国会質問

<第189通常国会 2015年07月08日 平和安全特別委員会 18号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。
 私の方は、最初に、石河参考人と落合参考人にお尋ねをいたします。
 その他の参考人の方からも既にお話もございましたけれども、最高裁の砂川判決に関連してお尋ねをいたします。
 政府は、集団的自衛権行使の根拠として最高裁の砂川判決を持ち出しましたけれども、この判決というのは、集団的自衛権について触れていないとともに、当時のアメリカ政府の圧力のもと、統治行為論をとり、憲法判断を避けたものであります。国会審議の中でも、横畠内閣法制局長官は、引用箇所は傍論部分だということは認めながらも、それなりに重みがあるということも述べておられますが、この集団的自衛権の行使の根拠としての砂川判決についてどのようにお考えか、お聞かせいただけないでしょうか。

○石河参考人 この判決に関しましては、埼玉弁護士会におきましても、その問題性について、市民集会等を行いまして内容を明らかにしております。
 この判決は、司法の独立を侵す大変重要な問題を含んだ判決である。弁護士会の一部では、この判決が無効であるというようなことで、法的手続で争おうというくらいの考えを持っていらっしゃる方が多いです。
 集団的自衛権に関しましても、当然、どの学者の方からお伺いしても、砂川事件から、集団的自衛権が否定されているわけではないというような解釈はとられていないと思っております。私もそのように考えております。
 したがいまして、これを根拠に集団的自衛権の行使容認を合憲であると主張することは無理があります。

○落合参考人 今の石河先生の話とほぼ同じことになるんですけれども、砂川事件から集団的自衛権というものを導くのは、もともとやはり無理があるであろう。
 なぜならば、それは砂川事件でそこが争点になっているわけでもありませんし、集団的自衛権というものを意識してその判断が示されているわけでもない。その上に、その後の政府見解においても、砂川事件を根拠にして集団的自衛権というものが肯定されているんだというふうなことは、全然その議論もされていないわけですから、今になってそれを持ち出した上で、あれは集団的自衛権というものを肯定する根拠になるんだということは、そもそも無理がありますし、そこに固執するのは非常におかしいというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、細谷参考人にお尋ねいたします。
 この安保法制に先立って、日米両国の間でガイドラインの改定が行われました。その中身について一点お尋ねしたいんですが、同盟調整メカニズムのところであります。
 平時から利用可能な、政府全体にわたる同盟調整メカニズムを設置し、運用面の調整を強化し、共同計画の策定を図るということが述べられているわけですけれども、従来、調整メカニズムはあったわけですけれども、平時からということではありませんでした。具体的には動いていなかった。それを政府全体にわたって今後動かしていこうというところで、安保法制との整合性を確保するということも、共同発表の中でも述べられているところです。
 この平時から利用可能な、政府全体にわたる同盟調整メカニズムというのは、一体どういうものなのか、この点について教えていただけないでしょうか。

○細谷参考人 冒頭の陳述で私が申し上げたこととも少し関係しますが、今の安全保障環境というのは、冷戦時代のような平時と戦時というものがきれいに分かれる状況ではなくて、先ほど申し上げたようなイスラム国の中東情勢やあるいはウクライナ情勢に見られるような、平時と戦時の中間のような状況になっているわけですね。
 さらに言うと、同盟、そもそもこれは、冷戦時代において日本を守るため、防衛するため、攻撃を受けて日本を守るための同盟であったものが、今では、国際政治学者の間で、日米同盟を公共財、国際公共財、つまりは、日米同盟自体がアジア太平洋におけるスタビライザー、安定化させるための要因になっているということで、平時における同盟の協力というのが、恐らく従来よりも大きな意味を持ってきたと思うんです。
 それは、警察的な機能とは違いますが、平時において警戒監視活動をすることによって、未然に、戦争が起きないような活動をする。
 そうすると、そもそも同盟というものは、武力攻撃を受けることを前提につくられたものですから、今おっしゃられたような同盟調整メカニズムというのは、むしろ冷戦後の、現代の安全保障環境にふさわしい形で、つまり、日本に対する大規模な、本格的な武力攻撃というのは起こりそうもない、しかしながら、日米同盟が、一定程度、日米が協力することで、平時においてアジア太平洋において、公共財として、安定をするための目的に使うことができる。
 そのような認識の変化というものが、さらには、先ほど申し上げたような平時でも戦時でもないような状況が生まれつつあるということが、恐らくは同盟調整メカニズムができた目的の、大きな理由であろうというふうに考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、佐伯参考人と倉持参考人にお尋ねいたします。
 今お話を出しましたガイドラインの改定の中にも、他国軍隊の海外活動への民間協力の問題が挙げられております。
 こういう中では、例えば、国際平和支援法においては、国による、民間協力を依頼できる規定が盛り込まれているものです。周辺事態法の規定と同様ということだそうですけれども。
 私は、率直に言って、こういった海外での他国軍への後方支援活動、兵たん活動に民間の事業者がかかわるようなことになれば、今まで以上に危険性が増すことになるのではないのか、今回の法案で民間事業者のリスクが高まらないと言えるのか、この点についてお二方にお尋ねしたいと思います。

○佐伯参考人 私は、この中身は詳しくはわかりませんが、確かに、民間が加わることはリスクがかなり高まる、こういうふうに思いますので、とりわけ、やはりこれは自衛隊を中心に当然考えるべきであるというふうに思います。
 各国が協力して世界平和と安全に貢献していくということについては、民間も変わりがないというふうに思いますけれども、やはり日本の平和と安全ということについては専門的に検討することが望ましい、こういうふうに思います。

○倉持参考人 私も、結論から申し上げると、そのリスクは上がると考えられます。
 まず、そもそも後方支援も、今回の法改正だと兵たん活動を認めていることになっておりますので、その兵たん活動をたたけというのは軍事の常識ということは、もうさんざん言われていることであります。また、それ以外にも、現に戦闘が行われていない現場ですか、それがそういう危ない状態になったらやめますというふうに言っていますけれども、危ない状態になったからこそ、多分、反撃しなきゃいけない状態とかというのが生まれるような、まさにリスクが高まるんだと思うんですね。
 そこにもし民間が絡むようなことがあれば、もうリスクは飛躍的に上がるだろうというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、石河参考人と倉持参考人にお尋ねをいたします。
 このガイドラインの改定におきましても、これは安保法制との整合性を確保すると言われているものであります。
 共同発表の中では、例えば、在日米軍の再編の問題が挙げられておりました。沖縄県民が強く反対をしております辺野古への米軍新基地建設を改めて日米両国が確認する。まさに沖縄県民の願いと逆行する方向での、こういった立場を確認するということも前提となっております。
 また、共同発表の中では、最も現代的かつ高度な米国の能力を日本に配備することの重要性を確認ということで、いわば最新鋭のさまざまな装備を日本に配備するということも盛り込まれる。その一環として、米軍横田基地へのCV22オスプレイの配備も発表されたところであります。
 私は、沖縄での基地被害の深刻さ、これは直ちに除去されなければならない、同時に、日本列島全体が米軍の訓練場となっている実態があるのではないのか。
 例えば、首都圏におきましても、厚木基地における空母艦載機の騒音被害あるいは部品の落下、墜落への心配、また、この空母艦載機などが群馬県の上空で、前橋や渋川や高崎といった人口密集地で宙返りをするような戦闘訓練を繰り返している、これが大きな被害をもたらしております。
 米軍横田基地におきましては、C130の戦術輸送機を中心にして、パラシュートの降下訓練というのが、この数年間、非常にふえております。
 ここ、横田基地に所属するC130戦術輸送機が、首都圏全域を編隊を組んで低空飛行訓練を行っている。こういったことについて、米軍横田基地の当局自身が日本の航空関係者に地図も渡して、このエリアで飛んでいますから注意してくださいねという呼びかけを行っています。ですから、各地でこういうC130の低空飛行の目撃事例もある、不安の声も上がっている。
 仮に、ここにCV22オスプレイが配備をされることになれば、こういうC130の訓練飛行が同様に行われることになりはしないのか。当然、埼玉の上空でもC130は飛んでおりますから、CV22オスプレイが飛ぶことになる。MV22に比べても三倍も事故率が高いと言われているこういった米軍機の飛行について多くの懸念の声が上がるということは、当然言えることだろうと思っています。
 こういった、日本全体が米軍の訓練場となっている、米軍基地の存在というのが日本国民の暮らしと安全と相入れない、そういう状況になっているのではないのか、私はこのことを思うんですが、このことについてお話をいただけないでしょうか。

○石河参考人 沖縄の問題に関しましては、もちろん、とんでもないことでございます。辺野古に移設するということは、移設ではなくて新たな基地の建設でありまして、沖縄にまた新たな基地の負担をかける、私は暴挙と言ってもよろしいんじゃないかと思っております。
 そもそも日本の制空に関しましては、横田基地が首都圏を、特に東京の上空の制空を支配しているという、このような屈辱的な独立国家がどこにあるのかと私は常々考えております。
 アメリカの軍隊、基地が日本を守る、このように言われておりますけれども、実態は、アメリカの世界戦略の中に日本が組み込まれて軍隊が配備されている、そして、アメリカの軍隊、軍事施設、軍事予算の削減の補填として日本の自衛隊が使われている、このように認識しております。
 先ほどどなたかの質問で、抑止力とはどういうものかという話が出ましたけれども、軍事力による抑止力であれば、それは余り効果がないのではないか、このように考えております。
 なぜならば、世界最大の軍事力を持っているアメリカでさえ、国内外のアメリカ国民の安全保持ができていない状態。むしろ、軍事力を持っていない、まあ、自衛隊はありますけれども、海外に軍事力を出さない日本の方が平和である。
 この実態は、抑止力とは何かということを考えさせる一つの事例だと思います。抑止力は経済でもできますし、もちろん外交でもできる。日本の国内にあるアメリカの施設は、やはり日本に対して安全をもたらすよりも危険をもたらす可能性の高い施設である。
 私は、基本的には、安保条約はいずれ廃止すべきだろうというふうに考えておりますけれども、極力減縮していくべきだろうということは言えると思います。オスプレイやその他のさまざまな軍備についても、自衛のために本当に必要な軍備なのか、これをさらに国会できちんと審議して、チェックをしていただきたい。自衛に関しての必要最小限の軍備であるということの範囲内で、私たちは抑止力を考えるべきなんだろうというふうに考えます。
 ちょっとまとまりませんけれども、以上でございます。

○倉持参考人 私も、基地問題というのはもはや主権の一部移譲みたいな話で、譲り渡しているという移譲状態だと思っておりまして、そこまでしているのに、これ以上アメリカにいろいろな政策上の問題でつき合う必要があるのかなというのが率直な意見で、集団的自衛権の行使に関しても、政策論的にもそのように考えております。
 今回の安保法制も、私がお示ししたように、まだ数十個の論点が残っているにもかかわらず、何か夏までに成立させなきゃいけないんじゃないかみたいなムードが漂っているのも、やはり背後にアメリカがあるからなのかなという理解もしております。
 今回は一応、法律家としての意見ですので、やはり、余りにこの議論がされていない状態でこれが強行採決されたり、それと、憲法の問題に関して何もクリアせずに解釈改憲してしまうという、政治が法を軽視している状態ということに関して、非常に危機感を持っております。それによって、恐らく日本は国際的な法交渉とかルールづくりというのも実は非常に弱いんだろうと私は理解しているんですね。それはやはり政治が法を軽視している帰結だろうというふうに非常に思っております。
 基地問題もそれの延長線上で捉えているというところであります。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 最後に、改めてまた石河参考人と倉持参考人にお尋ねいたします。
 石河参考人は、埼玉弁護士会で、違憲のこの法案に対しての反対の運動に取り組んでおられる。また、倉持参考人は、明日の自由を守る若手弁護士の会の会員として、憲法カフェなど、憲法違反の問題についても多くの市民の方々と交流、対話されておられることと思います。
 この法案の審議が進む中でのこういった市民の皆さんの変化をどのように受けとめておられるのか、そういった世論の変化というのをどのように受けとめているのかということをお聞きしたいのと、そういう中で今一番訴えたいことは何か、このことについてお話しいただけないでしょうか。

○石河参考人 最近の市民の反応は、先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、説明すればするほどわからなくなっているではなくて、説明を受ければ受けるほど問題の多い法案であるということがわかってきた、このように私は感じております。
 例えば、駅頭でチラシを配ったりティッシュを配って反対運動をしておりますけれども、最近の市民の反応は大変好意的でありまして、弁護士の方に頑張ってくださいという声がかかることが大変多くなっております。
 それから、集会も、これは全国全てに通じていることですけれども、全て過去最高の参加者を得る集会になっております。さらに、この法案の審議が進めば進むほど、私は、市民は、この法案の問題点がはっきりしてくるだろう、したがって、反対の意見が多くなるだろう。
 これを、審議を中断して、国民の反対の意見がふえる前に強行採決をするようなことがあれば、これは民主主義に対する挑戦だと私は思います。断固として、埼玉弁護士会を初め日本弁護士連合会も反対の運動をするだろう、現状ではそんな雰囲気でございます。

○江渡座長 続きまして、倉持参考人。時間になっておりますので、端的におまとめください。

○倉持参考人 いわゆる無関心層と呼ばれた方たちの危機感というのは先ほどお話ししましたので、逆に、私は、例えば立場が違うというか、集団的自衛権は容認してもいいんじゃないかとか、そういう市民の方々とも勉強会をやったりしているんですが、そういう方々でさえ、今回の法律というのは法的にこれだけ問題ですよと言うと、集団的自衛権を行使した方がいいと思っていた人も、このまま自衛隊をやるのはどうなんだとか、そういう問題意識が非常に広がっている。つまり、この法律自体の欠陥についても、説明をすれば、国民の方々は理解をしてきている。
 ただ、我々が、弁護士が市民の方と同じ目線で説明をしたからわかるのであって、本来は、先ほども繰り返し申し上げているとおり、国会の答弁でやはりもっと説明責任を果たしていただきたい。
 本当に政府の答弁は、もし裁判だったら裁判長に怒られるような答弁ですから、そこは本当に逃げずに答弁をしていただいて、これはまだ議論が尽くされていないというのであれば、ぜひ勇気を持って、これは本当に延期でも廃案でも、とにかくこの国会で強行採決をするようなことがないように、その勇気を持っていただきたいというのが、とにかく一番今訴えたいことであります。
 以上です。

○塩川委員 ありがとうございました。