国会質問

<第189通常国会 2015年06月02日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 5号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 十八歳選挙権法案について質問をいたします。
 この間の質疑で、主権者教育の重要性について各党からも議論がございました。
 前回の質疑でも申し上げましたが、選挙は国民主権、議会制民主主義の根幹にかかわるものであり、本案は国民、有権者の参政権にかかわる重要な問題であります。
 提案者の方、どなたでも結構なんですが、お尋ねしたいんですが、十八歳、十九歳の若者に何か選挙権を与えてやる、こういう発想というのはおかしいわけで、権利として、政治にかかわることが特殊なことではなくて、主権者として参加することが当たり前の社会にしていかなければならないと考えますが、本法案の提案者の方はどのようにお考えでしょうか。

○船田議員 塩川委員にお答えいたします。
 今回の選挙権の引き下げの議論というのは、きっかけとして、国民投票法の十八歳に引き下げるということから、これがきっかけでございました。
 ただ、その場合でも、我々は、特に憲法というテーマについてはできるだけ多くの人々にも投票していただきたい、ですから、公民権停止をされた方も投票ができるということにしましたし、特に、憲法というのは現在から将来の日本の姿を規定するものでもございますので、できるだけ若い方々にも投票していただく必要があるだろう、こういうことで十八になったという経緯もあります。
 そういう観点からすると、十八歳、十九歳の皆さんに、我々というか、国というか、あるいは国会議員側から与えるということではなくて、やはりできる限り若い人々の意見もぜひ政治に反映をしたい、そういう権利として持っていただく。
 これまで制限されていたのは、十八、十九が本当に意思表示ができるのか、あるいは、いわゆる主権者教育、政治教育というのがきちんとできているのかどうかということで、若干の疑問点があったというふうに思われますけれども、その後、さまざまな観点から議論をし、そして、とりわけ十八、十九の皆さんが、特に若い方々の中でも、参考人として来られた斎木さんや高橋さんを初め、多くの高校生が、私たちに権利を欲しい、こういうことで積極的に運動している、そういう姿を見ておりまして、これは十八、十九の皆さんも立派に政治的判断あるいは選挙における投票行為を行っていただけるな、そういう確信を得られたということでございます。
 そういう点で、決して上から与えるというのではなくて、当然の権利としてそれをお認めする、こういう態度でおります。

○塩川委員 改憲手続がきっかけというのは動機が悪いということはこの前も申し上げたわけでありますが、今、一方で、若者たちからの権利の保障を求める運動、そういうものもあり、こういう形で実現をするということは大変重要だということでもございました。
 十八歳といえば高校三年生も含まれる。問題になるのが、議論もされております、文部省の一九六九年に出した通達、「高等学校における政治的教養と政治的活動について」があります。
 この通達では、高等学校生徒の政治的活動を規制しているということで、その根拠として、「選挙権等の参政権が与えられていないことなどからも明らかであるように、国家・社会としては未成年者が政治的活動を行なうことを期待していないし、むしろ行なわないよう要請している」としておりますが、十八歳選挙権が実現をすれば、この根拠が崩れるということであります。
 そこで、提案者の北側議員にお尋ねをいたします。
 前回の質疑の中で、北側議員は、十八歳選挙権が実現したならば、当然これは、選挙権を持つので選挙運動も基本的に自由、また政治的活動も自由、これが大原則と述べ、この通達についても見直していただく必要があると述べておられます。
 そこで、確認ですけれども、この通達はもうきっぱりと見直す、十八歳以上は選挙運動も基本的に自由、政治活動も自由、こういう立場だということか、お答えいただければと思います。

○北側議員 おっしゃっているとおり、十八歳選挙権が実現しましたならば、選挙活動も自由、そして政治活動も自由、これが大原則でございます。今二十以上の者が選挙運動自由、政治活動自由と同様でございます。
 ですから、その大原則に立った上で、例えば学校の中の秩序とかルールとかそういう面で、一定の規制が必要だと思います。そこはしっかりと学校の中で御議論いただいて自主規制をしていく、また、教育委員会等でもガイドラインをつくっていくということは当然あるというふうに考えております。
 これは、学校に限らず、どこの企業であれ何であれ、どこの団体であれ、そういうところで全く自由にできるわけじゃないのと同様でございます。特に学校は教育の現場でありますから、そういう教育の現場の本旨に従って一定のルールは当然あるだろうと思いますが、大原則は、選挙運動自由、政治活動自由だというふうに考えております。

○塩川委員 続けて、自民党の提案者の船田議員にお尋ねします。
 今、北側議員の方からも、学校におけるルールの必要性のお話もありました。しかし、大原則というのは、選挙運動も自由、政治活動も自由、こういう見地だということですが、この点、自民党の船田議員としてはどのようにお考えでしょうか。

○船田議員 お答えいたします。
 今、北側議員からも答弁ございましたが、私も、基本的には、有権者となった生徒は政治活動そして選挙運動は自由であるということは言うまでもないと思っております。
 ただ、その者が学校の中において何をやってもいいかというと、そこはやはり学校内の秩序、とりわけ私たちが配慮しなければいけない点は、同じクラスにいながら、同じ学年でありながら、有権者になった者となっていない者が混在をしているということでございまして、そういう観点からすると、有権者となった高校生が非有権者に対して何をやってもよいということには多分ならないんだろうというふうに思っています。
 ただ、それ以上のことを申し上げますと、これは政治的な中立とかあるいは有権者である高校生の原則自由というものから見て言い過ぎとなるところもありますので、ここから先のことは、今後、総務省、文科省、そして我々プロジェクトチーム、せっかくつくってありますので、そこでしっかりと議論をして、何ができるのか、何ができないのかということをやはりある程度はっきり、ガイドラインのような形でお示しをしていくことが大事なのかな、そういうふうに感じております。

○塩川委員 この点では北側議員と基本的に同じ、選挙運動の自由のことの御答弁がありました。
 あわせて、総務省もそうでしょうし、今、プロジェクトチームで議論されていかれるということで、できること、できないことというお話もございました。
 その点で、船田議員に重ねてお尋ねしますが、この間の報道によりますと、そのプロジェクトチームで議論もされて、その際に船田議員として私案も出されたということも目にしております。
 そこでは、学校外に限って政治活動を認める私案をまとめたとあるわけですけれども、これは、学校外しかいわゆる政治活動を認めないということなのか。十八歳、十九歳には、憲法二十一条で認められた集会の自由、結社の自由、表現の自由、政治活動の自由、これがなく、参政権の行使というのは限定的ということなのでしょうか。

○船田議員 お答えいたします。
 今、塩川先生が御指摘をいただいた文書でございますが、これは私のあくまで個人的なメモということで皆様に一度お示しをいたしましたが、それについては、このプロジェクトチームで議論はいたしておりません。これはあくまで私の個人的なメモということでありました。
 そして、その内容でございますけれども、私の文章がちょっと稚拙なところもあったかもしれませんが、学校外においては、有権者となった生徒の政治活動、選挙運動は自由であるということは書かせていただきました。
 ただ、学校内においての政治活動、選挙運動については、先ほど申し上げたように、有権者と非有権者が混在をしていること。あるいは、学校においてはやはり勉学が全ての基礎でなければいけない、最優先をされなければいけない、仮に選挙運動をやることによって教育あるいは勉学というものがおろそかになるとすれば、それはやはり考えなければいけませんねということで、適切な対応を求めるということで、制限するという言葉は一切使っておりません。あくまで、適切に対応していただくというようなことで文章としてはまとめさせていただいております。そして、その意味するところは今申し上げたようなことでありますので、御理解いただきたいと思います。

○塩川委員 政治活動の自由の問題という憲法に定められた基本的人権との関係でも、学校の内、外で分けるような問題ではないだろうと思います。
 この法案の参考人質疑でも、複数の方から主権者教育の重要性が語られました。政治について自由に語られる場がなければ、子供たちが多様な意見に触れることもなく、その多様な意見に触れてみずから考えることも判断することもなく、自分の意見を養うということもできなくなる。また、政治教育の中で議論されるのは、政治色をなくせということ。しかし、政治の話をして、党派色をゼロにして本質的な議論をするのは難しい。さまざまな政党の意見があることを開陳しながら、党派を超えた議論を教育に持ち込むことが大事ではないか。
 このように、参考人の方々が述べられたのは、学校内だろうと学校外だろうと、さまざまな意見に触れ、みずから考える、そして行動するということが教育の現場で必要だということであります。こういう立場で臨むことが求められているのではないのか。
 どのような主権者教育をしていくのかはいわば今後の検討課題ということでは、投票する権利は与えるけれども、余計なことをするんじゃないというような、そういうメッセージにもなりかねないという点でも、私たちは、改めて、この一九六九年の文部省通達は撤回、撤廃をすべきだということは申し上げておくものであります。
 あわせて、この法案が提案された過程、審議の進め方についても一言申し上げておくものです。
 前回の私の質疑の際に、冒頭、船田議員から、答弁の前に共産党の皆様に申し上げたいといって述べられたのが、国民投票法の制定からスタートしたことで、憲法改正の手続に反対していた共産党、社民党は中に入れない形で事を進めてしまった、共産党、社民党の意見をしっかりいただくということが不十分だったことをおわびというか、お話をしたいと思った次第であります、このようなことでございました。
 私、選挙制度というのは、そもそも議会制民主主義の土台であり、国民、有権者の参政権にかかわる問題であることから、全党全会派参加での議論を行うべきで、一部の政党だけ何か談合するような、進めるようなやり方というのは間違っている。被選挙権の問題など本来しっかりと議論すべき問題も取り上げられないままで提案者が本案成立を急ぐというのが、国民投票前の国政選挙において十八歳選挙権を実現しておきたいという改憲派の意図のもとで、急いでいると見られても仕方がないということを指摘しておくものであります。
 そこで、本来、全党全会派参加のもとで議論すべき公選法の改正の議論であります。この点につきましては、この間、例えばインターネット利用の選挙運動の解禁や成年被後見人の選挙権回復など、各党で協議を行い、成立させてまいりました。
 この点について、提案者の方にお尋ねをいたしますが、ネット選挙運動の解禁の際には、各党協議の中で、日本共産党は、ネットの世界だけをテーマにするのではなく、それ以外の現行の選挙運動のあり方も取り上げるべきだと主張し、各党が、今後も選挙運動規制のあり方について協議を続けていくことで合意をしておりました。こういった各党協議の経緯については、提案者の方ではどのように受けとめて、認識しておられるのかについてお尋ねをいたします。

○逢沢議員 自由民主党選挙制度調査会長の立場で、事選挙のことについては、あらゆる政党、会派ができるだけテーブルを同じゅうして議論を出し尽くし、どういうテーマを取り上げて具体的な議論として詰めていくか、そういった基本的な考え方といいますか姿勢を大事にしてきたことは、委員御指摘のとおりであります。
 その中で、今具体的におっしゃっていただきましたネット選挙の解禁、これについても大変大きな議論がございましたけれども、野党全ての会派の皆様に御参加をいただいた。その後、成年後見制度を活用しておられる方々への選挙権の、回復と言っていいんでしょうか、このテーマについても同様な手続であったことというふうに思います。
 今回の十八歳選挙権年齢を実現するための公選法の改正、これは、そのきっかけというのがいわゆる憲法改正、イエス、ノーの国民投票法について十八歳から国民投票権を与える、そこが一つのスタートといいますかきっかけになった、そういったいきさつといいますか順番、経緯があったということも、いささか今日の現実につながっているというところもあるんだろうというふうに思います。
 引き続き、選挙のあるべき姿については、不断の改革、改善、よりよいものを求める、そういう努力は重ねていかなくてはなりません。いろいろなものを各会派から持ち寄っていただき、それでは次はこういうテーマを扱っていこう、そういうコンセンサスが得られれば、いつでも与野党全体のテーブルを動かすことは、今でも可能というふうに考えておりますので、基本的にそのことを確認させていただきたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○塩川委員 全党全会派の参加のもとでの議論をする。その課題の一つとして、ネット選挙後の宿題として、現行の選挙制度についても見直しをする必要があるだろうということがあったわけであります。そのことを逢沢自民党選挙制度調査会長御自身もよく御存じのことだろうと思っております。
 その点で、憲法十五条は、選挙権を国民固有の権利として、国民が主権者として政治に参加する機会を保障しております。
 そこで、各党の提出者の方の中で、自民、公明、民主、維新の方にお尋ねします。
 日本の公職選挙法は、べからず集と言われるように、さまざまな規制が設けられております。法律で選挙運動と政治活動を区別する、選挙運動期間を規定し、短い選挙期間になっている、国政選挙で三百万、六百万という高額な供託金、戸別訪問が禁止をされているなど、国際的に見ても極めて制限的な、まれな仕組みだと言わざるを得ません。
 若者だけではなく、国民が主権者として政治に参加することが当たり前の社会にしていくという観点から、こういった公選法のさまざまな制限の問題について見直すべき点があると考えますが、短い時間で恐縮ですけれども、それぞれのお考えをいただきたい。

○船田議員 一概にお答えすることは難しいんですけれども、やはり今の公職選挙法全体の体系が諸外国の中でもかなり厳しいということは、私自身も認識をしております。
 この背景としては、やはり選挙運動の激化あるいは選挙違反事案、そういったものが後を絶たないということもまた一方ではあるんだろうと思います。
 しかし、昨今投票率が下がってきている、恒常的に下がってきているという原因の一つには、やはり厳し過ぎる公職選挙法の縛りが、あるいは原因していることかもしれません。
 十八、十九に選挙権年齢を引き下げるということとともに、あるいは被選挙権の年齢も将来引き下げるということとともに、この公職選挙法そのものの全体の枝ぶりというのかあり方というのか、そういったことについてもやはりより簡潔になるものはあるのではないか、そういう観点で見直しをする必要はあると思っております。

○武正議員 今回の法律の可決、そしてまた成立が全体の投票率が上がるきっかけになればという思いで提出をさせていただいております。
 主権者教育の充実がその基本であることは間違いありませんが、委員が指摘された公選法のさまざまな不備については、これは、我々選ばれる側である立場の中で、やはりそれぞれの党でしっかりとこの公選法のいろいろな課題についても掘り下げ、そしてまた各党間での協議、議論も深めていく、立法府としての義務があるのではないかというふうに思います。

○北側議員 委員のおっしゃっているとおり、ネット選挙が解禁されたにもかかわらず、文書による運動の規制はいっぱい残っているんですね。非常に矛盾するところが現行法でもたくさんあるわけなんです。
 そういう意味で、選挙運動については、やはりもう少し規制を緩和する方向で、今の公職選挙法の規定については見直しをしていかないといけないんだろうというふうに私は思っております。
 超党派での会議体は今も残っております。残っておりますので、選挙制度、選挙運動についてのありようをどうするかという超党派の会がありますから、そこを舞台にして、今、委員のおっしゃっているような方向での議論はしっかりさせていただきたいと思っております。

○井上(英)議員 塩川議員にお答えをいたします。
 選挙運動の自由化だとか、恐らく小選挙区制も含めての議論で、選挙制度というふうに申し上げさせていただきますけれども、それ自体にやはり明快にベストな答えというのはないというふうに私は思っております。
 ですからこそ、常にベターで、時代時代に対応できる選挙制度というものをつくり上げていかなければならないと思い、よりよい制度を目指して不断の見直しというのが必要だと思っております。
 そういう意味で、規制緩和というのが必要であれば、ぜひ検討していくべきだというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○塩川委員 制限的なやり方についての見直しの方向ということでは、今お話しいただいた方々でも一致するところであり、そういう点でのしっかりとした見直しを求めていく。
 加えて、民意をゆがめる小選挙区制の見直しの問題や、また、国際的に見ても少ない国会議員の定数の問題なども含めて、こういう選挙制度全体についての見直しが、国民の参政権行使を重視する観点からも重要だ、このことを申し上げて、質問を終わります。