国会質問

<第189通常国会 2015年07月28日 倫理選挙特別委員会 7号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 自民、維新等五会派提出の参議院選挙制度改革に関する公選法改正案について質問をいたします。
 自民党発議者の鶴保議員にお尋ねをいたします。
 参議院の本会議質疑において、鶴保議員は、今回の改正は参議院始まって以来の合区という大改革を行っていると答弁をされております。確かに、参議院発足以来、全国区、比例代表区にせよ、地方区、選挙区にせよ、選挙区割りの変更を行ったことは今回が初めてということであります。
 参議院始まって以来という大改革なら、当然、十分かつ慎重な審議が求められます。しかし、参議院での審議を見ると、大改革と言いながら、法案提出の際にわざわざ委員会審査省略の要求までつけていた。そのため、倫選特での委員会審議も行わなかった。もちろん、参考人質疑や公聴会、地方の声を聞く機会も設けておりません。
 お尋ねしますけれども、これで大改革にふさわしい審議だと言えるんでしょうか。

○鶴保参議院議員 先ほど来お話がございますように、各会派の思いを述べていただきました。我が会派といたしましては大改革であると思っておりますが、他党、よその会派の方々の対案も出ております。そういった方々と国会の運営というのはともに協議をしながら進めるものであります。
 御存じだと思いますが、国会法五十六条、先ほど来出ておりますとおり、緊急を要するものについてはこういう審査を省略することができるというふうに明記をしております。議運の方でもそうした取り扱いについて真摯な議論がなされたものと理解をしております。その結果としてこういう結果になったというふうに御理解いただきたいと思います。

○塩川委員 委員会審査省略の過去の例というのを聞いても、国会法とか人勧に関する法案など、全会派一致の案件だけなんですよ。意見の割れているような、対案も出ているような、そういう法案について委員会審査を省略するようなことというのはないわけですよ。
 そういう点でも、極めて重大な、国民に対する理解を促すような、本来国民の基本的権利にかかわる問題について、こういう対応でいいのかということがまさに問われているんじゃないでしょうか。国会での丁寧な審議があってこそ、選挙制度への国民の納得と合意が進みます。
 過去、全国区廃止、比例代表制導入のときは、本会議の質疑も当然やり、四十五時間を超える審議を委員会で十八回も開いて、参考人質疑や公聴会もやっていたわけであります。大改革と言うんだったら、やはりこういう丁寧な議論こそ行うべきであって、一部の政党で決めた選挙制度についてまともな議論を国会で行わずに押し通そうというやり方では、国民の理解が得られないばかりか、民主主義の土台づくりである選挙制度の改革のあり方として許されるものではありません。
 そもそも自民党は、最高裁判決が指摘をする都道府県単位の選挙区選挙という仕組みの見直しを図る考えが全くないのではないかと疑わざるを得ません。
 参議院の本会議の答弁で、参議院議員選挙は都道府県から改選ごとに最少でも一議席選出するという憲法改正を視野に入れ、自民党の憲法改正推進本部の改正草案に、改選ごとに各広域的な地方公共団体の区域から少なくとも一人が選出されるよう定めなければならないという規定を盛り込んだと述べております。
 つまり、最高裁判決が一票の格差の違憲状態解消のために都道府県単位の選挙区選挙という仕組み自体の見直しを求めているにもかかわらず、改憲によって違憲状態を解消しようなどというのは、本末転倒ではありませんか。違憲状態を解消するために憲法の方を変えるという、こんなやり方がどうして納得できるんでしょうか。お答えください。

○鶴保参議院議員 最高裁の違憲状態の判決を引用なされましたが、同じ判決の中に、都道府県が地方における一つのまとまりを有する行政等の単位であるという点は今日においても変わりはないという判決文もございます。
 したがいまして、今回問題になっておりますのは、行政上、そして政治上の都道府県単位の中での政治上の都道府県単位というもの、つまり、選挙制度としての都道府県をどう維持するべきなのか、どう考えるべきなのかというところが論点になっているというふうに我々は理解をしております。
 したがいまして、これについては、私たち国会議員、立法府にいる我々がしっかりと議論をするべきだ。そして、その議論の前提となるのは、先ほど来申し上げておりますとおり、参議院のあり方も前提にした大きな議論が必要であるということであります。
 私どもの会派といたしましては、そのことの検討を踏まえた上で、憲法改正も視野に入れて議論を進めていく方針であるということを申し述べたまでであります。
 以上です。

○塩川委員 つまり、現行の憲法の制度のもとで本気で一票の格差是正をする考えはないということを言わざるを得ません。現行の選挙制度を変えるつもりはないということを言っているのと同等であります。投票価値の平等を図るためには、都道府県単位の選挙区選挙の仕組みそのものを見直さざるを得ないということを指摘せざるを得ません。
 そもそも、初めて参議院の選挙制度が大きく変更されたのは、一九八二年の全国区制を比例代表制に変えたときであります。
 そこで、多様な民意を鏡のように反映させる制度こそ選挙制度の抜本改革では必要だという立場でお尋ねをしますが、一九八二年のときの選挙区選挙で、定数二、改選定数一となる選挙区の数は幾つだったでしょうか。それ以降の参議院選挙制度改革時の数についてもお答えいただけますか。

○清水参議院議員 定数二の選挙区の数についてですが、平成六年改正前は二十六、平成六年改正後は二十四、平成十二年改正後は二十七、平成十八年改正後は二十九、平成二十四年改正後は三十一であったものと承知しています。
 また、今回の改正案が成立した場合には、定数二の選挙区の数は、鳥取県及び島根県選挙区と徳島県及び高知県選挙区、合区される選挙区を含めまして三十二となるものと承知しています。

○塩川委員 ですから、改選定数一の選挙区がずっとふえてまいりました。全都道府県の約七割の選挙区がいわば小選挙区制であります。今回の法案では、合区を含め小選挙区は、今お答えいただきましたように、三十二に上ることになります。
 四十七都道府県のうち三十四県がいわば小選挙区に当たるという点で、私たちは、小選挙区制というのは、衆議院の選挙においても、四割の得票で八割の議席を占め、多数の死票を生み出すと指摘をしてまいりました。こういった改選定数一の選挙区がふえ続けるということでは、民意を鏡のように反映できることにはならないということを指摘せざるを得ません。
 少なくとも、現行定数のもとでは、都道府県単位の選挙区選挙は民意を反映しない制度にならざるを得ないのではないのか、そういう認識をお持ちかどうか、発議者の方にお尋ねをいたします。

○岡田(直)参議院議員 お答えを申し上げます。
 多様な民意を鏡のように反映する制度というのはどのような制度かということを思うわけでございますけれども、一方で、参議院の選挙というものは、昭和二十二年の発足以来、全国単位と選挙区単位で行われております。
 全国単位の比例代表選挙が果たす職能代表などの多様な人材を輩出する役割という、これも一つ衆議院とは違った独立した役割を持っておりまして、それと同時に、選挙区が果たす地域代表的性格を有する議員を輩出する役割というものも、それぞれ今日においてなお重要な意義を有していると考えられるわけでございます。
 先ほども申し上げましたけれども、民意といっても、先ほど仰せのとおり多様な民意がございます。都会の民意もあれば地方の民意もある。このように考えながら、しかし、最高裁が要請する都道府県制度の見直しにも踏み込む等のという、例示でありますけれども、その要請に従い、また格差についても大幅に縮小することによって、今回の選挙制度というものは合憲の判断を受ける、私はこのように確信をいたしております。

○塩川委員 地域代表制のお話をされましたが、この間の最高裁判決でも、地域代表制については直接の憲法上の要請はないということも指摘しているところであります。
 地域代表の重要性のことをおっしゃるわけですが、この定数二、改選定数一の選挙区では、比較第一党の候補者しか議員に選出をされない。比較第一党の議員の議席がその地域の民意を全て反映することになるのか、地域におけるその他の民意が切り捨てられていることになるのではないのか。選挙制度を抜本的に見直すのであれば、先ほど述べた多様な民意を鏡のように反映させる制度こそ必要であります。
 そこで、最高裁判決が求めた都道府県単位の仕組み自体の見直しですけれども、これに応える抜本改革案として、二〇一〇年十二月に、西岡参議院議長の参議院選挙制度の見直し、たたき台、いわゆる西岡私案が示されました。
 ここでは、「一票の較差是正は、国民の基本的人権にも関わる喫緊の課題であり、早急に取り組む必要がある。しかし、現行の都道府県単位の選挙区を前提とした場合、較差是正には限界がある。」として、「現行の全国単位の比例代表選出議員の選挙及び都道府県単位の選挙区選出議員の選挙を廃し、総議員(二百四十二名)につき、全国九つのブロック単位の選挙区に人口比例により定数を配分した上で非拘束名簿式比例代表制の選挙により選出する」としたわけであります。
 総定数を維持し、ブロックごとの比例代表制によって格差是正を実現しようという西岡議長の当初案は、重要な提案だと考えております。
 発議者の方にお尋ねしますが、最高裁の判決にある都道府県単位の選挙区選挙の仕組みの見直しは、ブロック単位のこのような比例代表で行う、西岡私案などは当然そのたたき台としてなり得るのではないのか、このように考えますが、いかがでしょうか。

○岡田(直)参議院議員 ただいまの西岡私案等に、ほかにもブロック制の御提案というのはさまざまな形でなされておるわけでございますけれども、やはり現状の全国比例区と比べて、また都道府県選挙区と比べて、いささかブロックというものは中途半端な感じがいたすわけでございます。
 それは、双方の利点が十分に生かされない。全国比例、職能代表というか有識者の集まりである参議院の比例、そして都道府県単位を極力尊重した選挙区の議員、これは地域の代弁者。その中間的な位置づけになって、例えば選挙の場合も、候補者と有権者の距離が遠くなってしまって、顔の見えない選挙に陥るおそれがなきにしもあらず、このような懸念も抱いております。
 それぞれの各派の思いはさまざまにございますけれども、私としては、ブロック単位というのは、そういうメリットもあればデメリットもある、どちらかといえばデメリットの方が大きいのではないかというふうに思っております。

○塩川委員 顔が見えないといったら、比例代表もそうだと言われかねないわけで、そういうことは理屈にならない。
 我が党は、選挙制度を考える上で最も重要なことは、多様な民意を議席に正確に反映させることであるとの基本的立場に立って、西岡議長が当初提示した総定数維持、ブロックごとの比例代表制をたたき台にして議論することを提案し、各党の合意を形成する努力を行ってまいりました。
 今、過半数の国民が戦争法案反対の声を上げても、選挙制度によって民意が反映されていない衆議院では、民意無視の政治が行われ、強行採決が行われました。
 今、国民は、私たちの声が届く国会をと求めております。この声に応え、国民、有権者の参政権の点からも、民主主義の根幹をなす選挙制度を根本的に見直し、民意が正しく反映する制度に見直すことを求めて、質問を終わります。