国会質問

<第190通常国会 2016年02月24日 予算委員会公聴会 1号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 四人の公述人の皆さんに貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
 最初に、武田公述人、竹森公述人、工藤公述人に伺います。
 この間、予算委員会でも議論されておりますけれども、大企業は過去最高の収益を上げるとともに、なかなか、労働者の賃金や非正規雇用の正規化の改善との大きな乖離があるという問題の議論が行われております。
 そういうものとも関連して、大企業と取引先中小企業の関係の問題もございます。この点につきましては、過去最高の大企業の収益がありながら、取引先の中小企業が必ずしも経営状況が改善しているわけではない。政府としても、この点については要請をするということになっておるわけです。
 民間で働く方の八割がお勤めの中小企業でもあります。この経営状況の改善というのが大変求められているときですが、そういうときに、消費税の増税というのが、こういう中小企業の経営に対して大きなおもしになりかねないのではないのか、こういう懸念を持つところです。この点について、お三方からお答えをいただきたいと思います。

○武田公述人 御質問いただきまして、ありがとうございます。お答え申し上げます。
 まず、大企業の収益が改善し、それが中小企業の収益に十分回っていないのではないかという御質問がございましたと思いますが、収益は改善しているというふうには思います。
 ただ、より一層、大企業から中小企業へ、あるいは所得から支出へという好循環を進めるためには、より一層、大企業が中小企業に対して、収益改善分は価格転嫁というのを認めていくことも、中小企業への収益波及効果としては重要なチャネルではないかというふうに感じておるところでございます。
 消費税に関しましては、安倍総理がお答えされているとおり、リーマン・ショック級のような世界的な出来事が起こらない限り、予定どおり確実に実施するのが適切であるというふうに考えております。
 以上でございます。

○竹森公述人 どうもありがとうございます。
 先ほど、財政乗数という考え方を申しまして、増税なりあるいは公共事業の削減なりをするとGDPが減るということは常識になっているということを申しました。それが一ぐらいだということは先ほど申したと思いますから、それをどこが受けるにしろ、中小企業ももちろん影響を受けます。大企業の場合は輸出比率が高いから、恐らく中小企業の方が影響が大きいことは確かだと思います。
 ですからこれは、それ自体をとればいいことは何もないんですが、ただ、財政再建とどう折り合いをつけるかという問題で、私としては、できるだけ乗数効果の少ない、GDPが減らないようなものを選んでいけということなんですが、ともかく、何らかの両立を図るしか方法がないことは確かだと思います。

○工藤公述人 お答えいたします。
 今委員がおっしゃられましたように、中小企業への打撃というのは、幾つかのラインで強烈な打撃を与えるというふうに思います。一つは、大企業からの圧力が一つ加わってくると思います。それからもう一つは、消費税そのものが中小企業に与える影響、これも非常に大きいというふうに思っています。特に中小企業は、内需に依存いたしますから、大企業のように外へ出る逃げ道がないということで、直接影響を受けるというふうになろうかと思います。
 今後、一七年の消費税の増税ということになりますと、この打撃は、私の個人的な考えでは、ちょっとはかり知れない、考えにくい、考えるのも嫌だというふうなことになると思います。
 そうなりますと、この打撃が、日本の経済構造では、内需では中小企業がメーンになっておりますから、国内の景気が非常に悪くなるだろうと。そうしますと、これは税収にも打撃を与えて、財政再建という観点からも逆の道筋になっていくのではないか、そういうことも恐れております。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて工藤公述人にお伺いをいたします。
 お話の中で、この間の日本経済における経済循環構造が壊されてきた、そういう中で、雇用、所得、消費の拡大につながらない、経済再生につながらないというお話でございました。そのお話の中に産業構造の変化ということがございまして、生産拠点の海外移転の影響の問題などのお話がありました。
 当然、需要のあるところに企業が出ていく、また企業の動向の問題も当然あるわけですけれども、政府の産業政策もそういった産業構造の変容に大きな影響を与えたのではないのか。政府の経済政策という観点でどのような影響があったのか、この点についてお答えいただけないでしょうか。

○工藤公述人 非常に難しい質問でございますけれども、産業構造の変化というのは、一つは、生産拠点が海外に出ていってしまって、そこでもうサプライチェーンをつくってしまう。これを一旦壊して国内でもう一回つくるということは非常に難しいだろうというふうに思います。これが一つの側面。
 それからもう一つは、製造業がそれに伴って衰退してしまっている。これが雇用削減や雇用不安の原因になってくる。それと同時に、今度はサービス業の比重が非常にふえているということなんですね。サービス業というのは、これは雇用不安を非常に引き起こしやすい側面があります。それから、所得の低下を引き起こしやすい、そういう側面もあります。
 それから、産業構造の変化の中で見逃せないのは、企業間関係の変化です。系列の再編成ですね。これは淘汰を伴っております。それから、いわゆる企業集団的な関係、これも大きく変わっております。こういう中で工場の移転とか企業破綻を引き起こしているわけなんです。
 今御質問のように、政府の産業政策について私見を言わせていただきますけれども、どちらかというと大企業の海外投資を積極的に推し進めていく、このことの持つ意味、これを私たちはもう一回捉えなければならないのではないかと思います。
 国内の需要の停滞が、今、全体の日本の経済の停滞の根源になっておりますから、海外投資というよりも国内でどうするか、どうやって産業をここで引き戻したり育成するか、そういったところに重点的に予算をつくっていく、そういう政策が望ましいのではないかというふうに考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 もう一点、工藤公述人にお伺いをいたします。
 こういった経済循環構造の関係で、雇用、所得、消費の拡大につながらない、こういう問題のところに、やはり雇用をめぐる環境の悪化の問題があるのではないのか。そういう点でも、特に一九九〇年代の半ば以降におきます労働法制の一連の規制緩和という問題は看過できないのではないのか、こういう点が経済の構造にどういう影響を与えたと考えるか、その点についてお示しいただけないでしょうか。

○工藤公述人 お答えいたします。
 先ほど少し労働市場の変化について言及いたしましたけれども、これはもう皆さん御承知のとおりでございます、失業率の非常に高い水準での定着ということ、それから失業期間が長期化している、これは、やはり日本の経済の今の現状を象徴しているように思います。
 確かに、情報機器の普及とか、そういうこともありますけれども、それ以上に、慢性的に、九〇年代から今日に至るまで企業の方はリストラの手を休めていない、こういうことだろうというふうに思っています。
 そういうことで、労働市場をどういうふうに改善していくかということですけれども、まず一番大きな問題は非正規雇用の問題、これが続いている限りは日本の経済に未来はないというふうに思っています。場合によっては、こういう非正規雇用を誘導するような労働政策というのは、今の日本にとってはとても耐え切れないのではないか、そういうふうに考えております。
 終身雇用がいいかどうかわかりませんけれども、そういう長期雇用と安定的な雇用を何らかの形でつくっていく、これがまず最優先課題になるだろうというふうに思っております。
 以上でございます。

○塩川委員 ありがとうございます。
 それでは、郷原公述人にお伺いいたします。
 甘利氏のあの政治と金の問題で、もともとそういう幾つもの事件が過去にあって、二〇〇〇年代以降、政治家が企業に口ききをして見返りに金を受け取るというのはだめなんだという国民世論が大きくある中で、先ほどお話のあったようなあっせん利得処罰法なども出てくる。その実効性の問題なども当然あるわけですけれども、そういう流れの中での今回の甘利氏の事件だったということであります。
 それは、やはり企業献金というのが賄賂性を伴うものなんだ、こういうことが大もとにあって、それが結果として主権者である国民の基本的権利を侵害することになっているんじゃないのか。
 そういう企業献金が持つ賄賂性の問題について、郷原公述人のお考えをぜひお聞かせいただけないでしょうか。

○郷原公述人 企業献金そのものが一般的に賄賂性を持っているかどうかということについて、これはいろいろな考え方があろうかと思います。
 非常に厳しい考え方をすれば、そもそも企業が自分たちの利益にならないような金を贈るわけがないんだから、あまねく賄賂性があるという考え方もあろうかと思いますけれども、やはり、企業にもそういう政治的な活動としての政治献金を行う権利を認めるべきだという考え方もあろうかと思います。
 ただ、その中では、口ききと言われるような行為によって政治的公務員の廉潔性が害され、国民から大変な不信感を招くというようなことが多発してきたことも間違いありませんし、悪質な事案に対してきちんとした厳正な対処をすることによって、本来あるべき国民の声を行政にあるいは公的な団体の運営に活用する、生かすというようなことをあわせてやっていくために、やはり法律をしっかり適用するときには適用していくということが必要なんじゃないかと思います。

○塩川委員 企業献金、政治献金に関連して、パーティー券の問題についてお尋ねをいたします。
 この間の一連の報道などを拝見し、甘利氏がその業者から大和事務所で受け取った企業献金五十万円について、パーティー券にしてくれと依頼したという話がございました。このことについて、その後の記者会見で甘利氏は否定しておられません。
 そういうことで見ますと、パーティー券収入というのが形を変えた企業献金なのではないのか、こういうことも、当然のことながら如実に示すものではないかなと思っています。一千万を超える収入を伴うような特定パーティーについて、自粛と言いながら大臣がそろって実施をしているということも、この間、国会で取り上げてまいりました。
 こういった、形を変えた企業献金であるパーティー券の収入の問題について、現状のままでいいのか。我々は、パーティー券収入を含む企業・団体献金の全面禁止を掲げておりますけれども、この点についての郷原公述人のお考えをお聞かせください。

○郷原公述人 パーティー券の問題については、私、検事として現場で捜査をしていたときから問題意識を持っておりました。表でも相当多額なパーティー券収入があるのに加えて、裏でパーティー券のお金が、収入が裏に回って不透明な使い方をされているような案件を捜査の対象にしたこともあります。
 そういう意味で、パーティー券の収入というのをどのように政治資金規正法の規制の対象にしていくのかというのは、今後、政治浄化を目指していく上で非常に重要な問題ではないかと考えております。

○塩川委員 時間が参りました。ありがとうございました。