国会質問

<第189通常国会 2015年06月10日 内閣委員会 13号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 道路交通法改正案について質問をいたします。
 最初に、山谷国家公安委員長にお尋ねいたします。
 今回の法改正は、自動車の種類として準中型自動車、免許の種類として準中型自動車免許の創設を行うものであります。
 今回の法改正の背景ですけれども、全日本トラック協会など、トラック業界の要望もありました。トラック業界における人手不足解消のために、配送の主体である積載量二トン程度のトラックを十八歳の者でも運転できるようにしてほしい、こういう要望に応えるものというふうに受けとめておりますが、それでよろしいでしょうか。

○山谷国務大臣 最近の交通事故情勢を見ますと、貨物自動車を中心とする車両総重量のより大きい車両の方が、一般的な乗用車に比べて、死亡事故発生の頻度が高いということでございます。
 他方、集配等で利用頻度が高く、物流の中心的な存在である最大積載量二トンの貨物自動車が、保冷設備等の架装により車両総重量は五トンを超えることが多くなっている現状にございます。
 そのような中で、こうした車両について高等学校を卒業して間もない者でも運転できる制度とするよう、全国高等学校長協会、全日本トラック協会等から、貨物自動車に係る免許制度の見直しについて要望が寄せられているところであります。
 これらを踏まえまして、今回の改正では、貨物自動車に係る事故防止対策を一層推進しつつ、社会的要請にも応えた制度とするため、車両総重量が三・五トン以上七・五トン未満の自動車の区分を設け、これらの自動車を運転するには準中型免許を必要とすること、貨物自動車を使用した試験、教習等を行うこと、準中型免許については十八歳以上で取得可能とすることなど、免許制度の見直しを行うこととするものでございます。

○塩川委員 今制度の説明をいただきましたけれども、要するに、トラック業界における人手不足というのも背景にあるということは、その点はよろしいですか。

○山谷国務大臣 はい、全日本トラック協会等から要望が寄せられたところでございます。

○塩川委員 そこで、トラック業界の人手不足なんですけれども、なぜ人手不足なのか、この点について国交省の方にまず確認をしたいんですけれども、トラックドライバー不足と言われる理由は何なのか、お答えください。

○宮城政府参考人 お答えを申し上げます。
 現在、トラック業界におきましては、特に二十九歳以下の若年者の割合が一〇%、これが全産業に比べて大分低いということ、こういったことを含めまして人材不足感が高まっております。その背景の一つには、ドライバーの長時間労働、低賃金の問題があるというふうに認識しております。
 具体的な数字を申し上げます。
 平成二十六年の中小型トラックのドライバーの年間の労働時間でございますが、これは二千五百八十時間でございます。これに対しまして全産業平均は二千百二十四時間というふうな、差が生じてございます、四百時間長いということでございます。
 もう一つ、年間所得でございます。これも同じように、中小型トラックドライバーについて比較いたしますと、このドライバーにつきましては年間の所得が三百七十五万ということで、これが全産業平均の四百八十万から約百万低くなっている。
 このような状況がトラックドライバーの不足の原因になっている、このように考えてございます。

○塩川委員 長時間労働であり、かつ低賃金だというので、数字もお示しいただきましたが、労働時間でいえば、年間で四百時間も全産業との比較で多い。給与についても、年収ベースで百万円の差がついている。これでは、実際に人手不足というのは解消もままならないということであります。こういうトラック労働者の低賃金と長時間労働の深刻さの一端をあらわすものであります。
 次に、厚生労働省に確認をいたしますが、トラック労働者の労働災害も極めて重大だということがあります。
 厚生労働省の脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況、平成二十五年度における労災認定件数と、その中に占める自動車運転従事者の件数が何件となっているのか、このことについてお答えください。

○大西政府参考人 委員御質問の、平成二十五年度における脳・心臓疾患の労災認定件数でございますが、全体で三百六件でございます。そのうち自動車運転従事者につきましては九十三件、自動車運転従事者のうちトラックに関しましては八十三件ということになっておるところでございます。
 また、精神障害の労災認定件数でございますが、全体で四百三十六件でございまして、そのうち自動車運転者につきましては二十六件、さらにそのうちでトラックの運転者の方につきましては二十件ということになっておるところでございます。

○塩川委員 自動車運転従事者の中には、トラック労働者だけではなく、タクシー、バスの運転手の方も含まれております。そういう中でも、トラックのドライバーの方のこういう労災の件数が非常に高いということであります。また、全産業との対比を見ても、大体、トラック運転手だけでも脳・心臓疾患八十三件というお答えがありました。
 トラック労働者の人数は、道路貨物運送業というくくりの中では百三十六万人。その中には会社の事務の方なんかも含まれますから、実際にドライバーの方は八十四万人ぐらいとかとも言われています。全労働者の四千六百万人との対比でトラック労働者八十四万人ということになりますと、二%に満たない。二%に満たないトラック労働者の重大な労災というのが、脳・心臓疾患では全体の三割に及ぶような状況になっている。
 二%に満たないトラック労働者の脳・心臓疾患の労災認定というのが三割近くに及んでいるというのは、極めて劣悪な労働環境にあるということを示すものではないでしょうか。
 山谷大臣に、感想で結構なんですけれども、今言ったように、この法案の背景にはトラック労働者の人材不足があります。その人材不足の背景といえば、こういう低賃金、長時間労働がある、今の労災の状況もあります。こういう状況の深刻さについて、大臣としての御所見をいただければと思っております。

○山谷国務大臣 労働環境の改善というのは必要だと考えております。委員御指摘のとおり、運転者の労働条件の適正化によって交通事故の抑止を図っていくということは重要だと思っております。
 警察としては、過労運転等をした運転者の取り締まりにとどまらず、これらを下命、容認していた使用者等の検挙、使用者に対する自動車の使用制限命令等、背後責任の追及を行っているほか、安全運転管理者に対する指導等の対策を講じているところであります。
 また、今回の改正にあわせまして、国土交通省において、長時間運転が生じやすいトラックを適切に運行管理するための運行記録計の普及拡大や、トラック運転者への指導監督の強化、教育の充実等を内容とする総合安全対策について検討がなされているものと承知しておりまして、引き続き、関係機関、団体とも緊密な連携をして、貨物自動車に係る事故防止対策に政府一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。

○塩川委員 警察としての取り組みのお話をいただきました。労働環境の改善が必要だという点での御認識を伺ったところであります。
 このようなトラック労働者の劣悪な労働実態の背景には、私は、荷主の責任が大きく問われると思っております。トラック運送事業者に対して強い立場にある大手メーカーなど荷主の、率直に言って横暴勝手というのがあるんじゃないのかと思うんですけれども、国交省としての認識はいかがですか。

○宮城政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、トラックドライバーの長時間労働、低賃金の背景には、荷主に対しまして立場が弱いために、附帯作業、運送以外の附帯作業でございます、こういった附帯作業などについて適正な料金が収受できないこと、それから、手待ち時間、車が到着してもすぐに積み込めない、すぐに配達に移れない、こういった時間、これによって長時間の労働になっているということがございます。
 このため、こういったことに対しまして、本年二月に、トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドラインというものを改正いたしました。ここにおきまして、手待ち時間の改善に関する項目を追加いたしますとともに、必要なコストについてはこれをきちんと価格に転嫁する、こういった項目を記述してございます。
 また、厚生労働省、国土交通省、荷主、トラック運送事業者などにより構成されますトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会、これを中央及び全都道府県に設置いたします。この協議会におきましてロードマップをつくりまして、関係者一体となりまして取引環境の改善及び長時間労働の抑制に取り組んでまいりたい、このように考えてございます。

○塩川委員 今お答えがありましたように、荷主に比べてトラック事業者の立場が弱い、附帯作業などの適正な運賃の収受がなされていないという現状があるということであります。その点で、ガイドラインの話ですとか協議会の御説明がございました。
 手待ち時間の御説明もありましたけれども、実際、待たされるという場面が非常に多いということですよね。この点について、日本路線トラック連盟での荷主庭先実態調査というのがあると伺っています。そこでの手待ち時間の実態がどうなっているかについて紹介してもらえますか。

○宮城政府参考人 お答え申し上げます。
 今お話に出ました日本路線トラック連盟におきまして、昨年十月に荷主庭先実態調査を行いまして、それを公表してございます。
 ここに長時間の手待ちの発生状況を示しておりますが、具体的には、一時間以上の手待ち時間が発生する割合につきまして、集荷時、荷物を入れるときです、このときは七・四%。一方、配達時でございますが、これにつきましては二四・五%、これぐらいが一時間以上の待ち時間が生じているということであります。さらに、配送センター、大手の場合は配送センターを使います、こういったところにおきましては四五・二%、このぐらいの割合が一時間以上の手待ち時間が生じている、このような状況になってございます。

○塩川委員 荷主の大手メーカーなどがジャスト・イン・タイムなどをやっていて、定時に持ってきてくれとなりますと、ずらっと並ぶわけですよね。その場合に、なるべく早く搬入しようと思うと早く待っていないといけない。結局は手待ち時間が長くならざるを得ないし、後ろになればなっただけおくれるし、その先の輸送先への着時間がおくれるということにもつながりかねないという点でも、こういった手待ち時間を初めとした荷主の対応というのがやはり厳しく問われていくところであります。
 そういった手待ち時間の発生が荷主の責任だということが問われるわけですけれども、その点で、荷主に対して、トラック事業者への適正な運賃確保と労働時間短縮の対策を具体的に求めるべきだと思っております。先ほど言ったようなガイドラインですとか協議会の立ち上げでこれが可能となるんでしょうか。

○宮城政府参考人 お答え申し上げます。
 国土交通省といたしましても、御指摘の、荷主の都合による手待ち時間、それから附帯業務などの運送以外の役務につきましては、運賃とは別に、例えば車両のとめ置き料でありますとか附帯業務料、こういった形で適切な料金を収受すべきというふうに考えてございます。
 このため、こういった考え方を踏まえまして、昨年一月に、書面化ガイドライン、これは要するに、荷主と運送事業者との間でちゃんと書面を交わして、金額とか役務の内容を決めるということでございます。そのガイドライン及び標準貨物運送約款におきまして、車両とめ置き料、附帯業務料等を明記する、こういった改正を行ったところでございます。
 これらの施策によりまして、今先生御指摘のありましたような形の、少しでも解消を図りたい、このように考えてございます。

○塩川委員 労働時間の短縮と適正な運賃の収受が可能になるような仕組み、今、手待ち時間の話がございました。これ自身が短縮されれば労働時間の短縮にもなるでしょう。
 あわせて、本来、手待ち時間が発生しているのは荷主の責任ですから、その荷主に対して改善を求めていく。それが一定時間に及ぶようであれば、当然のことながら運賃の一部としてこれをきちんと受け取るという仕組みが必要だと。その例として、トラック運送業における書面化推進ガイドラインの説明がありました。手待ち時間がトラック事業者の負担となっている商習慣を踏まえて、手待ち時間の改善について記述をしたということです。
 その点で、車両とめ置き料の話が今ありました。この書面化における記載事項の一つとして車両とめ置き料というのがあるわけですけれども、これが手待ち時間分を運賃に反映させるものだ、こういったものを、書面化推進ですから、書面として交付するということを求める、この点については、荷主に対してこの点をきちんと果たしてもらうということを迫っていくというのが国交省の立場ということでよろしいですか。

○宮城政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げたような書面化、それからきちんとした費用の収受ということにつきまして、まずは、荷主を含めて、事業者それから関係機関等を含めまして、中央及び地方でいろいろな協議会をつくってございます。そういった協議会で理解を求めて、その意味では、全体として荷主の方々にそういった認識を持っていただく、こういったことに努めてまいりたい、このように考えてございます。

○塩川委員 その点については、顔を合わせて協議して、トラック事業者の窮状について荷主さんもよく理解してください、こういう話なんだと思うんですけれども、ではそれで通る話なのかという点も問われてくるわけであります。
 そういう意味では、ガイドラインにおいても、物流、トラック事業において、元請、下請関係についていえば、迅速な独禁法の適用にも当たるような下請法もあります。もともと荷主との関係では下請法の適用になりませんから、荷主とトラック事業者との関係においては、物流における特殊指定もあるわけであります。
 こういった、実際に大手メーカーなどの荷主に対してしっかりとその責任を果たさせるということについていえば、物流の特殊指定など優越的地位の濫用を是正するようなこういう積極的な取り組みが必要なんじゃないのかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○宮城政府参考人 ただいま御指摘のありました独禁法における優越的地位の濫用、こういった事案をもちろん認知した場合には、私どもとしては、積極的にそういった形で取り組んでまいりたい、このように考えてございます。

○塩川委員 その上で、実際に適正な運賃を受け取るような環境づくりということが必要であります。
 そういう意味では、運輸分野では、この間、安全対策や経営環境の改善の観点から政策の見直しが行われてまいりました。バスあるいはタクシーにおきましては、このような安全対策、経営環境の改善などについての運賃制度の見直しも行ってきたところであります。
 トラックにおいても、こういった例えば幅運賃制度のような一歩踏み込んだ対応というのが必要なんじゃないのかと。標準運賃のような目安を示していく、そういった適正な運賃が収受できるような環境づくりをする上でも、標準運賃などを設けるようなそういう改善策に踏み込む、そういうときに来ているんじゃないのかと。
 バスやタクシーなどで今までのやり方を見直したと同様に、トラックの分野においても必要な運賃確保ができるような仕組みの見直しという点での標準運賃などを考える考えはないのかということをお聞きします。

○宮城政府参考人 お答えを申し上げます。
 標準運賃というお話でございましたが、タクシー、バスのように一般の消費者の方々とちょっと違いまして、いわゆるBツーBと申しまして、企業間の取引ということになります。そうしますと、これは一種、自由契約の中で決まってくる話かと思います。
 ですが、先ほど申し上げましたように、その中で著しい優越的地位の濫用等々があった場合についてはきちっと対応する、それから、先ほど申し上げたような約款の話でありますとか、こういったことを徹底することによりまして、少しでもそういった障害といいますか、まずい点を直してまいりたい、このように考えてございます。

○塩川委員 いや、バスやタクシーは、安全対策や経営環境の改善ということで顧客の方に負担をお願いするという仕組み、でも、トラックの場合には荷主にお願いする、それが困難だということなわけですよね。
 でも、本来、こういうトラック事業者の経営環境が悪化をしてくれば、荷主にとっても結果としてはマイナスになるんだろうという問題であるわけで、そういったときに、今のように、どんどん若い人も入らない、人手不足が深刻だといったときに、結果として荷主にもしわ寄せが行かざるを得ないような、そういう事業環境を改善するという点でいえば、荷主にしっかりと責任を果たしてもらう、こういうことに踏み出すことが必要なんじゃないのか、そのやり方として標準運賃などを今具体的に考える必要があるんじゃないのか。改めて、いかがですか。

○宮城政府参考人 繰り返しまして申しわけないんですが、基本的には、運賃というもの、こういった価格というものは、いわゆる市場の中で、マーケットの中で決まってくるということでございます。ですので、適正な運賃というものは、できればそういったマーケットの中で、それぞれ皆さん問題意識を同じにする中で、話し合いで決まってくるものではないかというふうに考えてございます。
 現在の段階で標準運賃という形のものを考える、適用するということはまだ少し慎重であるべきだ、このように考えてございます。

○塩川委員 この間の議論というのは、もともと労働基準法の今度の法案の中に、中小企業における残業時間の割り増し率を上げるということが前提になっているわけです。これはこれとして求められることでしょうけれども、しかし、そもそもの全体の事業環境の改善なしにはそれすらも達成できないだろうという問題なんです。(発言する者あり)おっしゃるとおりと言うとおりでありますから、そういった点でもう一歩踏み込んだ対応が求められているんじゃないのかということを重ねて申し上げます。
 かつては、もちろん、トラック事業におきましても、規制緩和前は運輸省が決めた許可運賃の制度などもあったわけで、労働条件の改善につながるような運賃政策を実施すべきだ、こういうことを改めて強く求めておくものであります。
 その上で、長時間労働が野放しになっているという点では、私は行政の責任も大きいと思います。
 厚生労働省のトラック運転者の労働時間等の改善のための基準、改善基準告示があります。厚労省にお尋ねしますが、この改善告示では、一日の拘束時間を原則十三時間、最大十六時間以内、月間で二百九十三時間以内、年間では三千五百十六時間以内と定めています。拘束時間といっても、実質的には、とめ置かれるわけですから、労働時間と変わりがないというのが実態で、週四十時間で換算すれば月に百時間前後の時間外労働が可能となる。ということは、過労死認定基準である月八十時間も超えるような実態が容認をされることになる。
 改善基準告示を厚労省が示しているわけですけれども、これが結果として長時間労働の温床にもつながっているんじゃないのか、厚労省の責任も問われると思うんですが、どうですか。

○大西政府参考人 委員御指摘の改善基準につきましては、トラックを初めとした自動車運転者の業務の特殊性でございますとか、あるいは長時間労働の実態があるということでございますので、そういった点の改善というか、労働条件の向上を図るために定めたものでございます。これにつきましては、そういった業務の特殊性を踏まえまして、関係者の御意見を聞きながら定めたものでございます。
 そのほかに、もちろん、先ほど委員御指摘もありました労働基準法という法律もございまして、こういったところで、法定労働時間や割り増し賃金、こういった規制は当然、自動車運転者の方にもかかっているところでございます。
 私どもといたしましては、自動車運転者の長時間労働につきましては大変重要な問題というぐあいに捉えておるところでございますので、自動車運転者の労働条件確保を労働基準監督署が監督をする際にも重点対象ということにさせていただいておりまして、労働基準関係法令の違反、あるいはそういった改善基準違反については厳しく取り締まっているというところでございます。

○塩川委員 実際、このような改善告示さえほとんど守られていないという実態もあるわけです。厚労省が統計をとり始めた一九八九年の違反率は五二・一%と聞いています。二〇一三年の違反率が六五・五%で、高まっている。そういう点でも国の責任は極めて重大であります。
 この改善基準告示が関係者で決めたもの、政労使で決めたということもあるという説明もありましたけれども、先ほど言ったように、トラックの事業環境そのものの改善ということがやはりトラック労働者の労働条件改善なしには達成できないんだというのは、いわば共通の認識だろうと思っております。
 そういう点でも、今述べたような拘束時間を、時間外で月百時間になるような、こういう枠組みそのものも見直すことを通じて、労働者の労働条件の改善につなげていく。例えば、一日の拘束時間を十一時間以内にするなどの改善措置をとるべきだということを求めたいと思います。
 それと、もう一つ指摘をしたいのが、このようなトラック労働者の労働条件悪化の背景には、国の規制緩和政策もあります。一九九〇年施行の物流二法は、トラック事業を免許制から許可制に変えたことで新規参入が容易となりました。運賃は、許可運賃制を廃止して自由化をしました。企業の零細化により、運賃のダンピングによる過当競争が激化し、荷主からの値下げ強要に対応できず、事業者の経営が圧迫をされ、労働条件が悪化をし、ひいてはトラック運輸産業そのものの存立が脅かされることになっています。
 国交省にお尋ねしますけれども、こういった規制緩和政策の結果というのがトラック運輸産業そのものの存立を脅かすような状況になっているんじゃないのか、この点についての認識を伺いたい。

○宮城政府参考人 お答え申し上げます。
 今御指摘のありました平成二年の規制緩和によりまして、明るい面といいますか、そういう意味では、サービスの多様化でありますとか競争により運賃・料金が低下し、利用者の利便が向上したということはございます。
 一方、特に事業者数の増加によりまして競争が激化いたしまして、事業者は大変厳しい経営環境にあるということがございます。先ほど出ました、荷主に対して弱い立場にある、それからもう一つ、法令遵守でありますとか安全運行に対する意識が低い事業者、こういったものが入ってきた、こういった状況も見られます。
 このため、先ほども申し上げましたが、荷主との適正取引の推進に向けまして、先ほど申し上げたガイドラインの改正でありますとか、それから、国、地方におきます取引環境、長時間労働改善協議会の設置などによりまして、適正な運賃の収受でありますとか手待ち時間の削減等を図ってまいりますということでございます。
 あわせまして、先ほど申し上げました不適正な事業者の排除及び参入の防止、こういったものが労使の関係で一番足を引っ張ります。これにつきまして、適正化実施機関が悪質な事業者を運輸局に速報するなどによります監査、速報制度の効果的な運用でありますとか、それから、新規の許可時におきます社会保険加入状況などの事前チェック、こういったものを図ってまいりたいというふうに考えます。
 こういったことによりましてトラック産業の健全な市場環境を整備し、もってドライバーの労働条件の改善を図っていく、今このような考えでいるところでございます。

○塩川委員 この間の一連の規制緩和政策で、実態とすれば、荷主にとってはメリットがあったかもしれない。しかし、大手の荷主にとっては、事業者がふえるわけですから、そういった値下げ競争、ダンピング競争をあおるようなことで、結果とすればメリットがあったかもしれないけれども、そのことによってトラック事業者そのものが非常に疲弊をするという状況が生まれたということが一方であります。
 今、トラック産業での状況も、例えば配送の事業者のトラックなどもふえるような、そういう面での環境の変化も生まれています。大手のそういった物流業者においては、海外のいわば不動産資本などがつくるような大手の流通資本が進出をしてきて、そういう意味でも、そういった大手との関係でもトラック事業者というのはなかなか困難な環境に置かれているという新しい環境変化も踏まえた対策が求められているときで、やはり、この間の規制緩和政策の問題点について、きちっと総括をした新たな対策をとることを求めておくものであります。
 最後に、山谷国家公安委員長にお尋ねをいたします。
 やはり、道路交通の安全を守るためには、ドライバーの労働条件の改善は不可欠であります。交通安全対策基本法の三十一条には、国は、車両等の安全な運転の確保を図るため、運転者等の労働条件の適正化等必要な措置を講ずるとあります。
 道路交通安全対策を所管される大臣として、国が責任を持ってトラック労働者の賃金、労働条件を定めていく、改善を図っていく、そういう決意について、ぜひお答えいただければと思います。

○山谷国務大臣 運転者の労働条件の適正化によって交通事故の抑止を図っていくということは本当に重要なことだというふうに思います。今委員がお読みになられました交通安全対策基本法第三十一条もございます。
 悲惨な交通事故を減らすことができるよう、今回の法改正の円滑な施行に努めるとともに、引き続き、関係機関、団体とも連携を密にし、貨物自動車に係る事故防止対策に政府一丸となって取り組んでまいります。

○塩川委員 トラック労働者の労働条件の改善を求めて、質問を終わります。