国会質問

<第190通常国会 2016年02月29日 予算委員会 17号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、選挙制度について質問をいたします。
 明治以降の歴史を振り返った場合に、選挙権、参政権をひもとけば、一八七四年、明治七年に板垣退助らが民撰議院設立建白書を提出したことが口火となって、自由民権運動が大きく広がり、議会制定をかち取りました。しかし、選挙権は一部の高額納税者のみ、成人男子全て赤紙が来たら戦場で命をかけて戦わされるのに、政治には全く意見を届けることができない、これはおかしいと普選運動が広がって、一九二五年に男子普通選挙が実現をしました。
 また、女性の社会参加を認めない時代に、女性を一人前の市民として認めさせようという女性参政権獲得運動が広がって、これが戦後の女性参政権実現につながりました。
 総理にお尋ねいたしますが、このような国民のたゆまぬ運動が選挙権の拡大をもたらしてきたと思いますが、総理はどのようにお考えですか。

○安倍内閣総理大臣 我が国の選挙制度は、明治二十二年、衆議院議員選挙法が制定されまして、直接国税十五円以上の二十五歳以上男子に限定した制限選挙で始まったものでありますが、その後、選挙権拡大に向けたいわゆる普選運動と呼ばれる社会的な運動を通じて、累次の納税要件の緩和を経て、大正十四年、一九二五年にようやく普通選挙の実現を見たものと承知をしております。
 また、女性の参政権については、大正時代より婦人参政権獲得の運動が行われましたが、第二次世界大戦後の昭和二十年十二月に女性にも参政権が認められることになり、二十歳以上の完全普通選挙が実現されたものと承知をしております。
 このように、完全普通選挙は歴史的にも社会的にもさまざまな経緯を経て実現したものであり、こうして我が国が得た選挙権は、我が国の民主主義を支える重要な国民の権利であると認識をしております。

○塩川委員 今総理からお話ありましたように、普選運動や婦人参政権、女性参政権獲得運動、こういう取り組みの中で、民主主義を支える国民の権利が拡充されてきたというお話を確認いたしました。
 このように、総理もお認めのとおり、国民の運動を通じて選挙権は拡大してまいりました。
 国民主権を確立した日本国憲法の前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と始まりますが、これは議会制民主主義、代議制民主主義の原理をあらわすものであり、その議会制民主主義の根幹をなすのが選挙権、参政権だということを示しております。このように、国民の選挙権獲得の闘いは、日本国憲法にも刻まれているものであります。
 そこで、総務大臣にお尋ねをいたします。
 ことし六月から十八歳選挙権が実施をされます。民意がさらに議会に反映され、議会制民主主義の発展につながるものと受けとめております。
 十八歳選挙権によって新たに選挙権を有する者は何人になるのか、その結果、人口に占める有権者の割合は何%になるのか、お答えください。

○高市国務大臣 年齢別人口まで公表されている直近の国勢調査ということになりますと、平成二十二年の国勢調査になるんですが、これをもとに申し上げますと、平成二十八年に十八歳、十九歳になると見込まれる者は、当時の国勢調査のときに十二歳、十三歳でいらした方々ですが、合計で約二百四十万人でございます。
 また、平成二十七年十月一日現在の国勢調査、速報値における総人口は、約一億二千七百万人でございますから、十八歳、十九歳になると見込まれる者の総人口に占める割合は約二%でございます。
 このお若い方を含めて、全体の有権者数は六千六百四十万人ですから、総人口の五二%に当たるということでございます。(発言する者あり)
 済みません。よろしいですか。有権者人口が六千六百四十万人でございます。(塩川委員「それは少ないでしょう。少ないですよ。一億人近い」と呼ぶ)ちょっと、失礼しました。

○塩川委員 ちょっと確認してもらえますかね。
 重ねてお聞きしますけれども、基本的な話ですからね。
 総務大臣にお尋ねしますが、人口に占める有権者の割合について聞いているわけですけれども、一八九〇年の最初の選挙のときの人口に占める有権者の割合が何%かということが一点。それから、一九二八年の男子普通選挙によって人口に占める有権者の割合が何%になったのか。そして、今回の十八歳選挙権で人口に占める有権者の割合が何%になったのか。
 この三つをお答えいただけますか。

○高市国務大臣 済みません。
 まず、一八九〇年でございますね。人口に占める有権者の割合は約一%でございます。
 そして、一九二八年、人口に占める有権者の割合は約二〇%でございます。
 それから、一九四六年もお尋ね……(塩川委員「お願いします」と呼ぶ)はい。
 一九四六年、人口に占める有権者の割合は約四九%でございます。
 先ほどの問いについてでございますが、やはり十八歳、十九歳を含めた有権者数六千六百四十万人、人口に占める割合は五二%ということで間違いがないと、今事務方の確認でございます。(発言する者あり)

○竹下委員長 ちょっとおかしいですね。(塩川委員「委員長、とめてください。とめて、とめて」と呼ぶ)
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕

○竹下委員長 それでは、速記を起こしてください。
 では、次の質問を。

○塩川委員 こんな簡単な質問も答えられないというのは極めて重大だと言わざるを得ませんが、大体八割を超えて、八四%ぐらいになるわけですよ、当然のことながら。
 そういうふうに、今答弁を含めて、いわば一八九〇年の最初の選挙のときには有権者はわずか一・一%です。それから、一九二五年の男子普通選挙のときには二割、そして戦後の女性参政権、二十歳以上の選挙権になって五割、そして現在では八割強へと前進をしてきたわけであります。十八歳選挙権は、七十年ぶりに有権者を大きくふやすことになります。
 そこで、重ねて総務大臣です。
 民意が議会に反映されてこそ、議会制民主主義の発展につながります。ところが、この予算委員会で議員定数を削減するという議論が行われております。そこで、議員定数がどうあるべきかを議論したい。衆議院議員定数がどのように推移をしてきたのか、総務大臣に確認します。
 一九二五年の男子普通選挙のときの定数は四百六十六。それから、一九四五年の女性参政権、二十歳以上選挙権のときの定数は四百六十八。しかし、このときは全面占領下の沖縄では選挙が実施されなかったために、一九四六年選挙では定数四百六十六で選挙が行われました。その後、中選挙区制のもとで一票の格差是正などを通じて五百十二となりましたが、一九九四年には小選挙区比例代表並立制が導入されて五百となり、比例二十、選挙区五削減されて四百七十五に減らされてきたわけですが、この数字で間違いありませんね。

○高市国務大臣 御指摘のあったとおりでございます。
 先ほどの答弁、修正させていただきます。
 ちょっと御通告の趣旨が、十八歳、十九歳と見込まれる者の総人口に占める割合というところまでしか役所の方で聞き取っておりませんでした。申しわけありません。
 有権者数一億六百三十五万人、八四%の割合です。失礼いたしました。

○塩川委員 定数についてはそのとおりということで、確認をしていただきました。
 今回この四百七十五を十削減して、これまでの、戦前の男子普通選挙の四百六十六、それをさらに割り込み、四百六十五にするという、そういう意味では最も少ない定数にするという話が出されているところであります。
 そこで、男子普通選挙実施のときの定数四百六十六の根拠について、総務大臣にお尋ねします。
 一九二五年の第五十回帝国議会で、若槻礼次郎内務大臣は、人口十二万につき議員一人を配当すると定めたと述べておりますが、間違いありませんね。

○高市国務大臣 御指摘のとおり、一九二五年の男子普通選挙権、選挙法案の提案理由説明において若槻内務大臣は、各府県について、人口十二万人につき議員一人を配当するの割合を定めましたと述べておられます。

○塩川委員 人口十二万人につき議員一人を配当する、配分するというのが基準だったわけであります。
 そこで、パネルをごらんいただきたいんですが、男子普通選挙実施のときに、人口十二万人につき議員一人を配分すると定めましたが、主要国の国会議員、下院における一人当たりの人口を見ていただくと、イタリアは、人口六千二十三万人に対し議員定数六百三十で、議員一人当たり人口は九・六万人であります。同様に、イギリスの議員一人当たり人口は九・八万人、それから、カナダは十・四万人、フランスは十一・一万人、ドイツは十三・五万人。日本は、一九二五年の男子普通選挙のときに十二・八万人で、現在が二十六・八万人です。連邦制のアメリカは、七十二・二万人という数字になっております。
 衆議院の事務総長に確認をいたします。
 衆議院選挙制度調査会の答申の説明でもこういう中身について記載をしていると思いますが、確認したいと思います。

○向大野事務総長 お答えさせていただきます。
 今先生がおっしゃったこととパネルに書いてあること、これはいずれも調査会の答申の中の説明及び参考資料にございます。

○塩川委員 主要国においては、議員一人当たり人口が約十万人程度であります。日本でも、男子普通選挙を実施した一九二五年当時は十二・八万人、若槻内務大臣が答弁しているように、人口十二万人につき議員一人を配当すると定めたとおりであります。いわば主要国と同等の議員配分となっていたのに、それが今では約二十七万人までとふえてしまって、大きくかけ離れるような状況になっております。
 もう一点、衆議院事務総長に確認をしますが、この衆議院選挙制度調査会の答申においては、現行の議員定数についてどのような評価をしているのか、その部分を読み上げてください。

○向大野事務総長 お答えさせていただきます。
 答申では、「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」と言っております。ただ、その一方で、「衆議院議員の定数削減は多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である。」ともして、今回の定数削減案が提案されたものと承知いたしております。

○塩川委員 後段の部分は、この調査会そのものが定数削減ということを諮問事項にしているから結果としてこういう数字を出してきているということで、この調査会の答申が意味するところは、今前段で述べたように、「衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」と言っているとおりであります。議員定数を減らす根拠がないということを述べております。
 パネルをごらんいただきたいんですけれども、この問題について少し立ち入って調べてみました。人口、有権者数及び人口十万人当たりの衆議院議員の推移ですけれども、一人当たりの議員数は今が最も少ないということを紹介しているものです。
 これは、一八九〇年の高額納税者に限った制限選挙時から最初の男子普通選挙時までちょっとジグザグになっていますけれども、人口十万人当たりの衆議院議員数は〇・八人前後、こちらの軸に書いてありますけれども、これは、日本においても、議会制定時は主要国と同様に議員一人当たり人口が約十万人程度としていたのを反映しております。しかし、それが現在は〇・四人を切っている。人口がふえ、有権者数がふえたにもかかわらず、議員数はふえるどころか減らされて、歴史的に見て今が人口当たりの議員数は最も少なくなっているということがこの赤いグラフで見ていただけるとおりであります。
 そこで、総理にお尋ねをいたします。
 答申の説明は、議員定数削減が何をもたらすかを指摘しておりました。国民が国会に代表を派遣する権利を弱体化させる、国民の代表議会としての国会の機能強化を後退させる、またさらには、行政府との緊張関係、つまり政府への国会の監視機能が弱まるということを述べている。このように、答申は、議員定数削減の合理的根拠がないとしております。日本の議会制度の歴史を見ても、主要国との比較でも、定数を減らす根拠がありません。
 総理は、この予算委員会におきまして、答申が出された直後の二月十五日の予算委員会ですとかあるいはきょうの委員会を通じても、たしか、調査会における結論としては定数削減をする必要がないとなっていると述べておられます。そのとおりでよろしいですか。

○安倍内閣総理大臣 それは、そのとおりでございます。

○塩川委員 答申は定数削減をする必要がないという結論になっているということを、総理も語っているとおりであります。
 そこで、三年前の予算委員会で、我が党の穀田議員が総理に対し質問いたしました。その際、総理の答弁の中に、行政府の長である私が、議員の削減の話をするというのは、本来、私も抵抗を感じている、行政府の長としては、チェックする皆さんの数を減らすということについて、積極的にどんどん減らした方がいいということを言うべきではない、OECDの中においても、最も国民の一人当たりの議員の数として少ないというのは事実と述べておりました。
 そうしますと、答申には、議員定数削減をする必要がないということが書いてあるわけですけれども、総理自身が、定数削減に根拠がないということはお認めになりますか。

○安倍内閣総理大臣 これは、まさに各国の状況を見ていくと、決して日本は、一人当たりの有権者が少ないとは言えないということでございます。
 それとまた、私自身が行政府の長として、いわば行政府をチェックする国会議員の数を減らすということについて積極的に発言することについては、抵抗感を感じるということについてお話をさせていただいた、それは変わりがないわけでありますが、同時に、私は自由民主党の総裁として、消費税を引き上げていくということに鑑み、我々も身を切る改革をしなければならないということにおいて、定数の削減をお約束したのは事実であります。
 ただ、その際、どのように変えていくかということについては、当時の野田総理大臣との討論の中におきましても、共産党や社民党といった党等も存在し、そういう党との議論も必要だということは申し上げているとおりでございまして、議員定数の削減については、私は、十という答申を尊重するという立場でございましたので、政治的にこれは尊重しなければならない、このように考えているところでございます。

○塩川委員 答申を尊重すると言いますけれども、答申そのものの大前提として、定数削減をしてくださいという諮問になっているわけですよ。それは、我が党などが反対したにもかかわらず、一部の党がこういった枠組みをつくって、議長にそれを要請するという中で調査会ができて、その答申ですから、やはり、入り口そのものがおかしいんです、間違っていると言わざるを得ません。
 そういったときに、総理は、こういった定数削減をする必要がないということについてもお認めになった上で、一方で、身を切る改革という話をされました。これはもともと、このような今回の定数削減の話が出てきたというのは、民主党野田政権のときでありまして、国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る覚悟が必要だと野田政権が言い出して、自民、公明も一緒になって、消費税増税を国民に押しつけることと一体で定数削減を持ち出してきた、それはきっかけということですよね。

○安倍内閣総理大臣 きっかけとしては、今申し上げましたように、消費税増税をお願いする以上、議会においても、議員においても身を切る改革を行わなければならないという観点から、私どもも公約に入れたところでございます。

○塩川委員 ですから、そこで戻るんですけれども、公約で定数削減を掲げるんだけれども、その掲げた公約の定数削減の根拠がないんじゃないのかという話になるんですよ。定数削減という公約そのものに根拠がないんじゃありませんか、そうなるんじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 この根拠を、何をもって根拠とするかということでございますが、いわば国際的な比較をして、国会議員一人に対する有権者の数が、これは少な過ぎるということを根拠とするということについては、そういう意味においては、少な過ぎることはないという意味においては根拠はないわけでありますが、他方、政治的に、まさに消費税を引き上げていく以上、我々も議員の数を削減していく、これも税金が歳費として私たちに支給されている以上、国会議員の数を減らしていくべきだという議論の中で、我が党も他の党もお約束をしたところでございます。
 今回の答申も、いわば定数削減は必要ないとする一方、二つの決定をしているわけでありまして、各政党が国民と約束をしているから十減らすべきだ、こう言っているわけでございまして、我々はこの答申に従っているということでございます。

○塩川委員 河野洋平元衆議院議長は、読売新聞のインタビューで、消費増税などの負担を国民に強いる以上は、国会も身を切る改革が必要だとの主張がある、だが、定数削減で切られるのは、有権者の権利だ、答申も指摘しているように、衆院の定数は欧州の下院と比較しても多いとは言えない、欧州では議員一人当たりの人口は十万人程度だが、日本は約二十七万人だと答申の中身にも触れて指摘をしておられます。
 消費税を押しつけるために国民、有権者の権利を侵害する議員定数削減を行うということは全くの筋違いじゃないでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 河野元議長の議論もこれは一理あるんだろう、このように思うわけでありますが、しかし、私どもも、消費税を引き上げる上において、議員定数の削減という形において身を切る努力をしていくというお約束をした以上、政治的な約束を果たす上において、私は、十削減をする、答申の中にも書かれているこの十削減について行うべき、こう考えているところでございます。

○塩川委員 その定数削減の根拠がないというのが答申のかなめであるわけであります。
 暮らしと営業を破壊する消費税増税を押しつけた上に、国民の選挙権を侵害する議員定数を削減するなど、二重に許しがたいと言わざるを得ません。消費税増税は中止、議員定数削減はきっぱりやめることを強く求めるものであります。
 そこで、国民の選挙を侵害しているのは議員定数削減じゃありません。このパネルを見ていただいたように、小選挙区制の問題があります。小選挙区制における第一党の得票率と当選者占有率は、まさに四割台の得票で七割台の議席。得票と獲得議席の乖離が生まれているというのが明らかであります。
 小選挙区制の最大の問題は、比較第一党の虚構の多数をつくり出す一方で、少数政党は、得票率に見合った議席配分を得られず、獲得議席を大幅に切り縮められ、多様な民意の反映を大きくゆがめるものとなっています。
 小選挙区制による虚構の多数議席の力で、国民多数が反対した憲法違反の安保法制、戦争法成立を強行した。国民から、なぜ国民多数の声が反映しないのか、これが正当な国民の代表と言えるのか、主権者の声を聞けという声が上がっています。国民との乖離を生み出した小選挙区制の害悪は明らかであります。
 小選挙区制というのは、一票の格差是正も困難にします。このような小選挙区制はきっぱりと廃止をして、民意を反映した選挙制度への抜本的改革を強く求めて、質問を終わります。