国会質問

<第189通常国会 2015年06月26日 平和安全特別委員会 14号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうの特別委員会は、会期延長手続後の最初の審議の場となります。通常国会最長の九十五日間もの延長によって憲法違反の戦争法案を何としても強行成立させようなど、断じて許すことはできません。連日、国会周辺で多くの国民が、憲法違反の戦争法案やめよの声を上げています。世論調査では、国民の大多数が成立を急ぐべきでないとしております。この声にこそ応えるべきであります。
 そこで、今回、そうした中で、先ほどから、作家の百田尚樹氏のとんでもない発言が問題になっております。
 昨日、自民党本部内で行われた勉強会で、安保法制や普天間基地問題にかかわって、沖縄の新聞は潰さないといけないなどと発言をし、出席した自民党議員からも、マスコミを懲らしめるためには広告料収入をなくせばいいなどというとんでもない発言がありました。報道の自由、言論の自由に対する許しがたい挑戦であります。また、沖縄県民を侮辱する許しがたい発言であります。
 総理にお尋ねします。自民党総裁として、この事実関係について、徹底した調査と謝罪を強く求めたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 自民党の考え方についてはもう既に申し上げているとおりでございまして、まさに報道の自由というのは民主主義の根幹をなすものでございまして、当然尊重されなければならない、今までもそうでありますし、今後ともそうあらねばならない、こう考えているわけでございまして、自民党の議員の中におきましてもこうした考え方が貫徹されなければならない、こう考えております。

○塩川委員 百田氏を呼んだのは自民党であります。百田氏の発言を何らいさめようとしなかったのも自民党であります。マスコミを懲らしめるためには広告料収入をなくせばいいと発言したのは、自民党議員自身であります。政権与党としての自民党の責任が問われている、自民党総裁としての総理に徹底した調査と謝罪を重ねて求めたいと思います。
 そこで、今回の安保法制は、ガイドライン改定と相まって、地球規模で、いつでも、どこでも、どんな戦争でも米軍支援を拡大しようというものであります。その一環として、これまで憲法上行えないとしてきた後方支援活動にも踏み出そうとしています。
 きょうは、米軍等に対する自衛隊の後方支援活動の内容について、まず中谷大臣にお尋ねをいたします。
 一九九九年の周辺事態法は、自衛隊が米軍に対して後方地域支援として物品及び役務の提供を行うことを定め、補給を初めとするその種類を別表に列挙しておりました。その上で、備考において除外するものを明記しております。
 今回の周辺事態法改定案、重要影響事態安全確保法案における後方支援活動では、この別表、備考部分はどのような変更が行われているでしょうか。

○中谷国務大臣 政府といたしましては、我が国の平和と安全を確かなものにしていくためには、重要影響事態というものを設けまして、こういった我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に対処している外国の軍隊等に対して、我が国として、実施できる範囲で必要なあらゆる支援を行うことができるように法的措置を講じておくということが重要であると考えました。
 現行の周辺事態法制定時におきましては、米軍からニーズがなかったために、弾薬の提供、そして戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機への給油、整備につきましては支援内容から除いておりました。また、物品、役務の提供は、公海及びその上空で行われる輸送を除き、我が国の領域において行われるものとしたわけでございます。
 しかし、その後、日米で防衛協力の協議を行いまして、ガイドラインの見直しが進められた協議の中で、米側から、これらを含む幅広い後方支援への期待が示されております。
 また、実際に一昨年、南スーダンのPKOに参加している陸上自衛隊部隊が、国連からの要請を受けて、韓国部隊のために弾薬提供を求められまして行ったということで、想定外の状況によって弾薬を融通する必要性が生じる場面もありました。
 さらに、安全保障環境が変化をして、脅威が世界じゅうのどの地域において発生しても我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得るという状況になりまして、この重要影響事態という事態をつくりまして、我が国の平和と安全を確保していくために不測の事態に対応していくということで、弾薬の提供、発進準備中の航空機への給油、整備、外国領域などに限られない後方支援活動について実施するよう措置するという対応をしたということでございます。

○塩川委員 今大臣にお答えいただきましたように、ここに、今まではできないとされていたものが、武器の提供を除いてできるようになる、弾薬の提供もできるということです。今の御答弁にもありましたけれども、今回の法改正で、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備支援もできるようになったわけであります。
 この戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備で言う整備というのには、一九九九年の周辺事態法の議論のときにもありましたけれども、修理だけではなく、武器の搭載なども含まれるものであります。また、戦闘作戦行動というものの中には、航空部隊による爆撃も入っているわけであります。
 そこで、大臣にお尋ねいたしますが、出撃準備中の戦闘機に対する給油及び整備支援とは、戦場で爆撃する米軍機に対する給油支援であり、戦闘機へのミサイルの搭載とかも含むものであります。米軍の戦闘行為と密接不可分となる活動であり、米軍の武力行使との一体化が問われたわけであります。だから、一九九九年の周辺事態法のときは、この出撃準備中の米軍機への給油支援については、米軍からのニーズがなかったということで除外するという整理にしたというふうに言われておりますが、いかがですか。
    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

○中谷国務大臣 委員が御指摘のように、現行の周辺事態法の制定時は、米軍からの要望がなくて、このような支援を行うということが想定をされなかったことから、自衛隊の実施する物品提供の内容には含めないということにしたところでございます。
 先ほどお話ししましたが、今般、ニーズが確認をされたということで、一体化のお話がございましたが、発進準備中の航空機への給油、整備について慎重に検討した結果、まず、現に戦闘行為を行っている現場、ここでは支援活動を実施しないという今般の一体化回避の考え方が適用できる。そして、発進準備中の航空機への給油、整備は、その航空機によって行われる作戦行動と時間的には近いものであると言えますが、まず、地理的関係において、実際に戦闘行為が行われる場所とは一線を画する場所で行う。次に、支援活動の具体的な内容、これは補給の一種の整備でありまして、戦闘行動とは異質の活動である。そして、他国の武力行使の任に当たる者との関係の密接性につきましては、自衛隊は、他国の軍隊の指揮命令を受けるものではなくて、我が国の法令に従ってみずからの判断で活動するものである。そして、協力をしようとする相手の活動の現状においてはあくまでも発進に向けた準備中でありまして、現に戦闘行為を行っているものではないということを考慮すると、一体化するものではないと言うことができるというふうに考えておるわけでございます。
    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

○塩川委員 ニーズの話はまた後で聞きますけれども、今お答えになったように、武力行使の一体化ではないという説明をされたわけですけれども、それはそもそも本当にそうなのかというのを、九九年の議論で改めてたどってみたいと思うんですよ。
 パネルにありますように、左手に、一九九九年のときの大森政輔内閣法制局長官の答弁を紹介しております。
 読みますが、こういう形態、これは発進準備中の航空機に対する給油等の支援の部分ですけれども、こういう形態における物品及び役務の提供というものは、やはり米軍との武力行使の一体化の問題について慎重な検討を要する問題ではないかということで問題にいたしまして、そして延々と議論を重ねたわけでございます、そのうちに、いや、そもそも米軍からの要請がないならばもう最後まで議論をし尽くす必要もないじゃないかということで、憲法上慎重な検討を要するということまでの共同認識を得て、それ以上の、絶対クロだというところまでの断定はしてないわけでございます、今もやはり憲法上の適否について慎重な検討を要する問題であるという認識には変わりございませんと述べていたわけであります。
 つまり、憲法上の疑義がある問題だったということを認める答弁というのがここに残っているわけです。
 そこで、お尋ねしますが、絶対クロだというところまでの断定はしていない、それは、憲法違反の疑義があるということへの留保が当然そこにあるわけですけれども、憲法違反の疑義が問われていたのに、今回どんな検討をしてクロじゃないということについて、もう一回説明してもらえますか。

○黒江政府参考人 今先生御指摘の、絶対クロではないという法制局長官の答弁が一月にあったわけでございますけれども、その後、同じ年の四月に、これにつきましてはニーズがないということで、「それ以上の検討を行うことはしなかったということでございます。」ということで、憲法上の疑義があるということまでおっしゃっているわけではないと私は思っております。
 その上で申し上げますと、今回の法案の整備の作業、検討作業の中で、先ほど中谷大臣から丁寧に御答弁申し上げましたけれども、四つの要因につきましてそれぞれ細部の検討を行った結果、この点につきまして、こういった行為については武力の行使と一体化するものではないという整理を、昨年七月一日の閣議決定を踏まえて行ったということでございます。

○塩川委員 大森四要素の話をされておられるんだと思うんですけれども、そもそもこのときの議論というのは、今答弁にもありましたけれども、ニーズがないという問題で整理はしたんです。しかし、ここに書いてあるように、憲法上慎重な検討を要する問題だ、憲法上の適否について慎重な検討を要する問題だから、これについては留保した上で、しかし現実にはニーズがないから外しましょうというのがこのときの経緯だったわけですよね。
 そこで、お尋ねしますけれども、そもそもこのときの理屈の話でいえば、給油という行為そのものは、実際にはいわゆる戦闘を行う現場と離れているということは自明のことであるわけで、安全を確保した場所で行うことになるわけであります。ですから、そもそも出撃準備中の戦闘機に対する給油は戦闘現場では行わない、これは当然のことですよね。

○中谷国務大臣 当然のことながら、実際に戦闘を行う場所とは一線を画する安全な場所でございます。

○塩川委員 ですから、実際に航空機に給油する場所というのは、基地ですとか艦船上ですとかあるいは空中給油ということになるわけで、安全を確保した場所で給油活動を行うのは当たり前であります。
 周辺事態法の場合も今回の場合も、戦闘現場で行わないということに変わりがありません。ですから、給油する場所の問題ではないということはいいわけですよね。

○中谷国務大臣 現に戦闘が行われている現場ではないというところでございます。

○塩川委員 周辺事態法のときの政府の説明では、日本の基地から出発する場合でも、戦闘準備中の米軍機への給油はだめということだったわけです。安全が確保されている日本の基地でも、出撃準備中の戦闘機に対する給油もだめだったということです。
 つまりは、安全を確保した場所で給油を行う場合でも、出撃準備中の戦闘機への給油はだめだった。武力行使と一体化しない根拠として安全な場所で給油するということはまさに説明になっていないという点で、先ほどの安全な場所の確保の話も一つありましたけれども、そういう理屈じゃないということははっきりしているわけですよね。

○黒江政府参考人 まず、正確に申し上げますと、先生は、だめというふうに周辺事態法のときに判断をされたとおっしゃいましたけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、判断をしなかったということでございます。これは、ニーズがないので判断をしなかったということでございます。
 その上で申し上げますと、地理的な関係がまず第一の要素でございますが、第二の要素といたしまして、こちらが行います支援活動の具体的な内容がどのようなものであるのか、また、当該支援を行う相手方と我々との間の関係というものがどういうものなのか、さらに、相手方がそのときに、支援を受けている際に行っている行動というのはどういうものなのかといったことを総合的に判断するということを、政府が以前から累次申し上げておるところでございます。
 それぞれの要素につきまして先ほど中谷大臣の方からそれぞれ細かく御答弁申し上げましたけれども、今回の法制の検討におきまして政府部内での詳細な検討を行った結果としまして、一体化はしないという結論に至ったということでございます。

○塩川委員 具体的内容について、どういう説明をされたのか、もう一度お答えいただけますか。

○黒江政府参考人 大臣の答弁の繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、まず、地理的関係につきましては、実際に戦闘行為が行われる場所とは一線を画する場所で行うものであること。
 二点目といたしまして、当方が行っております支援活動の具体的内容ということでございます。この点につきましては、補給の一種あるいは整備ということでございますので、戦闘行為、すなわち、物の破壊でありますとか人員の殺傷といったものとは全く異質の活動であるということ。
 三点目といたしまして、当方と支援を受けている相手方との関係ということでございますが……(塩川委員「もういいです。具体的な内容のところですか」と呼ぶ)はい。まさに具体的なことでございますけれども、自衛隊が他国の軍隊の指揮命令を受けるというような関係にはない、あくまでも我が国の法令に従ってみずからの判断で活動するということ。
 最後、四点目でございますが、協力しようとする相手の活動の現況については、これは当然のことでございますが、現に戦闘行為を行っているわけではない、そういうことでございます。

○塩川委員 それはおかしいんじゃないですか。今、具体的内容のところで、補給とか整備について、戦闘行為ではないとか人員の殺傷となるようなものではないとか言いますけれども、でも、皆さん、一九九九年の議論のときに大森長官が答弁をしているように、憲法上の適否の問題が残されている。
 これは、給油する場所の問題ではなくて、給油した戦闘機が戦闘作戦行動を行っているという問題なんじゃないですか。つまり、出撃準備中の戦闘機に対する給油がまさに戦闘行為と密接不可分なのでこれまで認めてこなかった、そこのところがまさに問われていたんじゃないですか。

○黒江政府参考人 今先生がおっしゃいました、実際の戦闘行為との密接不可分性といったものを判断する際に、先ほど私が御説明申し上げましたような四つの要素といったものを勘案するということは、政府は累次、周辺事態法のときから御答弁申し上げておるところでございます。
 これにつきまして、当時なぜこの点について実際の法律に盛り込まなかったのかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますようにニーズがなかったということでございまして、憲法上の適否、その点について慎重な判断を要するという状態で、最後の結論までは至っていなかったということでございます。
 今回の法整備の検討の中で慎重な検討を重ねた結果といたしまして、一体化するものではないという結論を得たということでございます。

○塩川委員 いやいや、出撃準備中の戦闘機が給油を受けて戦闘地域に行って爆撃を行う、空爆を行う、これは、アフガンのときなどにも多くの民間人の犠牲が出ている大問題なんですよ。こういったことをやることについては、やはり憲法上の適否の問題があるということで、慎重な判断が必要だと言っていたのに、この辺を何か簡単に変えてしまうようなやりとりというのは絶対納得がいくものではありません。当時の議論を反映していないと言わざるを得ない。
 ジュリストの七月号に、大森元内閣法制局長官のインタビューが掲載されております。出撃準備中の戦闘機に対する給油、整備の問題について、当時の経緯を語っております。
 なぜ別表の備考が周辺事態法ではついたのか。あの部分は、武力行使の一体化として、はねるか、はねないか、外務省、防衛庁と内閣法制局の間でけんけんがくがく議論がなされました。武力行使の一体化を肯定するか否定するかは大変な議論で、向こうは向こうで折れないので、では、それは武力行使と一体化する類型だから、それを断定して追い払えと言ったことがあります。そうしたら、そのうちに備考で除くことになりましたと。備考で除くことにした理由が、米軍がそれを求めていないことにしますということになりましたと。このように述べて、まさに戦闘機が発進しようという準備段階で給油する、整備するというのは、一番典型的な武力行使の一体化の事案なのです、こんな改正案が出てきたら、本当は国会で直ちに御指摘を願わなければならない事態であるはずですと述べております。
 これが当時の議論なんですよ。まさに一番典型的な武力行使の一体化の事案というのが、このように、出撃準備中の戦闘機への給油の支援と言われていたわけです。
 総理にお尋ねしますけれども、当時の長官が一番典型的な武力行使の一体化の事案と述べている出撃準備中の戦闘機への給油を、どうして認めることができるんでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 既に黒江氏から答弁をさせていただいておりますが、まさにこれは検討を要すると当時の大森長官も述べているわけでございまして、今回、新たな法整備をする際には、まさに検討を行ったわけでございます。
 そこで、発進準備中の航空機への給油及び整備は、当該航空機によって行われる戦闘作戦行動と時間的に近いのは確かでありますが、そうとはいえ、地理的関係については、実際に戦闘行為が行われる場所とは一線を画する場所で行うものであること、そして支援活動の具体的内容としては補給や整備であり、戦闘行為とは異質の活動であるということであります。まさにこれは給油でありますから、給油そのものを戦闘活動とは言えないであろう、こういうことであります。
 そして、他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性については、自衛隊は他国の軍隊の指揮命令を受けるものではなく、我が国の法令に従いみずからの判断で活動するものであること、協力しようとする相手の活動の現況については、あくまでも発進に向けた準備中であり、現に戦闘行為を行っているものではないことなどを考慮すると、一体化するものではないと言うことができると考えておりまして、そうした検討を重ねてきた結果、我々は判断したところでございます。

○塩川委員 いやいや、一番典型的な武力行使の一体化の事案と一九九九年当時の大森法制局長官が述べているという問題について、今の説明では納得いきませんよ。大体、武力行使の一体化の可否についてのこの政府の統一見解なるものについても、その部分というのは何にも書いてないじゃないですか。
 そういう点でも、一九九九年当時の憲法上の適否についての慎重な検討を要する問題、このことについてどういう整理をしたのかについて、改めて政府として見解を示していただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

○中谷国務大臣 先ほどから御説明いたしますけれども、今回、新たに整理をいたしました。そして、大森四原則に従いまして、その場所、支援内容、そして指揮系統、そして相手の状況、この四原則に従って検討いたした結果、現に戦闘が行われていない現場におきまして、武力行使と一体化をするものではないという結論に至ったわけでございます。

○塩川委員 一九九九年の当時の議論と今のやりとりというのは本当に整合的なものなのか、こういうことについてしっかりとした政府の見解を求めたいと思いますが、お諮りいただきたい。

○浜田委員長 理事会で協議いたします。

○塩川委員 あわせて、当時の法制局長官であります大森氏について、当委員会、この問題についての参考人としての招致をお願いしたいと思います。

○浜田委員長 もう一回、済みません。

○塩川委員 大森政輔氏について。

○浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

○塩川委員 次に行きます。
 先ほども米軍のニーズの話が出ましたけれども、米側からいかなるニーズが示されたのか。
 中谷大臣にお尋ねしますが、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油と弾薬の提供について、米側はどういうニーズがあると言っておったんでしょうか。

○黒江政府参考人 ニーズの点につきましては、ことしの四月にまとまりました日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの検討作業の中で、日米間のやりとりの中で、幅広く米側からニーズに対する期待といったものが示されたということを受けたものでございます。
 この点につきまして、さらに細部ということになりますと、個別の事項につきましては日米間の細部のやりとりの内容になりますので、相手方との関係もございますので、これ以上つまびらかにということは御容赦願いたいと思います。

○塩川委員 ガイドラインの検討作業の中で出されたという点では、給油を含めて包括的な米側の要求の一環ということであろうと思いますが、こういう米軍の要求に応えるために、今回のような、九九年当時ともたがう、憲法上の判断を変えたような問題であり、従来やらないとした給油を可能とするということであり、どんなときでも米軍のニーズに応えるものとなっているということを指摘せざるを得ません。
 そこで、今回の周辺事態法の改定案で、戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対する給油支援を可能とします。
 中谷大臣にお尋ねしますが、これは、戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対する給油支援という点では、具体的には基地での給油や艦船上での給油とか空中給油機による給油、これも可能になるということだと思うんですが、その確認をお願いします。

○黒江政府参考人 具体的な給油支援等の形態でございますけれども、今先生からまさに御指摘がありましたように、基地における給油支援、艦船上における給油の支援、あるいは御指摘がありましたような空中給油機による支援といったものも含まれるということでございます。

○塩川委員 重ねて確認しますけれども、重要影響事態、国際平和共同対処事態、武力攻撃事態、存立危機事態において、この航空自衛隊による米軍機及び他国軍機に対する空中給油も法律上は可能になるということですね。

○中谷国務大臣 重要影響事態また国際平和共同対処事態並びに存立危機事態に際しましても、部隊の移動、警戒監視、情報収集、輸送等、さまざまな目的を持って運用される米軍等の航空機に対して自衛隊が給油支援を行うことが想定されます。そのときに空中給油機を使用することも法律上は排除されませんが、実際どのような場面で空中給油機が用いられるかどうかは、個別具体的な状況に即して、地上基地等の利用も含めまして、全体的な運用の合理性という観点から適切に判断していきたいと思っております。

○塩川委員 排除されないということで、いずれの事態でも、航空自衛隊による米軍機及び他国軍機に対する空中給油が可能になるということです。
 自衛隊の空中給油機部隊の運用開始というのは二〇一〇年度であります。現在、四機保有をしております。愛知県の小牧に配備されておりますけれども、さらに、今期の中期防衛力整備計画、中期防で新たに三機購入するということも承知をしております。
 そこで、お聞きしたいのは、自衛隊の空中給油機をそもそも導入した当初の目的というのは何だったんでしょうか。

○中谷国務大臣 導入をした理由といたしましては、まず、専守防衛のもとに、航空機のステルス化、また搭載ミサイルの長射程化といった航空軍事技術の進展に対応しつつ、我が国の防空を全うしていくために、空中給油機能によりまして戦闘機の滞空時間を延伸する、要するに待ち受けですね、滞空時間を延伸していく、空中待機、警戒待機、この体制を整えることが不可欠であるということ。第二に、空中給油・輸送機が保持する多数の人員また小型貨物を迅速に輸送できる機能を国際協力活動等に有効に活用するということ。第三に、戦闘機の訓練におきまして、空中給油によりまして訓練の効率化、航空安全の確保を図ることができるといった点が挙げられまして、平成十二年に閣議決定をされた中期防においてこの計画を整備しまして、現在、四機、小牧基地に配備をしているということでございます。

○塩川委員 たくさん理由を述べていただきましたけれども、当時の議論というのはやはり、大臣がお答えになった、滞空時間を延伸する、空中警戒待機のためということだったわけであります。
 そこで、今たくさん導入のときの目的を述べられましたけれども、空中給油機導入時には米軍への給油というのは想定していなかったわけですね。

○黒江政府参考人 導入時の導入理由につきましては先ほど大臣の方から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、当然のことながら、同盟国であります米軍との間では、例えば日本有事の際には日米での共同対処といったことがございますので、その点につきまして、米軍との間での支援といったことを排除しておったわけではないと考えてございます。

○塩川委員 当時、そういう説明をしたんですか。

○黒江政府参考人 その点について、これは排除されていないということについては、我々としましては、当然の前提であるというふうに認識をしてございます。

○塩川委員 そういう説明があったという具体的な答弁はありませんでした。そういう説明はないんですよ、導入時というのは。
 目的、使い道は、あくまで日本の防空、つまり日本への武力攻撃に対処するため、自衛隊機のいわゆる空中警戒待機の用に供するためだと言ってきたわけです。当時の議論というのは、だから他国に脅威を与えるような兵器ではない、こういう説明をして議論が行われてきたわけです。米軍への補給の話というのは、その当時は全然出ていない話だったわけです。
 そこで、資料でも紹介をしておりますものですけれども、二〇〇四年に日米は、空中給油訓練の覚書を締結しております。これはどういう内容なのかについてお聞きしたいのと、あわせて、二〇一〇年に覚書を改定しております。その中身はどういうものなのか、違いはどこなのかについてお答えいただけますか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、二〇〇四年、平成十六年と二〇一〇年に覚書を結んでおります。
 まず、二〇〇四年、平成十六年一月のものでございますが、これは空中給油訓練に関する覚書でございまして、この覚書は、日米共同訓練における航空自衛隊及び米空軍の空中給油機及び受油機間の空中給油訓練の実施のための手順について定めたものでございます。
 次に、二十二年四月、二〇一〇年でございますが、これは、航空自衛隊の空中給油機KC767が本格的な運用体制を整えたことから、より具体的な手順を定める必要が生じたために、同年十月に新たな覚書を締結いたしました。四月から本格運用、十月に覚書でございます。
 この新たな覚書においては、日米ともに、NATOが定める空中給油手順書、ATP56を遵守すること、空自空中給油機から米軍機に給油する場合に必要となる事項につきまして追加をして定めたという内容でございます。

○塩川委員 二〇〇四年の覚書というのは、米軍の空中給油機から自衛隊機への給油訓練を実施するためのものでした。
 二〇一〇年の改定というのは、これは確認ですけれども、自衛隊の空中給油機から米軍機への給油訓練も可能とする、そういう中身が含まれているということですよね。

○深山政府参考人 御指摘のとおりでございます。空自の空中給油機から米軍機に給油する際に必要になる事項について、追加で定めたものでございます。

○塩川委員 自衛隊の空中給油機から米軍機への給油訓練を実施するということが、覚書の改定の大きなポイントだったわけであります。
 そこで、今答弁にもありましたけれども、この二〇一〇年度というのが、KC767の本格的な運用、つまり自衛隊の空中給油機部隊の本格的な運用が開始された重要な年でもあるわけです。
 中谷大臣にお尋ねしますが、この覚書の改定というのは米側からの要請があったものなんでしょうか。

○深山政府参考人 これは、今申し上げましたような運用体制が整ったことに伴いまして日米双方で協議したものでございまして、特に米側からだけ申し出があったというわけではございません。

○塩川委員 日米双方と言いながら、米側だけということではない、米側からも当然要請があったということであります。米軍の要請に応えて、自衛隊から米軍への給油を可能としたものであります。
 この改定覚書では、これは三枚目、二のところの「覚書の目的」ということでありますけれども、「本覚書の目的は、太平洋軍担任地域における航空自衛隊及び米空軍の空中給油機及び受油機」、給油を受ける側の航空機ですね、「受油機間の空中給油訓練を実施するために使用する手順を制定するにある。」というふうに書かれております。
 この米太平洋軍の担任地域というのはどこかといえば、アメリカの西海岸から太平洋、そしてインド洋に至るという大変広大な地域、エリアであります。
 日本防衛の空中警戒待機のためという空中給油機の導入の理由というのが、米太平洋軍の担任地域での米軍への空中給油支援、この訓練、こういう理由に変わってきたわけで、重大な変更と言わざるを得ません。
 大臣にお尋ねしますが、自衛隊の空中給油機部隊の本格的な運用が開始された途端にこの覚書改定を結ぶことで、なぜ、インド洋まで含む広大な地域での訓練を必要とする覚書を交わす必要があったんですか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 航空自衛隊と米空軍、他国も含めてでありますが、航空自衛隊の訓練はなかなか空域等の制約がありますので、アラスカ等他国において行う場合も含めて、広く訓練を行っております。そうしたことがありますので、このような覚書を結びまして、そうした訓練の際も含めて便宜を図ろうということで考えたものでございますが、必ずしもその地域全域において直ちに行うということを前提にしているわけではございません。

○塩川委員 ですから、米太平洋空軍のエリアで足を延ばして自衛隊の空中給油機も一緒に訓練をやりましょうということは、広大な地域で自衛隊の空中給油機が訓練をするということになる。
 この問題について総理にお尋ねしますけれども、今回の法案で、訓練に限らず、いずれの事態においても自衛隊空中給油機から米軍機への給油が可能となります。
 自衛隊空中給油機部隊というのは、私は率直に言って、この経緯を考えれば、米軍機への給油用のためにつくられたんじゃないのか。こういう率直な指摘というのは当然のことだと思うんですが、総理、いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 空中給油機が導入された経緯については既に大臣から答弁をいたしているとおりでありまして、いわゆるCAP、空中警戒待機のためであるということは明確でございますが、しかし、その中において、いざというときについては日米共同対処も想定、我が国の防衛でありますが、我が国の防衛において日米共同対処をするわけでございますから、航空自衛隊による空中給油活動は米軍の任務遂行にも資するものと考えているわけでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、まずは、新たな空中給油機の整備は、今般の法制の整備を前提として進めてきたものではなくて、あくまでも、防衛大綱及び中期防衛力整備計画の方針を踏まえ、我が国の防空を全うするために必要不可欠な装備品として整備を進めるものでございます。
 その上において、いわば訓練等においてはこの覚書、これは二〇一〇年の覚書でございますから、我々自民党、公明党の政権時代のものではなくて、民主党政権時代に覚書を結んだということでございますから、当然、今般の法制が前提ではないわけであります。
 繰り返しになりますが、その上で、我が国の防衛においての日米共同対処も想定されるわけでございますから、航空自衛隊による空中給油活動は、その際、我が国の防衛のための米軍の任務遂行に資するものと考えております。

○塩川委員 もともと導入を決めたのは自民党政権ですから。そういう流れの中で、今回、実際に導入がされて、本格的な運用が開始をされた。その本格的な運用の開始と同時に、こういった米太平洋空軍のエリアでの共同の訓練を行えるような手順書がつくられたというところに、まさに日本の空中給油機部隊というのは米軍のために、米軍が育て上げてきたというのが率直な経緯だと指摘をせざるを得ません。
 現に、米軍の嘉手納基地ニュース、二〇一〇年の十二月二十一日付ではその当時のことを指摘し、覚書により、用意が整えば自衛隊から米軍に給油できるようになったと述べたとされております。自衛隊の空中給油機部隊の体制が整ったから、今回の法改正で、米軍からのニーズができた、そういうふうにしたんじゃないのかと言わざるを得ません。
 当時の朝日新聞は、今後、米軍の作戦運用で拡大されれば、憲法解釈で禁じられている集団的自衛権行使につながりかねないと指摘をし、共同通信は、長距離攻撃能力を重視する米空軍の作戦運用に空自が深く関与することにつながる、米軍の武力行使との一体化を懸念と書いたわけであります。アジア諸国への脅威を与えることにもつながりかねない問題だと言わざるを得ません。
 そこで、この覚書ですけれども、この覚書の三項のところに「一般条項」というのが書かれております。その中に、制定されるとしている空中給油訓練の手順、これは先ほど答弁でも紹介をされましたが、北大西洋条約機構、NATOが定める空中給油手順書、ATP56に基づくものとされております。
 では、このNATOの基準というのはいかなるものか。大臣にお尋ねしますが、この二〇一〇年の改定覚書が準拠するとするNATOの空中給油の戦術手順書、ATP56はいかなる経緯により策定されたものか。このATP56について説明をいただけますか。

○深山政府参考人 お答え申し上げます。
 お尋ねのATP56は、ATPというのはアライド・タクティカル・パブリケーションの略でございますが、NATO加盟国を中心とした国々が、空中給油の標準化、インターオペラビリティーの確保のために定めた空中給油手順書だと承知しております。
 この中には、標準手順、編隊飛行、安全手順、通信等、実際に給油する際に双方が共通で守るべき点が記述されているということになっておると承知しているところでございます。
 ATP56を採用した場合には、手順書の中の国別附属書に、各国が保有する空中給油機名と当該空中給油機から給油が可能な相手側の航空機、そういうふうなものが記載されることになっておると承知しております。

○塩川委員 NATO加盟国を中心につくった手順書ということで、このNATOの戦略手順書は過去六回改定をされております。それは、一九九一年の湾岸戦争や、二〇〇一年からのアフガニスタン軍事作戦で各国の給油の手順がばらばらだったために、標準化を図るためと言われております。
 この間でも、英国の空中給油機は米国の空母艦載機に給油が可能で、アフガン軍事作戦のときには、空爆は米国が行う、空中給油と偵察は主に英国が担当する、そういう役割分担が行われていたわけであります。ですから、戦術手順書で想定されるのも、そういった事態を念頭に置かれていることになる。
 ですから、重ねてお尋ねしますが、このNATOの空中給油手順書というのは、要するに、米軍が同盟国を動員した戦争の教訓に学んでつくったものじゃないですか。アフガン軍事作戦などの教訓に学んで米国がつくったのがこの空中給油の戦術手順書ではないか。大臣、どうですか。

○深山政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、先ほど申し上げましたとおり、ATP56というのは、NATO諸国間の相互支援を促進するために制定されたものと承知しておるところでございます。
 また、我が国がこうしたものを採用するということは、米軍との関係におきましては、日米安保条約を結び、これまでも有事の際には共同対処を前提としている関係でございますので、相互運用性、インターオペラビリティーを向上させるためには非常に有益なものではないかと考えております。

○塩川委員 このATP56の性格というのは、その中身を見れば明らかであります。NATO諸国間で、今あったように、作戦上の相互運用性を高めるためにNATO標準的手順を発展させるとして、目的を四つ明記しております。
 NATO及び各国の司令官及び参謀に対して、NATOの航空作戦における空中給油の効果的な運用を促進することを目的として、指導要領を提供する。二つ目に、NATO部隊間での各国の空中給油能力のよりよい理解につなげる。三つ目に、NATO部隊間で相互に空中給油支援を促進する。四つ目に、相互の空中給油戦術及び手順の発展を促進するとあります。全くNATO軍事作戦のためのものとなっています。
 さらには、戦闘作戦、コンバットオペレーションについても、この文書で述べる空中給油の手順及び原則は、可能な場合にはいつでも適用すべきということで、まさにこの戦術手順書というのは、NATOの戦闘作戦まで想定をしたもとにつくられているということであります。
 中谷大臣、こういうNATOの戦術手順を日本が取り入れるということになるわけですよね。

○中谷国務大臣 米国がNATOの中の一員であることは事実でございますが、あくまでも日本とアメリカは、安保条約の関係で日米というのが基本でございまして、やはり日米の共同対処とか共同訓練とか、そういうことがございますので、日米の関係からこういう協定をしたということでございます。

○塩川委員 湾岸戦争とかアフガンの軍事作戦などにアメリカがNATO諸国を動員した、それと同じような準備を自衛隊にも要求するということになるわけですよ。ですから、日米間の取り決めなのにNATOの基準を取り入れるということは、米国側からの要求でそうなっているということですかね。

○中谷国務大臣 先ほど御説明したとおり、協議の結果ということでございます。

○塩川委員 米国側からの要求もあって、そういうことが起こり得るということを言わざるを得ません。
 このATP56の中には国別附属書というのがあって、国別基準関連文書というものがあります。これは、自国の空中給油機の詳細に関する情報などを取りまとめたものであります。
 日米の改定覚書の条文によると、日本がNATOに対してこの附属書を作成、公表して初めてアメリカへの給油が可能になることと定められています。そのとおりでよろしいですか。

○深山政府参考人 御指摘のとおりと思います。

○塩川委員 日本はこの国別附属書を既に作成、公表していますね。

○深山政府参考人 日本側の手続は既に終了しておると認識しております。

○塩川委員 作成、公表しているということです。
 このように、NATO基準の戦術手順書に基づいて日本も加わって一緒にやりましょうと。まさにNATOの集団的自衛権の世界の中に、日本も一緒に、そういったルールに従って行うということであります。
 総理にお尋ねしますけれども、この法案との関係でも、他国軍隊への給油を可能とする今回のような戦術手順書、こういう協定が既に結ばれているのに合わせて、このように空中給油が他国軍隊にも行えるような法案の準備を行ってきた、こういうことに重なってくるんじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 この覚書が結ばれたのは、附属書も含めまして、まさに民主党政権のときに結ばれたものでございまして、それは我々がまさにこの法制を進める前の話でございます。その中において、これが私は悪いと言っているわけではないわけでございまして、それは民主党政権時代に結んだものであって、まさにそこにおいては平和安全法制ということについては考えていなかったんだろうと思うわけでありますし、重要影響事態について想定していたものではないんだろう、こう思うわけでございます。
 まさに我々が空中給油機を導入したのは、先ほど来説明をしているとおり、コンバット・エア・パトロールのために導入した、こういうことであり、同時に、いわば我が国事態、我が国が侵略をされる、そういう状況のときに日米で共同対処する際に、空中給油機において、いわば一緒に日本を守る米軍に対して空中給油をして支援する、まさにこれは共同対処であろう、このように思うところでございます。

○塩川委員 実際には現場の方が先行していて、それに合わせるように法案をつくっているということが実態だということを言わざるを得ません。
 こういったATP56の国別附属書を明らかにしている国というのは紹介いただけますか。

○深山政府参考人 今手元にある資料ですと、先生お尋ねの国別の詳細なものをどこが出したかまでは明らかになっておりませんが、日本のKC767というものは既にそのリストに登載されております。また、アメリカでは、KC10、KC135が登載されております。(塩川委員「いや、その話じゃなくて、国別附属書の話」と呼ぶ)
 それにつきましては、現在、手元にございませんので、詳細はわかりかねます。

○塩川委員 NATOの国々がそっくり入っている、それに加えてオーストラリアとかシンガポールとか南アフリカとかスウェーデンという点でいえば、要するに、こういう数十カ国にわたって空中給油が可能となるようなものであります。
 既に日本は軍と軍との間で空中給油の手順を整えている、一体いつからNATOの一員になったのかと言わざるを得ないような事態になっているわけで、先ほども申しましたように、今回の法案で集団的自衛権の限定行使に踏み出そうとしているというのは、このNATO基準の戦術手順書の作成の動きが先取りとなっているんじゃないのかということを言わざるを得ません。
 今回の法案は、米軍だけでなく、他国の軍隊にも給油できるということになります。こういった、先ほど私が紹介したようなNATOやその他の国々にも当然のことながら給油できるようになる、そのことは大臣もお認めになりますね。

○中谷国務大臣 しかし、空中給油につきましては、先ほどお話ししたとおり、目的というのは我が国防衛。特に、航空優勢と申しますけれども、他国のこういった航空の能力が上がれば上がるほど、我が国の海空域等を守るためには、制空権を守るために、スタンドオフといいますが、CAPということで、やはり空中待機というのが必要でありまして、そのために空中給油機能が必要であるということでございます。その上で、日米共同対処をしていくということでございます。

○塩川委員 インド洋で空中警戒待機するわけないんですから、そういった点でも、まさに軍と軍との間での空中給油の仕組みづくりをすることによって、米軍が行ったアフガン作戦のような、こういう教訓を踏まえた戦術手順書を使うことによって自衛隊が現実に米軍と一体となった行動に移る、こういうことを先取りするものだということを改めて指摘しておくものです。
 憲法上疑義のある重大な施策というのが、日米間の覚書程度のもので進められてきている。既に実態が先行し、それに法律を合わせるような動きというのは極めて重大であります。アメリカに言われればNATOの基準にも関与し、これを取り入れる、こういうことはとんでもないということを言わざるを得ません。
 実態は着々と進んでいるわけで、資料でも日米の空中給油訓練について取り上げています。配付資料の一番後ろに挙げてあります。これは日米共同訓練、空中給油訓練の実績ですけれども、自衛隊の空中給油機KC767と米軍機が参加をした空中給油訓練が毎年のように実施をされております。
 そこで、お尋ねですが、米側の参加部隊や参加機種について、空欄の部分があります。これを明らかにしていただけますか。

○深山政府参考人 先生がまさにお配りになりました資料の下欄、注の二のところに書いてありますけれども、これにつきましては、米側から、参加機種を公表することについて了解が得られておりませんので、公表は差し控えたいと思っております。

○塩川委員 日米共同訓練ですから、どういう航空機同士でやっているかということを明らかにするというのは、本来、国民の求める中身であります。
 私の方が指摘をするのは、この共同訓練、例えばレッドフラッグ・アラスカなどで行われているわけですけれども、これは我が党の議員が以前も指摘をしましたが、二〇〇九年十月の米アラスカ州の多国間軍事演習、レッドフラッグ・アラスカにおいて、航空自衛隊のF15戦闘機の編隊が、核攻撃をも行う米軍のB52戦略爆撃機を援護する訓練に参加をしていた。米爆撃機の護衛というのは、憲法九条が禁じる集団的自衛権の行使を前提とした訓練そのものだ。こういった訓練実態が明らかになっていない。こういうことについての開示をぜひとも求めたい。いかがですか。

○浜田委員長 深山運用企画局長、時間が来ておりますので、手短に願います。

○深山政府参考人 レッドフラッグ・アラスカ、御指摘の訓練は、確かに空自戦闘機と米空軍爆撃機が参加して防空戦闘訓練等を実施いたしましたけれども、我が国が我が国以外の特定の国を防衛することを目的とするような訓練というのは行っておりません。これは、我が国防空のための、防衛のための戦術的訓練として実施したものでございます。

○塩川委員 資料の開示を求めます。

○浜田委員長 理事会にて協議いたします。

○塩川委員 終わります。