりに内閣官房に資料の報告が行われた以外は、政府の関係資料の収集の努力はとまっておりました。しかし、実際には、この間に多くの関係者からの指摘もあり、日本軍慰安婦関連の資料の発掘が行われております。
 例えば、二〇〇七年の四月に、林博史関東学院大学教授は、記者会見で、慰安婦の強制を示す文書として、東京裁判で証拠として採用された文書の幾つかを公表しました。
 その一つであります、インドネシア・ボルネオ島、カリマンタン、ポンチアナック、「日本海軍占領期間中蘭領東印度西部ボルネオに於ける強制売淫行為に関する報告」という文書があります。
 この文書の中においては、一九四三年の前半に、ポンチアナック海軍守備隊司令海軍少佐ウエスギ・ケイメイは、日本人はインドネシアあるいは中国の婦人と親密なる関係を結ぶべからずという命令を発しました。当時、全ての欧州婦人と事実上全てのインド系ヨーロッパ婦人は抑留されていました。彼は、同時に、公立性慰安所、オフィシャルな慰安所を設立するよう命令を出しました。これらの性慰安所は、二種に分類することになっていました。すなわち、三カ所は海軍職員専用、五、六カ所は一般人用で、その中の一カ所は海軍民政部の高等官用に充てられました。
 このように記され、さらに、その後のページにおいて、日本人と以前から関係のあった婦人たちは、鉄条網の張りめぐらされたこれらの性慰安所に強制収容されました。海軍特別警察がそれらの性慰安所に慰安婦を絶えず補充するように命令を受けていました。婦人たちは性慰安所からあえて逃げ出そうとはいたしませんでした。というのは、彼女らの家族が特警隊、特別警察隊によって直ちに逮捕されてひどくいじめられるからでした。一例として、このようなことのため、当の少女の母親が死んだことがあります。
 これを見れば、日本軍慰安婦関係の資料であることは明らかであります。
 そこで、内閣府にお尋ねいたします。
 国立公文書館はこの文書を保管していると思いますが、いかがですか。

○福井政府参考人 お答えさせていただきます。
 御指摘の資料、「日本海軍占領期間中蘭領東印度西部ボルネオに於ける強制売淫行為に関する報告」につきましては、法務省から平成十一年度に移管を受けましたA級極東国際軍事裁判記録ナンバー五十二の一部として、平成十二年四月から既に公開しているものであると承知しております。

○塩川委員 公開されているように、国立公文書館がこの文書を保管しております。
 そこで、重ねて内閣府にお尋ねをいたしますが、この日本軍慰安婦関係の資料について、さきの平林通知に従って内閣官房に報告、提出をしましたか。

○福井政府参考人 お答えさせていただきます。
 当該文書は、平成八年七月二十四日付の御指摘の内閣官房からの通知、「いわゆる従軍慰安婦問題に関連する資料等について」の依頼がなされた以降に移管された文書でございますので、いわゆる従軍慰安婦に関連をする資料や情報に該当するか否かにつきましては、当時、当該文書を保有する省庁等において、独立行政法人国立公文書館に移管する前に判断するものと考えております。

○塩川委員 それでは、法務省にお尋ねしますけれども、法務省は、この平林通知に従って、先ほど紹介をしました文書について内閣官房に報告し、提出する、そういう作業を行ったんでしょうか。

○萩本政府参考人 委員御指摘の文書が法務省から移管された文書かどうかにつきまして、実は、法務省には現時点でそれに関する記録は残っておりませんのではっきりしませんが、国立公文書館の記録のとおり法務省から移管された文書であったとしましても、現在の法務省の所掌事務に照らしまして、法務省として、再調査をするなどして何らかの判断をするですとか、内閣官房に報告、提出するですとか、そうした立場にはないと考えております。

○塩川委員 先ほど、内閣府の説明では、もともと、国立公文書館に移管される前に持っていた移管元の法務省が判断するものとしているのに、法務省の方は、もう既にその文書はありません、判断する立場にありませんということで、結果としては、宙ぶらりんになっているわけですよね。
 内閣府の答弁そのものも、実際に、今言ったことは言っているけれども、今述べたように、移管元が判断しなかった場合、つまり、法務省が判断しないまま国立公文書館に移管された場合についてどうするということは言っていないわけですよね。
 ですから、その点、有村大臣にお尋ねしますけれども、今のように、こういう状況というのは内閣府の答弁にもない事態になっているわけで、そういったときにしっかりとした文書を内閣官房に報告、提出するということが必要だと思います。
 もちろん、移管以前に法務省が判断すべきものだった、このことは当然言うべきことですけれども、これだけ明白な関係資料の報告、提出を怠った法務省の責任は極めて重大だと指摘をしつつも、しかし、現実には、移管前に内閣官房に報告、提出されずに国立公文書館に移管されてしまったわけですから、移管されてしまった以上は、平林通知に従って、国立公文書館が内閣官房に報告、提出するというのは当然ではありませんか。国立公文書館の担当大臣としてお答えください。

○有村国務大臣 お答えいたします。
 時系列も大きなポイントになろうかと思っております。
 内閣官房から、いわゆる従軍慰安婦問題に関連する資料等についての通知が発出された平成八年当時、塩川委員御指摘のA級極東国際軍事裁判記録を保存していたのは法務省です。その際、法務省から内閣官房に対しての報告はなされず、その後、平成十一年度に記録が国立公文書館に移管されたものと私自身承知をいたしております。
 先ほど政府参考人が答弁されたように、内閣官房から通知が発出された後に国立公文書館に移管された文書が内閣官房へ報告すべき資料等に該当するか否かについては、そもそも、当該文書を保有する省庁等において国立公文書館へ移管する前に判断されるべきものと考えております。
 なお、委員御指摘の文書は、国立公文書館において既に公開され、デジタルアーカイブであらゆる人がアクセスを持てるような状況にございます。

○塩川委員 先ほどの内閣府の答弁をなぞるだけでありまして、やはり政府として、この問題について、宙ぶらりんになっているわけですから、しっかりとした対応が必要であるわけです。
 内閣官房に聞きますけれども、今のように、移管元が判断しなかった場合に、国立公文書館が受け取っていますというときに、日本軍慰安婦に関連するような資料があった場合には、これはどう対応するんですか。

○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げているとおり、資料を保管する関係省庁等において、これに該当する文書であるかということを判断いただいて、適切に対応いただくというふうに考えております。

○塩川委員 ですから、資料を保管しているのは国立公文書館なんですよ。その国立公文書館において、関係者、研究者の方からそういう文書があるという指摘があったわけです。
 先ほどの防衛省の例でいえば、防衛省に対して、研究者の方から、そういう文書があるんじゃないのかということの指摘があり、それを防衛省が確認をし、結果として、内閣官房に報告、連絡をするというふうになっているわけですから、保管をしている国立公文書館そのものが判断すればいいことなんじゃないですか。有村大臣、いかがですか。

○有村国務大臣 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、当該文書を保有する省庁においてそもそもその記録なり資料が判断されるべきだと思っております。

○塩川委員 いや、答えていませんよ。
 だから、移管元が判断しないまま、今、国立公文書館に来ているんですよ。だから、保管をしている国立公文書館が判断をすればいいんじゃないですかと聞いているんですけれども、もう一回。

○有村国務大臣 そもそもここに疑義があれば、その依頼、通知を出された内閣官房において調整されるべきものでありまして、そこが調整をしていないということでございますから、我が方は現状でよろしいという認識をしているということでございます。

○塩川委員 いや、内閣官房の方は、保管をしている機関で判断をするということを言っているんですけれども、それが筋なんじゃないですか。

○佐々木政府参考人 基本的には、先ほど来申し上げておりますとおり、資料を保有していた、あるいは保有しておられる省庁でこれに該当するかということを判断いただいて、内閣官房としては公開のための手続をとるためにこれを受け取る、そういう立場でございますけれども、委員御指摘の資料については、既に公開をされているものでございますけれども、御質問がございますので、資料の取り扱いにつきまして調整をしたいというふうに思います。

○塩川委員 しっかり調整の上、平林通知に基づいて内閣官房に報告、提出をするという手続にのっとった対応ということを求めておくものです。
 この日本軍慰安婦問題については、関係省庁で資料収集が行われました。その一つとして、もともと国立公文書館もあるんですよ。国立公文書館が保有をしている文書についても内閣官房に提出されているんです。だから、平林通知というのは、かつて実際にそういう文書を提出した官庁に対してこの平林通知を出しているわけなんです。
 ですから、国立公文書館そのものがもともと、保有する文書を提出してくださいねと言われる該当の省庁になっているわけですから、その立場で当たっていただきたい、このことを改めて申し上げておくものであります。この内閣官房における資料の収集について、引き続きしっかりとした対応をとることを求めておくものであります。
 それでは、残りの時間で、秘密保護法についてお尋ねをいたします。
 最初に上川大臣にお尋ねいたしますが、この特定秘密保護法について、政府は、秘密の恣意的な指定を防止する、適正な運用を確保するという重層的な仕組みをつくったと説明をしてまいりました。個々の秘密のチェック機関として設置をされたのが、内閣官房の内閣保全監視委員会と内閣府の独立公文書管理監であります。
 確認しますが、この内閣保全監視委員会及び独立公文書管理監、この上に立つのは、いわば指揮監督権者になっているのは内閣総理大臣その人になると思うんですが、いかがですか。

○上川国務大臣 ただいま御質問をいただきました適正な運用を確保するための仕組みということでございます。
 御指摘いただきました特定秘密保護法運用の適正確保を図るための事務を公正かつ能率的に遂行するため、内閣に内閣保全監視委員会、これを設置したところでございます。運用基準にのっとりまして、各行政機関の運用状況をチェックするということでございます。
 また同時に、この適正な運用の確保という観点から、先ほど御指摘いただきましたが、内閣府におきまして、特定秘密の指定等の検証と監察を行う組織といたしまして、独立公文書管理監、そして情報保全監察室ということで設置をされたところでございます。
 内閣保全監視委員会、そしてさらに独立公文書管理監、それぞれの立場で機能するということによりまして、適正な運用を重層的に果たすという仕組みになっております。内閣総理大臣のもとでのその二つの組織をしっかりと運用し、適正な、重層的なチェックをしていく体制ということでございます。

○塩川委員 内閣総理大臣のもとに内閣保全監視委員会もありますし、独立公文書管理監もあるということであります。
 一方で、内閣総理大臣は、内閣府の長であり、内閣官房の主任大臣でもあります。もちろん、安全保障会議の議長としてみずから秘密指定にかかわるのが内閣総理大臣であります。
 そうしますと、その秘密指定が適切かどうかのチェックを指揮監督するのも総理大臣ということになります。ですから、秘密保護法の適正な運用を確保する仕組みというのは、総理大臣が秘密指定したものについては、それが恣意的なものかどうかチェックするというのは総理大臣自身というのが組織上の仕組みになっているということですよね。

○上川国務大臣 ただいま内閣総理大臣との関係ということで御指摘がございましたけれども、そもそも、この特定秘密の指定等の検証、監察を行う独立公文書管理監でございますが、四党合意を踏まえまして、法の施行責任を負う内閣官房から組織上並列の機関として分離されている内閣府に設置するものであることに加えまして、多くの特定秘密を指定することが見込まれます例えば防衛省でありますとか外務省と分離されております。
 そして、指定を行う立場とチェックをする立場というのを、これを全て内閣総理大臣が兼ねているというような御指摘は当たらないというふうに考えております。

○塩川委員 外務省や防衛省も含めて内閣のもとにあるわけですから、それを総理する総理大臣のもとにもあるわけですけれども。
 直接関与するという点でいっても、内閣官房のもとに内閣保全監視委員会がありますが、内閣総理大臣のもとに内閣保全監視委員会がありますが、内閣官房の主任大臣というのが内閣総理大臣であるわけですよね。あわせて、別に内閣府に独立公文書管理監を置いたと言いますけれども、内閣府の長は内閣総理大臣であるわけです。ですから、結局は自己チェックの仕組みということになるわけであります。
 そこで、外務大臣の委嘱により発足し、二〇一〇年三月に取りまとめが行われた、いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会報告書に掲載されている事例を紹介したいと思います。
 外務省にお尋ねをいたしますが、ここで取り上げる密約問題というのは、一九六〇年一月の安保条約改定時の核持ち込みに関する密約問題のことであります。
 一九八七年四月の衆議院予算委員会で、中曽根康弘総理大臣は、「安保条約及びその関連取り決めである岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解というものは厳然と存在し、それ以外の秘密協定というものはありません。」と答弁をしております。しかし、実際には討議の記録というのが存在をしていたわけであります。
 外務省にお尋ねしますが、この有識者委員会の報告書においては、この点について、「何より問題は、歴代の政府答弁が安保条約の事前協議に関して日米間には「交換公文」と「藤山・マッカーサー口頭了解」しかない、と事実に反する明白な嘘をつき続けたことである。」と指摘をし、その具体例としてさきの中曽根答弁を引用していると思いますが、そのとおりでよろしいですか。

○冨田政府参考人 お答えをいたします。
 先生御指摘の有識者委員会の報告でございますけれども、これは、外務省が行いましたいわゆる「密約」問題に関する報告書の内容を検証するとともに、米側の資料、それから関係者の聞き取りを含む調査に基づいて、当時の時代背景を踏まえた歴史的評価を加えたものというふうに承知をしてございます。
 そういう意味で、報告書そのものにも書いてございますけれども、決定的な証拠がなくとも歴史研究者として推定できることについて踏み込んだ判断が行われているというふうにされているところでございます。
 そういう前提で、お尋ねの討議の記録に関連いたしましては、今先生が御紹介になったような記述があるところでございます。

○塩川委員 歴史研究者として、有識者委員会の報告書においては、総理大臣が存在する文書を存在しないと明白なうそをついていた、このことを指摘していたわけであります。
 そこで上川大臣にお尋ねしますが、このように総理大臣がうそをついていた場合に、その総理に指揮監督される内閣保全監視委員会も独立公文書管理監も、総理の指定に関してチェックできないんじゃないですか。総理のうそというのはチェックできるんですか。

○上川国務大臣 先ほどの御質問に対してもお答えいたしましたところでございますけれども、特定秘密の指定が適正に行われるようにということで、特定秘密保護法におきまして明確なルールを設けているというところでございます。
 また同時に、運用の適正性の確保ということで政令やまた運用基準等を極めて詳細に定め、あるいは、仕組みということについて多層的な取り組みで適正に行われるように配慮しているところでございます。
 この特定秘密保護法に限った話ではございませんが、制度論ということで、この法律の施行にかかわる公務員が国会の定めた法律あるいは閣議の決定に従うこと、これがおよそ期待されないことを前提とするということは、これは適当ではないというふうに考えております。
 あくまで、法律や施行令、また運用基準にのっとってしっかりと対応していくということを前提とした形で、この仕組みが二重三重にされているということでございますので、このことがしっかりと運用できるようにしていくということ、これによって結果が出てくるのではないかというふうに思っております。

○塩川委員 質問に答えていないんですけれども。
 要は、今、上川大臣が説明されたように、法律とか閣議決定に従うことがおよそ期待されない、そういう公務員のもとでの制度のよしあしというのは論ずるのは適当ではないという趣旨のお話というのは、そもそも、でも、法律の趣旨に反するような、大体うそをつくわけですから、成り立たないわけですよ。
 ですから、秘密を指定する立場に立つ総理大臣が過去、明白なうそをついていたという事実があるわけで、このように、総理大臣が明白なうそをつくなど悪意を持って運用されたら、そもそもチェックができないんじゃないですかということを聞いているんですが、改めてどうですか。

○上川国務大臣 ただいま申し上げましたけれども、適切なチェック機関をしっかりと持って、またルールにのっとって適正に評価をしていくという、このPDCAをしっかり回していくということが非常に大事ではないかというふうに思います。
 そもそも私も、そして今いらっしゃる有村大臣につきましても、総理大臣の任命のもとにおかれまして、今のようなルールにのっとって適正に動けということでございまして、職務に忠実にこのことを、法律にのっとって対応していくということの使命の中でしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○塩川委員 ですから、その大もとの総理大臣がうそをついていたら成り立たないんじゃないですかということを聞いているわけであります。
 もう一つ外交文書を取り上げたいんですが、外務省にお尋ねをいたします。
 政府は、一月十五日に、中曽根元首相が防衛庁長官として訪米した一九七〇年九月の米国防長官との会談記録を公開しました。この会談記録を見ると、中曽根防衛庁長官は、国防の基本方針というのがあるわけですけれども、この国防の基本方針に関して、個人的な考え方であるが、世界の誤解を防ぎ国内のコンセンサスを維持するために核兵器は持たないと書いた方がよい、ただし米国の核兵器の導入については留保しておいた方がよいと思うと述べている。
 このように述べたという記録があるということは、そのとおりですね。

○冨田政府参考人 お答えをいたします。
 先生御指摘の会談の記録は、本年一月十五日に公開いたしました外交記録公開で公開された文書だというふうに受けとめております。その中で、確かに先生御指摘のような記述があるとおりでございます。

○塩川委員 一九七〇年、この会談記録の当時ですけれども、非核三原則が国是として確立をしておりました。このように、米国の核兵器の導入については留保しておいた方がよい、つまり、日本への米国の核持ち込みを容認するどころか、みずから求めている、そういう趣旨の発言となっているという点でも極めて許されないものであります。
 重大なのは、中曽根氏が、総理大臣時代の一九八二年十二月の衆議院本会議で、我が党の不破哲三委員長の追及に対し、「私が核兵器の導入を認めるような発言をしたことは全くありません。」と、ここでも虚偽の答弁をしているということであります。
 重ねて上川大臣にお尋ねしますけれども、このように、秘密の内容が明らかにされないということを盾にして総理大臣がうそをついた場合に、そもそもチェックのしようがないんじゃないのか、このことが過去のこういった具体的な事実に照らして言えると思うんですが、上川大臣はどのようにお考えですか。

○上川国務大臣 今回の特定秘密保護法をまさに成立させ、そして適正にその運用を図っていくこと自体、仮に今御指摘のようなことがあったとするならば、そういうことがないように、情報の機密をしっかりと守り、また適切に運用していくという形の中で取り組んでいく。これは将来に向けてそのような方向性で持っていくべきではないかというふうに思います。

○塩川委員 トップに立つ総理大臣自身がうそをついた場合にはそもそも成り立たないということこそ問われているわけで、そもそもうそをつくような政治そのものが許されないということであるわけで、このように、総理がうそをついて運用する場合に秘密指定のチェックができない秘密保護法の廃止を改めて要求し、廃案のための世論と運動を広げるために全力を挙げることを述べて、質問を終わります。