国会質問

<第190通常国会 2016年01月20日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 2号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 選挙人名簿の登録制度に係る公選法の改正案について、動議提出者に質問をいたします。
 今回の公選法の改正案は、国政選挙、都道府県に係る選挙で選挙権を有しているにもかかわらず、住所異動などと選挙人名簿の登録基準日との関係で選挙人名簿に登録されないために国政選挙の投票をすることができない者が、投票できるようにするものであります。
 憲法十五条は、国民の固有の権利として選挙権を保障しております。これは、国民が主権者として政治に参加する機会を保障するものであり、国民主権、議会制民主主義の根幹をなすものです。この憲法上の権利行使には、投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。有権者に投票機会を保障するのは当然のことであり、今回の措置は必要な措置であります。
 そこで、提出者にお尋ねをいたします。
 選挙権を有している者が投票することができないという事態は問題であり、投票できるよう措置するのは当然だと考えますが、本法案はそのような趣旨で提案をされたものでしょうか。

○逢沢委員 お答えをさせていただきます。
 基本的なところは、まさに質問者の方から御指摘をいただいたとおりでございますが、現在、選挙人名簿に登録をされるためには、選挙人名簿の登録基準日において、現住所地にいわゆる三カ月以上居住していることが必要とされております。
 しかし、登録基準日との関係で、ある市町村に三カ月以上現に居住をしておりましても、登録基準日の直前に転居した者が新住所地において選挙人名簿に登録されないうちに国政選挙が行われる、そういうケースがございます。そのようなケースでは、選挙権を有している、かつ被登録資格を当然満たしている、しかし、選挙人名簿に登録がされていないために実際に選挙することができない、投票することができない、こういう現実がございます。
 本法律案を提出させていただき、ぜひ御理解をいただき成立をさせ、憲法上保障されている投票の権利がしっかりと行使をしていただける、そういう状況を是が非とも確保させていただきたい、そのように思います。
 住民基本台帳の人口異動の統計等を見ておりまして、必ずしも正確な数字ではないかもしれませんが、恐らく七万人程度が今法律案の成立によって実際に投票を行うことができる、そういう状況を確保することができる。場合によっては、十八歳選挙権ということになりますと、もう少しその数字が高いということも予想されるわけでありますが、およそそういう数字を念頭に今法律案を提出させていただきました。
 どうぞよろしくお願いをいたします。

○塩川委員 確認をいたしました。
 本法案により投票できないという事態を解消できた人は、旧住所地での投票となるために、新住所地が遠方の場合には不在者投票が欠かせません。選挙権を最大限保障するために、手続などに時間がかかる不在者投票等の周知徹底が必要だと指摘をしておくものであります。
 今答弁にありましたように、居住三カ月要件の話がございます。
 続けて提出者にお尋ねしますが、本法案では、旧住所に三カ月以上居住していれば、旧住所で選挙人名簿に登録され投票できることになりますが、三カ月未満で転居を繰り返している場合は投票できるようになるんでしょうか。

○中野委員 お答え申し上げます。
 御指摘は、三カ月未満で転居を繰り返している場合はどうなるのか、こういう御指摘であると承知をしております。
 本法律案で、選挙人名簿の登録を行うこととしておりますのは、旧住所地の市町村に三カ月以上居住をしていた者であって、登録基準日の直前に転居をして四カ月を経過していないもの、こういう方の登録を行うということにしております。
 したがいまして、御指摘のような三カ月未満で転居を繰り返しているような場合には、いずれの市町村においても選挙人名簿の登録は行われませんので、今回の法改正においては投票を行うことはできない、こういうことでございます。

○塩川委員 今国会の改正では投票できないということで、本法案により、旧住所に三カ月以上居住していれば旧住所で投票ができますが、転居を繰り返すと、選挙権を有しているにもかかわらず、新住所で三カ月以上の居住要件が満たされるまで投票できない事態が残ります。
 選挙管理委員会は、住民登録制度に基づき住民基本台帳に記録されている者で資格を有するものを、職権で選挙人名簿に登録します。選挙人名簿を住民登録に連動させて、選挙権を有する者に違いがある国政選挙と地方選挙を同一の名簿にしているために、このようなことが起こるわけであります。
 重ねて提出者にお尋ねしますが、選挙人名簿の登録には一つの市町村に三カ月以上の居住をしていなければならないが、なぜこのような規定が必要だと考えるのか。この居住三カ月要件を設けている理由についてお話をいただきたいと思います。

○中野委員 お答え申し上げます。
 塩川先生、大変大事な御指摘であるというふうに思います。
 御指摘のとおり、現行法上、投票権の行使に必要な選挙人名簿の登録につきましては、三カ月、住所要件というものがございます。
 これがなぜ必要なのかという御質問でありますけれども、確かに、国政選挙と異なりまして、地方選挙に関しましては、地方選挙の選挙権に三カ月の住所要件が課されております。
 国政選挙と地方選挙、現在、同一の選挙人名簿が用いられております。これは、多数の選挙人によって行われる各種の選挙を混乱なく適正に、そして能率的に執行するために、国政選挙、地方選挙を通じて一つの名簿とするいわゆる永久選挙人名簿の制度をとることが実務的なことも踏まえて適切ではないかと考えられていること、また、選挙人名簿の正確性を期すためには事実確認等に一定の期間を要することによるものである、このように承知をしております。
 これらの点を踏まえまして、本法律案で新たに設ける登録制度におきましても、旧住所地の市町村に三カ月以上居住していたことを登録の要件としているものでございます。

○塩川委員 地方の方が三カ月要件を設けています、それとの関係で、同一の名簿のために結果として国政の場合についても三カ月というのはかかるんだということになるわけです。
 そもそも、公職選挙法では、今お話もありましたように、地方の場合については三カ月という要件を課しておりますけれども、国政選挙の選挙権は選挙年齢以上の日本国民が有するとしており、三カ月以上の居住要件は規定をしておりません。
 三カ月以上の居住要件を満たさないからといって国政選挙における投票権が奪われてはならないと考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

○北側委員 御指摘のとおり、国政選挙の選挙権の要件としては、三カ月の居住要件は設けられていないところでございます。
 確かに、選挙権を有する者が実際に投票できるようにすることは重要でございますが、その一方で、選挙事務の適正かつ能率的な執行や、選挙人名簿の正確性の確保もまた決しておろそかにできないという要請がございます。そのため、現行の公職選挙法では選挙人名簿の登録要件として三カ月の居住要件が設けられているところ、その点については、先ほど答弁しましたように、一定の合理性があるため、本法律案においてもその趣旨を踏まえたものとしているところでございます。
 ちなみに、過去の裁判例でございますが、平成十二年に行われました衆議院総選挙について、やはりこの三カ月要件の妥当性が争われた訴訟がございました。平成十四年二月五日に京都地方裁判所で判決が出ているわけでございますが、その判決では次のように判示をしております。
 この三カ月要件の趣旨を述べているところでございますが、
 選挙人名簿への登録の要件として住民基本台帳に三箇月以上記録されていることを求めることによって、正確性の確保と選挙直前の意図的な住民票の移動による不正投票の防止を図り、選挙人が他の市町村に住所を移転した場合には、いずれの市町村の選挙人名簿にも登録される事態をできる限り防止し、他方、いずれの市町村の選挙人名簿にも登録されないという事態をできる限り防止するため、
こういう趣旨を述べておりまして、こうした三カ月要件というのは、
 投票の正確性と円滑性という観点からは、一応の合理性を有する
このような判示があるわけでございます。

○塩川委員 そういう点も含めて、いろいろ工夫をしながら、いかにこういう選挙権を保障していくのかということで取り組むことが必要ではないのか。
 地方選挙の選挙権は住所要件が定められていますけれども、そういう場合でありましても、知事選、都道府県議選については、同一都道府県内への住所移転の場合にそのまま投票できるような特例措置も設けております。そういう点での工夫が図られているわけで、国政選挙においても大いに知恵を出すときではないのかということを申し上げておくものであります。
 次に、転居したものの住民票を異動していない学生等の選挙権の問題についてお尋ねします。
 総務省に確認します。
 高校卒業後、親元を離れて進学をした大学生などの住民票異動の実態がどうなっているのか、明るい選挙推進協会が二〇一五年六月調査の結果を発表しておりますが、そのポイントを紹介してもらえますか。

○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の、明るい選挙推進協会が昨年六月に実施しました十八歳選挙権認知度調査でございますけれども、これにおいて、親元を離れて進学している大学生等のうち、現在住んでいるところに住民票を移している者というのは二六・四%、移していない者が六三・三%、わからない者が一〇・三%というような調査でございました。
 住民基本台帳法では、市町村の区域外へ転出したときは転出届を出さなければならず、新たに市町村の区域内に住所を定める者については転入届を届け出なければならないということとなっておりますが、このような調査結果でございました。

○塩川委員 今答弁がありましたように、高校卒業後、親元を離れて進学をした学生等について、住民票を移しているというのは二六・四%ということなんですね。そういう点でも、非常に大きな数であります。
 総務省に重ねてお聞きしますが、こういうひとり暮らしをしている学生などの住民票異動の割合が少ないもとで、総務省としてはどのような対策を講じているのか、この点について説明をお願いします。

○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
 住所は各人の生活の本拠を申しますけれども、大学生が一人で引っ越してひとり暮らしをした場合、一般的に、ひとり暮らしをしている市区町村が生活の本拠と考えられます。したがって、住民票を移していただくことが必要です。
 総務省といたしましては、適正にこのように対応していただくために、住民票の届け出に関しまして、平成二十六年の三月に新聞広告で周知を図っております。また、平成二十七年三月には、各高校で周知していただけるよう、文部科学省に対して依頼をいたしております。
 さらに、今年度につきましては、政治や選挙に関する教育のために作成しました高校生向けの副教材あるいは十八歳の選挙権に係るリーフレットに住民票の適正な異動につきまして記載するとともに、全国各地で開催しているシンポジウムなどにおいて取り上げて、働きかけを行っているところでございます。
 十八歳以上の有権者が初めて投票する仕組みになってまいりますため、各選挙管理委員会あるいは地域の明るい選挙推進協議会などと協力いたしまして、住所変更の届け出や選挙人名簿の制度につきまして適正に対応いただけるよう、引き続きあらゆる機会を通じて積極的に注意を促してまいりたいと考えております。

○塩川委員 周知に努めるという話ですけれども、これ自身はしっかりやっていただくことでありますけれども、選挙管理委員会によっては、住民票を異動させずに遠方に進学をした学生の投票を認めないケースがある。訴訟になっているものもあります。これは、一九五四年の最高裁判決において、進学のため、当該市町村外の寮や下宿、アパートなどに居住する学生の住所地は、その寮や下宿等の所在地にあるとされたことが根拠になっています。
 しかしながら、同一の選挙において、選管の対応が違って、投票できる場合と投票できない場合が起こるようなことは公平な選挙と言えるのかということが問われてまいります。
 この間、法改正により、当該市町村内の住民票があれば、選挙人名簿に登録をされ、長期間不在であっても投票機会を保障する制度が創設されてきております。
 一つは、一九九八年に、国政選挙、比例ですけれども、在外投票制度を創設し、二〇〇六年には、国政選挙の衆院小選挙区、参院選挙区へ対象を拡大し、海外に在住する日本国民の選挙権行使の道を開いています。また、一九九九年に、指定船舶に乗船する船員のために国政選挙の投票を可能とする洋上投票制度を創設し、さらに、二〇〇六年には、国政選挙だけではなく、地方選挙においても、主に自衛隊員が対象となる、国外における不在者投票制度を創設しました。このように、投票機会を保障する制度が拡充をされてきたわけであります。
 提出者にお尋ねしますが、国政選挙においては、住民票がある市町村に長期不在であっても、国内、海外を問わず、投票機会を保障することが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○逢沢委員 塩川先生から大変重要な点について指摘をいただいたと受けとめております。
 現在におきましても、選挙人名簿に登録されている市町村以外の市町村における不在者投票制度がございます。例えば、南極地域調査組織に属する選挙人についての不在者投票制度等も存在をしている、そのように申し上げておきたいと思います。
 また、特定国外派遣組織、PKOの活動に参加をされる方々、かなり長期に海外で活動をする、将来的にも、国際貢献の中でこういった立場につかれる方が出てくる、そういうことが予測もされようかと思うわけでありますが、そういった方々に適切に憲法で保障されている投票権を海外においても行使していただける。洋上投票等もそういった同じような理念で制度を設けている。
 その制度の充実等々についてもいろいろなところから御指摘をいただいていることも承知をいたしておりますが、不断の努力でよりよい制度環境を整えてまいりたい、そのように思います。
 ありがとうございます。

○塩川委員 海外の事例にとどまらず、国内においても、住民票がある市町村に長期不在の場合においても投票機会を保障する、こういう点でぜひ取り組みが必要ではないかと思うんですが、その点は、改めていかがでしょうか。

○逢沢委員 地方選挙におきましては三カ月要件というものが求められるわけでありますが、国政選挙にはそういった規定がない。その理念をどのように受けとめ、同時に、選挙事務の効率化、また、選挙で最も大切なことは、選挙の公正、これがゆがめられることがあってはならないわけであります。
 その要件をしっかりと踏まえながら、さまざま工夫を重ねてまいりたいと思います。

○塩川委員 最後に、提出者にお尋ねします。
 選挙権を有しているにもかかわらず、住民票を異動していないからといって選挙権行使が認められない事態を解消する必要があります。そのための知恵を出し合うことが必要であります。
 選挙制度は、議会制民主主義の土台であり、国民、有権者の参政権にかかわる問題でありますから、全党全会派参加のもとで議論すべき問題であります。選挙にかかわる問題を各会派が持ち寄って協議を進めるという方向を再度確認したいと思います。この点についてお聞かせください。

○逢沢委員 塩川先生御指摘のとおり、選挙は議会制民主主義をつくり上げていくまさに土台であり、根幹でございます。これはもう与党、野党を問わず、各政党会派がまさに国民の代表として、よりよい選挙環境をつくり上げていく不断の努力を重ねてまいりましたし、これからも同様な態度が必要であろうかと思います。
 各党のお申し出によりまして、全ての会派の方々に呼びかける協議会、これが今までも機能してまいりましたが、今後もしっかりそのことに意を用いてまいりたいと思います。
 自由民主党の選挙制度調査会長として、第一会派の責任者として、委員の指摘をしっかりと受けとめておきたいと思います。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。