国会質問

<第192臨時国会 2016年11月02日 外務委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 パリ協定についての質疑をいたします。
 私、最初に一言申し上げたいのは、今国会におきましては、強行採決発言が相次ぐなど、国会審議を軽視するかのようなやりとりがあるということは極めて重大だと考えております。しっかりとした審議を行うことこそ国会の責務でありますし、十分かつ慎重な審議を行う、このことをぜひ求めたいと思っております。
 パリ協定におきましても、その経緯の問題やその内容、また国内対策をどうするのか、そのそれぞれについてしっかりとした議論が尽くされるべきであります。
 私は環境委員会にも所属をしておりますので、そこでも今回のパリ協定については、当然、国内対策、あるいは、COPに参加をしているのは環境大臣でありますから、その面でも、環境大臣も出席をした審議が可能となる連合審査の要求もしてきたところであります。残念ながら、それがかなうものになっておりません。
 参議院の外交防衛委員会では、外交防衛委員会の審議ではあれ環境大臣も出席をして、外務大臣とともに質疑を行われたと承知をしております。そういう点でも、やはりしっかりとした審議を行うことに努めていくということが必要であって、審議については、きょうもしっかり行うと同時に、引き続き審議を継続する、十分かつ慎重な審議を求めていきたいと思います。
 それで、パリ協定についてでありますが、パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を二度未満に抑制し、さらに、一・五度までへの抑制に向けた努力を行い、今世紀後半の温室効果ガスの排出を実質ゼロにするために、先進国も途上国も参加し法的拘束力を持つ、かつてない取り決めとなりました。
 それなのに、パリ協定発効に間に合わなかった安倍政権の責任は極めて重大であります。
 大臣にお尋ねをいたします。
 四月二十二日に国連本部においてパリ協定の署名式が行われました。日本を含む百七十五カ国とEUが署名をいたしました。ですから、世界の大半の国々がこの四月二十二日をスタートラインにして各国における批准や承認の手続に入っていく、こうなっていたわけですけれども、結果として日本政府はこの発効に間に合わないということで、スタートラインは同じだったのに、なぜ日本は出おくれたのか、このことについての説明を求めたいと思います。

○岸田国務大臣 我が国としましては、パリ協定、大変重要な協定であり、早期発効、早期締結が重要であるという認識のもとに取り組んできました。
 御指摘のように、四月二十二日、署名が公開された当日に我が国も署名を行いました。そして、その後、五月の伊勢志摩サミットを初めさまざまな機会に、この本年中の早期発効が重要であるということを訴えてきましたし、早期締結に向けて努力を続けてきたわけであります。そして、国会に提出する前に、国内調整の努力を続けなければならないということで、パリ協定の国内実施の担保に係る検討を進めてきたわけであります。
 国内調整の長さについては、協定によってさまざまな事情があります。法改正が必要なもの、ないもの等、事情はさまざまであります。事実、京都議定書の際には、署名から国会提出まで四年かかっております。こういったさまざまな事情がありますが、今回のパリ協定においては、法律改正が必要ないという判断でありましたので、半年で国内調整を終えたということであります。そして、国内調整終了と同時に国会に提出をさせていただいた、こういった次第であります。
 出おくれたという御指摘でありますが、問題は、今後の、協定が発効した後の実施指針、実施ルールの策定の議論において出おくれないことが重要であると考えています。ぜひこの議論においてしっかりと、おくれをとらないように努力をしていきたいと思いますが、何よりも、日本自身が早期締結することが重要であり、説得力のある形で議論に参加することが大事だということで、まずは国会における早期承認をお願いするべく、全力で取り組んでいきたいと考えます。

○塩川委員 各国同じ事情でスタートしたにもかかわらず日本が出おくれたということは明らかで、その点についての明確な説明はありませんでした。
 京都議定書四年の話もありましたけれども、今回のパリ協定の合意に当たっても、日本政府内では、二〇一八年ぐらいの発効という想定もあったわけですね。それが、中国やアメリカの取り組み、またそれに呼応するようなインドやEUでの取り組みの中で、結果として日本が出おくれる、そういう点でも、私はやはり日本政府の姿勢そのものに問題があるということを言わざるを得ません。
 先ほど、伊勢志摩サミットでの年内における発効についての話もございました。この伊勢志摩サミットの首脳宣言では、「G7は、引き続き指導的な役割を担い、パリ協定の二〇一六年中の発効という目標に向けて取り組みつつ、同協定の可能な限り早期の批准、受諾又は承認を得るよう必要な措置をとることにコミットするとともに、全ての締約国に対し、同様の対応を求める。」旨の言及をしたわけであります。
 そこで、環境省の関副大臣にお越しいただいております。この伊勢志摩サミットの首脳宣言の直後の五月三十一日に、当時の丸川環境大臣が記者会見で述べていることがあります。そこのところを紹介いただきたいんですが、このパリ協定の国会承認の時期をめぐる記者の質問の中身と、それに対する大臣の回答について、その該当部分、ホームページで紹介しているその部分を読み上げていただけますか。

○関副大臣 記者とのやりとりのところでございますが、まず記者から、現実的に臨時国会でTPPと補正予算があることを考えるとかなり時間が限られると思うのですが、一方で今回サミットの中で二〇一六年中の発効の目標をG7として打ち立てたということもあって、大臣としては臨時国会では厳しい時間の中でも、この次の臨時国会までには必ずとか、どのくらいまでには確実に国内の手続を進めたいとお考えなのでしょうかとの質問がございました。
 これに対しまして、丸川前環境大臣より、「私の希望としては、少なくとも次の通常国会中にはお願いしたいと思っております。」との応答があったのは事実でございます。
 なお、丸川前大臣でございますが、その五月末の同じ会見の中で、国会の見通しは我々は予断を持つことはできないとしつつ、できる限りの努力は我々としてはしたい、本年中のパリ協定の発効という目標を十分に念頭に置いて取り組みたいと明確に発言がなされているところでございます。

○塩川委員 いや、今ちょっと読み上げた部分で若干間違いもあると思います。後で訂正があると思いますけれども。
 今紹介いただいたように、丸川大臣の答えが、「私の希望としては、少なくとも次の通常国会中にはお願いしたい」と。その後に、いや、臨時国会でということもあったという紹介もありましたけれども、しかし、ここでは、幅を持って述べているわけですね。
 ですから、直前にサミットにおいて年内発効に頑張ろうと言っていたにもかかわらず、その直後に、丸川環境大臣が次の通常国会ということで年明けだと言うのは、まさにここに政府の姿勢が出ているということじゃないですか。

○関副大臣 今の御質問の前に、先ほど私が申し上げたとき、ちょっと一カ所読み間違えたところがありまして、済みません、そこを先に訂正させていただきます。記者の方からの質問で、「大臣としては臨時国会では厳しい時間の中でも、この次の通常国会までには必ずとか、」というところ、「通常国会」のところ、臨時国会と読んだみたいでございまして、失礼しました。そこを訂正させていただきます。
 そして、丸川前環境大臣の発言のところでございますが、先ほどお答え申し上げたとおりでございまして、丸川前大臣が、この五月末の会見の中では、国会の見通しは我々は予断を持つことはできないとしつつ、できる限りの努力は我々としてしたい、本年中のパリ協定の発効という目標を十分に念頭に置いて取り組みたいと、その点は明言をされております。
 実際、現在の山本大臣も、丸川前大臣からは、G7伊勢志摩サミットにおけます首脳宣言を踏まえまして、本年中のパリ協定の発効という目標を念頭に置きまして我が国として早期の締結を目指す必要があるという引き継ぎを行った次第でございますので、一日も早く締結できますように全力を尽くしてまいりたいと思います。

○塩川委員 こういう発言をしているというのは明らかなんですよ。そういう点では幅を持って言っているわけで、そこにやはり政府の基本姿勢、認識があるということを言わざるを得ません。
 大臣にお尋ねしますけれども、この丸川大臣のやりとりでも、臨時国会にTPPという話がありました。やはり政府がTPPを最優先にしている、そういう中でこのパリ協定を後回しにするという結果というのがこの臨時国会にはっきりと示されているんじゃないですか、所信表明演説の話もありましたけれども。
 そもそも、地球の、人類の存続にもかかわるようなこういう温暖化対策よりも、米国や多国籍企業の利益を上に置くようなTPP協定を優先する、こういう姿勢というのがパリ協定発効に国会承認が間に合わないという事態をつくったんじゃないでしょうか。

○岸田国務大臣 まず、丸川大臣の発言の意図については私は十分承知しているものではありませんが、政府としましては、五月の伊勢志摩サミットにおいて、G7の首脳宣言の中で本年中の早期発効を目指すということを明記した、この宣言を議長国としてまとめたわけですので、政府の方針はあくまでも本年中の早期発効そして早期締結に向けて努力するものであると私は認識をしております。
 そして、TPPとパリ協定についてお話がありました。
 TPP。我が国は、経済的にもそして戦略的にも大変重要な協定であるという認識を持ち、二月に署名を行い、準備を進め、そして国会に提出をいたしました。パリ協定も、大変重要な協定だという認識のもとに、四月に署名を行い、国内調整を行って、そしてこの国会への提出を行ったわけであります。
 TPPもパリ協定も、ともに我が国の国益にとって、そして国際社会の平和や安定や繁栄のために大変重要な協定であると認識をしております。ともに重要な協定であるという認識のもとに、早期の国会での御承認をいただけるよう最善を尽くしていきたい、このように思います。

○塩川委員 TPPそのものについても、地域経済や日本経済、国家主権、食料主権を含めて重大な侵害を及ぼすTPP協定承認には、我が党は断固反対であります。
 このTPPの早期承認を最優先にしているということはこの間の国会対応でも明らかであって、そういった中でパリ協定の国会提出そのものが先延ばしをされた。そもそも、九月二十六日に召集されたにもかかわらず、国会への提出というのは十月の十一日ですから、ここ一つとっても、まさに今国会はTPPを優先するという姿勢というのが見てとれることは明らかであります。
 あわせて、こういったパリ協定批准について政府が様子見だった背景には財界の慎重姿勢があるわけで、京都議定書のときに、アメリカは議定書の採択に合意をしましたが、批准せず、離脱をしました。日本政府は、不平等を理由に第二約束期間から離脱をしました。こういう経緯を踏まえて、日本経団連は、「パリ協定の締結については、京都議定書の教訓を踏まえ、各国の対応を慎重に見極める必要がある。」と要求していた。アメリカや中国の様子見をする、そういう姿勢というのがまさにあらわれているわけで、世界は脱炭素化に向けて大きく踏み出しております。政府の後ろ向きの姿勢が厳しく問われなければなりません。
 そこで、パリ協定についてですけれども、パリ協定と同時に、国内対策を含めて、石炭火力発電問題について質問をいたします。
 この協定文についてですけれども、パリ協定の第二条第一項の(c)に資金のところがございます。「温室効果ガスについて低排出型であり、及び気候に対して強靱である発展に向けた方針に資金の流れを適合させること。」この意味するところは何かについて、御説明をお願いします。

○小田原大臣政務官 パリ協定第二条1(c)前段の、「温室効果ガスについて低排出型であり、及び気候に対して強靱である発展」とは、温室効果ガスの排出量が少ないと同時に、気候変動による被害を最小化または回避し、さらに、そのような被害から迅速に回復するような能力の向上を目指した発展を指すと考えています。
 また、同規定後段の「資金の流れを適合させる」とは、前段で言及されている発展に沿う形で資金供与や投資が行われ、活用されるべきであることを意味するものと解されます。
 我が国は、低炭素社会及び気候変動に強靱な社会の構築に向けて、国内での取り組みを進めるとともに、途上国支援にも引き続き積極的に取り組んでまいります。

○塩川委員 抑制、適応、それぞれについて、この資金の流れを適合的なものにする、そういう点でも、温室効果ガスの排出については、排出量が少ないもの、こういう方向への資金の流れを進めるということであります。パリ協定は、温暖化ガスの削減目標と矛盾しない資金の流れを呼びかけているということです。
 そこで、経産省にお尋ねをいたします。この間、海外向けの石炭火力に対する公的金融支援の制限がOECDの輸出信用会合において議論されてきました。どのような議論が行われたのかについて、説明をお願いします。

○高木副大臣 石炭火力発電に対する公的輸出支援につきまして、二〇一四年の三月、アメリカなどから各国の支援のあり方を見直すべきではないかという問題提起がございました。OECD輸出信用作業部会におきまして議論が開始され、同部会におきましては、我が国は、可能な限り高効率な石炭火力技術を導入することこそが実効的な気候変動対策であると主張してまいりました。
 議論の結果、昨年の十一月の十七日に、同部会におきましてOECD輸出信用アレンジメントの改訂に合意がなされたものでございます。

○塩川委員 このOECDにおける公的金融支援の制限の議論というのは、アメリカのオバマ大統領が大統領気候変動行動計画の発表をして、石炭火力の海外向け公的金融支援の停止を他国に呼びかけたというのがきっかけであります。北欧諸国やイギリス、オランダ、世銀などが同調した、そういう中での議論で、今答弁ありましたように、日本政府としては、高効率化こそが実効的な気候変動対策だという主張をしてきたということです。
 その上で、これはどのようなルールの見直しが行われたのかについての説明をお願いします。

○高木副大臣 昨年の十一月の合意は、高効率石炭火力発電の輸出を通じて気候変動対策への貢献を進めるという我が国の考えを認め、それを可能とする内容でございます。
 具体的には、本合意におきましては、一つ目は、最も効率の高い設備である超超臨界については、途上国のみならず、高所得国も含め制約なしに輸出支援を続けることができる。二つ目の、他方では、超臨界、亜臨界については支援できる対象が一部制限されたものとなっております。

○塩川委員 超超臨界という高効率の石炭火力の支援というのは制限がない、低効率の石炭火力については、低所得国等々の例外はあるけれども、基本的に制限をしていきましょうという話であります。
 そこで、このOECDの輸出信用会合の合意の中身というのは、実際に抜け穴が多いというか、今言ったように、高効率のものであればオーケーだよとか、こういう話になっているわけです。
 しかしながら、この合意そのものは、温室効果ガスを大量に排出する海外プロジェクトへの公的金融支援そのものがやはり問題なんだ、問題があるんだという立場で規制に踏み込んだという点で極めて重要だと考えております。
 大臣に少しお尋ねしたいんですけれども、WWFなど環境NGOの調査では、G7諸国の石炭に対する資金支援というのは二〇〇七年から二〇一五年で四百二十億ドルを超えると、集計の結果が発表されています。こういう四百二十億ドルを超えるような石炭に対する資金支援のうち、半分以上が日本だという指摘なんですね。
 こういった海外の石炭火力発電への資金支援は日本が最多だという認識というのはお持ちでしょうか。

○高木副大臣 今御指摘をいただきましたように、日本が輸出信用をしている、こういうような形もございます。
 その上で、委員の問題意識の中には、石炭火力自体が地球温暖化対策に逆行するとお考えだと思います。確かに、石炭というのはCO2を出しますけれども、一方で、経済性やエネルギー安全保障の観点から、石炭をエネルギー資源として選択せざるを得ない国というのがございます。こうした国にとって、可能な限り高効率な石炭火力技術を導入することこそが実効的な気候変動対策であると考えております。
 というのは、私も昨年の十月でございますが、G20のエネルギー大臣会合に行きました。そのときに、一つのテーマは、サブサハラ、いわゆるアフリカ大陸でのエネルギーをどうするかという問題を議論したときに、実は、世界各国で十六億人がまだ電気の供給を受けていないという現実がございました。
 そういう開発途上国に対して、どういうふうにして電気を、そしてエネルギーを供給するかという問題において、原子力発電を導入するのは無理であろう。再生可能エネルギーも、理想かもしれないけれども、そういう開発途上国ではなかなかこれも導入できない。そういう中で、まずは経済をつくり上げていかなければいけない開発途上国においては、石炭火力を導入するという現実が一つございます。
 そういった中で、もしこの高効率をしっかりと導入していかないでやった場合には、OECDに加盟しない中国が、安い、ある意味では性能の悪い石炭火力をどんどん輸出しているという現実がございますので、そういった意味では、まさに地球温暖化対策に逆行するということもございますので、我が国としては、これを高効率に転換しながらやっていくということで主張させていただきました。

○塩川委員 石炭火力の高効率化の話をしましたけれども、もちろん、電力の開発中の国々の現状というのはあります。そういう際に、大規模火力発電でやるのかという話なんですよ。地域分散の発電の工夫だってできるわけですから。そういった国々に大規模石炭火力を持ち込むという姿勢そのものが、私は地球温暖化対策に逆行すると言わざるを得ません。石炭は気候変動の主要な原因の一つであるわけで、石炭火力が稼働し続ければ炭素排出は続くわけで、気候の変動の緩和策にはならないということを申し上げたいし。
 中国の話もされました。二〇一五年の九月に、中国は、アメリカとの共同声明において、国内外向けの石炭プロジェクトへの公的支援を制限することを表明しています。インドにおいても、こういった石炭火力の導入量というのがこの間減少にも転じているわけで、再生可能エネルギーの大幅な導入が中国でもインドでも急速に進んでいる。
 そういう点で、火力発電と比べての価格競争力を持つようになっている、こういう現状が背景にあるということもしっかり踏まえて、日本がやるべき道は、やはり石炭火力の発電を抑制していく、これをなくしていく、こういう方向の対応こそ求められているということを申し上げたい。大臣から、資金支援は日本が最多だということについてのお答えがありませんでしたけれども、そういう現状からやはり対策を考えなくちゃいけない。
 経産省の方に少し具体的な案件でお尋ねします。
 今、安倍政権のもとでは、インフラシステム輸出戦略に取り組んでおります。石炭火力発電の輸出もその中に含まれているわけですけれども、例えば、インドのカルナタカ州のクドゥギ超臨界石炭火力発電所の新設に関する融資にも安倍総理もかかわっているわけですけれども、この案件がどのようなものかについて簡単に説明をお願いできますか。

○高木副大臣 御指摘のありましたインドの案件につきましては、カルナタカ州クドゥギ石炭火力発電所で八百メガワットの石炭火力発電を三基建設するプロジェクトでございます。我が国企業が二〇一四年にタービン、発電機の部分を受注しているもので、本プロジェクトの蒸気条件は、二十四・一メガパスカル、五百九十三度C以上となっており、これらはOECD輸出信用ガイドラインにおける超超臨界に該当いたします。
 その当時、報道されたのには超臨界となりましたけれども、このOECDの輸出信用アレンジメントの改訂によりまして、超超臨界に該当するということから、公的輸出信用の供与が可能なものとなっております。
 なお、本件は、現在、建設工事が進んでいる段階であり、二〇一七年以降、順次運転が開始される予定となっているものと承知しております。
 そして、もう一つ。先ほど、開発途上国にまでというような話で議論になりました。そのときに、今回の輸出信用アレンジメントの改訂におきまして、大型だけでありません、大型については、超超臨界については各国、大丈夫だというふうにしましたけれども、特に開発途上国向けの小さなもの、それについては大型、中型はしっかりと規制をしておりまして、小型でいく、こういったことにもなっておりますので、その点もしっかり御認識をいただければと思います。

○塩川委員 今、答弁ありましたように、インドの案件につきましても、超超臨界という話がありました。規制の対象外だという説明です。
 これ以外にも、OECDのルールというのが、日本から輸出する発電プラントへの公的支援は規制の対象となるけれども、日本企業が現地で生産する発電プラントへの公的な支援は対象外となっている。インドなどもそういう東芝の現地法人がやっているということですけれども、こういう点でも、対象外という点でいえば、超臨界だろうと実際には対象外となっているということがこういう例にも見てとれるわけです。
 私は、やはりこういった、率直に言って、全体とすれば石炭火力について規制の網の目をかけていこうというときに、日本政府というのが規制の網の目をくぐってというより、みずから規制の穴をつくって、温暖化対策に逆行する石炭火力を総理みずからトップセールスを進めようというのが問題だということを指摘するものです。
 次に、チリへの石炭火力発電の技術提供の件についてお聞きしたい。
 これも安倍総理のトップセールスがきっかけとなっています。高効率発電技術の導入によるJCM、二国間クレジット制度のプロジェクト実現可能性調査についてというふうに聞いております。二国間クレジット制度の活用といいますけれども、どういう案件か、御説明をお願いします。

○高木副大臣 ただいまのチリの案件について御指摘もございました。
 本件は、チリに五百メガワット級の石炭ガス化複合発電、いわゆるIGCCの導入を目指した案件でございます。本件導入に向けまして、平成二十六年及び平成二十七年度に、二国間クレジット制度の活用を含む実現可能性調査、いわゆるFSを実施いたしました。
 事業化に当たっての経済性や二酸化炭素排出削減量、さらには技術的な適用可能性等の調査を実施したところでございますが、本件につきましては、チリ側のカウンターパートとの間で、プロジェクトの推進方法について合意に至らなかった。そのため、現在、プロジェクトが停滞中でございまして、現状では案件受注には至っておりません。
 もう一つ、済みません。先ほどからずっとお話しになったOECDのルールづくりでしたけれども、アメリカからの提案でございましたが、このルールができた後、二〇一五年十一月二十日の日米首脳会談におきまして、オバマ大統領は、この石炭火力発電への公的信用供与に関し、OECD輸出信用作業部会での輸出信用アレンジメントの改訂に基本的合意したことや、クリーンエネルギーや環境問題での日本のリーダーシップに感謝していると。提案をしたアメリカ自体がこの方法に関しましてしっかりと評価をしているという、この先進国での合意についての確認もここで行わせていただきたいと思います。

○塩川委員 規制の方向でというのはあるわけですから、そういう点についてのそれなりのコメントというのは当然あるだろうと思います。
 しかし、そもそも世界全体の流れから見たときに、日本の進み方というのは逆行をしているんだというところがまさに問われているわけであります。
 今のチリの案件ですけれども、停滞中、成案となっていないということでした。
 私がそれを踏まえてお聞きしたかったのが、二国間クレジット制度、JCMのことなんです。つまり、このチリの案件のときにはまだパリ協定ができておりませんので、日本政府とすれば、こういった二国間クレジットについてもパリ協定の中に組み込んでいく、こういう働きかけをしている中で先行して行っている案件ということになるわけですけれども。二国間クレジット制度というのは、日本の技術や製品を提供して、新興国や発展途上国の温暖化ガスを減らし、その削減分を排出枠として得る日本独自の制度であります。日本政府は、パリ協定第六条においてこのJCMの仕組みが位置づけられたとしております。
 この件について、経産省、高木副大臣にお尋ねしますが、もともと二国間クレジット制度は、大規模石炭火力発電というのも対象にしているということですね。

○高木副大臣 これは、ケース・バイ・ケースでいろいろと判断をされていくものだと思いますし、今御指摘のように、大規模な部分でもこれは可能だというふうに考えております。

○塩川委員 可能だということであります。案件としてあるかどうかは別にしてみても、スキームとしては可能ということでした。
 これは、経産省の中でいろいろJCMの検討を行っております。私が拝見したものの一つに、長期地球温暖化対策プラットフォーム海外展開戦略タスクフォースの資料の中に、JCM、二国間クレジット制度の課題を指摘しています。
 その中では、やはりJCMというのは規模が小さいよね、コストも高いよねと、幾つかこういう課題が列挙されているわけですけれども、そういう中で、「大型・ビジネス案件のJCM化が必須。」とあります。
 パリ協定の詳細ルールづくりにおいて、大型、ビジネス案件のJCM化を求めていくという立場ですか。

○高木副大臣 先ほども申し上げましたけれども、ケース・バイ・ケースの案件でございますので、積極的にこれを求めていくということではなくて、現実の中でそれぞれのその各事業者、企業がそういうような案件を取り扱えるかどうか、こういったことも含めて検討されていくものだと考えております。

○塩川委員 これは、政府の中でいろいろ議論されていると思うんですけれども、外務省としてはどうなんですか。こういった大規模石炭火力も含むような大型、ビジネス案件のJCM化、そういうルールづくりをパリ協定の詳細ルールづくりの中で求めていくのかどうか、その点について。

○相星政府参考人 お答えいたします。
 二国間クレジット制度自体は、途上国へのすぐれた低炭素技術等の普及促進や対策実施による温室効果ガスの排出削減クレジットについて、我が国の貢献を適切に評価した上で獲得して、我が国の削減目標の達成に活用するのがその目的でございます。
 まさにその趣旨に照らして、今後、関係省庁とも緊密に連携の上、実施指針の策定に当たって検討してまいりたいと思います。

○塩川委員 否定されませんでした。大規模石炭火力発電もJCMの対象とするためにパリ協定の詳細ルールづくりにかかわろうという姿勢を否定されなかったということであります。
 ですから、私、日本政府がパリ協定の詳細ルールづくりに参加をしても、こういった大規模石炭火力を推進するようなスキームを入れ込むようなアプローチでは、率直に言って、温暖化対策の足を引っ張るだけだということを言わざるを得ません。
 安倍政権全体の方針として、インフラシステム輸出戦略に取り組んでいるわけです。毎年、インフラシステム輸出戦略のフォローアップを行っています。
 そこで少し事実関係でお聞きしますが、これは内閣官房でしょうか、経産省かな。総理、閣僚による強力なトップセールス、つまり、総理あるいは閣僚が先頭にトップセールスを行うということを、この間政府が方針として掲げています。これについて、実施件数が幾つかというのを、数字が出ています第二次安倍政権発足以降の二〇一三年、二〇一四年、二〇一五年について、総理のかかわる案件が何件で、閣僚のかかわった案件が何件か。その合計について教えてもらえますか。

○久島政府参考人 お答え申し上げます。
 二〇一三年から二〇一五年まで、総理及び閣僚レベルの外国訪問によりますトップセールスの実施件数につきましては、総理、閣僚、それから副大臣・政務官、それぞれ、九十八、百二十四、百四十五でございまして、合計は三百六十七件となってございます。

○塩川委員 今は副大臣、政務官を含めた数字でお答えいただいたんですけれども、総理と副大臣でいいですから、各年次ごとの数字と合計数。

○久島政府参考人 お答え申し上げます。
 総理につきましては、二〇一三年、三十四、二〇一四年、三十二、二〇一五年、三十二、合計九十八でございます。
 また、副大臣・政務官レベル、これは副大臣、政務官を合わせた数字で取りまとめておりますけれども……(塩川委員「閣僚、閣僚」と呼ぶ)閣僚でございますか、失礼いたしました。閣僚レベルにつきましては、二〇一三年、四十六、二〇一四年、四十二、二〇一五年、三十六、合計百二十四件でございます。

○塩川委員 失礼しました。
 そうしますと、総理が三年間で九十八件、閣僚が百二十四件、合計二百二十二件、こういったトップセールスを行ったということで、内閣官房が取りまとめをしています。
 このトップセールス実施件数のうち、石炭火力発電事業に係る件数が何件あるのかについては、これは経産省ですか、お願いします。

○高木副大臣 石炭火力発電事業に関して、経産省が把握しているものとしては、二〇一三年から一五年に、総理、経産大臣、そして副大臣、政務官が海外出張した案件のうち、相手国との会談におきまして石炭火力の導入を働きかけた件数は二十三件でございます。

○塩川委員 これは、経産省の政務三役がかかわった案件ということでの数字で、ほかの役所がかかわっているというのは実際ないのかな、これで政府全てということでしょうか。

○高木副大臣 総理がかかわられたのが四件、経産省、大臣、副大臣、政務官が十九件ということでございます。

○塩川委員 ぜひどういう案件かについて、例えば、先ほどのOECDのルールで見てもらったような、それぞれの発電方式ですね、超超臨界、超臨界、まあ亜臨界はないんだと思うんだけれども、その辺の区分とかの件数というのは出せますか。

○高木副大臣 現在の段階では、今の手元には、その資料としては手持ちではありませんので、申しわけございません。

○塩川委員 二十三件の一覧表を含めて、今言った発電方式の区分とかの資料を後で出していただけますか。

○寺澤政府参考人 お答えします。
 二十三件の内訳ですけれども、これは個別企業のビジネスにかかわる話でございますので、具体的内容については公表というのは難しいと考えております。

○塩川委員 でも、トップセールスで実施した件数というので、わざわざ内閣官房が宣伝のためにつくっているわけですよ。そういう案件について、詳細を聞こうなんて別にそこまで求めていませんから、どういう案件かの一覧表ぐらい、これは集計しているわけですから出せますよね、副大臣。

○高木副大臣 今、寺澤局長がお話ししましたように、それぞれの案件、具体的にビジネスとして成立した案件はございます。ビジネスとして成立していればオープンになっても問題はないと思うんですが、いわゆるFSを実施してその後どうなるかだとか、そういう部分では、各企業、それぞれ企業としてのさまざまな情報の管理というのはございます。そういうことを含めまして、今局長は、そこは公開できない、こういうふうなお話でございます。
 ですから、契約が成立して実質的にスタートしているものに関しましてはオープンにできると思いますので、それは努力していきたいと思います。

○塩川委員 何が開示できて、できないのかというその境目というのも重要ですから、いずれにしても、改めて経産省に対してその資料については求めていくものです。
 こういった案件の中には、先ほどの四件と言いましたけれども、安倍総理がかかわった案件もあります。あわせて、この内閣官房の資料には、二〇一四年のインフラ受注実績というのがあって、約十九兆円となっています。そのうちエネルギーは五・六兆円とあるんですが、この五・六兆円のうち、石炭火力発電に関する受注実績が幾らぐらいかというのはわかりますか。

○寺澤政府参考人 お答えします。
 二〇一四年のインフラ全体の受注は、エネルギー分野で五・六兆円あるうち、電力分野は三・二兆円でございます。そのうち、タービンとかボイラー等の機器受注が〇・九兆円、発電事業というIPPが二・三兆円でございます。
 機器受注〇・九兆円のうち、これについては機械受注統計から算出しているものでございまして、これ以上の詳細内訳はございません。IPPの二・三兆円のうち、火力発電が二兆円、再生可能エネルギーは〇・三兆円という内訳でございます。これ以上の詳細は把握しておりません。

○塩川委員 石炭火力も含まれるというお話でした。詳細については、また改めてお尋ねします。
 いずれにしても、こういったように温暖化対策を進める上でどのように温室効果ガスを抑制していくのか、そういう際に、やはり日本政府としての姿勢を明らかにする意味でも必要な情報開示が求められていると思います。石炭火力発電事業に係る日本政府の公的金融支援に関する詳細データをぜひ出していただきたい。JBICですとかNEXIですとかJICAとか、こういった資料についての情報開示、石炭火力発電について求めたい。大臣、一言。

○高木副大臣 先ほどから申しておりますけれども、いわゆる契約を結ぶためのさまざまな交渉をしている段階では、これは、やはり企業側としてみれば、その情報というのは開示できない部分はあると思います。ただし、その契約が成立をして、事業が発注されて、そして工事が展開されているようなものは、これはオープンにして何ら問題はないと思います。
 そういった中で、私どもは先ほどから何度も申し上げておりますけれども、この石炭火力、まさにCO2を削減していく流れの中で、世界各国はこの火力、特に石炭火力を使う流れというのがございます。それをどこまで抑えられるかということを、日本の技術、これをしっかりと発揮しながらやっていくということが最も大切であるということを申し上げておきたいと思います。

○塩川委員 この石炭火力発電というのは、世界のCO2排出量の約三割を占めるという最大の排出源です。これをどう抑え込むかということこそ行うべき仕事じゃありませんか。超超臨界であっても、天然ガス火力の約二倍の炭素排出をもたらす、温室効果ガスの大量排出は避けられない、こういう立場で取り組むことこそ求められていると思います。
 安倍政権の成長戦略であります日本再興戦略を見ても、高効率火力発電の導入推進及び国際展開とありますし、公的金融支援やトップ外交を通じてアジア等々の新興国へ普及させると述べているわけです。国内においても、火力発電についての導入推進と同時に、石炭火発の輸出、国際展開、これも安倍政権のもとの成長戦略でうたっていることで、安倍政権が石炭火力発電輸出にお墨つきを与えている、そういう世界の流れに逆行しているということを言わざるを得ない。こういう点について転換すべきだ。大臣、最後に一言伺って、終わりにします。

○岸田国務大臣 気候変動対策として温室効果ガスを大幅に削減する、これが急務であるということについては、問題意識、政府としましてもしっかり有しております。そして、温暖化効果ガスを削減する、このことを実現するためにはさまざまなアプローチがあると思います。その一つのアプローチとして、この高効率の石炭火力をどう考えるか、位置づけるかという議論であるかと思います。
 新興国においては、環境や事情において、この高効率の石炭火力の導入が効果的な気候変動対策である場合もあるという考えに基づいて、政府としましてもこの問題に取り組んでいるわけでありますが、引き続きまして、国際的な大きな議論の動向も踏まえながら我が国の対応をしっかりと検討していきたい、このように考えます。

○塩川委員 石炭火力推進政策の転換を強く求めて、質問を終わります。