国会質問

<第189通常国会 2015年05月20日 内閣委員会 7号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 マイナンバー法、個人情報保護法の質問をいたします。
 前回もお尋ねしたんですけれども、マイナンバーの利用範囲の拡大の問題について、医療分野についてお尋ねをいたします。
 今回のマイナンバー法の改正は、医療等分野における利用範囲の拡大を図るものが一つとなっております。健康保険組合等が行う被保険者の特定健康診査情報の管理等にマイナンバーの利用を可能とするものであります。
 そこで、これは大臣ですか、どういうふうに変わるのかということです。
 政府は、被保険者が転居や就職、退職により保険者を異動した場合でも、マイナンバーを活用して、特定健診、保健指導の情報を保険者間で円滑に引き継ぐことにより、過去の健診情報等の管理を効率的に行うことが可能となり、効果的な保健事業を推進できると説明していますが、これまでと今後とどういうふうに変わるんでしょうか。

○吉田政府参考人 事実関係でございますので、私どもの方から御報告いたします。
 現在、保険者間の特定健診のデータのやりとりにつきましては、高齢者の医療の確保に関する法律に基づきまして、まず、保険者が、保健指導等の実施のために、本人の異動前の保険者に情報の写しの提供を求めることができ、求められた保険者は、本人の同意を得た上で写しを提供しなければならないと、法律上整理がございます。
 運用に当たりましては、この仕組みができました平成二十年度から、その導入当初に厚生労働省から保険者に対して手引を示しておりまして、御本人の同意を得た上で、例えば光ディスクなどを送付するという形で、安全確保措置をした上で、それぞれ提供をさせていただいているというのが実態でございます。
 ただ、この場合におきまして、従来、必ずしもその具体的な手順が明確になっていないというのにあわせまして、保険者が保険者ごとの被保険者番号で管理をしていたということから、検索に手間がかかるなどの問題がございましたので、今回、マイナンバーというインフラを活用いたしまして、保険者の行政事務として活用させていただくということを提案申し上げているというところでございます。

○塩川委員 この特定健診データの保険者間のやりとりということですけれども、手引があって、光ディスクなどを活用するということなんですが、つまり、これまではどんなふうに被保険者の方が異動された場合に保険者間でこの作業を行っていたんですか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 今御質問いただきましたように、また先ほど御答弁申し上げましたように、異動前と異動後の保険者間、保険者が相対でそれぞれ求めをし、それに対して応えるということで、もちろん、御本人の同意を得るという手続は踏んでおりますが、相対でやりとりをしているというのが基本であろうかと思います。

○塩川委員 いや、お尋ねしているのは、特定健診のデータそのものをどういうふうに渡しているんですかという実務的なところなんですけれども。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 この具体的な手引に基づきまして、先ほど申しましたような、当該記録の写しなどを電磁的方法などにより作成された記録を、光ディスクなどを送付するという形で行っているというところでございます。

○塩川委員 送付というのは、メール送信とかということではなくて、郵便とか手便とか、そういうものということですか。

○吉田政府参考人 全てのケースというわけではございませんけれども、私どもで承知をしている限りでは、基本的には、郵便、書留のような形で、物理的に郵送させていただいているというふうに承知をしております。

○塩川委員 ですから、現行、その保険者間のやりとりは簡易書留で郵送していますということですね。
 今回の、マイナンバーにひもづけをする、利用拡大をするということでは、それは変わるんですか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 保険者と保険者の間の動きにつきましては、基本的に変わらないものを私ども想定してございます。

○塩川委員 だから、実際には、サーバーなんかには入れないわけでしょうから、そういう点では、物理的な手間というのは変わらないんだと思うんですよ。検索云々の話はありますけれども、それは一部の話であります。
 ですから、そういうことを考えると、大臣にお尋ねしますけれども、この法案でも、情報連携の対象事務を列挙した別表の二、情報連携の別表の二の方には保健事業は入っていないということでもありますし、特定健診データの情報連携はしない、データのやりとりそのものはしないということですから、保険者の事務の効率化にほとんどならないんじゃないかなと率直に思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○山口国務大臣 その情報の管理の仕方、保存の仕方等も、それぞれいろいろあったんだろうと思います。
 そういった中で、先ほど来、若干答弁もありましたが、保健事業というのは、医療保険者が法律に基づいて行う行政事務であるということが一つと、今御指摘がございましたけれども、医療保険者の事務の効率化にも資する。そして、これは結構大事なことなんだろうと思いますが、特定個人情報の保護につきましては、法律によって厳格な規制が設けられているというふうなことから、関係者の御理解を得て法案に盛り込んだというふうなものでございます。
 一方、医療機関間の情報連携等に利用する番号のあり方、これにつきましては、厚生労働省において現在さまざまな検討が行われておる。これはこれで、その動向を注視していきたいと思っております。

○塩川委員 事務の効率化に資するといっても、今言ったように、実際の実務そのものは郵便でやっているようなことですから、そういう点でも、事務の効率化に資するというところ自身にほとんどメリットを感じられないわけであります。
 特定健診データの連携というのは、実際には利便性はほとんどなくて、ひもづけによる情報流出ですとか、名寄せをされる、そういった危険性が非常に増大をする、個人情報の保護に背くようなことになりはしないのかということを率直に指摘をしておきます。
 それで、大臣の答弁で、保険者が行うのは、番号法、マイナンバー法に基づいて、行政事務だということでひもづけるという話、特定健診データについても利用拡大の範囲に入れていくという話でしたけれども、やはりそこがもう一度問われるところだと思うんです。
 実際に特定健診のデータに含まれているものは何かといえば、これは前回も確認をしましたけれども、身体計測、身長、体重、BMI、腹囲だけではなくて、血圧の測定ですとか血液検査ですとか検尿ですとか、また、一定の基準のもと医師が必要と認めたものということで、心電図ですとか眼底検査とか貧血検査など、医療に係る情報そのものであります。
 厚労省にお尋ねしますが、厚労省の研究会で、医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会が行われております。第一回の会合で、厚労省提出の資料の中に、番号制度のマイナンバーの利用範囲についてというのがあります。
 それを見ますと、社会保障番号制度は、行政機関等を情報連携対象として、社会保障、税、災害対策の各分野で利用することとされていると解説をしています。ただし、社会保障分野については、現金情報と診療情報等を区別している図が示されております。
 その研究会の議事録を見ても、事務局の説明では、今のマイナンバー法は、税と社会保障については、年金とか生活保護など現金情報を主な対象としており、診療情報については別途検討ということだと述べ、マイナンバーとは異なる、医療等分野で使える番号と、安全で分散的な情報連携基盤を設ける必要があると事務局が述べているところであります。
 そこで確認ですけれども、ここで社会保障について、その図に、現金情報と診療情報等と区別して書かれております。それに対応して、社会保障の現金情報についてはマイナンバーでいきます、診療情報等については別個の、別な個別法の対応というふうになっているわけですけれども、その場合の診療情報等の中には、この特定健診のデータというのは含まれているんでしょうか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 今先生御指摘のように、前提として、私ども、医療等分野の番号制度に関する研究会を行いましたときの資料の整理における位置づけということかと思いますけれども、今おっしゃっていただきましたように、社会保障を便宜、現金情報と診療情報等と区分した中では、今御指摘の特定健診データについては、ここで言うところの診療情報等の方に整理できるだろうというふうに考えております。
 ただ、この研究会、今いただきました資料をもとに何回か議論を重ねまして、マイナンバーに限定せず、医療等分野の情報連携に用いる番号のあり方について、医療関係者、保険者、有識者などで検討を行った結果として、マイナンバーの利用事務について再度整理を行い、今回提案させていただいておりますように、特定健診情報についてのマイナンバーという形にはつくらせていただきました。
 また、先ほど、重ねての御指摘で、今回位置づけることにより保険者の事務の効率化について何があるのかについて、幾つかの御指摘をいただきました。
 先ほど私の方からも申し上げたかと思いますけれども、受け渡しの場面だけではなくて、保険者が保険者ごとの被保険者番号で特定健診情報を管理している現状から、受け渡す健診情報の検索が容易になるという利点は今回の措置により考えられるというふうに私ども思っております。

○塩川委員 国民の皆さんに名寄せについてのさまざまな懸念がある中で、この件についてはこの後も確認をするわけですけれども、本来、医療情報については別個の仕組みが必要ですよとしてきた、その問題というのが、この研究会での議論も踏まえて今回の法案にも反映している、そこの妥当性の問題を問うているわけであります。
 あわせて、診療情報等にはレセプトデータも含まれているということでよろしいんでしょうか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 私ども、資料を作成しましたときの整理といたしましては、現金情報かあるいは診療情報等かという区分からいえば、診療情報等の方にレセプトについても位置づけられるものと整理できるかなというふうに考えております。

○塩川委員 だから、保険者が行う行政事務だからこれもあれも入れましょうというのがそもそも整理として妥当なのかということを聞いているわけですけれども、診療情報等、医療等分野における情報には特定健診データやレセプトデータが含まれているわけです。
 重ねて厚生労働省にお尋ねをしますが、そうすると、この研究会の議論を経ての結論、アウトプットのところにかかわるわけですけれども、その図で示していた診療情報等については、マイナンバーではなく医療等分野における番号制度を設けるとしていた、それはそもそもどういう理由からだったんですか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 医療情報を一般論として申し上げれば、やはり非常にセンシティブな情報であるということから、このような形で、番号制度との関係、あるいは番号という形での特定化をするに当たっての留意点ということから、問題意識を持って研究会を始めたところでございます。
 重ねてでございますが、今回マイナンバーという形にしたのは、保険者が行政事務ということでございますけれども、この研究会の引き続きの議論の中で、関係者や情報内容が多岐にわたる医療機関同士の情報連携でありますとか研究開発に関しましては、今後さらに検討を進めるということで、私どもとしては、医療情報の性格に基づいた検討を引き続きしなければいけないという点は、問題意識としては持ってございます。

○塩川委員 ですから、マイナンバーを使うのは行政機関等、等の中に保険者が入りますと。その行政事務はマイナンバーへと。しかし、医療機関は別個の仕組みをつくるんだと。
 そうじゃないでしょう。もともと言っているように、医療情報というのはセンシティブ、機微情報、そういう観点から、そもそもきちんとした扱いが必要でしょうというところが議論の出発点だったと思うんです。
 さかのぼって、この昨年まとめた研究会の報告書にも紹介されている「二〇一二年の医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」です。ここでは、
 医療・介護等に関する情報は、個人の健康情報など一般に機微性の高い情報を含むためその保護に特段の配慮が必要であるという側面を有し、また、この分野では関係者の数や種類が多いことなどから、これらの特性を踏まえたシステムとすることが必要である。
  こうしたことから、マイナンバー法は社会保障分野の現金給付の調整や社会保険事務に関する手続等を主に想定し、医療等の分野については、厚生労働省において法制上・技術上の特段の措置を検討し、個人情報保護法又はマイナンバー法の特別法として、二〇一三年の通常国会を目途に提出することとされている。
ということであります。
 ですから、そもそものスタートは、医療等分野、その中にはレセプトデータあるいは特定健診データが含まれている、こういう医療分野については、個人情報保護法またはマイナンバー法の特別法を提出するという扱いだったと思うんですが、違いますか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 今委員御紹介いただきました平成二十四年九月にまとめられた報告書以降、平成二十五年五月にいわゆるマイナンバー法が成立したことなども踏まえて、今回、先ほど御質問の中でいただきました、昨年の十二月、平成二十六年十二月に中間まとめをいたしました医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会という形で現在議論を進めており、その中間段階における整理の中で、再整理ができたものとして今回提案をさせていただいて、まだ残っている課題については、引き続きこの研究会において議論をさせていただかなければいけないという認識でございます。

○塩川委員 特定健診データというのは、これは、ですから、医療情報としてそもそも別個の制度に入れるということを言っているんじゃないのかという話で、それを、この昨年の研究会において、いや、保険者だから、マイナンバーの行政事務の方に入れますというのじゃ説明が足りないでしょう。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 時系列としましては、今委員御指摘いただきましたように、二十四年九月の段階における一つの合同会議としての方針、そして、それを踏まえた上でのマイナンバー法施行後の二十六年十二月にまとめた中間まとめという形で進み、今回の改正案を提案させていただいているところでございますけれども、二十四年九月の段階での合同会議においても、例えば情報連携の基盤をこれから進めるに当たりまして、二重投資を避ける観点から、政府全体の情報連携基盤として構築されるインフラを共有できる部分は共有するという問題意識も述べられておりますので、私どもとしては、先ほど来御指摘いただいておりますように、医療情報としての機微性などについて必要な配慮というものをきちっとさせていただきながら、全体として、それぞれ進めるべきものを進めさせていただくという観点で今進めているところでございます。

○塩川委員 もっとさかのぼれば、二〇一一年の六月、社会保障・税番号大綱があるわけです。その中で、番号制度で何ができるのかといろいろ整理をしているわけですよ。
 それを見ると、その中には、一つの大きな分野として、医療・介護等のサービスの向上に資するものというのを挙げて、その例示として、転居した場合であっても、継続的に健診情報、予防接種履歴が確認できるようにするとあります。ですから、一つの事務として、健診情報、予防接種履歴が確認できるようにするということは挙がっているわけだけれども、これはまだ検討項目として挙がっていたということです。
 ただ、その際にも条件をつけていた、要件をつけていた。それが、社会保障・税番号大綱のその文章の注記についていますけれども、これらの利用場面については、取り扱われる情報の機微性等を踏まえて、法制度等について特別の措置を講じることが前提となるということで、要するに、情報の機微性に応じた特段の措置ということで、番号法とは別に、個人情報保護法または番号法の特別法を整備するとなっている。
 ですから、まさに、情報の機微性に着目をしたときに、この大綱の中では、特定健診データも機微情報、機微性に応じた特段の措置を行う対象となっていて、番号法とは別の法律、特別法の整備が必要だと言っていたんじゃありませんか。

○吉田政府参考人 お答えいたします。
 まず、今回とらせていただきました措置、特定健診についてマイナンバーデータの中での活用を考えさせていただくことにつきましては、改めて申し上げるまでもなく、重ね重ね恐縮ですけれども、特定健診情報に広げることにより、ヘルス事業が行政事務であるということや、あるいは、マイナンバー法の規定により、特定個人情報の保護としてより厳格な規制がかけられるということ、あるいは、特定健診等の情報の利用に当たっての特定個人情報の保護措置あるいはマイナンバー法の罰則、特定個人情報保護委員会の監視、監督の対象になるということも総合的に判断をさせていただいて、今回の整理をさせていただいたということでございます。

○塩川委員 大臣にお尋ねしますけれども、社会保障・税番号大綱で、健診情報、予防接種履歴については、番号法とは別に特別法を整備するとなっていた。それは情報の機微性に着目をして行うんだということを言っているわけです。そこのところは変わりがないはずですよ、特定健診データについても情報の機微性があるということですから。それを、保険者が行っている行政事務というその理屈だけですりかえるというのは、それはそもそも次元の違う話なんじゃないのか、この特別法もないのに。
 我々も、医療情報の特別法をつくれと言っているわけではありません。その問題そのものについても、必要性のあり方の問題についても厳しく問われるわけですけれども、そもそも、皆さんの方が段取りをしてきた仕組みであったにもかかわらず、診療情報に含まれる特定健診データをマイナンバーの利用範囲になし崩し的に入れるようなやり方というのは、私は認められないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○山口国務大臣 先ほど来厚労省の方からも何度か答弁がございましたが、厚生労働省においても、先ほどの研究会等々いろいろなところでしっかり議論をしてきて、結果として、保健事業は保険者が法律に即して行う行政事務であるというふうなこと。あと、効率化云々もあります。
 そして、さらに、特定個人情報の保護については、マイナンバー法のもとによって、より厳格な規制が設けられ、そういった情報の保護は大きく前進するのではないか等々の判断でこういう形になってきたのであろうと思っております。

○塩川委員 当委員会での参考人質疑で、坂本団参考人が、個人番号にひもづけられる個人情報が多ければ多いほど、また、その個人情報の質が高ければ高いほど、個人番号を悪用しようとする者にとってはその利用価値が高くなる、悪意を持って他人の個人番号を入手する者がふえるはずと。このような個人番号の利用範囲の拡大への危惧の声にこそ、耳を傾けるべきであります。
 利用範囲の拡大の話でいいますと、レセプトデータのこともありまして、これは、財政制度審議会の財政制度分科会に財務省主計局が出した資料の中に、「医療の無駄排除、予防の推進等」、この中に「ICTやマイナンバー等を活用してリアルタイムにレセプトデータ等を把握し、重複受診・重複検査・重複投薬を未然に抑制する枠組み」などと、どんどんマイナンバーの利用を想定した動きが始まっている。なし崩し的な利用範囲の拡大が重大な問題となりかねない懸念というのを申し上げておくものであります。
 次に、個人情報保護法の目的、それから個人情報保護委員会の任務についてお尋ねをいたします。
 利活用と保護のバランスということで、当委員会での議論があった点について、大臣にお尋ねをいたします。
 個人情報保護法の一条の目的には、「この法律は、」中略「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」とあります。
 五十一条の個人情報保護委員会の任務のところ、同様の記述があった上で、有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護するため、個人情報の適正な取り扱いの確保を図ることを委員会は任務とするという記述になっております。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、ここで言っています「新たな産業の創出」、この新たな産業というのはどんなことを想定されておられるんでしょうか。

○山口国務大臣 中身については、もう既に塩川先生と御議論をさせていただいた、いわゆる個人情報の有用性の具体例として、新たな産業の創出ということで明示をすることにしたわけで、意味合いが変わってきたわけではないというふうなことであります。
 この新たな産業の創出ですが、いろいろなことが今の時代の中で考え得るんだろうと思います。ビッグデータの利活用もあるでしょう。さらなる分析技術の発達によって、どういうふうな形でそういったビッグデータが分析をされ、パーソナルデータを含めてどういうふうな活用をされていくかとか。あるいはLINEのようなものも、一種そういうものなんだろうと思っております。
 また、先般、Suicaの件で問題になりましたが、あれも、いわゆる今回の法律にのっとってしっかりと処理をすることによって、また新たな展開、また新たな産業にもつながってくるような話になってくるんだろう。そういったことを一応の具体例として、こういうふうな書きぶりをさせていただいておるわけであります。

○塩川委員 私が気になっているのは、ビッグデータを活用したビジネスをやりましょうといった際に、新たな事業の創出という点でいうと、つまり、個々の事業者に着目をして新事業を創出しましょう、新分野に参入しましょうということなのかなと思うんですけれども、新たな産業の創出とあるんですよ、個々の事業者の事業じゃなくて。新しい産業、新産業を起こすんだ、それがどういうものなのかなというのがお聞きしたい点なんです。

○山口国務大臣 産業という言い方はいろいろあるんでしょうけれども、例えば、これから、やはりIoTの時代の中で、さまざまな個人情報も含めて、あるいは個人が類推できるような情報を含めて、いろいろ集まってくるわけですね。それの分析の仕方、利活用の仕方によっては、例えば、自動運転なんてことにもなってくるわけです。
 そういった、大きく化けていく、まさにいろいろな産業も起こるでしょうし、個々の事業者がそういった事業を始めるということもあるんでしょうけれども、そういったことをイメージ、想定しておると思います。

○塩川委員 それも個々の事業者に着目してのお話だと思うんです。それが大きな固まりとなってくると。ですから、一般的なIT産業とかICT産業ということを言っているわけじゃないんですよね、それ自身は現にもうあるわけですから。
 新たな産業、それは何なのかなというのが、まさに目的規定のところですから、もう一度説明いただけませんか。

○山口国務大臣 先ほど申し上げたことに尽きるわけですが、産業というのもいろいろな意味合いがあるんだろうと思います。
 私も今御指摘を受けるまで、この産業という言葉を深く考えておらなかったんですが、ただやはり、例えば自動車産業にもこの関係で大きく変化を与えることがあるでしょうし、あるいはIT産業に関しても大きく変化を与えるという話にもなってくるでしょうし、そういったことを私はイメージしています。

○塩川委員 燃料電池車になれば、今までのエンジンではなくて、実際にはITやあるいは電機産業なんかも一体となるような、そういう意味では新しい展開もあるのかもしれないんですけれども、ただ、個人情報保護法の議論をしているその中で新たな産業の創出と言っている、その産業がどんなものかということについて明確な御説明をいただけないというのは、議論としては大変残念だなと思っているんです。
 事務方でもいいんですけれども、例えばこういう新たな産業の創出などという文言が法律の条文の目的規定に入っているものというのは何か御存じですか。

○向井政府参考人 全てを承知しているわけではございませんけれども、私の承知している限りでは存じ上げておりません。

○塩川委員 そういう意味でいいますと、今回初めてということなんですよ。初めてなのに、新たな産業についての具体的な定義といいますか、御説明いただけないというのは余りにも残念なんですが、どうですか。

○向井政府参考人 大臣から御答弁申し上げているとおり、やはり、ITを使った、情報の利活用を使ったいろいろな産業というのは、これまでも既にSNSとかいろいろなものを引き起こしているわけでございます。ましてや、今のようにブログとかそういうふうなものが、ちょっと前には想像もできなかったようなものがあっという間に広がるというふうなことがございます。
 情報の利活用による産業の進展というのは非常に急速でありますので、今現在まさに想像もできないようなものが情報の利活用によっては起こり得るというのがやはり実情ではないか。そういうことを踏まえた上で、新たな産業の創出というふうな言葉を使っているというふうに考えております。

○塩川委員 個人情報の保護法ですから、個人情報の保護を目的とする。その場合に、有用性に配慮しつつと。その有用性の具体例として、その活用が新産業の創出等々に資するということを書き加えたということなんですけれども、そういう意味では、どんどん利活用の方が膨らんでくるわけですよね。そういうことで皆さんも御議論されておられるんですけれども。
 個々の国民に着目をして利活用という点はわかるんです。あるいは、個々の事業者についての活用のあり方というのも、それは考えることがあるでしょう。しかし、新たな産業の創出というのを保護法の目的に書き込む重さというのは極めてしっかり受けとめなければいけない、事の重大性、重要性ということを受けとめなくちゃいけないと思うんですが、その点での十分な議論がされたのかなということを率直に疑問に思うところであります。
 政府でもいろいろこの問題について議論してきているんだと思う。あるいは与党からの意見も来たんだと思うんですけれども、こういう新たな産業の創出という文言が盛り込まれるに至った経緯について、事務方で結構なんですが、説明いただけますか。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 法案の作成過程におきましては、法制局の審査、それと並行して、与党の御議論を踏まえて、与党の御承認を得て政府で出すということでございます。
 そういう議論の過程におきまして、法制局でもいろいろな議論がございました、与党の中でもいろいろな議論がございました。そういう中で、やはり目的規定においても何らかのバランスということを考えた方がいいのではないか、利活用と個人情報保護のバランス、これが一番重要ではないかということで、こういうふうな文言が入ったところでございます。
 したがいまして、例示として書かれている部分は長いですが、あくまでそれは、配慮し、個人情報の保護にというふうにつながっているというふうに考えております。

○塩川委員 そのバランスというところが気になるわけで、この後も残りの時間でお聞きしようと思うんです。
 政府の世界最先端IT国家創造宣言、昨年取りまとめたものの中に新産業創出という言葉があるんですけれども、そこも、どういう議論で入ってきたのかというところがお聞きしたかったんですけれども、この世界最先端IT国家創造宣言そのものも、IT戦略を成長戦略の柱とすることを目指しているものであります。まさに、成長戦略の具体化、具現化の一つが、今回の個人情報保護法における利活用の促進ということになるわけです。
 そこで、お聞きすると、そうすると、今回の法案というのは、個人情報の保護と利活用のバランスを図るということを目的にしているということなんでしょうか。

○山口国務大臣 これも何度か御答弁させていただきましたが、まさに大変革時代、そういった背景の中で、もう十年前の個人情報保護法ではなかなか対応し切れないような状況がグレーゾーン中心に起こってきた。それに対して、しっかりと交通整理をして、そこら辺を、利活用する部分は利活用できる、しかし同時に、しっかり個人情報は守っていくというふうなことで取りまとめさせていただいたのが今回の法律であろうと思っております。

○塩川委員 ですから、そこのところが、目的と、配慮といいながらも、実際にはバランスという場合に、肝心の保護のところがどうなるのかというところが問われてくるわけです。
 関連して、個人情報保護委員会についてですけれども、個人情報保護委員会は、この利活用についても扱うわけですが、その中で具体的に例示をされている新産業創出ということも個人情報保護委員会の任務に当たるということでしょうか。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 新産業の創出といった産業振興的なものはもちろん経済産業省が行うということでございますが、新産業の創出も配慮した上の個人情報の利活用と個人情報の保護というもののバランスをとっていくという、個人情報保護の政策につきましては個人情報保護委員会が担うということになろうかと思います。

○塩川委員 新産業創出というのは経産省の仕事というか、経産省のために入れたわけじゃないんでしょう。そういう意味では、全体の分野についてということがそもそもの、新たな産業と言う以上は。

○向井政府参考人 お答えいたします。
 個人情報保護委員会の任務はあくまで個人情報の保護と利活用ということでございまして、個人情報の保護と利活用を考える場合に、新産業の創出ということに配慮することも念頭に置きながら、利活用も推進しつつ、個人情報も保護していく、そういうことだというふうに考えております。

○塩川委員 最後に、大臣にお尋ねします。
 この新産業創出、新産業育成ということに配慮するということですけれども、その新産業創出、新産業育成のために個人情報の利活用を進めていけば、個人情報の保護そのものがやはり損なわれることになりはしないかという強い危惧を覚えるんですが、その点についてお答えをいただけないでしょうか。

○山口国務大臣 私としては、むしろ、個人情報というものをしっかり保護することによって、国民の皆さん方の御協力も得ながら、あるいは国民の皆さん方の利便性を高めていくために、さまざまな利活用というのが出てくるんだろうと。
 さっき申し上げましたように、やはりグレーゾーンで本当に戸惑いがある中で、またさらには、御質問が数々あったんですが、当初、過剰反応もあった等々、そういう中で、こういう法改正でしっかりと交通整理をしたというんですか、これは非常に画期的な話であって、当然、さまざまな事業活動にも影響を及ぼすでしょうし。
 ただ、同時に、余りに事業中心になって、個人情報の保護がおろそかになって、個人の権利等が侵害されるようなことがないように、これはしっかりやっていく必要があると思っております。

○塩川委員 この前お尋ねしたときに、携帯電話番号のこともお聞きしたわけであります。年末の骨子案では個人識別符号の例示として含まれていたのに、法案段階では個人情報に係る定義が変更されて、現時点においては一概に個人識別符号に該当するとは言えないと後退をした。その背景には、産業界から携帯電話番号を外してくれという要望があった。新産業創出を目指すということが個人情報保護法を後退させる懸念があるということを指摘せざるを得ません。
 個人情報保護法といいながら、個人情報活用による新産業育成法となりはしないのかという危惧の思いもお話ししながら、質問を終わります。