国会質問

<第190通常国会 2016年03月30日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 5号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 公職選挙法の改正案につきまして、動議提出者に質問をいたします。
 洋上投票についてでありますが、洋上投票は、外洋、遠洋を航行する指定船舶に乗船する船員のための不在者投票制度として、一九九九年に創設をされ、二〇〇〇年の総選挙から利用されております。
 船員が乗船中における投票というのは、指定港における不在者投票と、船舶内での不在者投票と、洋上投票の三種類があります。
 指定港における不在者投票は、船員が指定港所在の選管に出向いて投票するものであり、船舶内での不在者投票は、船長が不在者投票管理者となって、船内で投票し、管理者が投票された票を選管に郵送するものであります。
 遠洋、外洋にいる船舶の船員の場合、これらの方法では投票された票を選管に郵送するのは困難であるため、ファクスを用いて送致をすることができるようにする、これが今改正案の中身と承知をしております。
 最初に、総務省に確認をいたします。
 このような洋上投票は、幾つもの手続を踏みながら、複雑な流れで行われております。これはやはり不正防止のために厳格な手続をしていると思いますが、どのような流れでどのような不正防止を行っているのかについて説明いただきたい。

○大泉政府参考人 お答えいたします。
 現行の洋上投票ということでございますが、不正防止につきましては、まず、投票送信用紙等の請求のときにおきましては、不在者投票管理者となる船長が投票送信用紙等を請求するというふうになっております。その際に、選挙人の持つ選挙人名簿登録証明書、これは船員の方が持っておりますが、それに交付した旨を記載することにより二重交付などを防止しております。
 また、請求時に船舶のファクシミリ番号を登録してもらいまして、発信元以外からの送信を受け付けないようにするなどの措置が講じられております。
 次に、投票に際してでございますが、船員は、不在者投票管理者である船長の管理する場所で、立会人の立ち会いのもと投票を行うこととされております。
 また、船長が船員に投票送信用紙等を交付する際には、船長及び立会人の署名をいただいております。
 また、選挙人についても、署名あるいは船員手帳の番号等、本人を確認すべき事項を記載していただいております。
 また、実際の問題ですが、投票手続に入る前には、船長等が選挙管理委員会と連絡をとりまして、必要な打ち合わせあるいはファクスのリハーサルなどを行った上で投票手続に入っているものと承知しております。
 また、投票が終了しました後には、船長は、船員から投票送信用紙の提出を受けまして、それを指定市町村の選挙管理委員会に、帰港後、未使用の投票送信用紙とともに送致することとされて、散逸を防いでいるというような措置も講じられております。

○塩川委員 今答弁ありましたように、幾つもの手続を踏みながら、不正が起こらないような、選挙の公正性を確保する取り組みになっているわけであります。
 今回の法案は、現行の洋上投票では投票できない船員にも対象を広げようというものです。現行対象となっている一定の日本船舶に準ずる外国籍の船舶へと拡充し、さらに、現行は三名以上の日本人船員が乗船していなければ対象とならなかったものを、日本人船員が一人でも二人でも洋上投票が利用できるようにするというものであります。
 そこで、提出者にお尋ねをいたします。
 今回の対象拡大によって、今答弁もありました現行の不正防止策というのは変わるんでしょうか。

○逢坂委員 お答えいたします。
 今回の制度の拡充によりましては、まず、投票の公正性や投票の秘密、これが十分に確保されるといった観点から適切に対処する必要があると認識をしております。その上で、今回の法案によって投票の拡充がなされた場合には、現行の施行令、これをベースにして新たな政令が定められるというふうに認識をしております。その際は、二重投票の防止を初めとした投票の公正の確保という観点を特に重視する必要があるのではないかと考えております。
 また、改正案におきましては、洋上投票というのは二十四時間いつでもできるというものではなくて、政令で定める時間内に行うこととしておりまして、選挙管理委員会が適正な投票の確認をしやすくするように対処したい、そのように考えております。
 以上でございます。

○塩川委員 投票の公正性、投票の秘密の確保という観点で、現行の施行令をベースに新たな施行令をつくる、その中においては、二重投票の防止などをしっかりと盛り込んでいくという話であります。
 ただ、日本人船員が二名以下の場合におきましては、洋上投票で必置とされております投票管理者及び立会人が置けず、不正防止が十分にできるのかという懸念もあります。今お話があったような二重投票などの不正もありますし、事務ミスも起こり得るということも想定されます。
 こういった点で、提出者に重ねてお聞きしますが、日本人船員が二名以下の場合、こういった現行の手続のほかにも新たな不正防止策というのを設けるのかどうか、その点についてもう少しお答えいただけますか。

○逢坂委員 現行のもの以外に新たな不正防止策ということでございますけれども、先ほど答弁いたしましたとおり、投票時間を限定するでありますとか、二重投票をどうやって防ぐかといったようなことを、法成立後、政省令の中で検討してまいりたい、そのように思っております。

○塩川委員 これまで総務省は、対象を拡大することについては、選挙の公正確保の観点から、なかなか困難かなという答弁なども行ってきたところです。
 外洋航行中という特殊な環境下で船員の投票権を保障するのにはこの方法しかない、例外中の例外として洋上投票の対象者を拡大するということか、その点についてお尋ねいたします。

○逢坂委員 まさに、今委員御指摘のとおり、これはある種例外中の例外という観点から、何とか実現できないかということで検討させていただきました。
 これを検討するに当たって、現行公選法の中でも、お一人で投票しているものが幾つかございます。その一つは、海外から郵便投票する際に、在外公館を使わずに、御自身がお一人で郵便投票するという制度がございます。それから、国内においても、障害をお持ちの方々などが在宅から郵便投票する、このようなケースの場合も、お一人で投票するというようなケースがございます。
 そうしたことと現行の洋上投票のファクシミリによる投票、これを組み合わせることによって、何とか現在対象になっていない三人に満たない外国船籍の乗組員の皆さんも投票できないかということで検討してきたのが今回の法案の内容でございます。
 その意味におきまして、極めて例外的なものであるというふうに私は認識をいたしております。

○塩川委員 投票所に赴くことができない、本来はそういう形での、選挙の公正性の確保にふさわしい対応こそ求められているところ、特段の事情のある方についての例外中の例外という対応ということでお聞きをいたしました。
 その上でも、やはり選挙の基本原則を踏まえることが必要だと考えております。
 我が国の選挙制度は、最も基本的な原則として、普通選挙、平等選挙、秘密投票、直接選挙が憲法に定められており、これを受けて、公職選挙法により、自由選挙の原則、投票の原則、ここには一人一票主義や投票日当日投票所投票主義、投票用紙公給主義などが規定をされております。
 提出者にお尋ねしますが、選挙というのは民主主義の根幹であり、不正があれば選挙の正当性そのものが失われることになります。本人確認や本人の意思で投票しているかといった、秘密投票、一人一票主義など選挙、投票の基本原則が揺らぐことがあってはならないと考えますが、いかがでしょうか。

○逢坂委員 御指摘のとおり、選挙は民主主義の根幹でありまして、その正当性を保つことは大変重要なことだと認識をいたしております。そして、秘密投票や一人一票主義といった基本原則は当然に維持されるべきものと考えております。
 今回拡大をする洋上投票におきましても、施行まで一年をかけまして、委員御指摘のような基本原則を満たすことができるように、政省令の整備、周知、広報など十分な準備をした後に施行してまいりたい、そのように提出者としては考えております。

○塩川委員 その点で重ねてお尋ねしたいんですけれども、郵便投票の話もございました。在外の郵便投票もありますし、重度の障害者の方の郵便投票の話もあります。そういう例外中の例外の話と重ねて今回の洋上投票の話があったわけです。
 ただ、不在者投票の話もそうなんですが、選挙の公正性と投票者の利便性のバランスという言い方をよくされる方もあるわけですよね。つまり、投票機会をしっかりと保障しましょうといった点では利便性を確保することが必要だよね、でも、その際には公正性もなくちゃいけない。何か上げ下げするような、そんなニュアンスとしてお聞きすることもあるんですけれども、そうじゃないだろう。
 だから、そういう意味では、投票の保障をしっかり行うということと選挙の公正性は何かアンバランスな関係ではなくて、ある意味、利便性、便宜といって選挙の公正性を弱めるようなことでは、結果として選挙そのものの有効性が損なわれることになるんだという見地から、やはり選挙権行使の保障と選挙の公正性の確保というのは同時に追求されなければいけない問題だと考えますが、この点についての提出者のお考えをお聞きしたい。

○逢坂委員 全く私も御指摘のとおりだと思います。
 国民の皆様に少しでも投票の機会を均等に享受いただくということのために、選挙権の機会を拡充していくことというのは非常に大事なことでありますけれども、そのことによって公正性が失われるということがあってはならないというふうに思いますので、両方をしっかり満たしていくということが基本原則なんだろうというふうに私も思っております。

○塩川委員 憲法十五条は、国民の固有の権利として選挙権を保障しております。これは、国民が主権者として政治に参加する機会を保障するものであり、国民主権、議会制民主主義の根幹をなすものです。この憲法上の権利行使には、投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。また、投票や開票などに不正があっては選挙無効になりかねないので、選挙の公正が確保されることが必要であります。
 今回は、船員の方々で、選挙権を持っているにもかかわらず特殊な環境にあるということで投票することができない方の投票機会を保障しようというものであります。
 同時に、ほかにも、選挙権を持っているけれども投票することができないという方がいらっしゃいます。
 この間議論もしてきましたけれども、今国会の冒頭では、十八歳選挙権に関連をして、選挙人名簿に記載されない有権者のうち、旧住所で三カ月以上居住している人は投票できるようになりました。そのときにも指摘しましたが、三カ月以上の居住要件があることで、国政選挙の選挙権を有しているにもかかわらず投票できない方もいる。一カ月単位で引っ越しをする、国政選挙の選挙権を有しているにもかかわらず選挙できない、こういうことこそ本来解消すべき問題だと私はこの間も指摘をしてきたところであります。
 そこで、外出が困難な有権者の投票についてですけれども、障害を持つ方、高齢の方が投票所に行きにくいという問題もあります。
 その要因としては、投票所が遠いとかバリアフリー化されていないなどという問題も当然挙げられるわけです。投票所自体のバリアフリーの取り組みも重要であるのと、投票所が一階でなく二階になっているようなところであれば、車椅子の方を含めて対応が困難ということもあります。入り口に段差があって入れないということもあります。
 こういう取り組みで提出者にお尋ねしますが、このようなバリアフリーの現状があるがゆえに障害者の方の投票行動を制約させてはならないと思いますが、その点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○黒岩委員 塩川委員の御指摘、ごもっともなことだと思っております。
 法改正事項になるのか運用になるのかは、またいろいろと議論があると思いますけれども、やはり投票が困難な方、また、特に、今、塩川委員のおっしゃられた障害を持つがゆえになかなか投票権が行使しづらい環境、これをしっかり環境整備を、これはまた各党会派でしっかりと知恵を絞って前進していくよう、また各会派の皆様にもお願いいたしたいと思いますし、私どもも全力で当たっていく所存であります。

○塩川委員 環境整備ということでのお答えがありました。
 こういった外出が困難な有権者の方の投票について、この間国会でも議論があるのが、巡回投票のことであります。
 最初に総務省にお尋ねしますが、二〇一〇年十一月二十六日の本委員会、倫理選挙特別委員会におきまして、当時の片山総務大臣が、
 今私が事務当局に少し勉強してみようと言っていますのは、外国では巡回投票制度なんというのがあるんですね。選挙管理委員会が車で巡回をして、例えば高齢者とか障害者の皆さんの施設をめぐって、選管のスタッフがそこで投票をしてもらう、そういうこともやっているところがあるんですね。これも、もちろんそういう人員とかスタッフとかが確保できるかどうかなんという問題があるんですけれども、ひとつ勉強してみようじゃないかというようなことも今やっている
と述べています。
 この片山大臣の答弁を踏まえて、その後、どんな検討をされておられますか。

○大泉政府参考人 お答えいたします。
 先ほどの平成二十二年当時の状況について、詳しくは検証はできておりませんが、当時の関係者等に確認をしましたら、内部的に検討を行っていたということを伺っております。
 その中で、先ほど国会答弁の中にありました施設を巡回して投票するということについては、既に病院等の施設における不在者投票という制度があるので、各施設に出向いていくというよりは、期日前投票所を各地区において設置しやすくするなど、そういうような投票の便宜を図るというような方向性を議論していたと伺っております。
 また、平成二十六年五月に省内に設置しました投票環境の向上方策等に関する研究会におきましては、そういったそれまでの検討内容も踏まえて議論をしまして、平成二十七年三月に取りまとめた中間報告におきましては、投票に行きにくい方々のための方策として、巡回バスにより最寄りの投票所まで送迎する、あるいは一時的な期日前投票所を地区ごとに設置するなど、投票機会を確保する方策を盛り込んでいるところでございます。
 いずれにしましても、現行制度では投票することが困難な方々の投票機会をどのように確保していくかということは、非常に重要な問題であると考えておりますので、選挙の公正の確保との調和を図りながら、今後とも検討してまいりたいと考えております。

○塩川委員 片山大臣のときのやりとりというのは、施設等の不在者投票に係る問いに対しての答えですから施設という言い方をしておるんですけれども、基本はやはり一軒一軒回るような形というのが、巡回投票のあり方として欧米などで行われています。ドイツやデンマークなどでも、個人のお宅を回る、そういう巡回投票というのが制度として行われてきているわけなんです。
 そういったことについて、本来、研究会をせっかく立ち上げたんですから、一つ課題として議論するということがあってよかったんですけれども、そういう方向に行かずになっているというのは極めて残念であります。
 そこで、提出者にこの点でもお尋ねいたしますけれども、外出が困難な方の投票権行使を確保するのには、このような外国でも行われている巡回投票の導入というのも大いに考えられるのではないかと思いますが、お考えをお聞かせください。

○黒岩委員 現行制度では、今、政府の方からも説明がありましたけれども、期日前投票については、いわゆる巡回投票についても、これは制度上可能であるというふうに私どもは考えております。
 塩川先生のおっしゃる一軒一軒に直接訪問して投票してもらう、こういうような形については、これは今後の検討課題であると思っておりますし、先般通過いたしました公職選挙法改正案については、修正案の中で、期日前投票についてですけれども、これは各市町村選管に投票所の増設や、また効果的に投票所がより整備できるような、こういった訓示規定も設けておりますが、こういった内容をさらに各会派の皆様とも議論しながら推し進めてまいりたい、そのように思っております。

○塩川委員 現行でできる期日前投票の巡回投票所というのは、投票所ですよね。ですから、東日本大震災の被災地でたくさんある仮設住宅の集会所に時間決めで設置をしていく、巡回をしていくという形ですから、やはり本当の意味で家から投票所に赴くことができない方に対しての投票機会を保障するという意味でも、巡回投票という制度を新たにつくるということこそ今大いに具体化を図るべき点だということを重ねて申し上げておきます。
 次に、今回、法案として出されませんでした地方議員選挙のビラ頒布解禁の問題です。
 現行では、都道府県議選、市議選、町村議選ではビラ、マニフェストの頒布が認められていません。これでは有権者が十分に政策を比較できるとは言いがたいわけで、なぜ今回盛り込まなかったのか、その点についてお聞かせいただけませんか。

○黒岩委員 これも塩川委員の御指摘のとおりでございまして、各地方議会の選挙におきましてもビラ頒布についての解禁というものを大変望む声が多く、私どものところにも届いているところであります。
 今後、この点については与野党を問わず意見は一致しているところだと思っておりますので、さらにこの議論は活発に、なおかつ速やかに実現するよう私どもも努力してまいる所存であるということを申し添えさせていただきます。

○塩川委員 この後予定しております委員会の決議案の案文の中にも、地方議員選挙の選挙運動用ビラの解禁は、「今後各方面の意見を聞くなど速やかに検討を進め、必要な措置を講ずるもの」となっております。ぜひ速やかに検討し、措置すべきことを求めておきたいと思います。
 最後に、選挙制度改正の進め方についてですけれども、このことは、インターネット選挙運動が解禁をされた際に、各党協議に参加をしている全党が、今後も選挙運動規制のあり方について協議を続けていくことで合意をしておりました。ネットを利用した選挙運動は自由化をしましたが、その他の選挙運動、音や紙では細かい規制が残ったままで、選挙期間中、選挙政策をディスプレー上で表示することは自由でも、それを印刷して配ったり張り出したりすることはできません。
 私が昨年六月二日の倫選特で選挙運動規制の見直しについて各党に質問をした際には、自民党の提出者は、公選法そのもののあり方も見直しが必要だと述べ、民主党の提出者は、各党間協議で深めていく必要があると述べ、公明党の提出者は、選挙運動の規制緩和、見直しが必要などと答弁しています。
 今は民進党でありますが、このような見直しが求められている、そういう認識については変わりはありませんか。

○黒岩委員 結論から申し上げて、その認識については変わるものではございません。
 インターネットの選挙の際も、各党会派が議論をした中でまだまだ積み残しの点もあるということも承知しておりますし、今後、やはり選挙制度というのは民主主義のまさに土台でございますので、多くの会派の合意形成を図りながら進めていくということにまた不断の努力を続けてまいりたいと思っております。

○塩川委員 今お答えのところにもありましたけれども、一言、今回の件について申し上げれば、選挙制度の議論というのは、本案の取りまとめのように、自民党、公明党の与党と、民主党さんなど、一部の党だけで協議するということではなくて、やはり各党が意見を持ち寄って、全党が参加をして協議をすべきものであり、民主主義の土台である選挙制度の議論というのは、あらゆる政党会派で議論することが基本だと考えますが、改めてお聞きして、終わりたいと思います。

○黒岩委員 御指摘のとおりだと思っております。その基本を踏まえながら、これからも各党会派の御理解を得られる形、そして手続を踏んでいく、これはもう全力を尽くしてまいりますので、御理解いただきたいと思います。

○塩川委員 終わります。