国会質問

<第190通常国会 2016年04月28日 本会議 29号>




○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、衆議院選挙制度関連法案、両案に反対の討論を行います。(拍手)
 第一に、法案の進め方が前代未聞で異様だという点であります。
 選挙制度は民主主義の土台です。主権者国民の代表の選び方、国民の参政権のあり方を決めるものであり、十分な議論が必要なことは誰もが認めています。
 しかし、両案は、成り立ちから審議まで、十分な議論とはほど遠いものです。
 衆議院選挙制度をめぐっては、二〇一一年秋から全党協議が行われてきました。ところが、一四年に一部の政党が一方的に協議を打ち切り、第三者機関、衆院選挙制度調査会に丸投げし、政党としての責任を放棄したのです。
 本年一月、答申が提出されると、その内容についての議論を全く行わず、答申尊重の名のもとに、行司役であるべき議長が各党を呼び出し、法案提出を促しました。前代未聞の異様なやり方と言わなければなりません。
 この五年間、二十九回に及ぶ全党協議も、十七回の調査会の議論も、国民には非公開です。どのような議論があったのか、国民は知りようがありません。
 しかも、昨日の政治倫理選挙特別委員会で、自民党提案者は、この法案は現行制度発足以来の大改革だと述べました。にもかかわらず、倫選特の自民党理事は緊急避難の法案だからと言って、今週二十五日から三日間、たった七時間余りの委員会質疑で採決をいたしました。
 選挙制度は民主主義の根幹と認めながら、国民の参政権のあり方を決める大事な法案をこんな乱暴なやり方で通すなど、言語道断だと言わなければなりません。
 第二に、両案の柱である衆議院議員定数の十削減に全く根拠がないことは、今や明白です。
 両案の提案者が尊重するという調査会の答申は、衆議院議員定数は国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、定数を削減する積極的な理由や理論的根拠は見出しがたいと結論づけています。
 参考人質疑で元調査会座長の佐々木氏は、定数削減に疑問を呈し、客観的根拠を挙げるのは難しいというのが結論だったと述べました。それでも答申に定数十削減を盛り込んだ理由を、それは国会が決めることとの気持ちから、削減案を求められるとするならばと書き込んだと答えました。調査会への諮問が定数削減を前提としたものだったから提案したにすぎないのであります。
 定数削減は、最高裁判決が求めたものでもありません。一体何を基準に定数削減が必要だというのでしょうか。果たして現在の国会議員数は多いのか。
 昨日の委員会質疑で自民党提案者は、今回の削減によって、人口が半分だった九十年前の水準に国会議員数が減ってしまうと述べ、衆議院議員は代議士と言われているように、選挙区の代表だからできるだけ多い方がいいのではないかと思うと答弁しました。
 国会議員が多いとは思っていないが、ひとまず減らすというのは、全くの論理矛盾であります。委員会審議において双方の提案者は、定数をなぜ削減しなければならないのか、あれこれ弁解はしましたが、合理的な根拠を示せなかったのです。ただ声高に身を切る改革を叫んでいるだけではありませんか。
 身を切る改革とは、民主党野田首相が、公約にもなかった消費税増税を提案するに当たって、国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る改革が必要だと発言したことに端を発したものです。消費税増税を押しつけるために定数削減を行うことは、全くのすりかえであり、何の道理もありません。
 この批判に対して、昨日、自民党提案者は、身を切る改革イコール定数削減との考え方にくみするべきではない、国民の声を代弁する貴重な議席は、国会議員のものではなくて国民のものだと明確に答えました。民進党提案者も、定数を減らしていけば、議員がさまざまな法案に接する機会が減っていく、国会にかかっている案件数、重さと比較して、定数削減が妥当なのかと述べたのです。
 定数削減によって切り捨てられるのは主権者国民の声であり、国会の政府監視機能が低下するという弊害を認めているではありませんか。理由も根拠も見出せず、国民の声を代弁する定数を削減するなど、断じて許されません。
 第三に、民意の反映を著しくゆがめる小選挙区制を温存しようとしている点です。
 両案がアダムズ方式の採用にとどまらず、自動的に定数配分と区割りを行う格差是正の仕組みを盛り込んだ、長期的に現行制度を維持できる設計であることを提案者も認めました。結局は、長期にわたり小選挙区制を温存しようということです。
 現行小選挙区制の最大の問題は、第一党が四割の得票で七割から八割の議席を獲得し、半数に上るいわゆる死に票を生み出すことです。憲法が求める投票価値の平等は、選挙区間の人口格差是正にとどまりません。民意と議席に著しい乖離を生み出す小選挙区制は廃止をし、民意を反映する選挙制度へ抜本的に改革をすべきです。
 自民党も公明党も民進党も、現行制度が民意を過度に集約していることを認めながら、なぜこの根本的な問題を放置するのでしょうか。世論が求めていないと言いますが、安保法制の強行など安倍政治の暴走を目の当たりにした国民は、この暴走政治が、小選挙区制がつくり出す虚構の多数によるものだと気づいています。立憲主義、民主主義の回復を求める世論の広がりにこそ真剣に向き合うべきです。
 最後に、憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と明記しているように、民意を正確に反映した国会での徹底した議論を通じて国の進路を決めることこそが国民主権の議会制民主主義であることを改めて強く主張し、反対討論を終わります。(拍手)