国会質問

<第190通常国会 2016年01月07日 議院運営委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 ことしは、日本国憲法公布七十年という節目の年です。憲法との関係で、検査官候補者の柳麻理さんに三点お尋ねしたいと思います。
 柳さんが検査官として就任した直後、会計検査院は、秘密保護法の法案策定過程において憲法上問題ありと指摘をしておりました。これに関連してお尋ねします。
 第一に、憲法九十条の意義についてであります。
 会計検査院が内閣官房に発出した文書を見ると、会計検査院は、憲法九十条一項「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、」の規定について次のように述べています。ここで言う「すべて」とは、戦前、機密費や軍需費関係について、会計検査院の検査の対象外とされていたことに対し、会計検査院が検査できない分野はないということを憲法上明確に定めたもの、このように述べておりますが、柳さんもこの認識ということでよろしいでしょうか。

○柳参考人 憲法九十条は、財政民主主義の重要なことを定めております。
 今御指摘のとおり、会計検査院は、憲法九十条に基づきまして、国の収入支出の決算の全てを毎年検査するということでございまして、その中で、特定秘密に係ることとして情報が提供されないといったことがあってはならないというふうに考えております。
 会計検査は、これまでも、特定秘密に当たるような情報を得まして十分に検査をしているところでありますので、そのような検査を今後もしていかなければならない、それが国民への説明責任であり、財政民主主義だというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 機密費や軍需費も例外としないというのがこの憲法九十条の立場だということでよろしいでしょうか。

○柳参考人 そのように考えております。

○塩川委員 今触れていただきましたけれども、秘密保護法と憲法九十条の関係についてお尋ねします。
 会計検査院は、さきの内閣官房に発出した文書の中で、秘密保護法について、憲法九十条一項との関係で問題があると厳しく指摘をしています。
 我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたという要件が定められており、検査上の必要があったとしても、検査を受ける側の判断により提供を受けられない場合があると読める、検査のために必要な情報にアクセスできず、検査ができない事態が生じ得る法律の規定は、憲法上全て検査しとされていることとの関係で問題を生じる。
 内閣官房からは問題は生じないとの回答があり、それを受けてさらに以下のように述べておりますが、情報が提供されない可能性が認められること自体、憲法九十条一項との関係で問題がある、この指摘について御所見を伺いたい。
 憲法九十条との関係で問題があると指摘したことについてお聞かせください。

○柳参考人 憲法九十条の規定は、非常に重要な会計検査の機能を定めたものであるというふうに考えております。
 会計検査は、公益上特に必要があるということに該当いたしますので、その点で、全ての情報を得て、そして会計検査を行っていくということが必要だというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 第三に、防衛費の検査についてお尋ねします。
 憲法は、前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と明記し、財政民主主義を確立しました。これは、過去の戦争で、戦費調達のために大量の国債を発行し、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の体験があったからであります。
 一方、昨年、防衛調達長期契約法によって、防衛調達は国庫債務負担行為の年限を十年へと延長しました。
 長期契約だけでなく、後年度負担、また秘密保護法の縛りもある中で、この間増加をしている防衛費の会計検査について感じていることをお聞かせいただきたいと思います。

○柳参考人 防衛費につきましては、会計検査におきましてもいろいろな問題があり、調達についての指摘もしてございます。三菱電機の過大請求の事案もございました。
 そして、防衛費に関しましては、大変多額で、大変長期的に用いるものであるといった観点からは、ライフサイクルコストのような視点も必要であり、その面での管理が必要であるということでございます。
 会計検査院は、これまで、防衛費に関しましてそういった視点から、きちんと内部統制が行われているのか等についても目を光らせてきたところであります。
 防衛費については、今後もそのような、防衛装備庁が発足いたしましたが、その中でも、効果的に、効率的に調達が行われているのかということを国民の目線に立って検査していくことが重要であるというふうに考えております。
 以上です。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。

○河村委員長 次に、遠藤敬君。

○遠藤(敬)委員 先ほど来皆様方から御質問がございました。重複するところがありますけれども、柳先生には御理解いただきたいと思っております。
 平成二十五年八月以来、検査官の職にあります。それ以前は、長年商法学者として公会計を御専門にされてきたと伺っております。研究者としての知見は、会計検査官としてどのように実務の現場に生かしてこられたのでしょうか。
 また、再任された場合、これまでの経験を踏まえて、今後はどのような方針で会計検査に当たられるのか、御見解をお伺いしたいと思います。

○柳参考人 ありがとうございます。
 私は、御指摘のように、研究者として研究をしておりました。そして、公共経営や公会計改革の理論やすぐれた実務についての知見を持っておりました。
 それらを会計検査においてどのように適用できるかということを考えてまいりましたが、業績の定量化、なるべくわかりやすく、国費の投入された結果というものをどのようにわかりやすく測定していくのかというようなことについて、そういった観点から、検査も、効率性の観点、有効性の観点といったときには、やはりインプットに対してアウトプットなりアウトカムというものをどのように測定していくのか、それが本当に十分な経済的なコストであったのかというようなことについても検査で報告していくということが国民に対して求められているというふうに感じておりまして、そういった姿勢で検査を行ってきたということでございます。
 以上です。

○遠藤(敬)委員 これまでの検査官としての業務を通じて、国の会計検査のあり方について何か改革すべき点はあるのかないのか、御所見を改めてお伺いしたいと思います。

○柳参考人 会計検査は、それぞれ、検査対象の事業に対して行っておりますけれども、先ほども申し述べましたけれども、その事業が政策目的にどのようにかかわっているのかといった観点が非常に重要であり、政策目的の実現が国民の福利厚生につながるわけでありますので、政策目的の実現が国家的な事業構造によって達成できているのかといったことを、単に点としての検査報告ではなく、線として、面としてつなげていく必要があるといったことが重要であり、これまでの会計検査で行ってきたさまざまな指摘というものを体系化していくということが非常に重要であり、それを会計検査院の人的資源が全て共有していくということが検査能力を向上することにつながるのだということで、そこに課題があるというふうに認識しております。

○遠藤(敬)委員 柳先生は女性初の検査官だと伺っております。会計検査院の意思決定機関である検査官会議の三名の検査官のお一人ということで、女性として政府機関で指導的立場に立たれることになります。
 政府の進める女性活躍推進について、御所見があれば、せっかくの機会ですのでお伺いしたいと思います。

○柳参考人 女性初の検査官ということで、会計検査院の中におきましても女性の活躍が求められているところでありますけれども、非常に厳しい職場環境でもございまして、女性の課長職以上というのがなかなか存在していないといったような状況でございます。
 その中で、私は、女性としてというよりは研究者として、民間からの研究者として、その知見をいかに会計検査の実務に生かしていくことができるのかということで、検査官会議等で発言をすることによりまして、会計検査の質を高めていくといったことに貢献できれば、それが女性職員にとってのモデルにもなり、そういった女性の活躍といったようなことについて、懇話会でありますとか懇親会とかでお話をしておりますと、そういったことが非常に彼女たちの職務に対するモチベーションになっているということを感じておりまして、その意味でも、非常に役割が重いものというふうに感じております。
 以上です。

○遠藤(敬)委員 最後なんですけれども、国の会計システムの中で決算がどうも弱いんじゃないかとさまざまな御指摘もいただいております。
 国の会計システムの中の決算というものについて、先生はどのようにお考えでしょうか。最後に質問させていただきたいと思います。

○柳参考人 決算が弱いというのは、ニュー・パブリック・マネジメントという公共経営の改革が行われてきたときに、インプットからアウトプット、アウトカムへというようなことが一九八〇年代から言われてきたわけであります。
 我が国の場合には、政策評価あるいは事業レビュー等が行われておりますけれども、決算の情報が有用な情報になっているのか、あるいは決算についてどのように分析されているのかということが重要な課題だと思っております。
 会計検査院では、検査報告の中で、現在、決算について、債務の状況、債権の状況等について決算分析を行っております。そのときに、発生主義情報とどう関係しているのかというような分析も重ねて行っております。これから、決算の重要性も認識しながら、会計検査院の決算分析も貢献できればというふうに考えております。
 以上です。

○遠藤(敬)委員 終わります。

○河村委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。
 これより自由質疑を行います。
 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。
 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 過去、その不透明な支出が問題となってきた内閣官房報償費、いわゆる官房機密費の検査についてお尋ねをします。
 これまで、会計検査院の指摘もあり、三つの類型がある官房機密費について、調査情報対策費、活動関係費は領収書等支出先が確認できるものを保存することになっておりますが、官房長官が直接扱う政策推進費については、いつ、誰に、どのような目的で幾ら支払ったのか、適切に記録する仕組みがありません。まさに、官房長官しか知り得ないことがある。
 それなのに、菅官房長官は、昨年の国会で、会計検査院に報償費の執行について直接説明を行うことはないと答弁をしておられます。
 官房長官が直接取り扱う官房機密費について、検査の御苦労をお伺いしたいと思います。

○柳参考人 御指摘の点は、透明性の観点からは非常に重要なことだというふうに思います。
 報償費についても検査を行い、その支出が適正であるのかといったことについては、会計検査院はそれについても目を光らせているところであります。
 どのように使われているのか、またその証票はどうなっているのかということについて、会計検査、実地検査におきましては確認しているところでありますので、今後も、報償費についても、不透明なところがないように、もし検査官に再任されましたならば、そのように目を光らせていきたいというふうに考えております。