国会質問

<第190通常国会 2016年04月19日 環境委員会 9号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、東電の廣瀬社長においでいただいております。
 まず最初に、除染の経費について、東電への求償に係る問題について質問をいたします。
 最初に、環境省にお尋ねをいたしますが、放射性物質汚染対処特措法、除染特措法に基づいて講ずる措置は、原賠法の規定により、原子力事業者、東電の負担のもとに実施するとされておりますが、その理由は何でしょうか。お答えください。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 放射性物質汚染対処特措法第四十四条第一項の規定におきましては、事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するため法律に基づき講ぜられる措置は、原子力損害の賠償に関する法律第三条第一項の規定により、当該原子力事業者の負担のもとに実施されるものというふうに規定をされております。これに基づきまして、環境省としては、この放射性物質汚染対処特措法の規定や関連の閣議決定などを踏まえつつ、東京電力に支払いを求めているところでございます。

○塩川委員 これは環境行政のいわゆる汚染者負担原則と整合的なものだと考えますが、いかがですか。

○高橋政府参考人 今申し上げた特措法の規定に基づきます対処につきましては、汚染者負担の原則とも整合しているというふうに考えております。

○塩川委員 原発事故を起こした東電が汚染者負担原則に基づいて除染経費を負担する、こういうことになっております。
 次に、会計検査院にお尋ねをいたします。
 放射性物質汚染対処特措法に基づくいわゆる特措法三事業に係る環境省分の事業実施済み額、求償額及び東京電力の支払い額は幾らか。また、その求償率及び支払い率が何%かについてもお答えください。

○村上会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 会計検査院は、東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関して、平成二十四年八月に参議院からの要請を受けて検査を実施し、その結果につきまして、四月六日に四回目の報告を行っております。
 この報告書におきまして、委員御指摘の特措法三事業に係る二十三年度から二十六年度までの環境省分の事業実施済み額は七千八百四十三億余円、これに対しまして、二十七年十月末現在の東京電力への求償額は四千六百五億余円、東京電力の支払い額は三千六百五十三億余円であると報告いたしております。
 また、求償額の事業実施済み額に対する割合でございます求償率は五八・七%、求償額に対する東京電力の支払い額の割合でございます支払い率は七九・三%となっているところでございます。

○塩川委員 求償額四千六百五億円に対して、東電の支払い額が三千六百五十三億円、支払い率七九・三%ということでした。
 この支払い額につきましては、東電の方が新総特の中でも数字を挙げております。二〇一六年二月末現在では、除染支払い合意実績が三千九百億円となっていますから、時期的に見ても対応しているのかなと思っております。
 いずれにせよ、求償額と東電の支払い額に差があるわけであります。
 環境省にお尋ねいたしますが、帰還困難区域の除染経費について、環境省の除染経費求償に対する東電の応諾状況を確認したい。二〇一三年十二月以降に計画、執行された帰還困難区域における除染経費について、東電が応諾をして支払った事例がありますか。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 帰還困難区域の除染費用についてでございますけれども、これにつきましては、平成二十八年三月二十八日現在のところ、概算でございますけれども約七十五億円を求償しておりまして、そのうち約五十一億円が応諾をされているということでございます。残りの支払いについては、東京電力においてその支払いの可否を検討されているというふうに認識をしてございます。
 なお、御指摘の平成二十五年末以降に計画をされた帰還困難区域の除染事業の支払いにつきましては、全て検討中ということになっております。

○塩川委員 ですから、平成二十五年十二月以降については払われていない、検討中ということではありますけれども払われていない。それ以前は払っているけれども、平成二十五年十二月以降については、検討中と述べて払っていないということであります。
 こういう具体の事例については紹介ができますか。平成二十五年以降に計画されて執行された、皆さんの方が求償をし、東電の方がこれについては支払っていないという事例がわかりますか。

○高橋政府参考人 済みません、今手元にちょっと資料がございませんので、後ほど御報告をさせていただきたいと思います。

○塩川委員 幾つか紹介はしていただいておりますが、例えば、平成二十五年浪江町除染等工事一ということでは、これは執行額が五十七億円に対して東電への求償額が五十七億円、全額求償しているわけですけれども、応諾が五十五億円ということで、その差の二億円が帰還困難区域に相当するということで支払われていないとか、平成二十六年度の飯舘村の墓地除染等工事、長泥地区というんでしょうか、二億円の執行に対して、求償が二億円で、応諾がゼロということなども東電が支払っていないという例になっているわけであります。
 こういったように、同一の事業の中でも、帰還困難区域と区域外の地域がある場合に、区域外は支払いをしているのに帰還困難区域は支払っていない。こういうのはおかしいんじゃないですか。

○高橋政府参考人 先ほども御答弁を申し上げましたけれども、帰還困難区域の一部についての支払いについては、今、東京電力の方でそれを検討中というふうに認識をしてございます。

○塩川委員 どういう理由で検討中だと聞いているんですか。

○高橋政府参考人 その理由までは、私、今認識はしてございません。

○塩川委員 求償をしているのにその理由も聞かないんですか。払わない理由、検討中だと。理由を聞かないんですか。

○高橋政府参考人 先ほど申しましたけれども、平成二十五年十二月以降に計画されたものの扱いについて検討されているというふうに私どもは認識をしてございます。

○塩川委員 平成二十五年十二月以降に計画された除染の事業、帰還困難区域の除染事業について検討しているということですけれども、では、東電の方にお尋ねいたします。廣瀬社長にお尋ねしますが、今言った平成二十五年十二月以降に計画、執行された帰還困難区域の除染事業について支払っていない、その理由は何ですか。

○廣瀬参考人 お答えいたします。
 私どもは、いわゆる帰還困難区域の除染費用の負担に関しては、放射性物質汚染対処特措法、いわゆる特措法に基づいて国から除染費用の請求があって、その法律、並びに、これは賠償の一環でございますので中間指針並びに二〇一三年十二月の閣議決定に基づいて、関係省庁と協議をさせていただきながら適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 今、除染特措法と原子力損害賠償制度とそれから二〇一三年十二月の閣議決定、これに基づいて関係省庁と協議しながら対応したいということですけれども、これで言えば、法律は除染特措法なわけですよ。除染特措法では、東電、原子力事業者の負担のもとに実施をするとなっているわけですけれども、当然のことながら、除染特措法に基づけば東電が負担するのは明らかであるわけで、払わない理由はないと思うんですけれども、何で検討中などと言ってごまかすんですか。払うということでおっしゃっていただけばいいんじゃないですか。

○廣瀬参考人 繰り返しになりますけれども、いわゆる特措法に基づいてお支払いをするということ、さらに、これは原子力損害賠償制度の一環でございますので中間指針も当然踏まえて、さらには国の閣議決定も踏まえて考えていこうということ、それが基本方針でございます。

○塩川委員 環境省に確認しますけれども、東電の説明で二〇一三年の閣議決定に基づきとあるのは、今御紹介しております復興加速化指針のことであります。
 そこでは、実施済みまたは現在計画されている除染、中間貯蔵施設事業の費用は、除染特措法に基づき、復興予算として計上した上で、環境省等から東京電力に求償する、現在計画されている除染を実施した後のさらなる取り組みについては、復興のインフラ整備、生活環境整備という公共事業的観点から、帰還者、移住者の定住環境の整備等、地域再生に向けた取り組みとして実施するとあるわけですけれども、この帰還困難区域の除染は公共事業的観点で行うというのはどういうことなんでしょうか。

○高橋政府参考人 帰還困難区域の除染につきましては、これまでも、例えば常磐道等のインフラ、非常に重要なインフラなどを対象としてやってきてございますけれども、そういうインフラの整備でございますとか、あるいは将来の町づくりでございますとか、そういうものとも密接に関連をしてくるということでございまして、そういう観点で、公共事業的な観点、色彩も非常に強いということかと思っております。

○塩川委員 公共事業的観点ではあれ、除染の経費です。であれば、当然のことながら東電に求償し、東電から支払ってもらう、そういう筋のものということですよね。

○高橋政府参考人 特措法に基づく除染事業であれば、当然東電に求償するというものだというふうに認識をしてございます。

○塩川委員 大臣にお尋ねいたします。
 今のやりとりを聞いていただいたと思うんですけれども、私は、除染特措法に基づいて、当然のことながら、かかった除染の経費は東電に求償し、東電に支払ってもらう、これ以外ないと思います。
 しかしながら、二〇一三年十二月の閣議決定をもって、そこから後に計画をされ、執行された経費については検討中ということで支払っていないわけですよ。それはそもそもおかしいんじゃないかと思うんですよね。
 ですから、閣議決定で何か法律が上書きをされてしまうなんということは当然あってはならないことですから、改めて、二〇一三年十二月の閣議決定以降に計画、執行された帰還困難区域の除染の費用について、当然のことながら東電が支払うべきものだと思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○丸川国務大臣 放射性物質汚染対処特措法によりますと、事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するためこの法律に基づき講ぜられる措置については、東京電力の負担のもとに実施されることとなっておりまして、東京電力に支払い義務があります。
 現在、帰還困難区域における除染等については、平成二十七年六月の閣議決定を踏まえて、復興に不可欠な広域的インフラや復興拠点における個別の除染に取り組んでおるところでございます。
 こうした費用の支払いについて、東京電力には、放射性物質汚染対処特措法の規定や閣議決定などを踏まえつつ、迅速かつ適切に対処していただく必要があると考えております。

○塩川委員 いや、質問に答えてほしいんですけれども、二〇一三年十二月の閣議決定後、帰還困難区域で計画、執行された除染費用について、帰還困難区域分については東電が検討中という名目で支払っていないんですよ。その分は当然支払ってもらうという立場ですよね。

○丸川国務大臣 二〇一三年十二月の閣議決定、これについてきっちりと東京電力と協議をさせていただくということが必要かと存じます。

○塩川委員 いや、協議するまでもなく、除染特措法に基づいて、その二〇一三年十二月の閣議決定以降の分についても支払ってもらうという立場なんですよね。

○高橋政府参考人 先ほどから繰り返してございますけれども、放射性物質対処特措法に基づいて実施をしている措置については、東京電力の負担のもとに実施するということになってございますので、東電に支払い義務があるということでございます。
 現在行っております帰還困難区域の除染につきましては、この法律それから閣議決定を踏まえて、適切に対応していただく必要があるというふうに考えております。

○塩川委員 閣議決定を踏まえてというのはおいておいても、そもそも除染特措法に基づいて東電に支払いを求める、東電は支払うということが決まっている、法律に基づく措置ですから。
 もう一回確認しますけれども、二〇一三年十二月の閣議決定以降、冒頭の答弁にあるように、東電に対して帰還困難区域の除染の費用を求償しても、検討中ということで現時点で支払っていないわけですから、その分については当然支払ってもらうものという立場で臨んでいるということですよね。

○高橋政府参考人 環境省として、特措法に基づいて東電に求償しているものについては、当然支払っていただくものとして求償しているものでございます。

○塩川委員 ということで、廣瀬社長、その分について支払っていただきたいんですが。

○廣瀬参考人 繰り返しになってまことに申しわけないんですけれども、私どもは、汚染対処特措法、中間指針、それから閣議決定を踏まえて、環境省さんとも十分に協議をさせていただいて対応していきたいというふうに思っております。

○塩川委員 これは極めて重大だと思います。法律で定められているにもかかわらず、このことについて東電の方が曖昧にし、環境省が支払えという立場で臨んでいないというふうになりますよ。協議するなんという問題じゃないじゃないですか、法律で決まっていることなんだから。
 何でそんなことになるのかと思いますけれども、大臣、もう一回。

○丸川国務大臣 特措法に基づいて適切に対処していただくことは当然だと思っております。
 一方で、公共事業的視点と申しますのは、まさにインフラ復興と一体でやった方が、むしろ除染をやってから取り壊しをしたりするよりも一体としてうまく進んでいくという面もございますので、それはそれとしてどうするか、今後、夏ごろまでに検討するというのが政府の方針でございます。
 いずれにしても、私どもの求償に対しては東京電力さんにはきちんと応えていただけるように、今後とも協議をしてまいります。

○塩川委員 では、改めて、二〇一三年十二月以降の帰還困難区域の除染費用については東電に支払ってもらうと。イエスでいいですか。

○丸川国務大臣 閣議決定について東京電力さんにも御対応いただけるように、今後協議をしてまいります。

○塩川委員 結局、安倍総理が、帰還困難区域の区域見直しに向けた国の考え方をことしの夏までに明確にしたいと述べたというのとも関連していると思いますけれども、帰還困難区域における除染経費について、東電の費用負担を見直すようなことというのは絶対あってはならないということは申し上げたい。汚染者負担原則に立った東電の負担、これは当然のことであります。
 その上で、事故費用については、午前中も申し上げましたが、東電のステークホルダーの株主、大手金融機関が本来負担をすべきものであって、電気料金や税金という形で国民が負担するというのは筋が通らないということもあわせて申し上げておくものであります。
 次に、除染労働者の特殊勤務手当に関して環境省に確認をしますが、特殊勤務手当、今では帰還困難区域であれば一万円とかとなっておりますが、この特殊勤務手当は現場の除染作業労働者に確実に届いているんでしょうか。

○高橋政府参考人 特殊勤務手当でございますけれども、これは環境省と受注者との契約におきまして、受注者に対しまして、労賃に加えて、環境省との契約で定めた一定の額、すなわち特殊勤務手当でございますけれども、これを作業員に支給するとともに、その支給状況を下請事業者による支払い状況も含めて確認することを義務づけてございます。
 また、環境省におきましても、受注者に賃金台帳等を提示していただきまして、特殊勤務手当を含む賃金の支払い状況、支給状況を確認してございまして、基本的には適切に支払われているものというふうに認識をしてございます。

○塩川委員 賃金台帳などで確認をする。例えば、労働条件通知書にも特殊勤務手当と明示をされている、こういうのも当然確認をされるということでよろしいですか。

○高橋政府参考人 私どもの方では、まず、受注者において、原則三カ月ごとに、特殊勤務手当が支給されているかどうかを賃金台帳等で確認をさせております。その上で、工事が完了した段階で、賃金台帳を受注者に提示していただきまして、環境省においても改めて確認をしている、そういう手続でございます。

○塩川委員 労働条件通知書での確認というのはしていないということですか。

○高橋政府参考人 その点につきましては、ちょっと今、手元に資料がございませんので、後ほど確認をさせていただきたいと思います。

○塩川委員 実際には、要するに、重層下請構造のもとにありますから、多くは大手ゼネコン、スーパーゼネコンが元請となって、一連の下請、孫請という構造の中での作業で、ピンはねですとか中抜きとかこういう実態になって、適正に賃金が支払われていない、こういう事例というのが除染労働者でも大問題になっているわけですね。
 こういったことについても、やはり本当に、特殊勤務手当というのが、放射線量の高い困難な作業下であるわけですから、しっかりと作業を進めてもらう上でも、労働条件をしっかりと保障するということは当たり前のことだ、それがきちっと貫かれるということを、これは環境省として責任を持ってやるべきところであります。
 そういう点でも、こういった重層下請構造によるピンはねとか中抜きの仕組みの是正がないと作業者の確保が困難になると思いますけれども、こういった重層下請構造のさまざまなゆがみを是正する、こういう点で環境省としての取り組みはどうかということについて確認をしたいと思います。

○高橋政府参考人 まず、先ほどのちょっと御答弁できなかった部分で、労働条件通知書の件でございますけれども、これにつきましては、この契約の中で、受注者は、除染等作業員に係る労働条件通知書に、特殊勤務手当に関する事項が適切に反映されるよう周知する等必要な措置を講じなければいけないというふうに規定をしてございます。
 私ども、さっきおっしゃられた体制、下請も含めた事業全体の体制図は、当然、全体を確認してございます。また、コールセンターを設けまして、万が一その支払いが適切に行われていないというような苦情が作業員からあれば、適宜、コールセンターで相談を受け付けまして必要な対処をしているということでございます。

○塩川委員 コールセンターよりもよっぽど、地元の労働組合の方に相談というのが物すごく多いんですよ。労働基準監督署の違反事例なんかも半期ごとで発表していますけれども、何か全体は減っているような傾向なんですけれども、現場は全然違いますからね。
 こういった重層下請構造のもとで、外から事業者が入ってきて、ピンはね、中抜きをして、結果として、受けているのは、地元の業者がとっているんだけれども、労働者そのものの労働条件は切り下げられている。こういう中で働かされていたら除染そのものが進まないということを厳しく指摘しておくものであります。そういう点でも、発注者の環境省の責任は極めて重大だということを申し上げるものです。
 そのこととあわせて、やはり福島第一原発の作業労働者の労働条件の問題があります。
 まさに事故現場の作業でありますから、高い放射線量下での困難な作業に当たられておられる労働者の皆さんの労働条件にふさわしい改善を図っていくということが求められております。この点では、発注者としての東京電力の責任は極めて重いということを申し上げておくものです。
 そこで、廣瀬社長にお尋ねをいたしますが、この間、二〇一三年の十一月のときに、設計上の労務費割り増し分の増額という形で、こういった一Fの労働者の労働条件の改善ということで東電としての取り組みを発表し、具体化をしているところであります。
 そこで、確認ですけれども、二〇一三年十二月以降の設計上の労務費割り増し分の増額について、新規契約件数及び既支払い件数、並びに、末次の下請会社の労働者の賃上げが確認された件数がどうなっているのか、この点についてお聞きいたします。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 今先生御指摘のように、一三年の十二月以降に新たに始めた取り組みでございますが、新規契約件数はことしの三月末時点で千七百七十三件ございます。また、支払い件数は千三百六十五件でございます。これは期間がちょっとずれておりますので、必ずしも一致はしないところでございます。
 それからまた、末次の下請会社の作業員の方々に賃上げされた件数については、延べ九十一社の元請さん、私どもの直接の契約相手である元請企業さんを通じて、二百十二社の下請企業さんに賃上げを確認して、これは賃上げがされているという確認を、これまた三月末時点でございますけれども、いただいております。
 以上でございます。

○塩川委員 実際に二〇一三年十二月以降に新たに契約したものについてこの割り増しということですから、実際にその事業が終わった時点で支払いになるということですから、実際にはその時点で賃上げがされているかどうかということになってくるので、それ以前から始まっている事業は割り増しもないので対象にならないということでお聞きしたわけです。
 スタートをしてからもう二年以上たっておりますので、実態としてですけれども、賃上げが確認された労働者の賃上げ額というのはどのぐらいなのか。この点についてはわかりますか。

○廣瀬参考人 これは繰り返しになりますが、私どもは元請企業の皆さんに工事として発注をお願いしておりまして、その元請企業からそれぞれの各協力企業にそれぞれ幾らで賃上げ額がされているかという具体的な金額については、それぞれの経営の問題もございますので差し控えていただきたいと思っておりますが、ただ、私どもとしては、先ほど来お話が出ております労働条件通知書を私ども自身で確認させていただいて、手当額が増額されているという確認をしておりますし、このときに同時に、設計上の労務費の増額ということに続いて、作業員の方々にちゃんと説明しているのかという説明記録もあわせて確認をしておるところでございます。

○塩川委員 この間、この問題でやりとりした中で、実際、設計上の労務費単価の置き方の話として、廣瀬社長の答弁の中に、例えばマスク着用の場合は二万円、ボンベやアノラック着用の場合は三万円、タングステンベスト着用なら三万円以上、こういう設計労務費の単価は今も変わりがないということでよろしいですか。

○廣瀬参考人 お答え申し上げます。
 これは、ちょうど二年前の衆議院の経産委員会で塩川先生から御質問をいただいたところでございますけれども、その際、マスク二万円、ボンベ、アノラックを着用した場合は三万円ということを話しておりますが、これは今も変わっておりません。
 タングステンベストについては三万円以上というふうにお話をさせていただいておりますが、細かく申し上げますと、線量や汚染度が特に高い場所での作業、かつ、過去に類似作業実績がなくて、精神的、肉体的にも非常に厳しい、負荷の高い、特に高い作業においてという対象においてですけれども、四万円と設定しているところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 そのように、実際には、もともとの例示としても一万円を二万円にということであったわけですけれども、基本的に全体として引き上げるということでの対応をしたということであります。
 では、実際にどういうふうに現場に届いているのかということなんですけれども、発注者の東電の方が工事注文書において元請事業者に交付をする、その場合には、工事注文書には割り増し分の額が書面で明示をされている、明示をして元請事業者に交付をしているというふうに承知しておるんですが、そのとおりでよろしいでしょうか。

○廣瀬参考人 繰り返しになりますが、私どもは、元請の企業さんに、例えばこの工事であれば十日間で延べ百人ぐらいの工事作業であろうということを想定して、その間の労働賃金はこのぐらいでしょうというふうに、内訳というんでしょうか、それが出るわけですが、その中で、特に今回の割り増し分は幾ら幾らですよと別に明示をさせていただいているところでございます。

○塩川委員 例えば、一億円の契約であれば、そのうちの一千万円は別枠の割り増し分ですよ、こういう明示をされておられるということであります。
 また、東電と元請間ですけれども、先ほどの御答弁にもありましたように、労働条件通知書の確認もする、増額を確認するという話がございました。
 そうすると、例えば、元請の中には東電グループもあります。ですから、資本の系列のもとにあるわけですから、東電グループの例を挙げれば、東電が発注者で、東電グループの企業が元請になっている、その下に下請、孫請が入っているような場合ですけれども、そういった際に、労働条件通知書に当たっては、一F危険手当とか一F割り増し手当、こういう形で明示されて周知をするというふうになっているということをお聞きしていますけれども、そのとおりでよろしいですか。

○廣瀬参考人 お答えします。
 そのとおりでございます。そしてさらに、そこには作業員さんの一人一人のサインがあって、こういう労働条件通知書でやっていますよというところまでは確認させていただいております。

○塩川委員 ですから、一F危険手当とか一F割り増し手当というのが明示をされているんですけれども、そこには実額という形で入っているということなんでしょうか。

○廣瀬参考人 繰り返しになりますが、私どもは、元請さんに発注をする工事の総額の中に、今回の増額分は総合計で、私どもの設計ですので、先ほど言いましたように、一週間で延べ何人というその前提に基づいてですけれども、その前提に基づくと増額はこれこれになりますという総額を示させていただいております。

○塩川委員 そういう意味でも、実際に、元請の方からすると、ではどれだけ割り増しすればいいのかというのが見えないという点でも、東電が具体的な額を示すというのが元請側としても、考えるべき内容になっているんですけれども、その点については元請との間でのやりとりがあると思うんですけれども、いかがですか。

○廣瀬参考人 これはいわゆる請負契約でございますので、私どもとしては、こうした仕事をお願いするわけで、そのときに我々としても当然見積もりをして、きっとこのぐらいの金額でお願いできるだろうということで実際の金額を決めていくわけですけれども、その中に労務費は幾らぐらいあるだろうというのは当然入ってきますが、そのときは、繰り返しになりますが、私どもとしては、この工事なら、このぐらいの期間、このぐらいの人数でできるだろうということを設計するわけですが、実際にそれを元請さんが必ず一週間かけなきゃいけないのか、あるいは百人かけなきゃいけないのかということは、これはまさに元請会社さんの工夫なり経営努力なり、そうしたことで実際には決まってまいります。
 ただ、私どもは、それをやり出すと切りがないので、実際の設計のときに延べ百人かかるでしょうということであれば、その分の増額はこれこれこういう額ですね、先ほどのお話の、一億円のうちの一千万円が増額に当たりますねというような示し方をしておりますが、その後は、それぞれの元請さん、あるいは元請さんから下請さんにお出しになる作業の実際のやり方、人数、延べ人数等々によると思いますので、そこまでは私どもが立ち入って入るということは契約上できないことになっております。

○塩川委員 先ほど除染労働者の方のお話もしましたけれども、それ自身が非常に大変なお仕事だと思います。それに加えてやはり一Fの作業ですから、高放射線量下での作業に対してふさわしい待遇、賃金というのはあってしかるべきであるわけであります。そういう点だからこそ、割り増しという形での措置をとっているわけですね。
 そういう意味でも、東電として、賃上げがされているかどうかというのはアンケートはとっているわけです。一定の割合で上がっていますという回答があるというのもこの間の数字でいただいているんですけれども、実際の実額で幾ら上がったのか、こういうことを率直につかむことが、待遇改善になっているかどうかということにつながるんだと思うんです。
 だから、個々の事業者がどういうふうにやっているかというのはわかりませんけれども、少なくとも、現場の労働者が以前に比べてどれだけ上がっているのか、そういうのをつかむということが、実際の措置の効果というのがはっきり見える形になるわけですが、アンケートで聞けば、項目を入れればいいんですから、実額、どのぐらい上がりましたか、そういうのを入れてアンケートをとるということ、実態把握をするということ、そういうことを行うということは具体化しませんか。

○廣瀬参考人 実際に出たかというのは、先ほどのように、元請企業さん初め下請企業さんの工夫に基づいていろいろなケースが考えられると思いますので、私どもが二万円増額するというところが、二万円上がっていないからといって、直ちにそれが、どこかでピンはねが行われている、あるいはどこかになくなってしまっているということに結びつくということは、証明するのは難しいです。人数が、もうちょっとたくさんの人数でもしやっていたらとか、効率よくやっていたらとか、いろいろなケースがあると思っています。
 したがって、我々がやっていることは、それぞれの労働者の皆さんが、これでやるよということを明示的に証明書をもらってそれにサインをして、最初からこれでアグリーしてやっていますねということは確認をさせていただいているということでございます。御理解いただきたいと思います。

○塩川委員 やはり実際にどれだけ賃上げがあったかということが実感できなければ必要な人も確保できないわけで、私は、そういう点でも、実額でしっかりつかむし、現場の状況をどう改善するかということで、これは発注者としての当然の責務としてこういう取り組みを行ってこそ、事故収束、廃炉対策が前に進んでいく、こういうことになると思います。
 こういう対策について、もう一歩、本気で人の確保を図るという立場で、改善を図る必要があると思うんですが、改めて、いかがでしょうか。

○廣瀬参考人 実際に増額が幾らかということを全く我々が知らないということではないわけです。それは、条件を、ちゃんとサインをしているものを見ておりますので、この方は例えば一万円増額だということで、それにサインをされて、その仕事について、実際その一万円を受け取っているということを確認しておるわけです。
 ただ、その一万円がだから我々の二万円と違うじゃないかということが、それ以上が入っていけないという嫌いがあるということを申し上げているところでございます。

○塩川委員 いや、そういう点でも、実態が、実際に払われていないという訴えというのが大変多くて、賃金自身が、いわば困難な作業環境下でありながら、除染の労働者でいえば、特殊勤務手当が一万円だったら、あとは福島県の最低賃金分が時給で掛ける八時間分が張りついているような、そういうのが現にあるし、それすら払われていないというものなんかも訴えとして出てきているわけですね。
 そういう意味でも、東電として、一Fの労働者の作業環境を本気で整えていく上でも、賃金について、実額もつかむし、それを明らかにするということが、現状をリアルにつかみ、また労働者の労働条件の改善にもつながるということを強く求めて、時間が参りましたので、終わります。
 環境省としての災害対応の御質問、用意していただいていたのに、お聞きできずに申しわけありません。またの機会にしたいと思います。
 終わります。ありがとうございました。