国会質問

<第192臨時国会 2016年11月15日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 政府提出の公職選挙法改正案について質問をいたします。
 憲法十五条は、国民の固有の権利として選挙権を保障しております。これは、国民が主権者として政治に参加する機会を保障するものであり、国民主権、議会制民主主義の根幹をなすものであります。この憲法上の権利行使には投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。
 そこで、大臣にお尋ねいたします。有権者に投票機会を保障することについての認識の確認ですけれども、選挙権を有している者が投票できないという事態は問題であり、投票できるよう措置するのは当然だと考えますが、いかがでしょうか。

○高市国務大臣 選挙権は、我が国の民主主義を支える重要な国民の権利であると認識しています。ですから、選挙の投票につきましては、公正かつ適切に実施されることが確保された上で、できるだけ多くの方に投票の機会を保障することが重要だと考えています。
 そのために、有権者が投票しやすい環境を一層整備するため、通常国会でも御審議をいただきましたが、それに引き続き、今国会においても投票環境の向上につながる内容を盛り込んだ改正法案を提出させていただいたところでございます。

○塩川委員 多くの有権者に選挙権を保障するということでのお話であります。
 それを踏まえて、法案の内容について確認をいたします。
 大臣にお尋ねしますが、国民は、選挙人名簿に登録されることにより、投票を行うことができ、さらには被選挙権を保障されております。そのため、選挙人名簿というのは国民の参政権の基礎にかかわる重要なものであり、正確なものでなければならないと考えますが、いかがでしょうか。

○高市国務大臣 選挙人名簿は、選挙人の範囲を確定しておくために選挙人を登録する公簿でございます。有権者をあらかじめ的確に把握することで投票事務を円滑に進め、かつ、有権者でない者の投票や二重投票を防止することも目的とするものでございます。
 公職選挙法第四十二条におきまして、「選挙人名簿又は在外選挙人名簿に登録されていない者は、投票をすることができない。」とされており、選挙人名簿に登録されていない者については、選挙権を有していたとしても、選挙権を行使すること、すなわち、投票することができません。
 つまり、選挙人名簿は国民が選挙権を行使するに当たって重要な役割を担っておりまして、この選挙人名簿に正確な登録を行う必要がございます。このことを担保する観点から、選挙人名簿の閲覧等の制度や選挙人名簿に関する異議申し出の制度が設けられております。

○塩川委員 選挙人名簿が国民の参政権の基礎にかかわるものだということであります。
 そこで、総務省にお尋ねしますが、現行では、選挙人名簿は縦覧と閲覧の制度が設けられておりますけれども、この縦覧、閲覧制度の趣旨、目的は何かについて確認をします。

○大泉政府参考人 公職選挙法におきます縦覧と閲覧でございますが、縦覧は、選挙人名簿への登録を行った場合に、その登録に間違いがないかどうかを広く有権者に公開し、有権者の審判を受けることを趣旨とし、新たに選挙人名簿に登録された有権者について、登録後の一定期間、その確認ができるという制度でございます。
 一方、閲覧は、登録についての確認を得る手段を設けることによりまして、選挙人名簿の正確性を確保するということを趣旨としておりまして、選挙人名簿への登録の有無の確認など閲覧の事由を限定した上で、選挙人名簿に登録されている有権者全体について、原則として常時その抄本を見ることができる、申し出ができるという制度でございます。

○塩川委員 縦覧と閲覧では、成り立ちや対象期間に違いがあるわけであります。
 縦覧制度は、現在の公職選挙法以前から設けられており、また、現在のような住民基本台帳制度も整っていないころから、選挙人名簿を正確にするために設けられてきたものです。選挙人名簿の登録を見て不服がある場合には異議申し出ができるという制度もあわせ持っております。
 総務省にお尋ねしますが、この法案では、縦覧を廃止し、閲覧に一本化をするとしております。正確でなければならない選挙人名簿の確認手続が損なわれることがないようにどのように措置をしているのかについて、お答えください。

○大泉政府参考人 縦覧制度につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、昭和四十四年の法改正前には、縦覧を経た後に登録するということでございましたけれども、現在は登録後に縦覧するということに変わっておりますので、縦覧と閲覧の性格は区別がつきにくくなっているという現状にございます。
 そういう中で、選挙人名簿の閲覧の対象につきましては、縦覧の対象となっていた選挙人名簿への新規登録者を含む有権者全体でございます。したがいまして、現在縦覧により確認のできている情報につきましては、閲覧が認められる目的の一つである、特定の者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認ということによりまして代替できますので、引き続き閲覧を行うことができるということでございます。
 また、縦覧期間に付随して認められておりました選挙人名簿の登録に関する異議の申し出でございます。これにつきましても、閲覧をもとに引き続き行うことができるように配慮しております。
 したがいまして、今回の縦覧制度の廃止により支障が生じるということはないと考えております。

○塩川委員 異議申し出を閲覧制度において存続させるということで、選挙人名簿は、国民の参政権の基礎で大事なものであり、正確でなければなりません。同時に、国民の政治参加、政治や選挙活動の自由を確保する観点から、選挙人名簿を公平に、有効に利用することも求められているということを指摘しておきたいと思います。
 次に、住民票を異動させずに遠方に進学した学生が投票できない問題について質問をいたします。
 ことしの通常国会冒頭に改正された選挙人名簿の登録制度の見直しや、本案の都道府県選挙の選挙権、一部の新有権者の選挙人名簿への登録といったように、有権者でありながら投票できない者をなくす努力がこの間行われてきております。しかしながら、有権者が投票できない事態というのは残っております。
 ことしの参議院選挙で大きな問題となったのが、住民票を異動させずに遠方に進学した学生が投票できなかったという問題であります。これは、ことしの通常国会で私も質問もし、また我が党の穀田議員も指摘をしてきた問題であります。マスコミにも大きく取り上げられてまいりました。
 いろいろ各紙報道がありますけれども、例えば産経新聞によりますと、北海道内の十の自治体の選挙管理委員会が、住民票のある自治体から離れて暮らす大学生などの有権者を、住所地に生活実態がないとして選挙人名簿に登録しなかった。一方で、札幌市の選挙管理委員会は、住民登録に基づき選挙人名簿を作成していると言い、選管として生活実態調査をしていないと説明していたとのことであります。このように、選管によって対応がまちまちであるわけです。
 大臣にお尋ねいたしますが、同一の国政選挙において各選管の対応が違う、投票できる場合とできない場合が起こるということが公平な選挙と言えるのかということが問われてくる。この点についての大臣の見解をお尋ねします。

○高市国務大臣 選挙人名簿の登録につきましては、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満十八年以上の日本国民で、その者に係る登録市町村等の住民票が作成された日から引き続き三カ月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者等について行うこととされています。公職選挙法第二十一条の規定です。
 この当該市町村の区域内に住所を有するとは、選挙人名簿への登録の基準日において当該市町村の区域内に現実に住所を有するという意味でございます。
 一般的には、住民基本台帳に記録されていたとしても、現実に住所を有していない者を当該市町村の選挙人名簿に登録することはできませんが、個別の事案について現実に住所を有するかどうかの判断は、具体の事実に即して各市町村において行われるべきものでございます。
 いずれにしましても、きちんと投票していただくためには、現実に住所を有する市町村に適切に住民票を移していただくということが必要でございます。各選挙管理委員会や文部科学省とも協力し、適切な住民票の異動について引き続き周知を図りたいと存じます。
 ちなみに、ことしの二月にも、各選挙管理委員会、文部科学省に対して総務省から依頼をいたしております。

○塩川委員 住所を有しているということが必要なわけで、住民票を異動してもらうのが基本だということであります。
 それはわかります。だから、ことし一月の私の質問の際にも、明るい選挙推進協会の調査を紹介して、住民票を異動しているのが二六・四%という実態のもとでどのような対策を講じているのかということについて質問をいたしました。ことし三月の穀田議員の指摘でも、大学側が入学の際に住民票を提出することを求める、こういうことを本格的に取り組むよう総務省も力を尽くす必要があるのではないか。この点は改めて申し上げたいと思っています。
 そもそも、この問題は、選挙人名簿に登録される際に住所での生活実態があるかどうかがポイントとなっているわけです。そのことを考えると、この間、投票機会を保障する制度がいろいろ創設をされてまいりました。例えば、在外投票を行うために在外選挙人名簿に登録している方は、選挙区内に生活の本拠はないわけですけれども、投票できるようになりました。自衛隊員などが対象となる、国外における不在者投票制度もできました。ですから、このようにいわば生活の本拠がないところでも投票ができる制度をつくってきているわけです。
 ましてや、国政選挙においては、選挙年齢を超えた日本国民が選挙権を有しており、参議院の比例代表選挙は全国単位の選挙です。それなのに、住民票がある市町村に生活実態がないからということで投票できないということに合理性があるのか。この点ではやはり知恵を出す必要があるんじゃないのか。
 大臣にお尋ねいたしますが、住民票を異動させずに遠方に進学した学生が実際には各選管の対応で投票できたりできなかったりする事態を解消していく必要があると考えるわけですけれども、そういう点で工夫、知恵を出すということが必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

○高市国務大臣 今でも、例えばことしの四月に親元を離れて進学された方が住民票を移していなくても、旧住所地の選挙人名簿に登録されている場合には、旧住所地で投票できておりました。
 住民票の異動を適切に行っていただければ、投票できなかったというような状況は生じないものですから、まずは適切に住民票の異動を行っていただくということを徹底するのが基本だと考えています。
 仮に、現実の居住関係に全くかかわらず選挙人名簿の登録を行えるようにしてしまいますと、投票できる選挙区を自由に選べるということにもつながる可能性があるので、私はそちらにも課題が多いと考えております。

○塩川委員 参議院比例代表は全国一区ですから、そういった場合についてもどうするのかというのは知恵を出すことができるんじゃないのか。そういうことも含めて、選挙権をいかに保障するのかということについてさらに踏み込んで考えていく必要があるということを申し上げたいと思います。
 毎日新聞に掲載されておりましたけれども、住民票を移さずに大阪府内の大学に通う女子学生が、成人式を地元で迎えたいということで地元に住民票を残していたという方なんですけれども、でも投票はぜひともしたいという学生の話が紹介されておりましたけれども、不在者投票で人生初の投票をしたいとふるさとの選管へ電話をしたら、投票できないと断られたという話でありました。
 十八歳選挙権が実現し、より多くの有権者の意思を議会に反映させることができるようになったのに、投票したいという意思があっても投票できなかった新有権者がいる。この重さというのをしっかり受けとめて、こういう事態を解消していくことにも真剣に知恵を出し合う必要があるということを申し上げておきたいと思います。
 次に、いわゆる居住三カ月要件についてお尋ねをいたします。
 本改正案では、都道府県内で引っ越しを繰り返しても、知事選などの選挙権を失わせないという改正が盛り込まれております。現行では、二回以上引っ越しを繰り返すと選挙権を失ってしまうわけです。同一の都道府県内に住んでいれば選挙権を失わないということは、投票できるようにしていこうということであります。
 しかし、一つ問題があるわけで、旧住所で居住三カ月の要件を満たし、選挙人名簿に登録されていないと、投票ができません。
 総務省にお尋ねしますが、選挙人名簿の登録には一つの市町村に三カ月以上の居住をしていなければならないが、なぜこのような規定が設けられているのかを確認したいと思います。

○大泉政府参考人 お答えいたします。
 現行の選挙人名簿制度におきましては、市町村の区域に住所を有する年齢満十八年以上の者で引き続き住民基本台帳に三カ月記録されているものが登録されているということでございますが、これは、国政選挙と異なり、地方選挙の選挙権の要件がございます。これには住所要件が課されておりまして、その期間は三カ月ということでございます。
 その上で、多数の選挙人によって行われる各種の選挙を混乱なく適正に、そして能率的に執行するために、国政選挙と地方選挙を通じて一つの名簿とする、いわゆる永久選挙人名簿制度ということでございますが、これが実務的にも適切であると考えられているところでございます。
 また、選挙人名簿の正確性を期するためには事実確認等に一定の期間を要するというような理由もございまして、現在の制度が採用されているものと考えられます。

○塩川委員 国政選挙と地方選挙、同じ選挙人名簿でということになっているわけです。
 国政選挙においても、居住三カ月を満たさず転居を繰り返していると、選挙人名簿に登録されず投票できないということになります。公職選挙法では、国政選挙の選挙権は選挙年齢を超えた日本国民が有するとしており、三カ月以上という居住要件は規定しておりません。しかしながら、例えば衆議院の比例代表選挙でしたら同じブロック内で、参院比例選挙に至っては国内で転居を繰り返したとすると、選ぶ候補者は同じなのに投票することができない。
 今回の都道府県の選挙権にしても、旧住所で名簿登録できるようにした前回の改正でも、大きな流れは、選挙権を持つ者が投票できるようにしようということではないかと思います。
 私が、一月の質問の際に、住民票がある市町村に長期不在の場合においても投票機会を保障する知恵を出し合うことが必要ではないかと提案者に質問したところ、自民党の逢沢議員からは、不断の努力でよりよい制度を整えていきたい、さまざまな工夫を重ねていきたいとの答弁がありました。
 大臣にお聞きしますが、こういった三カ月要件の見直し、三カ月以内の転居を繰り返したからといって投票できないのはこういう流れに合わないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○高市国務大臣 先ほど大泉選挙部長からお答えしたとおり、国政選挙、地方選挙を通じて一つの名簿を用いることにいたしております。その上で、公職選挙法第四十二条第一項において、「選挙人名簿に登録されていない者は、投票をすることができない。」とされています。
 このような取り扱いにつきましては、選挙事務の適正かつ能率的な執行や、選挙人名簿の正確性の確保もまた決しておろそかにはできないということから、合理的なものだと考えられています。
 なお、過去の裁判におきましても、この仕組みについては一応の合理性があると判示されていると承知をいたしております。

○塩川委員 同一都道府県内で引っ越しを繰り返す場合でも今回は認めるという法改正というのは、さまざまなその正確性、能率性を考慮しても可能ということで行ってきているわけで、そういった工夫を国政選挙における比例代表などにおいて、三カ月要件というのを地方選挙のいわばスライドのようにして適用するということも改めて見直すときに来ているんじゃないかということは申し上げておきます。
 最後に、遠隔地での投票を保障することについてお尋ねをします。
 この間の改正で投票できないという事態を解消できた人は、旧住所での投票となるために、新住所が遠方の場合、遠隔地での不在者投票が欠かせないものとなります。私は、手続に時間がかかり複雑な不在者投票はしっかりと周知徹底を行うことを求めてまいりました。
 過去五回の国政選挙における遠隔地での不在者投票者数は、例えば直近の二〇一四年の総選挙では六万八千七百二十三人、少しさかのぼる二〇〇九年の総選挙は十万百五十九人という数であります。こういったことを踏まえて、今回の参議院選挙での遠隔地での不在者投票がどれくらいかというのは、集計中というふうにお聞きしております。なかなか多く利用されているとは言えないという状況だと思っております。
 参議院選挙で、春に住民票を異動したために、遠隔地で不在者投票をした人の話をお聞きしました。選挙お知らせのはがきは新住所へ公示日に届いたということですけれども、不在者投票の手順は詳しく記載されていない、選管のホームページから宣誓書をダウンロードして郵送したということです。でも、一週間しても投票用紙が届かなかったために選管に問い合わせをしたら、前日に処理をしているという話でした。この選管はレターパックで送っていたので、本人が不在だったために受け取れていなかったということでした。この方は、郵便局に再配達してもらってその日のうちに新住所の選管に出向いて、無事不在者投票ができたということであります。
 このように、やはり選管によっての対応もありますし、なかなか不在者投票というのも利用が十分にされにくい状況にある。これは、不在者投票の投票用紙を簡易にばらまけといった話ではなくて、選挙の公正性をしっかりと確保するということは必要なわけです。
 そのことを踏まえて大臣にお尋ねしますが、例えば選管から選管へ投票用紙を送るような際とか、在外投票においても在外公館から選管へ投票用紙を送る場合にも、ファクスを利用すれば選挙期日ぎりぎりであっても投票できるんじゃないかと思うんですね。そのために、まずは全都道府県選管に受信用のファクスを導入するといった工夫が考えられると思うが、この点についてはいかがかということと、重ねてもう一つ、さらには、新住所での……

○竹本委員長 時間が来ておりますので、御注意ください。

○塩川委員 はい。
 投票をできるように国政と地方の選挙人名簿を分ける、こういった対応も検討してみる必要があるのではないかと思いますが、あわせて大臣にお願いをいたします。

○高市国務大臣 現行の不在者投票制度で投票用紙の送信にファクスを活用しているものとしては、洋上投票制度や南極投票制度がありますけれども、これは実に特例的な措置でございます。
 運用面におきまして、実際に投票手続に入る前に、船長などが指定市町村の選挙管理委員会と連絡をとり、同一の用紙を用いて投票内容を複数回送信するなどの不正が行われないようにするということとともに、確実な送受信が行われるように、ファクシミリ送信の試行を行った上で投票手続に入っています。
 ですから、不在者投票や在外投票において同様の厳正かつ確実な運用を確保するためには、個々の選挙人が投票する都度、当該選挙人が選挙人名簿に登録されている個々の市町村の選挙管理委員会との間でこのような手続を行うということが前提となるということで、困難な点がございますので、ファクシミリ送信による投票を導入するということについては慎重な立場でございます。
 また、国政選挙と地方選挙で選挙人名簿を分けるということですが、これも先ほど来お話をしてまいりましたが、国政選挙、地方選挙は一つの名簿を用いて行っております。これも、選挙事務の適正かつ能率的な執行、選挙人名簿の正確性の確保もおろそかにできないという合理的な理由によるものでございます。

○塩川委員 このファクスの話は、選管から選管へ……

○竹本委員長 時間が過ぎていますので。

○塩川委員 はい。
 それと、在外投票の場合には在外公館から選管への投票ですから、投票者が直接じゃありませんので、そこは公正性も担保できる。
 この点についてもぜひ知恵を出して前に進めるということを改めて求めて、質問を終わります。