国会質問

<第189通常国会 2015年05月08日 内閣委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 個人情報保護法、番号法についての質問をいたします。
 最初に、個人情報保護法の個人識別符号について、具体例で確認をしたいと思います。
 最初に、向井政府参考人に、先ほど平井委員が具体例でお尋ねをしておりました個人識別符号の件、それについて確認でお答えいただければと思うんですが。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 まず、単に機器に付番されるような例えば携帯電話の通信端末ID、これは個人識別符号には該当しない。
 一方で、マイナンバー、運転免許証番号、旅券番号、基礎年金番号等につきましては、個人識別符号に該当するものと考えてございます。
 また、携帯電話番号、クレジットカード番号、メールアドレスあるいはサービス提供のための会員IDについては、さまざまな契約形態や運用実態があることから、現時点においては、一概に個人識別符号に該当するとは言えないと考えております。
 ただし、こういうようなものは、時代の流れや技術の進歩、あるいは諸外国の情勢等によりまして変わっていくものでございますので、今後、政令の制定、運用に当たりましては、諸外国における取り扱いや技術動向も注視しつつ、社会実態を反映し、該当性が明確となるよう努めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 大臣にお尋ねします。
 今お答えがありましたように、個人識別符号ということでも、具体例でお聞きしますと、該当する場合もあるし該当しない場合もあるし、現時点では一概に該当するとは言えないという整理でございました。
 こういうように扱いが違う理由は何なのか。本会議の答弁で山口大臣も、この個人識別符号に関して基本的な考え方について示すというふうにお答えをされておられます。その基本的な考え方についてお示しいただけるでしょうか。

○山口国務大臣 今回の法案におきましては、現行法において保護対象に含まれるというふうなことが考えられるもの、情報単体から特定の個人を識別することができるものを個人識別符号として明確化して政令で定めるというふうなことにしております。
 御質問の、個人識別符号、これに該当するものを政令で定める際の基準につきましてですが、今後、民間企業とか消費者の意見等を踏まえながら検討していくというふうなことになりますが、現時点におきましては、情報単体から特定の個人を識別することができるか否かの判断を行う際の基準として、例えば一つには情報が一意であるか等、これは個人と情報の結びつきの程度ですね、さらには情報の内容の変更が頻繁に行われないか等、これは情報の不変性の程度、さらには情報に基づいて直接個人にアプローチをすることができるか等、これは本人の到達性。
 ですから、先ほど御質問がございました携帯電話番号にしても、これは電話をすると本人に到達をするというふうなことはありますが、例えば不変性とか情報との結びつき、これはプリペイドにしても法人契約にしても若干また違うニュアンスがあるというふうなことで、いろいろしっかりと議論をして決めさせていただきたいと考えておるところでございます。

○塩川委員 一意性や、不変性の程度や、本人への到達性、密接性の点と、何点か示されましたけれども、それが示されたのがある意味で国会におきましては今の場面が最初ということでもありますよね。今後、この中身についての議論をさらに深めていくことになると思います。
 その点で、携帯電話番号の話も先ほど他の同僚委員からも質問がありました。昨年の十二月十九日のパーソナルデータの利活用に関する制度改正に係る法律案の骨子案においても、携帯電話番号についても個人識別符号の例として紹介をされていたところであります。
 今回、十二月十九日の骨子案から、実際、法文化をされて国会に提出されたわけですけれども、この法案の第二条第二項第二号で見ますと、骨子案で書かれている規定に加えて、特定の個人を識別できるものという部分が追加をされているわけですね。
 そういう点では、骨子案では携帯電話番号は含まれているが、法案の段階では個人識別符号に当たると現時点では一概に言えないと変更されているわけですけれども、この間に何があったのかというのをお聞きしたいんです。

○山口国務大臣 別にとりたてて、いろいろな議論があったわけでありますが、先ほども若干申し上げましたように、携帯電話番号、これは直接その番号を利用する人間にアプローチできますね、電話をすると直接出てくる。これは確かにそういった、いわゆる本人到達性が非常に高いというふうなものでありますが、同時に、さまざまな契約形態、プリペイドだったり法人契約であったり、これは個人を特定することができません。あるいは、運用実態もございます。
 そうしたことがありますので、現時点において一概に個人識別符号に該当するとは言えないだろうというふうなことで、さらに専門家等のしっかりした御議論、あるいは、これからのさまざまな社会あるいは技術の進展等も踏まえていく必要があるのではないかというふうなことで、今後、政令の制定とか運用に当たりましては、これは諸外国における取り扱いもございます、先ほど申し上げました技術動向、これも注視をしながら、社会実態等をしっかり反映して、該当性が明確になるようにしなきゃならぬと思っておりますので、そういったことで努めてまいりたいと思っております。

○塩川委員 専門家、それこそ技術的な専門家の方も含めて、この間ずっと議論されてきたのが昨年十二月の骨子案として出されてきた。その後、こういう形で法文の段階でこう変わってくるという点についても、そもそも、個人情報の明確化という観点で、この携帯電話番号については、過去一年間の議論でも、例示もされてきたわけですね。ですから、それが骨子案にはありながら今回落ちているというところについて、なぜそうなのかというのは、率直に、腑に落ちない部分があるわけですけれども、そこはいかがですか。

○山口国務大臣 そこは、先ほども申し上げましたように、一つには、やはり技術動向等もありますし、あるいは、利用形態等も、その後さまざまな利用形態等が出てきております。あるいはまた、いろいろな議論の中で、確かに電話をしますと個人が出るわけですが、同時に、法人とかプリペイドもありますし、さらには携帯電話番号をちょいちょい変える方もおいでになる等々、さまざまな状況をもっと勘案しながらしっかりとしたものをつくっていく必要があるんだろうということで、そういったことを申し上げておるわけでございます。

○塩川委員 実際には、携帯電話番号というのは、多くの方にしてみれば一番身近な端末ということでもありますし、そういう点で、だからこそ、個人情報の明確化の中において携帯電話番号というのが例示がずっとあったわけですよね。
 それが、こういう形で、今回、必ずしも該当するとは一概に言えないということになった背景とすれば、やはり、経済界からの要望があった。例えば、十二月十九日、昨年の骨子案の議論の際に、経団連から、この利活用促進策への意見ということで、携帯電話番号については例示から外していただきたい、こういう要望もあったことが今回の法文に反映をされているということではありませんか。

○山口国務大臣 基本的には、さまざまな御議論を踏まえて、さらに検討を加えておる。
 さっき申し上げましたような、状況の変化というか、技術とか利用とか、やはりいろいろ出てきています。例えばLINEなんかもそうなんだろうと思うんですが、やはり実態に合わせた判断をしないとだめだろうということで、先ほど来申し上げましたようなことでございます。

○塩川委員 利活用の方向へ基準が動いているようにとられかねない、個人情報の保護が損なわれることへの懸念というのが生まれかねないということを指摘しておくものです。
 次に、番号法の改正についてお尋ねします。
 今回の番号法の改正案では、預貯金口座、特定健診情報、予防接種履歴に関して、マイナンバーの利用範囲を拡大しようというものであります。
 医療分野における利用範囲の拡充の一つである特定健康診査情報の管理等におけるマイナンバーの利用についてきょうはお尋ねしようと思いますが、最初に、厚生労働省にお尋ねします。
 特定健診の検査項目というのはどういうものがあるんでしょうか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の特定健康診査、糖尿病等の生活習慣病予防を目的として、四十歳以上七十五歳未満の方を対象として、医療保険者によって行われているものでございます。
 その特定健康診査では、保健指導の対象となる生活習慣病のリスクの高い方を判定するという観点から健診項目を設定しておりまして、具体的には、特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準、厚生労働大臣告示において、腹囲、身長、体重等の身体計測、血圧測定、血糖や脂質などの血液検査、尿検査、喫煙歴等を把握するための質問票などが定められているところでございます。

○塩川委員 その他一定の基準のもとで医師が必要と認めたものということで、心電図ですとか眼底検査、貧血検査なども含まれる。医療に係る情報そのものであります。
 医療分野については、マイナンバーとは異なる医療分野でのみ使える番号や、安全で分散的な情報連携基盤を設ける検討を行っていると聞いております。厚労省でもそのような検討もしているわけですけれども、医療分野でこのような検討を行っている理由は何なのかについて御説明いただけますか。

○安藤政府参考人 お答え申し上げます。
 二年前に厚労省でそういう検討会を行ってございます。その後、昨年の五月から、医療等分野におきます番号制度のあり方に関しまして新たに研究会を開催して、この問題につきまして検討しているというような状況にございます。
 もちろん、御指摘がございましたとおり、非常に機微性が高い情報であるというようなことで、御案内のとおり、大綱等におきましても指摘がなされているということでございます。
 その後の五月の検討におきましては、マイナンバー制度の具体的な制度設計等を踏まえつつ、医療等分野における番号の必要性や具体的な利用場面につきまして、医療関係者、保険者、有識者等で検討を行ったということでございます。
 この研究会の中間まとめが昨年の十二月に行われてございますが、この中間取りまとめを踏まえまして、今般の法案で措置をしたいと考えているものでございます。
 保険者におけるマイナンバーを活用した健診情報の管理に関しましては、保健事業は保険者が行うものとして定められております行政事務であるということであり、マイナンバーを活用することによって正確性の確保や事務の効率化に資するものであるという観点で、マイナンバー法の趣旨に合致するだろうというふうに考えているものでございます。

○塩川委員 保険者の話はこの後でも聞きますけれども。
 要するに、機微性が高い情報を含むので、所得情報などと容易にひもづけされない安全かつ効率的な仕組みが必要だ、これが立場だと思うんですが、そのとおりでよろしいですね。

○安藤政府参考人 今回の法改正に関しましては、機微性云々というよりも、マイナンバー制度の趣旨に合致するかどうかという観点で検討が行われたということでございます。
 もちろん、今回、行政事務が対象でございますけれども、関係者や情報内容が多岐にわたる医療機関同士の情報連携や、研究会に関しましては、今後、引き続き検討を行っていきたいと考えてございます。

○塩川委員 二〇一二年九月の検討合同会議においては、今述べたような、機微性が高い情報を含むので、所得情報などと容易にひもづけされない安全かつ効率的な仕組みが必要であると指摘をし、その部分について、番号制度活用の研究会においてもその旨引用されているということでいいですね。

○安藤政府参考人 昨年十二月の中間取りまとめにおきましても、二年前の厚労省の研究会での報告を一部引用する形になってございます。
 ただし、その後のマイナンバー制度の具体的な制度設計を踏まえて、新たにきちっと議論をしたということでございます。

○塩川委員 否定されておりませんので、そういうことが指摘をされていたということであるわけです。
 マイナンバーは、まさに一人一人の所得情報にひもづけされております。特定健診のデータにマイナンバーを付番した場合に、所得情報などと容易にひもづけされるということは明らかという点でも、この間、制度改正がないにもかかわらず、二年前の法制定時には入れられなかった特定健診のデータを今回は加えているわけです。
 今、検討してきた、マイナンバーに合致するかどうか云々と言いましたけれども、行政事務が云々というところでは全く理解できないんですけれども、どういうふうに説明されているんですか。

○安藤政府参考人 御案内のとおり、現行のマイナンバー法におきましても、保険者に関しましては、例えば、保険給付あるいは保険料の徴収という事務に関しまして、マイナンバー法の利用事務実施者というふうに位置づけがなされてございます。
 同様に、保健事業も保険者の行政事務であるということで、マイナンバー法の趣旨でございます正確性あるいは効率性という観点で十分に効果が発揮できるであろう、マイナンバー法の趣旨にも合致するであろうという判断でございます。

○塩川委員 いや、もともと医療情報を分けて考えましょうねという整理だったんですよね。今お話しされているのは、保険者の方が行政機関等に当たるということで説明されているわけですけれども、保険料の給付ですとか徴収ですとか、それに関連する事務ですよ。つまり、金目の話なんでしょう。金目の話についてはマイナンバーでひもづけしましょうかという整理だったんじゃありませんか。
 でも、今回は、医療に係る情報、特定健診情報などもマイナンバーで、その範囲に広げて入れていくというのは、そもそもの整理の仕方と違うんじゃないですか。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 現行のマイナンバー法では、医療保険につきましては、医療保険の給付に関する事務のうち主務省令で定めるもの、それから医療保険の保険料の徴収に関する事務のうちの主務省令で定めるものというふうに規定されておりますので、したがいまして、金目のものかどうかではなくて、医療保険の給付に当たるかどうかで、当たると。
 ただし、健診事業は、医療保険給付ではなくて、ホケンはホケンでもヘルスの方の保健事業になります。これは実際の診療行為とはまた異なるものでございますが、ヘルスという位置づけ、保健事業の、ヘルスとしての位置づけになっている。それが入っていなかったということでございますので、今回入れていただきたいと。
 ただ、マイナンバー制度自体の情報のひもづけは厳格に法律でポジティブリストで書かれておりますので、法律で書かれていないひもづけはできない仕組みとなっておりますので、仮に今回提案しておりますヘルスのメタボ健診等がマイナンバーがついたとしても、これは所得情報等とひもづけることは法律で明確に禁止されております。

○塩川委員 番号法が利用する個人情報の範囲というのはもともと税、社会保障、災害対策の三分野とされてきて、その社会保障に関しても、今の説明ですと、基本は現金情報ですよ。給付ですとか徴収ですとか、それに関連する業務であって、医療情報をそもそも社会保障の中でも分けて、これについては独自に必要な法整備をしましょうね、機微情報を含む医療情報についてはしっかりとしたたてつけにしましょうねというのがそもそもの整理だったんじゃないですか。それが何となく、ヘルスだからという、新しい枠組みに乗っけるような形で、これは医療情報じゃないという整理ということですか。
 その辺が非常に不透明ですし、そういう点でも、医療情報については利用内容や個人情報保護措置などの検討を行うとしていたのに、そのような検討もされないまま拡大するようなこういうやり方というのはおかしいと思うんですけれども、今お聞きしようと思ったことを含めて。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 先ほどの平井先生の質問にもありましたように、医療保険の給付に関する事務であるならば、やるかやらないかは別にいたしまして、例えばレセプト情報にマイナンバーをつけることも可能でございます。現行法上、既に可能になっております。これを現金情報と考えるのか何と考えるのかというのは、考え方はいろいろ分かれるのではないかというふうに思います。

○塩川委員 非常に不鮮明でありますので、引き続き議論したいと思います。
 終わります。