国会質問

<第190通常国会 2016年05月24日 環境委員会 12号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは最初に、東電福島第一原発の津波対策についてお伺いいたします。
 今、熊本地震を機に、地震、津波などについての新たな関心、不安の声が上がっております。一Fにつきましても、地元からの地震、津波対策についての懸念の声もお聞きしているところであります。
 そこで、原子力規制委員会、規制庁にお尋ねしますが、原子力規制委員会が設置をしました特定原子力施設監視・評価検討会における、より大きな地震、津波への防護対策に関してお聞きします。そこでは、東日本大震災以前の一Fの防潮堤の高さが幾つであって、この検討会の議論の中で出されているような、津波、地震で防潮堤が破壊された後、現在の仮設防潮堤はどのような基準で高さと強度を決めたのか、この点について教えていただけますか。

○山田政府参考人 福島の第一原子力発電所の敷地高さは十メーターになってございます。
 それで、東日本大震災以前にここには防潮堤はございませんでしたけれども、東日本大震災以降に新たに仮設の防潮堤というのが設置をされてございます。この仮設の防潮堤につきましては、福島沖の海溝の周辺で発生する可能性があると言われておりますいわゆるアウターライズ地震に伴う津波、これへの対策ということで検討をされたということでございまして、十四・二メーターのものが設置をされているということでございます。

○塩川委員 東日本大震災以前については、防潮堤ではなくて防波堤というお話でお聞きしております。現在の仮設防潮堤は、今お答えがありましたように、大震災後の緊急対応として、アウターライズの津波を想定してということで十四・二メートルということです。
 そこで、東日本大震災時の津波の高さは十五・五メートルだったわけです。原子力規制委員会は、想定される津波の高さの再検討を東電に求めたわけですけれども、その考え方を御説明いただきたいのと、その結果、東電が提出をした津波の最高水位というのが何メートルになったのか、お答えください。

○山田政府参考人 原子力規制庁、原子力規制委員会におきましては、先ほど先生の御指摘をいただきました福島第一原子力発電所監視・評価検討会というのを開いてございまして、そちらで東京電力に対して検討用地震動及び津波高さというものの検討をするようにという指示をしてございますけれども、そこでは、東北地方太平洋沖地震の知見を踏まえること、それから、実績のあるモデルを使用すること及び福島第一原子力発電所後に策定をいたしました新規制基準に準拠することといったようなことを前提条件として検討をして設定するようにということを求めてございます。
 その結果として、東京電力はいろいろと検討いたしまして、検討用地震動としては九百ガル、検討用の津波高さとしては二十六・三メーターという検討結果を出してございます。

○塩川委員 東日本大震災の経験も踏まえ、新規制基準に準じてということで検討を求めて、その結果、東電が出してきた検討用津波策定結果が最高水位二十六・三メートルということです。
 田中委員長にお尋ねしますが、こういった二十六・三メートルという津波が想定をされるということですけれども、この二十六メートルの津波に対応した防潮堤の強化策というのはあるんでしょうか。

○田中政府特別補佐人 まず、検討用地震とか検討用津波の考え方ですけれども、これは新しい規制基準で、例えば津波の場合には、大きな津波が来ても敷地内に津波が浸入しないということを求めています。ただ、これは、福島第一については一つは念のためということもありまして、それを、もともとああいう状況ですから、敷地内に津波が浸入しないということまで求めることは現実的ではないということもあります。
 ただ、地震動につきましては、使用済み燃料がまだ炉室に残っていますので、これはきちっと炉室の健全性を保たなきゃいけないということで、先ほど申し上げました九百ガルというものについての評価はしています。
 実際に、二十六メートルの津波、これは実際に先日の津波よりも十メートルも高いわけですので、そういった津波に対する防波堤をつくるということは、現実的にあそこの場所では非常に、極めて困難でありますので、私どもとしては、浸入防止というよりも、汚染水の大量漏えい自体を防止する対策の方が重要であるという考えのもとで、幾つかの対策を求めております。
 その上で、私ども、リスク低減マップ、中期の低減マップをつくらせていただいていますけれども、一Fは、御存じのように、さまざまなリスクがまだ存在しています。そういったことを考えて、どういうふうなところから手をつけるべきかということであります。
 当然、二十六メートルもの津波が来れば、一定程度原子炉建屋の方に、タービン建屋とかそういうところに入り込みますので、引き潮によって一定程度の汚染した水が外に出ていくのは、これは避けられないと思います。ただ、幸いなことに、炉室の方はまだ穴があいていますので完全ではありませんけれども、高濃度汚染水は炉室の方にありますので、そこから大量に出るということはないだろうというふうに想定しております。
 いずれにしても、きちっとそういった大きなリスクからまず対峙していくという方向で対策を進めていくよう求めていきたいと思っています。

○塩川委員 もう一回確認ですけれども、二十六メートルの津波に対して、防潮堤で防ぐ考えはないということですね。

○田中政府特別補佐人 そのとおりでございます。

○塩川委員 二十六メートルを超える津波を想定しながら防潮堤の強化策がないということは、極めて重大だと言わざるを得ません。
 二十六メートルの津波に備える、つくるのは現実的に困難だ云々という話がありますけれども、そもそもこういった影響が出ることについて、汚染水が漏れるかどうかというだけが判断基準、対策の基準ではないと思います。実際、東電による建屋構造評価の中でも、二十六メートルの津波の場合にタービン建屋の外壁が壊れるとかという評価をしているわけですよね。こういうのも含めて、防潮堤も必要ないということなんでしょうか。

○田中政府特別補佐人 御承知かと思いますけれども、既にタービン建屋自身も相当傷んでおりまして、もう壊れております。できるだけ開口部を塞ぐなどしてそういった浸水を防ぐようにはしておりますけれども、二十六メートルというとてつもない津波が来た場合に、それによって、それを完全に防潮堤だけで防ぐというような防潮堤を本当にあそこの場所につくれるかどうかという問題もあります。ですから、そういうことを考えて、とにかく大きなリスクにならないということを中心に対策を求めています。
 原子力発電所の方で二十六メートルで汚染水が出たからといって大きな災害につながるということではなくて、もっともっと大変な事態が、周辺の海岸、浸水して大変なことが起こりますので、そういうことを考えて、やはり大きなリスクからまず対峙していくというのが我々に与えられた任務だと思っています。

○塩川委員 防潮堤だけで防ぐというふうにいかないということですけれども、いろいろな選択肢として、あらゆる手段を尽くすという中での防潮堤というのも当然のことながら考えるべきじゃないのかということを申し上げているわけで、委員長お話しのように、タービン建屋が傷んでいるわけですよね。
 もともと一Fは、四十年以上経過をした老朽原発であります。そこに、地震の影響、津波の影響、それに爆発事故、いわば四重の負荷がかかっているということになるわけであります。五年前の津波では、建屋に海水がしみ込んで、内部の鉄筋もさびているんじゃないのかという懸念も当然ありますし、コンクリートもそれによって脆弱になっているんじゃないかということがうかがわれるわけであります。
 そういった点で、地震や爆発でも強度が損なわれていると考えられるわけで、東電によるこういう建屋の構造評価というのは、こういうような四重の負荷による建屋の劣化というのをそもそも想定しているものなんでしょうか。

○田中政府特別補佐人 今回の地震によりまして、さまざまな、いろいろなところが傷んでおります。大きく言えば、水素爆発によって建物自体も相当破壊されております。そういったことを踏まえて、先ほども申し上げましたように、使用済み燃料が残っている一、二、三号炉は特にそうですが、そういった先ほど申し上げました九百ガルといった大きな地震が来ても、きちっと原子炉建屋の健全性が保てるように補強等も施しておりまして、一応、もつという評価を私どもとしては出させていただいております。

○塩川委員 現行の原発とは違って、一Fの場合には実際の被害状況が、損壊状況といっても現場で確認できるわけではほとんどありませんから、そういった点が本当に適切に実態を反映したような評価になっているのか、それに伴う対策になっているかというのは、これは極めて重大な危惧があるところであります。
 そういう意味では、汚染水の対策の問題だけではなくて、例えば、今後でいえば、使用済み燃料の取り出しを引き続き行うことや燃料デブリの取り出し等々、不安定化になるようなそういった問題も考えられるわけですけれども、そういった取り出し作業なども想定した際に、防潮堤はもう必要ないということでいいのかと思うんですが、いかがですか。

○田中政府特別補佐人 結論から申し上げますと、必要ないというよりは、防潮堤をつくるのは現実的には不可能でありますし、使用済み燃料の取り出しとかデブリの取り出しと防潮堤とは直接関係あるものではございませんので、そこは、燃料取り出しとか、将来、デブリをどういう形で取り出せるのかどうかも含めて今後の課題ですけれども、そういったことについては十分に安全を確保できるような対策を求めていきたいと考えています。

○塩川委員 いや、防潮堤をつくるのは不可能だ、そういう前提から入ると対策には当然ならないわけで、実際に一Fで作業されている構内労働者の方のお話を伺っても、不安に感じているわけですよ。
 大体、現行の仮設の防潮堤といっても、若干石を積み上げているだけなわけですから、津波が来ればそれも流されますねというのは、実際、規制庁や東電も認識をしているところであるわけです。そういったものについて、仮設の防潮堤を強化するといったことも含めてなされていないということについて、労働者の皆さんにすれば、現場がわかっているのかという懸念の声になってくるわけであります。
 やはり、原発の一般常識が通用しないような今の一Fの現状に対して、とるべき手だては全てとる、こういう立場で臨むことが必要だと考えています。
 そもそも、このように、津波対策としてもう防潮堤をつくることは考えていないということは、地元の皆さんは承知しておられることなんですか。

○山田政府参考人 まず、福島第一原子力発電所におきます廃炉作業の状況の地元自治体、住民の方々への説明ということについては、まずは当事者である東京電力みずからが取り組むべきものというふうに認識をしてございます。
 一方、原子力規制委員会におきましては、福島第一原子力発電所の地震、津波対策について検討を行っております特定原子力施設監視・評価検討会で、敷地内の津波の浸入防止よりも汚染水等の大量漏えい、こういった事態を防止する対策が重要であるといったことにつきましては公開の場で議論をしてございまして、この検討会には福島県にもオブザーバーとして参加をしていただいているところでございます。
 また、福島県には地域原子力規制総括調整官という者が駐在をしておりまして、地元自治体に対しましては、この検討会での検討内容等については丁寧に情報提供をしているところでございます。

○塩川委員 実際に、それでは、双葉ですとか大熊ですとかといった住民の方、あるいは町長さんや議会の議長さん、議員さんというのは承知していると思うんですか。

○山田政府参考人 十分な御理解をいただけるところまで進んでいるかどうかということについては、いろいろと見方はあるかとは思いますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げました地域の統括官を通じてできる限りの努力をして御説明したいというふうに考えてございます。

○塩川委員 では、地域の統括官がそういった、今、避難自治体の皆さん、町長さんですとかあるいは議会の関係者、さらには住民の方に説明したということなんですか。

○田中政府特別補佐人 昨年の十月ですが、各首長さんを中心に、十四市町村ですけれども、二時間ぐらいずつお訪ねしまして、一Fの状況については私の方から直接、地域統括官も一緒に同行させて説明させていただきました。それで、いろいろな不安とかいろいろな御要望をお聞きしましたので、それはいろいろな形で、私どもだけではなくて、しかるべき、丸川大臣にもお伝えしたところもありますし、いろいろなことを御説明させていただいています。
 それで、一Fの状況について全く不安がないかというと、いろいろな不安はありますが、基本的に、具体的に防潮堤の問題とかそういうことではなくて、やはり、もう一度爆発するようなことはないのかとか、そういった質問がありましたので、そういったことはありませんよという話はさせていただきながら、御理解を求めてきたところでございます。

○塩川委員 防潮堤をつくる考えがないということについて説明したというお話はありませんでした。
 先日、環境委員会で視察に伺いまして、地元の議会関係者の方にお話を伺いました。懇談の時間内ではお聞きすることができなかったので、終わった後にお声をかけた際に、今言った防潮堤の強化の計画がないということをお伝えしましたら、そういうことについては御存じなかったわけであります。私は、こういった状況で、周辺住民の方、国民の方の理解が得られるのかと率直に思うわけであります。
 大臣、原子力防災担当大臣として、こういった一Fの事故収束に当たっての取り組みを国として進めているわけですけれども、地域の住民の皆さんが地震、津波対策で不安も感じておられるときに、こういった津波に備えて防潮堤の建設の計画がないといったことについて地元の方は御存じない、こういったもとで話を進めていくということでいいのか、率直に思うんですけれども、大臣のお考えのところを聞かせていただけませんか。

○丸川国務大臣 防潮堤の件に関しては、原子力規制委員会が専門家の立場から判断をされていることについて、国として尊重するということでありますが、それをどのように情報発信するかということについては、検討会には県もオブザーバーとして御参加をいただいていることでありますし、また、県には調整官が駐在をしているということでございまして、こうした情報提供の場をきちんと活用すること、また、コミュニケーションを日ごろからとることということは重要であると思います。
 一般論として、今回の熊本の地震の際も含めて、規制委員会また規制庁を通じた発信というものは、安全であるということも含めて国民の皆様にお知らせすることは重要であると考えております。

○塩川委員 はっきりとしたお答えがありませんでした。
 防潮堤をつくらないということについて地元への説明もない、こんなことで進めているということが結果として地元住民の皆さんの不安を拡大するだけになる、こういうことを指摘し、こういったあり方について、やはりあらゆる手だてをとるという立場から、防潮堤の強化などをしっかりと行うということを求めておくものであります。
 次に、東電福島第一原発の労働者の作業環境の改善について、まず、経産省にお尋ねします。
 ことしの四月二十八日の廃炉・汚染水対策チーム会合資料の中に、「敷地内の環境改善等の作業」というのがあります。そこには、福島第一原子力発電所敷地内の環境線量低減対策の進捗状況を踏まえて、汚染度合いに応じた防護装備の適正化を行うことにより、作業時の負荷軽減による安全性と作業性の向上を図るとしています。
 この間、どのような改善を図ってきたのかについて説明をしていただけますか。

○平井政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の労働環境にかかわるところでございますけれども、福島第一原子力発電所では、これまで、フェーシング工事ですとか除染作業といったところで環境線量低減対策を進めてきたところでございます。
 こうした環境線量低減対策の進捗を踏まえまして、東京電力といたしましては、三月の八日より、一から四号機の建屋周辺やタンクエリア等といった汚染度の高いエリアとそれ以外のエリアを区分いたしまして、それらの区分に応じた防護装備の新たなルールを導入したところでございます。
 これによりまして、除染されたエリアを可能な限り低い汚染レベルに維持しリスク低減を図るといったこととともに、作業時の負担軽減による作業員の安全性及びコミュニケーションの安定化といったことを通じた作業性の向上といったことを期待しているところでございます。
 具体的に申し上げますと、福島第一原子力発電所構内、レッド、イエロー、グリーンということで、三つの区域に区分をしております。それぞれの区域に応じた防護装備の適正化を図っているところでございます。
 最も汚染されているエリアでありますレッドゾーンにつきましては、全面マスクとタイベックスーツ二重、またはタイベックスーツの上に防水性のスーツを重ね着するといったところでございますし、イエローゾーンにおきましては、全面マスクまたは半面マスクとタイベックスーツといったことでございます。さらに、敷地の約九割を占めるグリーンゾーンといったようなところにつきましては、防じんマスクと構内専用服または一般作業服といったような形での適正化を図ってきているところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 汚染度に応じた防護装備のルールを定めて今実施をしているところということでありました。
 私は、一Fの構内作業労働者の方のお話をお聞きする中で、レッド、イエロー、グリーンの三区分がある、そのグリーンゾーンでは、以前はタイベックの防護服、防護装備だったわけですけれども、今は簡易装備で、ナイロン製のようなつなぎの構内作業服を着ているという話をお聞きしましたが、非常に通気性が悪いというんですよ。ですから、以前はタイベックで、そのタイベックの方が通気性がよかったと。そのために、非常に以前より装備が軽くなっているはずなのに、実際にはかえってきつい装備になっているという声が寄せられております。
 タイベックの場合は、以前はそのまま使い捨てだったんですけれども、今度の構内作業服については洗濯して再利用ができる、そんなコスト面の話もあるみたいですけれども、それが結果として、熱がこもる、通気性が悪いということで、夏にはまた熱中症がひどくなるんじゃないのかという声が寄せられているんですけれども、そういう声を聞いていませんか。そういうのについての改善策というのは考えていませんか。

○平井政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のとおりでございまして、三月八日以降、先ほど申し上げたとおり、グリーンゾーンの部分におきましては、放射線防護装備、防じんマスクと構内専用服または一般作業服と定められているところでございます。
 御指摘のタイベックスーツ、これにつきましても、もともと動きづらく、作業時の行動が制限されている、通気性が悪くて熱がこもりやすいといったようなことで、熱中症が懸念されていたといったような課題があったところでございまして、その点からも、タイベックスーツの着用が不要なエリアというところの拡大につきましては、人身災害防止ですとか労働環境作業の観点から大きな効果が上がることというように我々考えておりますし、期待しているところでございます。
 さらに、今御指摘ありました構内専用服、こちらにつきましても、季節に合わせまして、六月からは夏用の構内専用服に切りかえるといったような予定があるというふうに伺っております。
 直接、我々の耳元に委員の御指摘のような御懸念というところが聞こえてきているわけではございませんが、東京電力では定期的に作業員の労働環境改善に係るアンケート調査を実施してきているところでございます。
 調査結果を踏まえて、労働環境改善に係る措置、これも、そのアンケートの結果に応じて講じてきているところでございまして、次回のアンケート調査におきましては、こうした放射線防護装備の適正化というところにつきましても、こうした取り組みについて調査を行って、必要に応じて改善措置が講じられるよう、そうしたことを我々もお話しさせていただきたいというふうに思うところでございます。

○塩川委員 今までとは違う夏用の構内専用服を六月からという話がございました。現状は、非常に熱がこもるような、そういう状況にあるという訴えというのがあるわけで、ただ、そういった、では六月から切りかえますよなんていう話は、現場の労働者に全然伝わっていませんよ。
 そういう意味でも、作業環境の改善というのは、見通しも含めてしっかりと、現場で働く皆さんの意欲につながるような働きかけとしてやる必要があるということは改めて求めておくものでありますし、やはり熱中症対策の心配というのは大変大きなものがあります。
 その点で、厚生労働省にお尋ねしますけれども、先週、塩崎厚労大臣が記者会見で、東電福島第一原発の作業員の健康相談の体制をとるというのは、どのようなことを行うのかについて御説明いただけますか。

○土屋政府参考人 お答え申し上げます。
 東電福島第一原発におきます廃炉作業等においては、通常の作業よりも高いストレスが加わることが多いと考えておりまして、また、協力企業の中には産業医の選任義務のない中小企業があるなど、健康管理体制にも差があるところでございます。
 また、今御指摘もございましたように、これから暑い時期を迎えることになりますが、作業中に体調を崩したり、作業後も含めて基礎疾患が悪化したりという事案が少なからず発生している現状もございますので、労働災害防止対策だけではなく、現場で働く方の健康管理に力を入れる必要があるというふうに考えております。
 このため、先ほど御指摘いただきました、先週金曜日に大臣から発表させていただきましたように、下請企業の方を含めて、東電福島第一原発で働く全ての方の健康管理のために、現場で働く方々が医師等に対しまして気軽に健康相談ができる相談窓口を設置したいと考えておりまして、七月上旬までを目途に開設すべく、現在、労災病院、産業医科大学等の関係機関と調整を進めているところでございます。

○塩川委員 私は、この間、東電の広瀬社長にも求めてきたのが、一F内における救急医療室の拡充の話でありまして、医師のローテーションもなかなかやりくりが大変だという話もしておられましたけれども、そういった専任の医師の配置を強化する問題ですとか、あるいは、ドクターヘリの問題なんかについても、これまでは、一Fの敷地内でランデブーポイントが設けられていないわけですよね、双葉側のところに設置をするような状況になっているわけですから。そういった点について、関係者の御理解を得て対策を進めていく。
 やはり、事故、労働災害が起こった現場の直近で医療の支援がしっかりと行われるということが重要だと思うんですが、そういった、当然事業者の、東電の責任として行うべき労働安全衛生の仕事があるわけですけれども、それと今回の厚労省がやろうとしているものの違いといいますか、その辺で、プラスしてということに当然なるんだと思うんですけれども、その考え方はどうなっていますか。

○土屋政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもも、労働者の健康管理につきましては、一義的には東京電力において進めていただくということが大事であるというふうに考えております。このため、昨年の八月にガイドラインを発出いたしまして、日常的な健康管理の実施も求めているところでございますし、その実施状況を福島労働局富岡労働基準監督署において指導をしているところでございます。
 ただ、一方で、今お話がありましたように、東電におきましても医療体制の整備に御努力いただいておりますが、やはり、働く方々から見ると、東京電力ということではなかなか相談しにくい内容であっても、国による健康相談窓口には相談ができるというようなことも想定をされるかというふうに考えておりますので、こういった方々の健康相談に幅広く対応できるように今回の窓口を設置していきたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 そういう点でも、それぞれ、東電としての責任をしっかりと果たしてもらうと同時に、やはり一Fの労働者の皆さんの健康管理に対して万全の体制で臨んでいく、それが事故収束、廃炉対策を着実に進めていく大きな力になるという立場で、しっかりとした対応を求めたいと思います。
 そういう相談窓口の場所の問題なんかも、当然、工夫も必要だと思っておりますので、そういった労働者の方の通勤経路ですとか、場合によっては一Fの中に置いたっていいんじゃないかと思うんですよね。そういったことを含めて、立地の問題についてもしっかりとした対応を求めたいと思うんですが、その点はいかがですか。

○土屋政府参考人 現在、設置場所も含めまして調整中でございますが、今御指摘がありましたように、相談される方が立ち寄りやすい場所、特に一Fの構内も含めて検討してまいりたいと思います。

○塩川委員 作業環境の改善、健康管理に万全を期すことを強く求めておくものであります。
 残りの時間で、熊本地震のアスベストの飛散、暴露防止対策についてお尋ねをいたします。
 熊本地震における建物解体の際のアスベスト対策について、既に我が党は政府への申し入れも行ってまいりました。
 熊本地震で壊れたビルや家屋から、発がん性がある有害物質のアスベストが飛散する危険性が指摘をされています。阪神大震災のときには、瓦れき撤去作業に従事した労働者の方が健康被害で亡くなるという事例もありました。東日本大震災でも、大気中のアスベストの濃度が通常を大きく上回る事例があったと承知をしております。
 そこで、環境省にお聞きしますが、このような瓦れきの置き場や倒壊家屋の密集地域、多くの人が集まる避難所や学校周辺など、アスベストの大気中濃度の測定、調査を実施することが必要だと思います。これまでの対応と、今後どのように取り組んでいくのかについて確認をしたい。

○高橋政府参考人 熊本地震に関するアスベストの大気中濃度の調査でございますけれども、これにつきましては、既に熊本県及び熊本市が、国立環境研究所や埼玉県の支援を得て、今月上旬から実施をされているというふうに認識をしてございます。
 また、環境省といたしましても、アスベストの飛散防止対策や被災した住民の暴露防止対策の観点から、熊本県及び大分県の計二十地点程度においてアスベストの大気中濃度の調査に近く取りかかることにして、今準備をしてございます。
 具体的な測定地点としては、今御指摘もございましたけれども、全壊、半壊等をしている建築物が多くある場所でございますとか、それらの解体現場、あるいは瓦れきの集積所、避難所の周辺などを想定してございます。
 今後、熊本県や熊本市、大分県と調整をしながら、その大気中濃度の調査を実施してまいりたいと考えております。

○塩川委員 ぜひ、まずは、その濃度調査で現状がどうなっているのかということをしっかり把握することが重要であります。
 その点でも、二十カ所でいいのかというのがあるわけですよ。ですから、もちろん必要な、瓦れきの置き場ですとか、倒壊家屋が集中している地域などで実際に解体撤去作業に当たるような方、あるいは住民の方の健康面でも、そういう場所での調査も必要ですけれども、避難所に加えて、例えば学校の近くですとか、やはり地元の住民の方が心配されるような、そういう場所での調査地点を設けることが必要なんじゃないのか。
 ですから、学校等も含めて調査ポイントをふやすということは、国の方が考えておらないですか。

○高橋政府参考人 具体的な調査場所につきましては、いずれにしても、今後、地元の調査もいたしまして、地元とよく相談をして、それから、先ほど申し上げた国立環境研究所における調査なども参考にしながら、具体的に調整をしてまいりたいと考えております。

○塩川委員 調査ポイントをふやして、学校周辺も入れるという立場で臨めばいいと思うんですけれども、そういうふうにする考えはありませんか。

○高橋政府参考人 調査につきましては、一度だけということではなくて継続的にやっていきたいと思いますけれども、そういうことも含めて、県の意見もよく聞いて選定をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 調査ポイントをしっかりふやして、心配に応えるような、そういった実態の把握というのをやっていただきたい。
 それと、実際に地震で壊れたビルですとか木造家屋があるわけですけれども、そういった地震で損壊したビルのアスベストの含有の調査がどうなっているか。また、木造の倒壊家屋のアスベスト調査というのはやっていないというふうに承知しているんですけれども、その点についてはどうですか。

○高橋政府参考人 まず、アスベスト含有建材の調査でございますけれども、これまでのところ、熊本県、熊本市におかれまして益城町などを調査されてございまして、具体的には、県の方で百五十九の被災建築物の調査をされて、アスベストが使用されている可能性がある建物は三件、それから、熊本市の方の調査でございますと、二百八十七件の被災建築物のうち、アスベストが使用されている可能性がある建築物は三十七件というような結果が出ているというふうに把握をしてございます。
 また、御指摘のございました木造家屋につきましては、一般的に、飛散性のアスベストが使用されている可能性は低いというふうに認識してございます。他方で、石綿含有成形板、こういうものは使用されている可能性がございます。こういうものは、セメント等で固化されておりますので、通常の状態では飛散をしないということでございますけれども、今後、木造家屋の解体等の作業において、こういう石綿含有成形板を切断したり破砕したりという際には飛散をする可能性もございますので、これは飛散防止マニュアルもつくってございますけれども、これらの適切な取り扱いについて、県や市にお知らせをし、また解体業者にも指導していただくように通知をしてございます。
 これも含めて、県、市と連携をしながら、今後、解体作業が本格化してまいると思いますので、万全を期してまいりたいと思っております。

○塩川委員 余震も続いていますから、ビルでも実際にはさらに亀裂が広がるとか、中で、前回目視で確認できなかったようなところにも実際にはアスベストが使われていたということだって起こりかねないわけですから、引き続きそういったビル等の調査も求めたいと思いますし、やはり、木造家屋におきましても、お話あったように、成形板等、スレートなんかも使われているわけですよ。古い住宅が多ければ、なおさらそういう可能性というのは高いわけですね。
 皆さん、倒壊家屋のところで、家屋の解体撤去の際に、やはり思い出の品を取り出したい、解体撤去する作業のところに立ち会ってそういった品を取り出したいというふうに、立ち会っている方なんかもいらっしゃるんですよ。ですから、散水して、水をまいて粉じんが立たないようにして、アスベストを吸引しないようにするというのができない。いわば、水をまいちゃうと貴重なものがぬれてしまうということなんかもあって、なかなか実態は、本当にアスベストの粉じん、暴露防止対策になっているのかという心配もあるわけです。
 そういった点でも、事業者に対するきちんとした指導を行うのと同時に、そういった現場の実態を踏まえた対応ということが必要だ。
 最後に、大臣に伺いたいんですけれども、このような熊本地震でアスベストの飛散、暴露によって健康を害されることがないように、解体作業に従事する労働者の方、また近隣住民の健康被害を絶対に起こさないという立場でも、しっかりとした実態調査を求めたいと思いますし、対応策に万全を期していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○丸川国務大臣 今回の地震に際して、我々もいち早く、熊本県また熊本市に対して、災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル、飛散防止をこのマニュアルに沿って行っていただけるようお願いをし、そしてまた、厚生労働省と連名で、解体工事等におけるアスベストの飛散防止対策についても通知をいたしました。
 県も市も、これまでのところ、非常によく認識を持って対応していただいているという認識でございますが、今後、県、市と協力しながら調査を進めていく上においては、やはり先生御指摘のような視点をきちんと踏まえて、よく周辺環境について住民の方の御理解を得られるよう努力をしてまいりたいと思います。
 また、今後とも、今回の反省を踏まえて、見直すべき点がないかどうかということについても今後も見てまいりたいと思いますので、引き続き飛散防止対策にしっかり取り組んでまいります。

○塩川委員 先ほど玉城さんも取り上げたような総務省の勧告などを踏まえたこういった災害時におけるアスベスト対策に対してもさらなる改善を求めて、質問を終わります。