国会質問

<第190通常国会 2016年04月22日 環境委員会 10号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、参考人の皆様、お忙しい中お越しいただき、審議に資する御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 早速質問をいたします。
 最初に、浅野参考人と崎田参考人にお伺いをいたします。
 今回の法案の中で、二〇三〇年度二六%削減目標達成に向けてということで、家庭、民生部門での四割の削減、特に家庭部門での四割の大幅削減というのは、もちろん電力の低炭素化や供給側の責任も大きいわけであります。
 その際に、国民がこの国民運動という中でどれだけの負担を求められることになるのか、その点をお聞きしたいんですが、国民運動の強化ということで、低炭素製品への買いかえとか低炭素サービスの選択とか、こういうことがあります。もちろん、ライフスタイルの転換ということもあるわけですけれども、そういったクールチョイスを掲げております。
 こういった中で、低炭素マーケットの拡大、創出というわけですけれども、これは当然、支払う側もあるわけで、実際、このクールチョイスと言われるような、こういう取り組みで国民の負担額というのはどのぐらい見積もられているのか。そういうものというのは、何かこれまで出されているもの、目安となるようなものがあれば教えていただけないでしょうか。

○浅野参考人 実は、残念ながら、まだ明確に数字が幾らぐらいということについては考えていないというのが実情だと思います。何をどうすればいいのかというプログラムを先にしっかり立てませんと計算もできないだろうと思いますから、頭から幾らというような形の議論はなかなかやりづらいのではないかというふうに思っております。
 しかし、必ず、最終的には、今先生がおっしゃるようなことを考えていかなきゃいけないことは事実だと思いますから、これから審議会でも話題にしていかなきゃいけないと思っております。

○崎田参考人 ありがとうございます。
 実際のクールチョイスのときの費用負担に対してどのくらいになるか、全体的にどうなるかというのは、やはり国の方できちんと積み上げていただきたいというふうに思っておりますが、市民感覚からいうと、やはり本当にわずかな金額でも大変大きな影響を感じるというのが現実だというふうに考えております。
 ですから、先ほどいろいろお話があった温暖化対策税というのがここ数年で徐々にふえてきて、ことしの四月からきちんと入っているというふうに理解をしておりますけれども、こういう温暖化対策税を、クールチョイスをするような消費者あるいは事業者にきちんと支援をする、そういう仕組みをつくっていただく、そういうような流れをつくっていくことが大変重要ではないかなというふうに感じております。
 よろしくお願いいたします。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、平田参考人にお伺いをいたします。
 お話の中で、パリ協定では法的拘束力のあるものとして明確な長期目標を設定したとお述べになりました。地球温暖化対策推進法に長期目標を明記することを求めておられます。
 しかしながら、政府が長期目標を国内法整備に位置づけていない。それはなぜなのか、何が障害なのか。その点についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○平田参考人 ありがとうございます。
 パリ協定から戻りまして、地球温暖化対策計画の議論を審議会等でされているのを拝聴してまいりましたけれども、私が驚いたのは、長期目標が明確に設定されたパリ協定ができた後、最も議論が活発に行われたのが八〇%という日本の目標を計画に記載するか否かという議論で、むしろそれを書かない方がいいというような、あるいは二度目標ということも含めて書かない方がいいというような意見を言う方がかなりおられるというのを見てまいりました。
 私の立場ではないですけれども、そこに見られる理由としては、将来のことは約束できない、不確実性も伴うし、そこまでの技術的な裏づけもない中で、そうしたことを法律に書き込む、あるいは計画に書き込むということは適切ではないのではないかという議論があったのを受けております。
 しかし、これは私は適切な問題の捉え方ではないのではないかと思っております。
 長期目標というのは、確かに、数値目標のような、京都議定書のような義務として掲げよと私たちも申しているわけではありません。法律という形で、ルールということで、政治がこれから向かうべき社会の方向性を指し示し、そこに向かって、経済活動を行う人や社会活動を行う人たちに安定的な、制度的な仕組みを整えていくというためのものであります。これがないがために、今、石炭火力発電でいいのではないかといった将来展望のないことが容認されていくようなことを生み出しているのではないかと思います。
 ですから、明確な義務として、不変のものとして書くというよりは、将来目指すべき二度、一・五度という目標、そして、日本が既に閣議決定している八〇%目標ということを、今計画では目指すという表現になっていると思いますが、私はその表現のままでいいと思いますが、日本のこれから向かっていく方向としてしっかり明記するということは非常に重要で、さきに申し上げたような理由は余り当たらないのではないかと思います。
 また、これがあれば、ビジネスは、先ほど明日香先生がおっしゃったように、明確に、この脱炭素化の社会の中で、これから何を目指していくのか、どうやって利益を生み出していくのかということの知恵を大いに生み出すきっかけになるのではないかと思っています。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、平田参考人、それから明日香参考人にお伺いいたします。
 石炭火力のことなんですけれども、主要国は、エネルギー対策、温暖化対策として、石炭火力抑制の方針を打ち出しておられます。このことについては、意見陳述の中でもお話を伺ったところです。
 日本の石炭火力発電の新設計画がこのような世界の流れに逆行している、そういう点での世界の主要国と日本との違いは何なのか。この点についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○平田参考人 一つは、パリ協定を受けて、これから化石燃料依存から大きく脱却しなければ実現できないような目標を掲げた、そこに日本も含めて合意したということでありますが、この気候変動問題に対して世界が約束したことへの認識がまだ薄いのかなというふうに思います。つまり、気候変動問題への認識、そしてリスクとしての認識が、日本の政策あるいは日本の経済活動の中に十分落ちていないのではないかと思います。
 高効率の石炭火力発電所を建てることは従来と比べて効率がいいのでCO2が減るというのは、確かに現状で比べればそうなんですけれども、むしろ、世界の認識としては、累積の排出量が気候に与える影響が気温上昇をもたらすということでありますので、むしろ、既存の古い発電所でも五年ぐらい動かしてそこから再生可能エネルギーに行った方が、高効率の発電所を建ててこれから四十年動かす方が圧倒的に累積の排出量が多いわけです。
 このインパクトは見逃すことができないというのが世界のさまざまな研究者、そして国の認識になって、それが政策の変更を引き起こし、ここ数年では、五年ぐらいの間で、計画も撤退、それから既存の発電所も撤退、イギリスでは二〇二五年に既存の発電所も全部なくす、そうした政策変更が起こっています。
 こうしたことが国内に響かないのは、やはり、長期的な展望がないということに加え、非常に短期的な利益、特に、原子力の再稼働のめどが立たない中で、いわゆるベースロード電源として安定的だと言われて当面安い電源に走っているという現状にあるのかなと思っておりまして、やはり先見性を持った判断というのが欠けているからではないかと思っております。

○明日香参考人 私も、そのように、やはり認識が不十分だということが一番だと思います。
 ですが、その辺の理由がまた幾つかありまして、一つは、やはり、特に日本においては、原発事故の後、原発よりは温暖化の方がいいという、単純な、間違った比較をする人が多いかと思います。あと、先ほども申し上げましたように、価格がどうしても石炭火力は安いというのが現状なんですが、それは、逆に言えば、省エネをやりたくない、してほしくない人たちがいるというのと、再生可能エネルギーの値段が世界の価格よりもかなり高いところでまだとまっているということです。そういうものを変えないと脱石炭というのは現実的には難しいと思います。
 なので、私の、十二の理由というのを書いたんですが、そこにあると思いますし、石炭火力発電所に関しましては、私、原子力村という言葉がいいかどうかは別にして、原子力、化石燃料村というものが存在しているというふうに思っていますし、現実的に石炭火力という経営資産を維持していたい今の大手電力会社の姿勢というのが一番大きな問題だと思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 明日香参考人にお伺いいたします。
 パワーポイントの資料にも書いておられましたが、日本の石炭火力の効率性のお話がございました。公的資金支援をされている日本の石炭火力の効率は高くない、実際にはJBICが支援している石炭火力発電設備の効率は世界平均と比べても低いということなんですけれども、何でこんなふうになっているのかというのがよくわからないんですが、高いと宣伝しているのに実態はこうだという。
 その辺については日本の政府当局の認識というのはいかがなのかなと思うんですが、その点についての所感がありましたらお聞かせいただけないでしょうか。

○明日香参考人 その数値自体は私がまとめたものではなくて、気候ネットワークさんなりJACSESさんの研究者の方がまとめたものです。
 ですが、やはり、一般的に日本の技術はすぐれているからいいんだというようなことというのは、ある意味では神話になっているのが現実だと思います。
 十年前は確かに違ったと思う。日本は石炭火力発電所も非常に効率のよいものをほかの国に比べて生産していたと思いますが、現実的には、今は、中国、韓国、全てほぼ同じようなレベルの石炭火力発電技術を持っていますし、それも問題なんですが、韓国も中国も同じように政府が支援をしているのが現状です。
 なので、日本が悪いというわけではないんですが、日本も悪いという状況だとは思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 平田参考人、明日香参考人に原発についてお伺いをいたします。
 日本の二〇三〇年度二六%削減目標は、電源構成比率二二から二〇%を原発に依拠するものとなっております。林経産大臣の答弁でも、四十年を超える運転期間の延長を行い、震災前の七割の稼働率を八割にするとすれば三十基程度という計算になると述べているわけであります。政府の目標達成のためには、四十年を超えた老朽原発を動かし、震災前よりも高い稼働率で運転するということになりかねません。あるいは、リプレースですとか新設など、新たな原発建設に踏み出すことになります。
 このようなエネルギー政策における今の政府の原発の位置づけについてどのようにお考えか、お聞かせいただけないでしょうか。

○平田参考人 御質問ありがとうございます。
 この電源構成の中での原発二〇から二二%という数字は、今ある原子力発電所を可能な限り最大限使うということを示した数字だと理解しておりますけれども、福島原発事故後の多くの、マジョリティーの国民の原子力に対する思いを反映していないとまずは思っております。
 また、気候変動政策という観点でいいますと、これまでも、原子力発電はCO2を出さないということで、温暖化対策の前提に位置づけられておりましたが、原発事故の前、最大限推進していた時期であっても計画は計画どおり進みませんで、そしてそれによって気候変動政策自体が総崩れになって、石炭火力は順調にふえる中でCO2排出も一〇%とふえていったというようなことを見てまいりましたので、ここに、非常に非現実的とも言える原子力発電の推進を温暖化対策としてもスライドさせて位置づけているということ自体が、また気候変動のこの二六%という私たちが低いと思っている削減目標ですら危うくさせる、極めて危ういものだと思っております。
 では、CO2削減は原発なくしてできるのかということですけれども、むしろ、私たちが見てきた中では、原子力発電を中心に置いてきたからこそ、進めるべきエネルギー転換をおくらせてきたと思っております。
 この大規模な集中型のエネルギーシステムは、石炭のようなバックアップ電源も必要としますし、その構造転換を難しくするという意味では、CO2を大幅に削減していくためにまた二〇三〇年に向かって原子炉を再稼働させて最大限利用していくというのは、適切ではない方針だと思っております。
 ですので、エネルギー基本計画は来年ぐらいにまた見直しになる、時期的になると聞いておりますけれども、この原子力の部分については、ゼロに向かって、ここに依存しない方向に決定するべきだと思いますし、その分は再生可能エネルギーを拡大させ、石炭を減らしていくというような方向に見直すということが急務だと思っております。

○明日香参考人 原発に関しては、何回も繰り返し申し上げますが、やはりドイツが反証になっていると思います。反証というのは、日本でも、フランスでも、かつてドイツでも、原発がないと温暖化対策が進まないということは政府の方がずっとずっと言ってきました。それに対して研究者がそんなことはないという反論をもう十年、二十年、ずっとやっています。
 実は、IPCCでも、原発がなくても二度目標達成の世界全体でのコストはそれほど変わらないという計算を出しています。それは、結局、どうしてかというと、原発はやはり高いんですね。高い原発をわざわざ使わなくても、より安いまたは同等の価格の再生可能エネルギー、省エネをやれば二度目標も達成できるというのが実はIPCCの結論です。ですが、そういうことが日本ではなかなか伝わっていないというのが現状だと思います。
 ドイツ、数字に関して申し上げますと、五五%削減です、一九九〇年比。日本の場合は一八%削減です。ドイツは日本よりも三七%高いんですが、原発をドイツはやめようとしています。
 なので、やり方はありますし、それが先ほど国民の負担というふうにおっしゃいましたけれども、負担がない形でそれを実現する方法はあると思います。ですが、それをさせない人たちがいますので、そことのやはり政治的な対立がどこの国でも難しいというのが現状だとは思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 最後に、再生可能エネルギーの急速な普及のために何が必要か、こういう観点で、申しわけありません、四人の参考人の方、短くで結構なんですけれども、再生可能エネルギーの普及のために、逆にいうと障害になっているものは何かということでも結構ですし、普及のために行うべきこと、必要なことは何かということについてお答えいただければと思っております。

○浅野参考人 何よりも系統をしっかり整備する、そのために投資を今徹底的にやるということが必要だと思います。
 それがない限りはどうしてもうまくいきませんし、さらに、再生可能エネルギーにしても組み合わせをちゃんと考えませんと、特定のものだけに偏ってしまいますと、発電がないときのバックアップのために大変な負担がかかってしまうということになります。

○平田参考人 幾つか簡単に申し上げます。
 まず、日本の再生可能エネルギーはまだまだ普及し始めたところでありますので、固定価格買い取り制度はなお引き続き必要だと思います。
 それから、今は原子力それから石炭火力発電所が優先して給電されるというような状況にありますが、これを逆転させて、再生可能エネルギーから優先的に給電するということが必要かと思います。
 また、再生可能エネルギーの多くは変動する電源ですので、これを広域的に運用できることを加速度的に進めていくことが必要だと思います。
 最後に、電力自由化が始まりまして、多くの国民、市民は再生可能エネルギーを選びたいと思っていると思いますが、現在、選ぼうとする会社がどのように電気をつくっているのかということの表示が義務づけではございません。ここを、私たちが選択できるように表示を明確に、必ず全ての事業者が行うということを義務づけするということが重要かと思います。

○崎田参考人 ありがとうございます。
 再生可能エネルギーをきちんと導入するために、私たち市民が電気代の中に賦課金をきちんと払っているという現実があります。これが徐々に高くなっている。それをきちんと社会が認めた上で自分たちの省エネにもつなぐ、そういうバランスのいい社会をつくっていくということが大変重要ではないかというふうに思っております。
 なお、事業者の皆さんにとっては、今、固定価格買い取り制度に頼らない、将来的に安定した、社会にきちんと定着する事業として、いろいろな、報告義務もきちんとやるとか、リサイクルとかそういうこともやるとか、そういうようなきちんとした安定した事業者になっていただくということが大事だと思います。
 地域の視点からは最後に一つ。地域型のエネルギーというのをしっかりふやし、地域の発展に貢献させる、そういうところが大変重要だと考えております。
 ありがとうございます。

○明日香参考人 私も、石炭、原発がベースロードというふうに政府で位置づけておられる限り、再生可能エネルギーが欧米諸国のような割合まで普及するのは難しいのが現実だと思います。
 単純に、私の知り合いで、再生可能エネルギーへの投資を考えていた人がいるんですけれども、いわゆる九電ショック、つくり過ぎるから、もう再生可能エネルギーから買わないといったときに、やめました。というのは、銀行からお金が借りられなくなったからです。
 それのやはり原因というのは、原発なり石炭火力発電所を、今のシステムを維持したいという人たちの存在だと思います。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。