国会質問

<第190通常国会 2016年04月01日 環境委員会 6号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 PCB廃棄物特別措置法案について質問をいたします。
 今回の法案が出された背景ですけれども、そもそも、一九六八年のカネミ油症事件、PCBを原因とする食中毒事件のカネミ油症事件発生を契機にPCBの製造が中止をされ、その処理施設の建設がその後の大きな課題となったわけであります。
 しかし、民間主体の焼却方式による処理施設建設は、排ガス問題などが忌避をされて、地元住民の理解が得られず、約三十年間頓挫をしてまいりました。
 一方、北極など地球規模のPCB汚染が広がる中、二〇二八年までのPCB廃棄物処理を求めるストックホルム条約について、我が国は二〇〇一年に批准をしたところであります。
 このような経緯があり、二〇〇一年、PCB廃棄物の処理の促進を図る特別措置法を制定したわけです。
 また、国が直接関与して、化学処理による処理施設を整備することとなりました。それが、JESCOを活用した全国五カ所の処理施設であり、その処理事業の完了は二〇一六年三月までとされたわけです。
 しかし、二〇一二年には、その処理事業の完了時期を二〇一六年三月から二〇二七年三月まで延長することとなりました。
 環境省にお尋ねしますが、このように延長した理由は何か、お答えください。

○鎌形政府参考人 延長の理由についてのお尋ねでございます。
 JESCOにおける高濃度PCB廃棄物の処理は、世界でも類を見ない大規模な化学処理方式によるものでございまして、処理開始後に明らかとなった課題への対応などにより、当初予定していた平成二十八年三月までの事業の完了が困難となったところでございます。
 処理開始後に明らかになった課題といたしましては、JESCOの作業環境におけるPCBの揮発量が想定よりも多く、作業員の安全対策が必要となったこと、また、PCB廃棄物中の紙や木などの部材に含まれるPCBの洗浄などの処理に想定よりも長時間を要したことなどが挙げられておるところでございます。
 このように、平成二十八年三月までの事業の完了が困難となりましたので、五事業所の地元自治体との調整を行った上で、平成二十六年にPCB廃棄物処理基本計画の見直しを行い、計画的処理完了期限の延長を行ったものでございます。

○塩川委員 世界でも例のないような大規模な化学処理方式のために、いろいろ試行錯誤だったということであるわけです。
 そういう意味で、揮発性が高いということなども明らかになって、作業者の方の健康、安全確保の対策も必要でしょうし、施設についての改修も求められるという中で、いろいろ初期段階でのトラブルも続いて、結果として完了時期の延長になったわけです。しかしながら、その後もトラブルは続いているわけです。
 そこで、環境省にお尋ねしますが、二〇一一年以降、この五年ぐらいで、トラブルにより数カ月単位で操業停止を行った事業所とその停止期間を明らかにしてください。

○鎌形政府参考人 お尋ねの、二〇一一年以降で、トラブルに伴って操業を停止した事業所と停止期間ということでございます。
 まず、一つ目でございますが、豊田事業所でございます。二〇一一年と二〇一二年にそれぞれ二カ月程度の処理を停止したことがございます。
 また、二番目、大阪事業所でございますが、二〇一二年にやはり二カ月程度、ラインでの処理を停止したことがございます。これは、トランス解体ラインでございます。
 それから、三番目、東京事業所でございます。二〇一四年でございますけれども、一、二カ月程度の処理を停止してございます。
 また、四つ目、北九州事業所でございますが、二〇一五年から、つまり昨年からことしにかけて、十一月以降、受け入れを停止しているというところがございます。
 以上が、事業所とその停止期間についてのことでございます。

○塩川委員 今御説明があったように、二〇一一年以降、この五年間を見ても、豊田事業所で二〇一一年に二カ月、二〇一二年に二カ月、また、大阪事業所では二〇一二年にも二カ月程度、東京事業所は二〇一四年にも二カ月程度、北九州事業所では二〇一五年の十一月から現在まで操業停止が続いている、四カ月、五カ月という操業停止に置かれたままであります。
 毎年のようにこういうトラブルにより長期の操業停止が繰り返されているわけですけれども、その原因は何なんですか。

○鎌形政府参考人 それぞれの事案に応じまして、トラブルの内容は異なってまいります。
 例えば、初めに申し上げました豊田事業所における二〇一一年、二〇一二年の処理停止でございますけれども、二〇一一年につきましては、排気管のフランジ箇所から凝縮液が漏えいしたということでございます。それから、同じく豊田事業所でございますけれども、二〇一二年につきましては、攪拌洗浄エリアにおける洗浄排液の漏えいがあったというところでございます。
 また、大阪につきましては、トランス解体ラインで油に着火するというようなことがございました。
 また、東京におきましては、水熱酸化分解設備の配管に穴があき、水蒸気が噴出するということがございました。
 また、北九州事業所におきましては、処理施設からのベンゼン濃度が北九州市との協定の値を超えたということがございました。
 こういったことで操業ないしラインの停止をしているというところでございます。

○塩川委員 今御説明があったように、トラブルの事例というのはいろいろなんですよ。ですから、何か特定の部署で、特定の原因で起こっているわけじゃないんです。やはり、大規模な、こういう例のないような化学処理の中で、いろいろなところでのふぐあいが明らかとなる。単に機器のふぐあいだけではなくて、ヒューマンエラーの問題も含めた人的な要因におけるトラブルというのもその中に含まれているわけであります。そういう点でも、どういう対応をするのかというのが、原因解明、対応策とあわせて求められているところであります。
 そこで、今もお話のあった、現在操業停止中の北九州事業所の例についてお聞きします。
 高濃度のベンゼンが検出をされる、地元と約束をしている環境保全協定値の十一倍を超えるというような高濃度のベンゼンが処理施設の排出ガスから検出をされたということであります。
 極めて重大なことであって、大臣にお尋ねしますが、JESCOは、国が一〇〇%出資をして環境保全を目的とした事業を行う会社であります。北九州事業所は、立地地域の住民に安全を約束して立地をしております。立地自治体、住民から厳しい指摘が出されていますが、その声をどう受けとめているのかをお聞きしたい。

○丸川国務大臣 PCBの処理事業は、地元の皆様方の御理解があって初めて成り立っているものでございまして、その信頼関係を揺るがすようなことというのは決してあってはならないことでございました。
 北九州事業所の件は非常に、地元の皆様にとっても御不安をお与えしたという点でまことに遺憾でありまして、私どもとしましても、協定値を超過したベンゼンを排出したことについては大変重く受けとめております。
 また、今回は、設備の不備にとどまりませず、JESCO本社のコンプライアンスあるいはガバナンスの問題でもあるという受けとめをしておりまして、私からは、設備改修等のハード面の対策に加えまして、コンプライアンス、ガバナンスに対して、例えば第三者のチェック機能の強化といった体制の改善を図るようにJESCOに対して指示をいたしました。
 これを受けて、再発防止策に対する報告書がことしの一月に提出をされたところでございます。
 私どもとしては、この報告書に盛り込まれた再発防止策がきちんと行動に移されるということが重要と考えておりまして、引き続きJESCOに対する指導監督を徹底してまいります。

○塩川委員 こういった地元との関係でも信頼関係を損なうようなトラブルというのは大変重いものだということを言わざるを得ません。
 JESCO本社のコンプライアンス、ガバナンスに問題があったということで、それに対しての対応策をとるという話ですけれども、施設ができるときには、地元の住民の方からは、その施設への心配の声も上がっていたわけですね。そのときの環境省の説明というのは、施設の運転は十年だけなんです、十年たてば更地にして返します、こういう説明もし、英知を集めて安全運転を行う、安全対策については自負を持っている、こういうことを地元の方に説明していた。それだからこそ、住民の方は、それならばということで建設を認めてきたという経緯があるわけです。
 それなのに、こういった、協定でも取り結んでいるようなベンゼンなどの環境協定値を大きく上回る数値が出ていたにもかかわらず、それ以前から数値が少しずつ上がり続けていた、こういう状況がわかっていたにもかかわらず、一年半も地元に説明をしない、一年半も隠蔽をする。なぜこんなことが起こるんですか。

○鎌形政府参考人 先ほども大臣からお答え申しましたとおり、コンプライアンスやガバナンスの問題があったという点がございます。
 具体的には、今回のベンゼン排出の原因につきましては、高濃度PCBコンデンサーからPCBを蒸発、回収する装置、真空加熱分離装置において発生したベンゼンが、排ガス処理工程で適切に除去されず排気されたということでございまして、この排ガス処理工程中の一部装置を平成二十六年四月から運用を停止したことがベンゼン排出の一因でございます。
 この運用変更につきましては、運用変更に先立って、本来必要なJESCO社内の承認手続を経ていなかったということも明らかになってございます。
 こういったことが原因究明の中で明らかになってきましたので、JESCOに対して再発防止策の検討を指示いたしまして、JESCOの中でガバナンス、コンプライアンス体制の改善を図る、こういうような再発防止策が示されているというところでございます。

○塩川委員 だから、なぜそうなったのかが聞きたいんですよ。何で二十六年四月から一年半もかけてこういうことが明らかにならなかったのか。その問題について、どうですか。

○鎌形政府参考人 まさに二十六年四月に排ガス処理工程中の一部の装置の運用を停止するということにつきましては、本社に報告した上で具体的な承認手順を経るべきだったというところでございますけれども、そういった手続に対して職員の自覚が足りなかった部分があるということでございます。
 そういう意味で、今回、再発防止策の中では、職員に対して、そういった規定類の徹底をするとか、それをしっかりと遵守していくことについての徹底が盛り込まれているというところでございます。

○塩川委員 それは何ですか、担当者がちゃんとしなかったという担当者の自覚の問題という形で、個人の責任にとどめるということなんですか。そういう考えなんですか。

○鎌形政府参考人 そのような手続を経ないということが行われたということが、そういうことが防止できなかった、そういう組織的な問題もあるということで、本社も含めた全社的なガバナンス、コンプライアンスの問題と捉えて、JESCOに再発防止を徹底するように指示しているところでございます。

○塩川委員 では、なぜそういうことが起こるか、その背景にある組織的な問題ということなんですけれども、そういう組織的な問題が起こる理由は何なのかということは、どうですか。

○鎌形政府参考人 繰り返しになりますけれども、本社そして事業所を含めて、作業の手順などについてルールがあるわけでございます。そういったルールについての徹底が足りないというところがそれぞれにあったんだというふうに考えております。

○塩川委員 繰り返されてお答えにならないわけで、なぜということの説明になっていないですよ。もう一回。

○鎌形政府参考人 こういった事故が起きないためのルールというのが設定されておるわけでございます。そのルールを遵守していくということが、本社においても、あるいは事業所そして職員においても徹底が必要だというところでございます。
 ですから、繰り返しになって恐縮でございますが、そういったことがそれぞれの部署において徹底していないところがあったというところが、こういったルールを逸脱したような行為が行われたということの原因になっていると考えております。

○塩川委員 説明になっていないんですけれども。ルールの遵守が徹底していないといったら、徹底して理由が何かという話になるだけなんですけれどもね。
 こういう問題の背景に何があるかというと、組織的な問題というその大もとには、そもそも、こういった重要な事業について現場に丸投げしているような実態があるんじゃないのかということなんですよ。環境省がJESCOに丸投げをし、JESCO本社は各事業所に丸投げをし、さらに言えば、その事業所の中においても下請の請負の事業者に丸投げをする、こういう丸投げの連鎖というのがトラブルにつながっているんじゃないですか。
 そういう丸投げをしている張本人は環境大臣じゃないですか。大臣、いかがですか。

○丸川国務大臣 PCB処理事業の現場で実際に作業に当たっていただいている皆様方というのは、この処理事業の施設そのものの設計から携わっていただいている方々でございまして、それぞれ事業所によって処理方法が違うところもございますけれども、そうした処理工程から組み立てに携わっていただいている専門的な知識をお持ちの方、あるいはノウハウをお持ちの方でございます。こういう方々を運転会社に設定して、設計段階からともにこの処理に当たっていただくことによって、私どもは、大変高度で化学的な処理施設を運営していくに当たって、十分な安全性を担保するように努力をしてきたわけでございます。
 今回の北九州事業所の件については、その作業工程を変更するということに対して、本来であれば、JESCOの社内において承認の手順というものが必要になります。これがJESCOの中の規定で決まっておるわけでございますけれども、こうした承認手順が必要だということについての理解が十分に徹底されていたとは言えないのではないかという認識に立っておりまして、まずもって、JESCOが専門的なノウハウをお持ちの皆様方に対して、専門的な知識を踏まえた上でどのような工程管理をしているかということについて、しっかりとJESCOの側で手続を踏んで把握をし、そして管理をするという一段の努力を行わなければならないということに反省点として至ったわけでございます。
 私どもは決して丸投げをしているわけではございませんで、今申し上げたように、設計の段階、その処理工程をつくっていく段階からともに作業を進めてきているわけでございますけれども、やはり運用していく過程において、私ども環境省とJESCOとの連携はもちろんでございますが、JESCOと運転会社の間でも、ともにやっていく中できっちりと手続を踏むということについて、改めて、一番現場の段階からJESCOそして環境省に至るまで、ともにこの手順の確認というのをしっかり行っていくということについて認識を共有していくことが安全を守る上で極めて重要だということで、今後とも取り組みをさせていただきたいと思っております。

○塩川委員 今、大臣のお話にもありましたけれども、全国五つの事業所、それぞれ建設をした事業者が子会社をつくって、それぞれ運転会社を運営しています。ですから、いわば建設段階に入った業者がそのままこの操業に当たっての業務を行っている、この子会社で行っているわけですよね。設計そして建設、さらには操業、運転、管理まで行うということなんですけれども、それが結果として、やはり現場の業者に丸投げという仕組みになっているんですよ。設計の段階では環境省がかかわったかもしれないけれども、実際動かし始めたらJESCOによろしくと。実際の日々の対応については運転会社によろしくと。その運転会社もさらに子会社があるわけですから、そういう子会社に丸投げをする。結果はやはりこういう丸投げの連鎖なんですよ。
 そういうのをやはりきっちり改めるということなしにはこういうトラブルは解消もされないし、こういうトラブルが解消されない限りは期限内のPCB廃棄物の処理もできないんじゃないのかという点でも、JESCOの組織問題というんじゃなくて環境省の組織問題、そのトップの環境大臣の責任こそ問われているんじゃないのか。
 そういう点でも、謝りに行くのは環境大臣が現場に行く、こういう性質の問題じゃないかと思うんですが、改めて、いかがですか。

○丸川国務大臣 今回の件については、私どもも直接地元自治体とお話をさせていただく機会があったわけでございますが、コンプライアンス、ガバナンスというのは、まさに組織そのものの体質をしっかりと改善していく、根っこからの体質改善だと思っております。
 ですので、環境省とJESCO、そして実際に運転している会社ではない第三者の目をこのプロセスに入れるということを、JESCOの今回の報告書の中にも入れておりますけれども、私からもそれは、当初、この事態が起きたときから、これは第三者の目を入れるべきだということを申し上げまして、必ずこのプロセスを今後は第三者がきちんと見ていただくということをもって、今後コンプライアンス、ガバナンスの強化を図らせていただきたいと考えておりますし、そのことをもって、地元の御理解を今いただいて、作業工程をもう一度きちんと点検させていただいているという段階にあるという認識でございます。
 今後とも、安心、安全を最大の私たちの約束として、この作業を進めさせていただきたいと思っております。

○塩川委員 コンプライアンス、ガバナンスが必要なのは環境省であり、大臣じゃないのかということを指摘しておくものです。
 次に、豊田事業所のトラブル事例についてお尋ねをいたします。
 このトラブルが起こった際、二〇一一年の二月の二十四日、豊田市議会の環境福祉委員会が意見を豊田市に提出いたしました。JESCO豊田事業所に関する意見であります。
 その中には、直接現場で従事をする豊田環境サービス社員の多くが派遣社員であり、その平均勤続年数の短いことは技能の蓄積という点において不安である、可能な限り、豊田環境サービスのグループ会社である神鋼環境ソリューション、これは神戸スチールの関連企業ですけれども、の正社員から一定数の人材確保が図られるよう豊田事業所に申し入れることとあります。
 こういった意見が豊田市議会から出されているということは、環境省は承知しておりますか。

○鎌形政府参考人 豊田市議会の担当委員会から豊田市に対して意見書が出てございまして、運転会社において派遣等非正規の雇用があるが、安全対策のためには正規雇用の一定数確保が必要という指摘があるということは承知してございます。

○塩川委員 我が党の大村義則豊田市議によりますと、汚染処理作業を行った作業員は三人とも派遣労働者であり、事故処理を現場で指揮したのも派遣労働者の班長だったといいます。
 豊田PCB処理施設では三つの雇用形態があるとされ、一つは、JESCOの職員三十一名、二つは、JESCOから委託をされて現場の施設運転をしている豊田環境サービスの職員四十一名、三つ目は、その豊田環境サービスに派遣をされて実際の作業に当たっている派遣労働者が百一名、派遣会社十三社からの派遣労働者ということで、平均勤続は二・八年という短期のものだということであります。こういう三つの労働形態になっており、この派遣労働者の方たちが現場作業の多くを行っていることが指摘をされています。
 しかも、各職員の勤務体制は、JESCOの職員は日勤のみ、豊田環境サービスの職員も基本的には日勤、したがって、日勤以外の時間、夜から朝にかけて、一日のうち十六時間は派遣労働者だけで作業しているということが確認されたとのことであります。
 ですから、我が党の大村市議は、この危険な作業が想定される処理施設において、一日のうち十六時間は派遣労働者だけで作業している体制というのは妥当なのか、もともと派遣労働というのは派遣先の指揮命令を受けて行う労働だ、その指揮命令者がいない、派遣労働者の中で班長を決めて、それで事故の処理も判断させる、このような勤務体制が果たして労働法制に照らして適法なのかと指摘をしております。こういった現状というのがトラブルの背景にもあるんじゃないでしょうか。
 このように、非正規雇用の労働者が業務の中心を担っている、こういう認識は、環境省、お持ちですか。

○鎌形政府参考人 JESCO事業所におきます運転会社への委託ということでございますけれども、JESCOから実施すべき作業とか要求される水準についてしっかりと指示した上で行われているというふうに考えてございます。
 このため、正規雇用かあるいは非正規雇用かという御指摘がございますが、そういう正規雇用か否かにかかわらず、各種作業の内容に応じ適切な作業が行われるようにJESCOにおいて指揮しているというふうに認識しております。

○塩川委員 実態とすれば、トラブルが多数発生しています、その現場では非正規の方が中心となっているような状況にあるんだと。そういう人たちが率直に勤続年数が短いという中で大変な御苦労もされておられるということなんですけれども、そういう現状については知らないということですか。

○鎌形政府参考人 JESCOと運転会社との関係で申しますと、作業の内容についてJESCOが指示をいたしておりますし、そして運転会社の作業状況などについてJESCOが把握して、問題があれば指揮をする、こういう形でやっておるということでございまして、適切な作業が行われるような体制をJESCOが組んでいるというふうに認識しております。

○塩川委員 答えになっていません。
 この五つの事業所における運転会社の従業員のうち、いわゆる正社員が何人で非正規が何人か、そういう数字というのは、環境省、持ち合わせていますか。

○鎌形政府参考人 豊田事業所の運転会社、豊田環境サービスにつきましては、総勢百五十九人のうち、社員七十七名、派遣六十八名、出向十名、請負四名、これは平成二十七年九月末現在でございますが、そういう数字を把握してございます。

○塩川委員 その時期、その時点での人数ですけれども、多数が非正規雇用というところも明らかであります。後で五つの事業所全体の数字はいただきたいと思います。
 それで、大臣にお尋ねしますけれども、今環境省が説明しましたように、現場の方々は非常に頑張っておられます。ただ、そういう中でも、非正規雇用の中で派遣労働者の方も多くて勤続年数も短い、そういう方のことも考えれば、安定した雇用でこそしっかりとした仕事ができるんじゃないのか。
 そういう意味でも、今、運転会社、それぞれありますけれども、そのもとに幾つもの企業がぶら下がるような格好で仕事に従事をしているわけで、その多くが非正規雇用となっている。こういった非正規雇用を容認するような作業環境というのが、高濃度PCBの処理作業を行う上では改める必要があるんじゃないのかと考えますが、大臣はいかがですか。

○丸川国務大臣 PCBの処理作業工程の中には、大変複雑なものから一定の定型的なものまで、さまざまあろうかと思いますので、その作業の流れに応じて、また工程に応じて、JESCOが適切にそれを考慮しているものと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、これは、作業される方の安全ということ、また環境に対する配慮ということは一番このプロセスで重要なことでございますので、引き続き、雇用形態にかかわらず、労働安全衛生には徹底を期してまいりたいと存じます。

○塩川委員 雇用形態にかかわらずということではなくて、やはり雇用形態がこういった作業環境に影響を与えているのではないのか、こういう立場で検討すべきだと考えます。
 環境省、JESCOによる業務の丸投げの連鎖の問題に加えて、請負事業者の重層下請構造のもとでの非正規雇用の多用がトラブルの原因となっている、こういう認識が求められております。コストダウンの要請のもとでの安全対策の軽視が問われることで、安全で確実にPCB廃棄物の処理を進めるために人手もお金もかけるべきであり、そのための費用問題については、次回の委員会で質問したいと思います。
 きょうは、続けて、PCB廃棄物の処理期限についてお尋ねをいたします。
 大臣にお尋ねしますが、既に期限を一回延長しました。これ以上は延ばせない。その処理期限終了後にPCB廃棄物が出てきたときにはどうするんでしょうか。

○丸川国務大臣 PCB特措法では、廃棄物の排出事業者責任に基づきまして、事業者に対して、保管するPCB廃棄物をみずから処分するか、処分を他人に委託することを義務づけております。ですので、JESCOの計画的処理完了期限の経過後については、事業者の責任でPCB廃棄物を民間主導で処分することを求めることになります。
 しかし、これは、PCB特措法制定以前に、全国三十九カ所で高濃度PCB廃棄物の処理施設の設置が民間主導で試みられたものの、いずれの場合も地元の御理解を得られずにこの処理に至りませんでしたので、こういう経緯に鑑みますと、民間主導でPCB廃棄物をみずから処分するということは、現実的には極めて困難です。
 ですので、こうした事態が生じないように、法案を認めていただいた暁には、今般の改正案に盛り込みました措置によりまして計画的処理完了期限内に処分委託が完了するように、事業者の皆様にも十分理解をいただく必要がございますし、私どもも全力を尽くしてまいります。

○塩川委員 排出事業者が責任を負うというのは当然でありますけれども、しかし、実際には残ってしまったというときにどうするのかということなんですけれども、そういうのは全く想定しないということなんですか。

○鎌形政府参考人 現在、高濃度のPCBにつきましては、JESCOの事業所で処理をする、それに計画的処理完了期限があるということでございますが、その期間の経過後は、今ほど大臣から御説明いたしましたとおり、事業者の責任で民間主導で処分ということになってしまいますので、そうならないようにするためのこの法案ということでございます。
 ですから、この法案に盛り込まれた事項をしっかりと講ずることにより計画的処理完了期限内に処理が完了するというふうに実施してまいりたいと考えております。

○塩川委員 そうなることを私も願うものでありますけれども、実際にどうなるかというのは現場の問題ですから、そういういろいろなシミュレーションも含めて考える必要が出てくるわけであります。実際、事業者の方が十分出してこないという経緯もあるということは当然踏まえた対応が求められるところです。
 そこで、私が懸念するのは、先ほども紹介しました北九州ですけれども、二〇一三年十二月の北九州市議会において、我が党の八記博春市議の質問に対して、北九州市の環境局長は、二〇一三年十一月二十二日の環境省による市民説明会では、延長期間内の確実な処理に疑問の声が上がったわけだが、これに対して環境省は、国としての再延長はしない、その考えに基づき、最大三年間の予備期間を設定している、したがって北九州事業は平成三十五年度で終了する、仮に平成三十五年度を過ぎてもPCB廃棄物が残ってしまった場合は、PCB特措法ではなく、別の枠組みの中で処理することを国の責任で明らかにした、このように環境局長が答弁をしているわけです。
 お尋ねしますが、平成三十五年度を過ぎてもPCB廃棄物が残ってしまった場合は、PCB特措法ではなく、別の枠組みの中で処理するというのは、どういうことを説明したんですか。

○鎌形政府参考人 御指摘の、二〇一三年、平成二十五年十一月二十二日、PCB廃棄物処理に係る国の検討要請に関する説明会というのが行われました。
 環境省からは、JESCO北九州事業所の事業終了準備期間である平成三十五年度まで操業がございますが、それでもPCB廃棄物の処理が完了しなかった場合、PCB特措法の枠組みの中で処理するのではなく、排出事業者責任に基づく処理をすべきという旨の説明をしたというふうに聞いております。

○塩川委員 排出事業者責任のことを説明したんだ、PCB特措法の外に出ますと。
 そうすると、それは、廃棄物処理法に基づき排出事業者が処理責任を負うということなのか。それは実際どういうことになるんですか。

○鎌形政府参考人 PCB廃棄物は産業廃棄物でございますので、排出事業者責任のもとで処理すべきというのが廃棄物処理法の枠組みということでございまして、その世界での処理が行われるべきということを申し上げたというふうに認識しております。

○塩川委員 高濃度廃棄物の処理施設はもう終わりです、だけれども出てしまいました、そういった高濃度PCB廃棄物を排出事業者の責任で処理するというのは、どういうふうにするということなんですか。

○鎌形政府参考人 現在、高濃度廃棄物の処理はJESCOの事業所のみができる、そういう能力を有しているというところでございますので、であるからこそ、そういった事態が生じないように、今回の法案に盛り込まれた措置でもって処理を完了する必要があるという趣旨で当時の担当者も説明会で申し上げたというふうに考えております。

○塩川委員 ですから、高濃度PCB廃棄物を持ち続けてしまったといった場合には、特措法の外に出て、廃棄物処理法に基づいて排出事業者が責任を持って処理をしますということになった際に、実際どうなるのかという話なんですけれども、例えば、北九州の事業は終わりました、では、ほかの大阪とか東京へ持ってきて処理してもらう、そういうことというのもあり得るんですか。

○鎌形政府参考人 JESCOの五つの事業所における処理すべきものの中身につきましては、どういった種類のもの、コンデンサーなり安定器なりそういったもの、処理すべき種類につきましては御地元との合意で決まってございます。そういう意味で、他の事業所の、想定されていなかった、計画の中になかったものを運び込んで処理するということは、地元との合意の中では認められないということでございます。

○塩川委員 そういうことだと思います。その辺、どういう整理をされるのかというのがよくわからないんですよ。ですから、北九州などでも、こういう事業についてさまざま関心をお持ちの方の中でお聞きしていることなどもあると、どうするんだという話が出てくるわけですよね。だって、市議会で答弁しているんですから、環境省がこういうふうに説明したと。これは問題ですよね。
 そうすると、高濃度のPCB廃棄物の処理施設を使わないんだったら、低濃度のPCB廃棄物の処理施設が今高度化もしていますから、民間でやってもらうというのはどうなのかという話も出てくるんですけれども、そういうのはもう絶対ないということで言い切れますか。

○鎌形政府参考人 高濃度PCB廃棄物につきましては、JESCOの五事業所で処理いたしますし、それ以外のところでは処理することが地元との関係で難しいということだと思います。
 かつて、三十年間、焼却処理で設備をつくろうとしてきて、できなかったという経過がございます。そういう意味で、JESCOにおける処理を完遂するということが必要だというふうに考えております。

○塩川委員 低濃度PCB廃棄物処理について何点か確認しようと思うんですが、低濃度PCB廃棄物処理について、今後処理すべき処理量というのがどのくらいか、把握している量がわかりますか。

○鎌形政府参考人 推計でございますが、使用中のものも含めて、柱上トランスが約百四十六万台、柱上トランス以外の電気機器が約百二十万台、OFケーブルが約千四百キロメートル存在するという数字がございます。
 ただ、低濃度のPCB廃棄物は、特措法の制定以降にそういった問題があるということが発覚したものでございまして、使用中のものも多くございます。そして、PCB汚染の有無を実際に分析しなければ確認できないというものも多いので、処理対象量の実態が十分把握できていないという課題はございます。そういう上での推計値ということで受け取っていただければと思います。

○塩川委員 さらにふえる見込みがあるということですから、それを期限内に確実に終わらせるという取り組みも極めて重要であります。
 低濃度PCB廃棄物の処理は、無害化認定業者など数十者、三十者程度あるというふうに聞いておりますけれども、その処理方法は焼却方式でされておられるということですが、それはそういうことでよろしいですか。

○鎌形政府参考人 低濃度のPCB廃棄物につきましては、まず、廃棄物処理法に基づきまして都道府県知事などから特別管理産業廃棄物処理業に係る許可を受けた者、そして、同じく廃棄物処理法に基づきまして環境大臣から無害化処理の認定を受けた者により処理されているというところでございます。数といたしましては、環境大臣の無害化認定が二十七、それから都道府県知事の許可が二というふうに承知してございます。
 これらの事業所におきましては、焼却、洗浄などで処理をしているというふうに把握しております。

○塩川委員 こういった低濃度PCB廃棄物の処理施設の一覧なども見ておりますと、JESCOの事業所の運転会社と同じ系列の企業があるわけですよね。
 北九州でいいますと、新日鉄住金がそもそも建設しました。運転会社も、新日鉄住金が出資をしているSPCの運転会社が行っております。ですから、高濃度PCB廃棄物の処理施設を新日鉄住金のグループがやっています。新日鉄住金は一方で低濃度PCB廃棄物の処理施設も持っているんですよ。光和精鉱という会社ですけれども、いずれも北九州に立地をしているわけであります。
 ですから、先ほども言ったんですけれども、高濃度廃棄物の処理施設の期限が終わりました、でも出ちゃいましたといったときに、同じような系列にある例えば新日鉄住金のグループ企業の中で、高濃度はやめたけれども低濃度のを引き続きやっています、これは技術的にも高度化されてきたから高濃度のもできますよ、こんなふうな形で認めるようなことは決してあってはならないと思うんですが、いかがですか。

○鎌形政府参考人 高濃度PCB廃棄物の処理につきましては、御承知のとおり、焼却処理を進めようとして三十年間施設の立地ができなかったという経過があるがゆえに、国が責任を持って、かつ大規模な化学処理方式という特別な方式をもってJESCOに処理をさせるという方式をとってきているということでございます。
 こういった経過に鑑みますと、JESCOで処理できないから焼却の方法によりということは現実的にできるというふうには考えてございませんので、JESCOによる処理をしっかりと進める、これがまず肝要というふうに考えてございます。

○塩川委員 では、この件で大臣にも最後に一言いただきたいんですけれども、やはり高濃度PCB廃棄物というのは処理に結構お金がかかるわけですよ。もちろん中身は違いますけれども、低濃度の方は相対的には安くできるんですよね。
 だから、事業者の腹の中はわかりませんけれども、高濃度で出すのを置いておいて、期限が過ぎた後にどうするかという処理で、自分で処理してください、では低濃度に持っていきましょう、こんな話で安上がりに事を済ませるようなことというのは絶対やっちゃいけないわけですから、そんなことを決して行わせない、こういうことについて、大臣としてお答えいただきたい。

○丸川国務大臣 高濃度PCB廃棄物を処理するに至るまでの長い経過を振り返りますと、お地元の理解と安心、安全に対する万全の体制なくして受け入れというのは考えられません。ですので、今後とも、それに基づいて、私どもは期限内の処理ということに対して万全の体制で当たってまいります。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。