国会質問

<第190通常国会 2016年04月26日 環境委員会 11号>




○塩川委員 おはようございます。日本共産党の塩川鉄也です。
 地球温暖化対策推進法について質問をいたします。
 二〇三〇年度における温暖化ガス排出量二六%削減は、家庭部門においては四割の削減とされております。政府は、国民運動の強化といって、低炭素製品への買いかえや低炭素サービスの選択、低炭素なライフスタイル転換といったクールチョイスを推進するとしております。
 そこで、環境省にお尋ねしますが、低炭素マーケットの拡大、創出ともいうわけですけれども、ということは国民の経済負担を伴うわけですけれども、こういった政府の家庭部門の四割削減、国民運動の強化、この点で国民の負担額というのはどのぐらいかかるのか、どのように見積もっているのか、このことについて説明をお願いします。

○梶原政府参考人 お答え申し上げます。
 家庭部門におきます温室効果ガス削減のために必要となるコストにつきましては、長期的に元が取れるものであると考えておりまして、必ずしも長期的に負担を求めていくものということとは考えてございません。
 例えば、照明を従来の白熱電球からLED電球に買いかえた場合でございますけれども、白熱電球に比べて約八〇%の省エネになります。そして、価格につきましても、LED照明が二千円だといたしましても、約九カ月で投資回収ができるという試算があるだけでなく、寿命も約四十倍長いということになりますので、地球温暖化対策に資するというほか、経済的にもメリットがあるということでございます。
 私どもといたしましては、家庭部門での対策のメリット、これをわかりやすく国民の方々にお伝えすることが大変重要であるというふうに考えておりまして、政府として、低炭素な製品、サービス、そして行動を促すクールチョイスを訴えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

○塩川委員 もちろん将来的にはペイをする、そういう話もあるわけですけれども、初期経費としてどれだけかかるかというのは、それはそれとして大きなものがあるわけでありまして、そういうことについてきちんとした数字も持ち合わせていないということは、この点をとっても問題だと言わざるを得ません。
 普及啓発というお話でしたけれども、家庭部門四割削減のために行うといっても、全体に占める家庭の割合というのが一五%のうち、一一%というのは電力由来の排出量が寄与しているわけであります。ですから、よく家庭、民生四割削減とかと言われますけれども、この点について言えば、電力業界の取り組みこそ問われているんじゃないですか。

○梶原政府参考人 お答え申し上げます。
 我が国におきますエネルギー起源の二酸化炭素排出量のうち、電力由来の排出量が約四割を占めております。そういう観点で考えますと、電力部門の対策は極めて重要でございます。
 そして、今、家庭部門の御指摘でございますけれども、家庭部門において約四割の削減が必要であるというふうに考えておりますけれども、そのうち、二六%分につきましては、電力部門での排出係数の改善努力によってこれを補うということでございます。
 したがいまして、繰り返しますが、四割といううちの二六%は電力の部門で削減し、一四%につきましては省エネで対応するということを計画しておるところでございます。

○塩川委員 電力業界の取り組みこそ重要であるわけで、国立環境研究所の温室効果ガス排出量の取りまとめにおいて、家庭部門の排出量の増加は、火力発電の増加により電力の排出原単位が悪化したこと等によるとあります。
 ですから、まさに火力のたき増しということがあったわけですけれども、そういうときに、今、石炭火力をどんどんどんどんつくり続ける、こういう石炭火力をふやす電力業界の取り組みというのが結果として地球温暖化に逆行する、そういうものにならざるを得ないんじゃないか。大臣の御見解を伺います。

○丸川国務大臣 電力部門がどのように二酸化炭素排出、グリーンハウスガスの排出を減らしていくかというのは非常に重要な課題であることは、私どもも深く認識をしているところでございます。
 電気事業分野をどうしていくかということで、私ども、従前より電力業界に対して、自主的な枠組みをきっちりつくって、そしてこれをどう回していくのかお示しくださいというお願いをしておりました。
 実効性ある地球温暖化対策について、電力分野については、林経済産業大臣とも御相談をさせていただきまして、二月九日にその内容を公表させていただきました。
 その中には、自主的枠組みの実効性、透明性の向上等を促すということとともに、省エネ法やエネルギー供給構造高度化法について、エネルギーミックスと整合する基準を新たに設定していただいて、経済産業省に責任を持って運用していただくということによって、電力業界全体の取り組みの実効性を確保することとしております。
 こうした取り組みによって、老朽火力の休廃止や稼働率の低減、火力発電の高効率化等を促進してまいります。また、取り組みが継続的に実効を上げているか、毎年度、進捗状況をレビューいたします。環境省としてもこれはレビューをさせていただきます。そして、目標の達成ができないと判断される場合には、施策の見直し等も予断を持たずに検討してまいりたいと考えております。
 以上です。

○塩川委員 エネルギーミックスと整合的ということになれば、原発の再稼働ということに当然なるわけですし、石炭火力も位置づけるということになるわけであります。何かあれば最後に施策の見直しを求めると言いますが、この点について何らかの強制力が働くものでもありません。
 電力業界の自主的枠組みというのは、今の電力自由化の競争のもとでどのように達成するのか、その具体策が見えてこない。もともと原単位目標であり、CO2排出量の抑制策もないということも指摘をしなければなりません。石炭火力の新増設を推進する一方で国民にツケを回すようなやり方は本末転倒だということを指摘しておくものであります。
 そこで、地球温暖化対策計画案にあります二国間オフセットクレジット制度、JCMについてお尋ねします。
 このJCMというのはいかなるものかについて、まず最初に御説明をお願いいたします。

○梶原政府参考人 お答え申し上げます。
 二国間クレジット制度、JCMにつきましては、途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じまして実現する温室効果ガスの排出削減そして吸収への我が国の貢献を定量的に評価いたしますとともに、我が国の削減目標の達成に活用する、そういった制度でございます。

○塩川委員 日本からの排出削減への貢献を評価し、我が国の削減目標の達成に活用するということであります。
 この地球温暖化対策計画案に書かれておりますけれども、政府の事業によるJCMの記載があるわけですね。毎年度の予算の範囲内で行う政府の事業により三〇年度までの累積で五千万から一億トンの国際的な排出削減、吸収量が見込まれるとありますけれども、これはどういうことなんでしょうか。説明してもらえますか。

○梶原政府参考人 お答え申し上げます。
 今御指摘のように、地球温暖化対策計画案におきましては、JCMによりまして、毎年度の予算の範囲内で行う政府の事業によりまして、二〇三〇年までの累積で五千万トンから一億トンのCO2の国際的な排出削減、吸収量を見込んでおるところでございます。
 この中身でございますけれども、例えば、民間企業がJCMのパートナー国、現在十六カ国ございますけれども、これに低炭素技術を導入するプロジェクトを行う場合に、その初期投資の一部を助成いたしまして、そしてその排出削減、吸収量のうち二分の一以上をJCMクレジットとして獲得するというJCM設備補助事業や、アジア開発銀行と連携いたしまして、低炭素技術を導入するプロジェクトの追加コストをADB、アジア開発銀行の中に設置いたしました基金により支援いたしまして、その排出削減量の一部を獲得する事業、そして、低炭素技術の海外における有効性を実証するためのプロジェクトを支援し、排出削減効果等の当該技術の有効性を確認する実証事業等を行っているというところでございます。
 こういったような政府の事業を通じまして、クレジットの獲得、そして我が国の技術を中心とした低炭素技術による海外への支援を進めていくというものでございます。

○塩川委員 政府の助成などによってクレジットを獲得するということであります。
 あわせて、民間ベースの事業と書いてあるんですけれども、これはどういうものでしょうか。

○梶原政府参考人 地球温暖化対策計画案におきましては、JCMによりまして、毎年度の予算の範囲内で行う日本政府の事業とは別に、民間ベースの事業にも言及をしているところでございます。
 これは、民間資金によりましてJCMを実施するスキームを想定しております。そして、その内容につきましては、現在検討を行っているところでございます。

○塩川委員 民間資金によるものということです。
 先ほど、政府の資金を使って初期投資の一部の助成を行う、その助成に見合って二分の一以上についてクレジットを獲得する、それがJCMのスキームとしてありましたから、これの民間バージョンということで、民間が資金を出します、例えば、メーカーが初期投資に係る経費について値下げをします、その値下げ分についてクレジットとして獲得をする、あるいは、商社が導入に当たって寄附をする、そういった寄附について一部をクレジットとして獲得する、そんなイメージということでよろしいですか。

○梶原政府参考人 今後、具体的に民間の事業者の方々が行われるビジネスモデルがどういうものになるかというものを見ながら、実際のスキームを考えていく必要があろうかと思います。
 例えば、今御指摘のようなケースもあり得るかもしれませんし、さらには、REDDプラスと申しまして、途上国の森林が劣化をしたりあるいは森林減少が起こったりすることを防ぐといったような事業もございます。そういったような事業を認証していくといったようなスキームも将来考えられるのかもしれません。
 いずれにいたしましても、どのような形になるのか、さらに今後、実態を踏まえながら、民間の方々そしてパートナーとなる途上国の政府の方々とも相談しながら、具体的なスキームをつくってまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 国内の削減努力ということではなくて、民間企業が海外での削減にかかわる、そういう事業によってクレジットを獲得する。それがだから民間企業にすればみずからの削減目標にカウントをされるという仕組みになってくるわけであります。
 地球温暖化対策計画案には、JCMについては、温室効果ガス削減目標積み上げの基礎としていないが、日本として獲得した排出削減、吸収量を我が国の削減として適切にカウントをすると述べています。先ほどの説明でも我が国の削減目標の達成に活用とあったわけですけれども、これは、つまり、二六%の積み上げには入れていないけれども、もし二六%に届かないような場合があれば、その穴埋めをJCMでするということも可能ということになりますかね。

○梶原政府参考人 地球温暖化対策計画案におきまして、二六%削減目標というものを出してございます。これは、二〇三〇年度におきます国内の排出削減そして吸収量を積み上げたものでございます。したがいまして、この積み上げにはJCMによる削減というような分を含めておりません。
 ただ、JCMにつきましては、途上国で実現をした排出削減、吸収量への我が国の貢献を適切に評価していただき、そして我が国の削減目標の達成に活用できる制度でもございますので、獲得をしたJCMクレジットについては削減分として適切にカウントするということを予定しているところでございます。
 いずれにいたしましても、二六%の削減につきましては、国内の対策、そして吸収量のもので積み上げたものでございますので、JCMについてはこの削減目標に含まれていないということでございます。

○塩川委員 二六%の積み上げには含まれていない、それはわかるんです。
 約束草案で二六%、国際的な約束をしました。それ自身は重いものだと思います。国際的に見て極めて不十分だということもつけ加えるものでありますけれども。そういった際に、しかし、二六%に届かないような場合であっても、このJCMを使えば、それを当然同じようにカウントするわけですから、そういう意味では、このJCMについて、いわば二六%の積み上げの内数ではないけれども、二六%を達成する場合にはそれも当然カウントをし得る。
 つまり、二六%に絶対このJCMは入らないということは言えるんですか。

○梶原政府参考人 削減の状況につきましては、どういう形で削減をしたかということについては国連等に報告をすることになります。その際に、例えば、吸収源でどの程度削減をしたか、あるいは、エネルギー起源の二酸化炭素でどういう形で削減をしたかといったような形と同時に、こういったJCMの対策でどれだけ削減をしたかといったようなことについてもあわせて報告をすることとしております。
 そういったようなことで、実際にどういったような形で日本が削減に成功しているか、あるいは世界に貢献していくのかということを報告できるものと考えております。

○塩川委員 経産省にお尋ねします。
 経産省のJCMについての説明ペーパーにおいても、このJCMの活用で、我が国の削減目標の達成に活用と書いてあるわけですよね。それはそのとおりですね。

○星野政府参考人 そのとおりでございます。

○塩川委員 ですから、我が国の削減目標の達成に活用ということであれば、二六%の達成に活用するということも含んでいるということですね。

○星野政府参考人 お答えいたします。
 我が国のCO2削減をどのような手段で達成していくかというのは、先ほどの答弁にもございましたように、国連の方に報告をしまして、全体として評価されるものと理解しております。

○塩川委員 二六%の積み上げにJCMは入っていないけれども、でも、このJCMについて、我が国の削減として適切にカウントをするということですから、その他の積み上げで二六%にいかなかった場合でも、このJCMの積み上げで二六%にいきますよということが当然通る話でしょうということなんですけれども、その点については否定できるんですか。では、環境省。

○梶原政府参考人 繰り返して恐縮でございますけれども、二六%の削減の積み上げは、国内の対策、排出削減対策あるいは吸収源対策で積み上げて実施をしていく予定でございます。
 ただ、国際的に認められているこういう市場を使いました削減につきましては、我が国として世界に貢献する大きな、重要な施策だと思ってございます。その分についても、しっかりとカウントできるという形にするのが日本の貢献としては適切だと考えておりまして、そういったような実績につきましても、しっかりと国際的に報告をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 日本の削減目標達成に活用とあるわけですから、当然のことながら、二六%に含んでいくということにならざるを得ません。
 現場でどうなっているのかということがあるんです。
 これは、日本鉄鋼連盟の話を紹介しようと思うので、環境省でも経産省でもどっちでもいいんですが答えてほしいんですけれども、日本鉄鋼連盟の低炭素社会実行計画には、目標達成の担保措置として、「ポスト京都の国際枠組みや国内制度が未定であるため、どのような担保措置が取り得るか不明であるが、計画の信頼性確保の観点から、未達の場合は何らかの方法で担保する。」とあります。
 これは、鉄鋼連盟の削減目標が未達、達成できないときには、クレジット制度などの活用によって、海外における削減量をみずからの削減目標にカウントすることで穴埋めをしようとする、そういうものということじゃありませんか。

○星野政府参考人 お答えいたします。
 それぞれの産業界が具体的にどのような削減をするのかということにつきましても、先ほどの答弁にもございましたけれども、これから産業界と調整をしながら進めていきたいと考えてございます。

○塩川委員 否定されませんでした。
 それぞれ業界団体が目標を持っているんだけれども、未達の場合には海外のクレジットで穴埋めしますよということも容認し得るような中身というのがJCMだということを指摘しておかなければなりません。
 大臣にお尋ねしますが、こういった海外でのクレジット獲得というJCMというのは、国内の削減努力を弱めることにつながらないのか、この点についてお答えください。

○丸川国務大臣 まず、この二六%削減目標は、我が国は具体的な施策を積み上げてつくってきたものでございまして、これらは国内対策です。ですので、国内対策を行うことによって二六%削減目標を達成していくという道筋を描いて、それに向かって進んでいくわけでございます。
 一方で、JCMについては、我が国のみならず世界全体で地球温暖化対策を進めなければならないという中で、私たちの国がどのような貢献ができるかということを考えたときに、その施策として重要な位置づけと思っております。
 それであるがゆえに約束草案にも位置づけられておりますので、JCMは世界への貢献として積極的に取り組むと同時に、国内対策においては、やはりこの二六%削減目標をつくる中で積み上げた国内対策を着実に進めていくということが重要であると考えております。

○塩川委員 業界団体の中では、実際には、掲げた目標が達成しなかった場合には海外のクレジットで穴埋めをする、そういうことも想定しているという点でいって、そもそもの二六%を本気でやる気があるのかということが問われているわけであります。そういう点でも、こういう海外のクレジットの活用というのが国内の削減努力を弱めることになるということは指摘をしなければなりません。
 そこで、JCMの中身について質問しますけれども、環境省にお尋ねしますが、JCMは、途上国へのすぐれた低炭素技術などの普及を通じて地球規模での温暖化対策に貢献するものといいますけれども、このJCMの対象として石炭火力は含むんでしょうか。原子力はどうでしょうか。

○梶原政府参考人 JCM、二国間クレジット制度でございますけれども、温室効果ガスの排出削減に資する技術を用いた排出削減事業を対象としております。
 そして、具体的にどれを対象事業とするかという決定につきましては、各国の状況に応じまして、国際的な理解が得られるかという点も考慮した上で、一つ一つ関係国と、両国の間で議論をしていくということになります。
 今御指摘の石炭火力や原子力発電という事業につきましても同様でございまして、具体的な事業内容をもとに、両国の間で温室効果ガスの排出量を削減する事業として位置づけられるかどうかを議論することになります。
 現時点で、JCMとして実施している石炭火力発電または原子力発電の事業というものは具体的にはありません。そしてまた、今後も予定しているものではないということでございます。

○塩川委員 そんな現状の話とか今後の希望的観測の話ではなくて、石炭火力と原発が除かれているのかということなんですけれども、除かれている、入らないということなんですか。

○梶原政府参考人 お答えいたします。
 明示的に除いているものではございませんけれども、繰り返して恐縮でございますが、二国間で具体的に決めていくものであるということと、現時点において具体的な事業はなく、また、今後も予定しているそういう事業はないということでございます。

○塩川委員 経産省にお尋ねしますが、経産省において主なJCMの支援事業が行われています、例えばMRVの適用調査とか。これは石炭火力や原子力というのは明確に除かれているんでしょうか。

○星野政府参考人 お答え申し上げます。
 経済産業省といたしましては、JCMプロジェクトの組成に向けまして、御指摘の、NEDOと連携をして、JCM実証事業ですとかJCMの実現可能性調査事業、MRVの適用調査事業、キャパシティービルディング等の支援事業を実施しているところでございます。
 お尋ねのMRV適用調査事業におきましては、民間ベースのプロジェクトにおきまして、JCMに必要な温室効果ガス削減量の測定、報告、検証に要する費用をNEDOが支援するものでございまして、これに基づいて民間ベースのプロジェクトによるJCMの利用を促進していくというものでございます。
 本事業では、対象分野におきまして御指摘のような特段の制限は設けてはございませんけれども、ただ、原子力発電につきましては、これはNEDOの事業、NEDOの業務範囲として原子力は規定されておりませんので、MRV調査事業の対象としては、原子力発電は対象にはなっていないということでございます。

○塩川委員 今の経産省でいえば、石炭火力はオーケーだという話に当然なるわけですけれども、いずれにしても、明示的に除いているものではないということで、制度設計上の話であります。JCMに基づく海外での石炭火力、原子力による削減量が我が国の削減量にカウントされることにもなりかねないということも意味しているわけであります。
 こういう点で懸念するのは、例えば電気事業連合会の電気事業における環境行動計画を見ますと、電気事業における低炭素社会実行計画には、「国際貢献の推進」として、二国間オフセットクレジット、JCMを含む国際的な制度の動向を踏まえ、先進的かつ実現可能な電力技術の開発、導入等により地球規模での低炭素化を目指すとあって、「参考」として、高効率のプラント導入及び運用補修改善により、二〇三〇年度におけるOECD諸国及びアジア途上国での石炭火力CO2削減ポテンシャルは年間最大九億トン、このように記されているわけであります。
 環境省にお尋ねしますけれども、電力業界は、海外における石炭火力発電支援により得たCO2削減量というのをみずからの削減量にカウントするという考えじゃありませんか。

○梶原政府参考人 現在、低炭素実行計画というものを各業界につくっていただいているところでございます。
 これにつきましては、その対策の進捗状況、例えば電力業界でありますと、これに加えて自主的に排出係数を下げていただくという行動をやっていただくということでございますが、その進捗状況につきまして、審議会等の議論を踏まえながら、しっかりと私どもとしては注視をしていき、そしてまた必要があれば改善を求めていくということにしております。
 いずれにいたしましても、まず国内対策が基本でございますので、国内対策でしっかりと排出係数を落としていただくといったようなことが必要だと思っております。

○塩川委員 大臣にお尋ねしますけれども、電力業界が今、石炭火力の新増設を続けております。そうなりますと、電力業界は、国内で石炭火力発電の新増設を行ってCO2をふやしました、こういうCO2の拡大分を海外における高効率の石炭火力発電によって獲得したクレジットで穴埋めをする、国内でも石炭火力を拡大し、海外でも石炭火力を売り込む、こんなことが行われるんじゃないのか。これでは地球温暖化対策にも逆行することになりかねない、そういう懸念というのはお持ちになりませんか。

○丸川国務大臣 石炭火力のインフラ輸出についてどう考えるかということについては、一義的には経済産業省の御担当という認識をしております。
 一方で、国内における電力分野の実効性ある対策というものは、これは私どもも経済産業省にお願いをして、しっかりと省エネ法等に基づいた政策的措置を責任持って講じてくださいというお願いをさせていただいたところでありまして、これからも毎年毎年レビューをやってまいります。
 そこに関連を見出されるお考えも先生はお持ちなのかもしれませんが、少なくとも、私ども、国内の対策においては厳然と二六%削減という目標を掲げて、そこに占める電力事業分野の責任の重さというのは大変大きいものがございますので、これは何が何でも経済産業省さんにもしっかり動いていただいて実現をさせていただきたいと思っております。

○塩川委員 懸念を申し上げるのも、過去、電力業界はみずからの削減目標達成を目指して海外の削減分を積み上げてきた、京都メカニズムクレジット等を反映させてきたという経緯があるからであります。
 電気事業における環境行動計画では、CO2排出抑制に関する数値目標として、二〇〇八年度から二〇一二年度におけるCO2排出原単位を、一九九〇年度実績から平均で二〇%程度低減するよう努めるとしていました。〇・三四程度にまで低減をするということでしたけれども、これは達成できたんでしょうか。環境省、確認できますか。

○梶原政府参考人 もともと京都議定書第一約束期間の段階で低減を予定しておりました排出係数の低減については、達成をしていないというふうに認識しております。

○塩川委員 達成をしていない。東電の原発事故に伴う原発稼働停止、排出量増加、こういう経緯があるわけですけれども、東日本大震災原発事故以前におきましても達成できていないわけであります。
 それでは、その点についても、京都メカニズムクレジットを反映したにもかかわらず目標は未達成だったということであるわけで、電力業界の自主的取り組み任せでは目標達成はできないというのは、過去の実績が物語っているのではないでしょうか。今回の自主的枠組みについても、そのことを同じように指摘せざるを得ないということを申し上げておくものであります。
 それと、関連して、この地球温暖化対策計画案には、我が国の貢献による海外における削減として、JCMとは別に、産業界による取り組みが掲載されております。
 これは経産省になるかと思いますけれども、地球温暖化対策計画案には、JCMのほか、産業界による取り組みを通じたすぐれた技術の普及等を促進するとともに、こうした取り組みによる削減貢献分を見える化して示していくなど、その意義を海外に積極的に発信し、パリ協定の枠組みに基づき地球温暖化対策を進める国際社会において広く評価されるよう働きかけていく、これにより、二〇三〇年度に全世界で少なくとも年間十億トンの排出削減ポテンシャルが見込まれると書き込まれております。
 このJCM以外の産業界による取り組みとは何なのか、また、この十億トンの内訳がどのようなものかについて御説明をお願いします。

○星野政府参考人 お答えいたします。
 議員御指摘の産業界の取り組みによる排出削減ポテンシャルにつきましては、日本企業がビジネスを通じて全世界にすぐれた低炭素技術を普及させた場合に少なくとも見込まれる削減量を示したものでございまして、この十億トンという数字におきましては、低炭素社会実行計画において定量的な排出削減ポテンシャルを国際貢献に掲げた業界の協力を得て、政府として推計をしたものでございます。
 具体的な内訳といたしましては、発電分野で年間で約六・五億トンのCO2の削減、家電分野では年間約二億トンの削減、化学分野では年間約一億トン、その他の分野で年間約一億トンという内訳をしております。

○塩川委員 発電が六・五億トン、家電二億トン、化学一億トン等々、合計約十億トンということですけれども、発電においては石炭火力や原発も入っているということでいいんですか。

○星野政府参考人 お答えいたします。
 産業界におきます海外での排出削減ポテンシャルの数字でございますけれども、お尋ねの発電分野を含めまして、それぞれの分野で一定の仮定のもとに政府として試算したものでございまして、その内訳について具体的にお示しすることは差し控えたいと思っております。
 ただ、いずれにいたしましても、経済性やエネルギー安全保障の観点から、石炭をエネルギー資源の一つとして選択せざるを得ない国というのも世界には多数あると承知しておりまして、アジアの新興国を中心に石炭火力の利用拡大が見込まれているところではございます。こうした国では、可能な限り高効率な石炭火力発電を導入するということは実効的な気候変動対策になるとは考えてございます。

○塩川委員 インドなどで原子力協定の話なんかも進んでいるわけです。インド等々、あるいは中東などにおいても、原子力の売り込みをずっと安倍総理は行っていますけれども、原子力は積み上げに入っていない、一定の仮定と言いますけれども、一定の仮定には原子力はまるで入っていないということなんですか。

○星野政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、産業界における各分野の削減ポテンシャルについては、一定の仮定のもとで試算をしてございまして、具体的にどういった内訳かというのは差し控えたいと思っております。

○塩川委員 電力業界六・五億トンといっても、電事連が出しているのは九億トンと書いてあるんですよ。だから、それは政府が精査をして六・五に、妥当なものとして数字をとったんだと思うんですよ。だから、当然その内訳はわかっているんじゃないですか。環境省、わかっていますよね。わかっていない。では、経産省が計算をしたということなんだから、それは当然わかっていていい話であるわけで、当然のことながら、石炭火力は見込まれているということのお話もありましたけれども、原子力も含めて、海外に売り込む、いわばお墨つきを与える形になっているのがこの地球温暖化対策計画案だと言わざるを得ません。
 今、政府は、インフラシステム輸出戦略を進めております。経産省にお尋ねしますが、インフラシステム輸出の主要分野における日本企業の海外受注額の推計を行っています。電力分野と原子力分野における海外受注額推計は、二〇一〇年と二〇二〇年でどういう数字になっておりますか。

○黒澤政府参考人 お答えいたします。
 政府のインフラシステム輸出戦略における数字ということでございますが、二〇一〇年におきましては、電力につきましては約二・二兆円、原子力につきましては約〇・三兆円でございます。二〇二〇年におきます将来推計の数字でございますが、電力につきましては約二・六兆円、原子力につきましては約二・〇兆円を見込んでおります。

○塩川委員 推計そのものは三年前に出したインフラシステム輸出戦略に添付をされているわけですけれども、原子力は〇・三兆円を二〇二〇年には二兆円にする、七倍化をするという目標でありますし、電力分野は二・二兆円から二・六兆円なんですが、その内訳も気になるわけですけれども、この電力分野の内訳として、例えば石炭火力とか再エネとか、そういう数字で明らかにしていただけませんか。

○黒澤政府参考人 お答えいたします。
 この統計につきましては内閣府で出されている統計をベースといたしておりますが、統計そのものにおきまして、これ以上のブレークダウンで統計をとっていないということでございます。
 したがいまして、経産省といたしましても、この中身、石炭火力がどのぐらいかという数字は把握しておりません。

○塩川委員 IEAなどの将来推計の割合を掛けているということだと思いますけれども、もともと電力も内訳があるわけですから、そういった数字というのは当然できるはずで、これは改めて要求しておきます。きちっと出していただきたいということと、経産省なり政府として、石炭火力発電の将来推計そのものは持っているのかどうなのか。特にアジア地域などについてどうか。この点について教えてもらえますか。

○藤井政府参考人 お答え申し上げます。
 日本企業による石炭火力発電の将来受注に関する推計、これは特に存在していないというふうに認識をしております。

○塩川委員 政府でなくても政府系の機関、例えば経産省所管のジェトロなどでも、例えば二〇一五年五月のジェトロレポートによりますと、東南アジアでは、建設中の火力発電能力の四分の三を石炭火力が占めることなどから、地域全体の電源に石炭が占める比率が二〇三五年には五割前後に高まると予測をされている、日本企業にとって大きなビジネスチャンスと強調しているわけであります。
 これは、経産省の中でもこういう認識というのは共有しているんじゃありませんか。東南アジアにおいて大いに石炭火力の普及が見込まれる、そういう予測のもとで施策を考えているんじゃありませんか。

○藤井政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、例えばIEAにおきましても、特にアジア地域において石炭火力発電の伸びが予測をされております。
 他方、繰り返しになって恐縮でございますけれども、私どもが知る限りでございますが、日本企業における石炭火力の発電の将来受注に関する数値というものは特段承知をしておりません。

○塩川委員 急速な需要があるということは当然見込んでいるわけであります。それに対応した受注についての目標、推計、これは今後の話ということなんでしょうけれども、そもそも、アジアで伸びる石炭火力について、これを取り込んでいこうというのがアベノミクスの成長戦略であるわけであります。
 大臣にお尋ねしますけれども、以前も紹介しましたが、安倍総理自身が国際会議で石炭火力発電の活用を宣伝しているわけです。二〇一五年五月二十一日の第二十一回国際交流会議「アジアの未来」、こういう会合において、安倍総理は、アジアの資源とも呼ぶべき石炭をもっと効率的に活用してはどうでしょう、石炭火力発電は、世界の発電量の四割を担うにもかかわらず、地球温暖化の元凶のように言われ、敬遠されがちです、アジアならではの石炭火力の分野で、伸び行くエネルギー需要に応えていきたいと。
 大臣、こういう安倍総理のトップセールスというのが、世界の流れに逆行する石炭火力推進政策となっているんじゃありませんか。

○丸川国務大臣 地球温暖化対策は、安倍内閣の最重要課題でありまして、総理も全力を挙げて取り組んでいくという発言をしております。
 途上国の中には供給安定性の観点から石炭火力を選択せざるを得ない国もあるという事実を踏まえますと、そのような場合には、より高効率な石炭火力発電設備の導入を支援することも実効的な地球温暖化対策の一つになり得ると考えております。

○塩川委員 世界は、そもそも、石炭はもう表に出さない、埋めたままにしておきましょうというのが大きな声となっていて、だからこそ、世界の流れを見ても、化石燃料からの投資を撤退するダイベストメント、こういうのが大きな声となっている、世界の潮流となっているときに、逆に、どんどんどんどん石炭を表に出しましょうという石炭火力の推進の先頭に立つのが日本政府ということは、これはやはり世界の流れに逆行するというのは明らかじゃありませんか。大臣、いかがでしょうか。

○丸川国務大臣 世界的に低炭素技術を普及させていくということは非常に重要でございますし、それにかなう行動も我々はとっていくということ、その主軸に変わりはございませんけれども、一方で、さまざまな国がさまざまな手段でそれぞれの置かれた立場でエネルギー源を入手しなければならないわけでありまして、そうした中で、どうしても石炭に頼らざるを得ないという状況に置かれた国もあるわけでございます。
 こうしたところでどのように石炭のエネルギー効率が達成されているかということを見たときに、私どもの持っている技術がそれらを改善する余地があるのではないかという観点に立っての施策であるという思いでございますので、世界全体としての低炭素な社会の実現という方向性に決してそぐわないものではないという考えのもとに、こうした政策が進められているものと認識をしております。

○塩川委員 参考人質疑におきましても、やはり、世界の国々を見渡せば、初期投資に金がかかるような石炭火力で将来的にCO2をふやすということよりも再生可能エネルギーに投資をした方が、結果とすればコストも安く上がるし、当然のことながらCO2削減もゼロという方向での転換が図れる、こういうことこそ、本来日本政府が進むべき道なのではないのか。しかし、やっていることは、世界のあちこちで、原子力と同時に石炭火力の売り込みですよ。
 この前も日経新聞などで一面に紹介されていましたけれども、エジプトのシーシ大統領が日本を訪問し、安倍総理と会談をいたしました。その際に、日本企業による二兆円規模の事業参画などで合意をしたということであります。両国の共同声明におきましては、電力関連のインフラ整備に約四百十一億円の政府開発援助、ODAを供与するということを盛り込んでおりました。
 個々の企業が、当然のことながら、さまざまな投資についての合意を交わすということなどもあって、例えば、丸紅が、石炭火力発電所の事業化調査に着手をする、出力四百万キロワットというエジプト最大の発電所を目指す。住友商事も、エジプトで火力発電所の事業化調査を実施する。伊藤忠商事は、それに対しての原料提供ということで、火力発電所の燃料となる石炭供給の事業化調査を開始する、伊藤忠商事が出資をする南米コロンビアの鉱山から輸出をする。
 こういうように、エジプトのシーシ大統領の来日をきっかけとした合意の中で石炭火力をまさに大いに進めるという立場であるわけで、安倍政権がアベノミクスの一環として官民連携によるインフラ輸出を推進する、その中心が石炭火力だということは明らかであります。
 パリ協定では今世紀後半に温室効果ガス排出の実質ゼロを求めており、石炭火力発電はつくらないというのが世界の主流であります。また、原発は、発電コストも高く危険であることから、撤退する動きが広まっています。世界の流れは、脱石炭火力、脱原発。政府の姿勢はこうした流れに逆行するものと言わなければならない、このことを指摘して、質問を終わります。