国会質問

<第190通常国会 2016年03月09日 議院運営委員会 16号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 吉田参考人にお尋ねをいたします。
 最初に、二〇一二年の通常国会で、民主、自民、公明の三党は、議員立法で国家公務員給与特例法案を提出し、成立させました。これは、国家公務員の労働基本権が回復されていない段階で、人勧水準をはるかに超える平均七・八%もの給与削減という不利益を二年間にわたって強要するものでありました。
 この点で、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割という観点から、この給与特例法をどのように評価しているのかをお尋ねいたします。

○吉田参考人 給与特例法につきましては、当時の政権が、一部の労働団体といいましょうか職員団体とも合意の上、そういったものを提出した。それから、背景に、東日本大震災というものに対する国民的な協力を図る必要があるというようなことで国会に提出され、国会で議決されて法律になったというふうに承知しています。
 人事院としては、人事院勧告によらない給与の引き下げというのは基本的には問題があるものというふうに当時も言ってきたというか思っておりましたけれども、ただ、東日本大震災という未曽有の国難のもとで、国会でそういう議決をされるということについては一定の理解をするというような判断だったというふうに記憶しております。

○塩川委員 次に、二〇一四年の人事院勧告における給与制度の総合的見直しについてお尋ねをいたします。
 給与制度の総合的見直しは、職員の給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなすとする職務給の原則に反し、逸脱を拡大するものではないか、また、この措置によって、一般職国家公務員の給与を引き下げるものとなっている。これらは、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割をみずから否定するものではないのか、このように考えますが、参考人はいかがでしょうか。

○吉田参考人 昨年から実施することになりました給与の総合見直しですけれども、私たちの理解では、官民の給与格差というものを前提に、いわば官民が均衡しているという水準のもとで俸給と諸手当の配分をどのように考えるか、あるいは、地域における給与水準をどう考えるかということが問題になったというふうに理解しておりまして、官民の水準の差というのを残したり、あるいは、官民の水準差を無視したりした改革ではなかったという意味において、代償機能というのは守られているというか、むしろその配分というのは、まさにその中で、民間であれば労使交渉でどういうふうに配分していくのかということを決めることでありますので、そこは人事院に委ねられている領域ではないかというふうに考えております。

○塩川委員 職務給の原則に反し、逸脱するのではないのか、この点ではいかがですか。

○吉田参考人 職務給というのをどう捉えるかということでありますが、俸給表は全国統一の水準で規定されておりますので、同じ仕事をしていれば、北海道でも東京でも同じ給料をもらえるということであります。
 ただ、実際に、いろいろなもの、例えば東京だと物価が高いとかあるいは民間賃金が高いとかいろいろな事情がありますので、そういうことを加味して、実際に、では東京で勤務する人は幾らもらうのか、北海道で勤務する人は幾らもらうのかということに差があっても、その差が合理的であれば、私は問題がないものというふうに思っております。

○塩川委員 給与制度の総合的見直しによる給与引き下げ、地域手当格差の拡大というのが地方公務員の給与の引き下げにつながるんじゃないのかという懸念、これが結果として、地域における給与水準全体を引き下げることになり、地域経済にもマイナスをもたらすんじゃないのか、こういう懸念もあるわけですが、そういう観点についてはどのようにお考えでしょうか。

○吉田参考人 地方公務員給与について私がとやかく言う立場にはありませんけれども、地方公務員の給与も、民間準拠ということであれば、地域の民間水準というものとどういうふうに均衡させていくのかということが基本になると思いますので、そこで差があるというか、官が高い、公務が高いということであれば下げなければいけないでしょうし、公務と民間が均衡しているということであれば、国家公務員の方が下がったからといって下げる必要はない。
 私たちのところは、全国のパイの中で、特定地域を上げれば特定地域が下がらざるを得ない、そういう中で行っておりますので、それぞれの自治体で、それぞれ比較した結果をベースに水準をお決めになるのが適切ではないかというふうに思います。

○塩川委員 東京一極集中が問題となっているときに、こういった給与制度の総合的見直しを通じて地域間の格差が一層拡大するんじゃないかという懸念というのは当然あるわけで、それは、国家公務員だけをやっていますから関係ありませんという話ではないと思うわけで、やはりそういう地域間格差を拡大する、給与、賃金の格差を拡大するという大きな懸念があるということについては受けとめておられないでしょうか。

○吉田参考人 今回の見直しでも、引き上げについて、では、どんどん東京に合わせて高くしていいのかということが当然論点としてあったわけでありまして、私たちとしても、同じ公務の中で働いていて、地域による賃金差というのが無限についていいというわけではないという意味で、そろそろ限界なのではないかという問題意識を持っている旨を表明したところであります。

○塩川委員 最後に、小泉構造改革のもとで政府が総人件費の抑制政策を行いました。そういう時期に、当時、人事院の給与局長として吉田参考人が進めていたのが給与の構造改革であります。
 これ自身が、公務員の人件費を抑制する、そういった結果をもたらしたと思いますが、この給与構造改革をどのように総括しているのかをお尋ねいたします。

○吉田参考人 平成十八年から始まった給与構造改革は、まさに今の、給与の地域差というものに対してどう対応するのか、それから、いわゆる年功序列的な給与と言われていた公務員の給与を、年功序列的な色彩をいかに払拭していくのかというような点から幾つかの大きな改革をいたしましたので、そういう意味では、現実的な、今の社会に適合した公務員給与制度をつくる上では成功したのではないかというふうに思っております。

○塩川委員 終わります。