国会質問

<第189通常国会 2015年06月18日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 6号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 政治資金規正法の改正案及び政党助成法の廃止法案につきまして、それぞれ提出者にお尋ねをいたします。
 最初に、日本共産党の提出者の穀田議員にお尋ねをいたします。
 日本共産党は、今回、企業・団体献金の全面禁止法案及び政党助成法廃止法案の二本をあわせて提出しております。この二本を同時に扱う意義についてどのように考えておられるのか、御説明をいただきたい。

○穀田議員 この間、安倍政権のもとで、国の補助金を受けている企業から閣僚への献金を初め、政治と金問題というのが何回となく問題になってきました。この問題が浮上するたびに、国民に疑惑を持たれてはならないとの議論が起こります。
 しかし、今こそ政治腐敗、金権腐敗政治の根源である企業・団体献金の全面禁止に踏み出すべきです。
 また、政党助成制度は、もともと金権政治一掃を求める国民の声を受け、企業・団体献金を禁止するからという口実で導入されました。しかし、実際には、政党本部、支部に対する企業・団体献金が温存され、政党助成金との二重取りが続けられています。こうした状況が腐敗政治を生み出す温床となり、政治の劣化と政党の堕落をつくり出しています。
 政党は、何よりも、国民の中で活動し、国民の支持を得てその活動資金をつくるということが基本でなければなりません。この際、企業・団体献金の全面禁止と政党助成制度の廃止を一体として行うことは、金権腐敗政治を根絶する上で不可欠の道だから、あわせて提案をさせていただきました。

○塩川委員 金権腐敗政治一掃のために、この二つを一体に行うことが不可欠だという話でございます。
 それとの関係で、政党助成制度についてですが、一九九五年、政治改革の名のもとに、小選挙区制、比例代表並立制とともに導入、施行されました。
 この制度は、国民に一人当たり二百五十円を負担させ、毎年約三百二十億円もの税金を各党に配分する仕組みであり、この二十年間の政党助成金の総額は、約六千三百十一億円にも上ります。
 そもそも、国民は、みずからの思想、政治信条に従い支持政党に寄附する自由と権利を持っており、政治資金の拠出は国民の政治参加の権利そのものであります。ところが、税金を政党に配分する政党助成の仕組みによって、国民は、みずから支持しない政党に対しても強制的に寄附をさせられるという仕組みとなっている。
 日本共産党は、このような制度は思想、信条の自由や政党支持の自由を侵す憲法違反の制度であると指摘をし、その創設に反対するとともに、一貫して政党助成金の受け取りを拒否してまいりました。
 そこで、お尋ねですが、先ほどの答弁でも触れられましたが、政党助成金が政党の劣化や堕落を生んでいる、こういうことについて御説明をいただけないでしょうか。

○穀田議員 重大なことは、政党助成制度が極めて深刻な形で政党の堕落を招いていることであります。
 予算委員会でも、私、安倍首相との討論で事実を示しましたが、政党助成金を受け取っている各党の本部収入に占める割合は、自民党が約六割、民主党が約八割、当時の日本維新の会が約七割です。
 この制度の導入の際には、提案者から、税金に過度に依存しないことが必要との議論がありましたが、今や政党助成金を受け取っている多くの党が、その運営資金の大半を税金に依存しているのが実態です。また、五人以上の国会議員を集めれば政党助成金をもらえることから、理念も政策も抜きに、政党助成金目当てにおびただしい数の新党の設立と解散が繰り返されてきました。
 政党は、何よりも、国民の中で活動し、国民の支持を得てその活動資金をつくるということが基本です。政党が、国民、有権者から浄財を集める努力をしないで税金頼みになっていることから、金への感覚が麻痺し、腐敗政治をつくり出す一つの根源となっていることも重大です。
 このように、政党助成金頼みの政党をつくり出す制度は、虚構の多数をつくり出す小選挙区制と相まって、政党の劣化や堕落を生み出しています。民主主義を壊す極めて有害な制度を続けていいのか、これが全ての党に厳しく問われていると私は考えます。
 このような、使途を無限定に巨額の資金を政党につぎ込む制度は、国際的に見ても異常です。このような制度を維持していることが民主主義の健全な発展を阻害していると言わなければならないと考えます。

○塩川委員 ことしは、一九九五年の政治改革から二十年の年にも当たります。
 二十年前の政治改革は、リクルート事件に端を発して、ゼネコン汚職、金丸疑惑に至る自民党の金権腐敗政治に国民の厳しい批判が寄せられました。そして、非自民連立政権の細川総理は、就任直後の所信表明で、「政治腐敗事件が起きるたびに問題となる企業・団体献金については、腐敗のおそれのない中立的な公費による助成を導入することなどにより廃止の方向に踏み切る」と述べるに至ったわけであります。
 政治腐敗の根源が企業・団体献金であり、これを禁止して政治腐敗を根絶しなければ国民の信頼回復はないとの流れが国会の中でできたはずであります。
 ところが、いまだに政治と金の問題が尽きることがない。この点についてどのように認識しておられるでしょうか。

○穀田議員 私も、当時、一九九三年、その細川内閣の議論に参加した者の一人であります。
 その提案された政治改革法案には、企業・団体献金については廃止の方向に踏み切るとありました。といいながら、実際には、政党支部への献金は認める、さらに政治資金パーティーを残すという二つの抜け道をつくって、この企業・団体献金を温存してきたわけであります。
 直近の、二〇一三年分の総務大臣届け出分と都道府県選管届け出分の合計を見ると、政界全体への企業・団体献金総額は、八十七億六千三百万円に上っています。政治資金パーティーの収入総額は、何と百七十六億四千三百万円になっています。パーティー券は、その大半を企業、団体が購入しているのが実態であり、形を変えた企業・団体献金にほかなりません。
 大体、これだけの巨額の金が流れているのに、どうして、誰が購入しているのか明らかにならないのか。献金の場合は、年間五万円以上すると収支報告書に企業名等が記載されるわけですけれども、パーティー券購入であれば、二十万円以上でなければ記載されないからであります。これでは、企業が小口に分けて購入していても、国民の前には明らかにされない。
 安倍首相は、政治資金で大切なことは透明化を図っていくこと、これは塩川議員の質問に対する答弁を行ったこともありましたし、私にもそういう答弁をしていますが、百七十六億円もの巨額の金が動いている政治資金パーティーは、透明化は図られていないということについても述べておきたいと思います。

○塩川委員 企業・団体献金をめぐっては、きょうの質疑の中でも紹介をされました八幡製鉄事件の最高裁判決というのがよく挙げられます。
 この八幡判決に基づいて企業献金を容認する意見がありますが、この点についてどうお考えか、八幡判決をどう見るかについてお尋ねをいたします。

○穀田議員 先ほども資料として配られました。
 いわゆる八幡裁判の問題でいいますと、この判決を引用して、会社は自然人と等しく社会的実在であるからということを、大体、献金を認める、容認の理由に述べてまいりました。
 しかし、企業が災害救援や福祉事業に資金協力することと、政治資金は本質的に性格が違うものであり、同列に論じることはできないと思います。献金という問題は、先ほど私が述べましたように、選挙権と結びついた、主権者たる固有の権利であるからだということをあえて述べておきたいと思います。
 もう一つ、八幡製鉄判決の、企業の政治的行為をなす自由についてというところが下の方にあります。判決が言うように、国や政党の特定の政策を支持し、推進し、または反対するなど、政治的行為をなす自由を有するとしても、その自由の一環として政治資金の寄附の自由を認めることは、憲法十五条の参政権は国民固有の権利を侵すことにつながると思います。
 しかも、この判決から四十五年の間、ロッキード事件、リクルート事件など、国民の権利侵害が繰り返されてきました。このような金権腐敗政治が起きるたびに、政府の選挙制度審議会が企業・団体献金の禁止を再三答申してまいりました。この判決の最後でも、企業献金が金権政治の弊害に対処する方途は、立法政策にまつべきことと明記されています。
 立法府としても、企業・団体献金を放置しておくことはできず、二十年前の政治改革で、企業・団体献金は禁止の方向に踏み出そうと議論されてきたわけであります。それなのに、今になっても、この判決にしがみつき、企業・団体献金を容認するとは、国民の権利を侵害している実態から目をそらし、立法府が積み重ねてきた議論を無視するものと言わざるを得ません。
 同時に、この判決について、一九九三年、衆議院の政治改革に関する調査特別委員会に元最高裁長官の岡原昌男さんが出席されました。あの裁判をもとに企業献金はどれだけでもいいという考え方はやめてもらいたい、あれは助けた判決だったんだ、助けた判決というものだ、こういうことを明らかにされています。そして、さらに樋口陽一さんは、それが足を引っ張ってきたんだ、ここまで述べておられるわけであります。
 したがって、こういう判決を使うことはもういいかげんにしたらどうだということをあえて言っておきたいと思います。

○塩川委員 維新の党案の提出者にお尋ねいたします。
 維新の党も企業・団体献金の禁止の法案を提出されておりますが、企業、団体によるパーティー券の購入を禁止しておられません。
 先ほどの答弁のときにもやりとりがありましたけれども、パーティーの対価性もある、PRの場でもある、活用する必要があるというお答えでしたが、パーティー券というのが、実態を見れば、その大半が企業、団体が購入しているものだ、形を変えた企業・団体献金ではないのか。
 企業は主権者ではありません。企業が政党や政治家に金を出し、政治に影響力を与えるということは、国民主権の原則とは相入れないものだ、企業献金は本質的に賄賂性を持っているという点をいっても、企業・団体献金の国民の参政権の侵害、パーティー券を容認することがこの国民の参政権の侵害を残すことになるのではないのか、このように考えますが、いかがでしょうか。

○重徳議員 先ほども他の委員に御答弁申し上げましたが、このパーティーにつきましては、対価性がある。対価というのは、単に飲食というだけではなくて、例えば講師を呼んで勉強会をやるときには、その講師もただで来てくれるわけではありません。また、党のPRという意味でも、政策の基本的な方針や各議員の活動の報告など、さまざまな場として活用されているものと考えております。
 一つずつ、問題になってきたことを解決していこうということで、私どもは、もう二十年前から、おっしゃるとおりです、二十年前からずっと問題になってきました企業・団体献金の廃止、禁止というものを、今回法案でも提出をいたしておりますし、いち早く、我が党だけでももう受け取るのをやめようということで、来年からは受け取りを一切みずから自粛するという決定をいたしたわけであります。
 パーティーにつきましても、やはり、これも先ほどのやりとりがございましたけれども、そのあり方、やり方についても、今回新聞沙汰になっているような状況もあります。こういったことについても、適切なパーティーのあり方ということについてもよく議論はしていく必要があると思っております。

○塩川委員 パーティー券そのものが、実態としてその大半が企業、団体に依存するものだという点については、そういう御認識でしょうか。

○重徳議員 これは、私もつぶさに、全てのパーティー券が企業、団体によって賄われているかどうか、存じ上げているわけではありません。
 ですから、個人、有力な個人の方にもそれは購入を依頼することもあるでしょうし、実態はどうかということについては、客観的に今見解を述べるものは持ち合わせておりませんけれども、いずれにしても、基本的には、私どもは、今回は企業・団体献金の対価性のないものを禁止していこうというところからまず入っていこうということで、皆様方の御理解を求めているところでございます。

○塩川委員 対価性のないものということになりますと、でも、企業・団体献金そのものはその範囲では容認という話にとれるわけであります。
 先ほどの御答弁の中でも、二十年前の政治改革、これについて、税金と企業・団体献金の二重取りだ、この二十年前の議論に決着をつけようというものだというお話がありましたが、そうなると、税金と企業・団体の二重取りといいながら、政党助成金という税金と、パーティー券、企業・団体献金を含むパーティー券という形での二重取りが続くということになりはしないのかと思うんですが、いかがですか。

○重徳議員 企業・団体献金を含むパーティー券とおっしゃいますけれども、パーティー券そのものは企業・団体献金ではありませんので、繰り返しになりますが、対価性のあるものでありまして、それは決して飲食だけじゃなくて、講師を招くですとか、あるいは、その会そのものも、単なる献金とは違いまして、パーティーという場を活用して議員や政党の活動をPR、理解いただく、そういう場として活用しているわけでありますから、これは企業・団体献金そのものとは異なるものと考えております。

○塩川委員 企業、団体が購入する、実質、形を変えた企業・団体献金ではないのかとされるパーティー券という話として、ちょっと言葉が足りませんでしたけれども、私は、やはり二重取りという批判は免れないのではないかなと思います。
 あと、民主党案の提出者にお尋ねをいたします。
 先ほどの質疑にもありましたけれども、二〇一一年の三月に、企業・団体献金の禁止、パーティー券購入の禁止の法案化を進めるということを党として掲げられたと承知をしております。
 その点については、先ほどの答弁の中で、その旗をおろしたのかという問いに対して、それは何ら変わるものではありませんというお話で、とにかく補助金の部分のみ取り急ぎ提出をしたものだ、企業・団体献金の禁止そのものについては骨子案に基づき法案化作業を進めたいというお話でありました。
 あわせて、その際に、個人献金促進のための方策も考えていきたいという御答弁があったわけですが、私は、個人献金を促進するためにも、企業・団体献金の禁止とそして政党助成法の廃止が必要ではないのか、それでこそ個人献金の促進につながるというふうに考えますが、この点はいかがでしょうか。

○黒岩議員 先ほど申し上げたとおり、二〇一一年三月十日に確認いたしました企業・団体献金禁止ということにつきまして、本年も三月に私どもの政治改革・国会改革推進本部におきまして再度確認をしたということで、方向性は何ら変更していることではございません。
 ただ、これも何度か答弁いたしましたけれども、補助金受給企業について特段の疑義が生じたということであって、決して補助金受給企業に二十二条の三を中心に限定をしたというわけではなく、なるべく、今各会派で大きな、企業・団体献金に対してもまだまだ考え方の違いがある中で、一定程度合理的に意見を集約できるということを願いまして、今回は補助金の受給企業の寄附制限について、法改正を出させていただいたというところでございます。
 また、個人献金の促進については、寄附金税額控除の制度の具体化とか、こういったことをこれからも進めてまいりますし、政党助成法等については、これは我が党でも、また各会派もいろいろな考え方で今後検討していくことになる、そのように承知をしております。

○塩川委員 個人献金がふえない理由には、やはり国民の政治不信というのは無視できないと思います。国民の意見や要求とかけ離れたところで政治が行われているのではないのか、こういう声があるわけで、そういうふうに受けとめられるということになればゆゆしきことであります。
 政党は、何よりも国民の中で活動し、国民の支持を得てその政治資金をつくるということが基本でなければならないと考えます。企業・団体献金の全面禁止と政党助成金の廃止を一体で行うことが、主権者たる国民がみずからの意思で政治資金を拠出する、政治に参加する、そういう土壌が醸成されると考える。こういう取り組みこそ必要だということを申し述べて、時間が参りましたので終わります。
 ありがとうございました。