国会質問

<第192臨時国会 2016年11月15日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 洋上投票に係る公職選挙法改正案について、動議提出者の皆さんに質問をいたします。
 ことしの参議院選挙は、選挙権年齢が十八歳に引き下げられた最初の選挙でありました。ことしの通常国会では、選挙人名簿の登録制度の改正が行われるなど、十八歳選挙権施行に向け法改正も行ってきたところです。
 ところが、ことしの参議院選挙の公示直前に、実習中の水産高校の生徒が洋上投票を利用できないとの報道がありました。このことにつきまして、どれだけの学生、生徒が投票できなかったのかについてはおわかりでしょうか。

○岩屋委員 お答えいたします。
 平成二十八年六月十六日の文部科学省の調べによりますと、ことし七月十日の参議院議員通常選挙におきまして、先生御指摘の、遠洋航海中のために投票できなかった水産高校の生徒は、計七校、人数は計八十二名であったと承知をしております。

○塩川委員 七校、八十二名、これは水産高校ということで、もちろん水産大学校などの学生などもありましょうし、関連してのお話も当然あることと思います。このように、実際には、十八歳選挙権ということが施行されながらも、こういう中で投票ができないという生徒、学生がおられたということであります。
 次にお尋ねしたいのが、ことしの通常国会では洋上投票の対象を拡大する改正が行われたわけですが、その検討時に、実習中の水産高校の生徒が利用できないということは想定されたのか、その点について確認をしたいと思います。

○牧委員 御指摘の趣旨についてはよくわかります。
 さきの通常国会において、洋上投票制度の対象となる船舶の範囲を拡大する旨の公職選挙法改正が成立したところでありますけれども、この改正案というのは、船員ではあるものの、それまでの洋上投票制度では対象外とされていた、いわゆる便宜置籍船や日本人船員が二人以下の船に乗船している船員について洋上投票を行えるようにすることを目的としたものであります。
 他方、今回の本法案の目的は、従来の洋上投票ではそもそも対象とされていなかった水産実習生などについて、実習を行うため航海する水産高校の生徒等であって船員手帳に準ずる文書の交付を受けているものを洋上投票の対象とすることであって、さきの通常国会における改正とは異なる観点からの改正であります。
 今からすると、前回の法改正の際に、おっしゃるとおり、水産高校の実習生等についてもあわせて手当てをしておいてしかるべきでありました。当時は考えが及ばなかったというのが正直なところでありますので、今回、立法府にある者としての反省を踏まえて本法案で手当てをするということであります。
 今後も、投票環境の充実整備、不断の追求が必要であると考えております。

○塩川委員 わかりました。
 今回の改正の中身ですけれども、実習中の学生、生徒も洋上投票の対象としようというものですけれども、本案での「実習を行うため航海する学生、生徒その他の者であつて船員手帳に準ずる文書の交付を受けているもの」とは具体的にどのような方々を指すんでしょうか。
 また、「船員手帳に準ずる文書」とは具体的にどういったものかについて、御説明をお願いします。

○佐藤(茂)委員 塩川委員から二点御質問いただきましたけれども、後段の部分からお答えさせていただきます。
 「船員手帳に準ずる文書」について、現在交付されている文書としては、練習船実習生証明書を想定しております。この練習船実習生証明書は、国土交通省の出先機関の長である地方運輸局長等が、水産高校の実習生等の所属する機関の長から申請を受け、交付するものでございます。
 前段の部分でございますが、本法案の「実習を行うため航海する学生、生徒その他の者であつて船員手帳に準ずる文書の交付を受けているもの」とは、まず一つ目に、学校教育法上の学校に所属するものとしては、例えば水産高校の生徒、次に商船高等専門学校の生徒、そして商船大学の学生が想定されております。
 次に、学校教育法上の学校以外の機関に所属するものとしては、例えば国立研究開発法人水産研究・教育機構が設置、運営する教育施設である水産大学校の学生、さらに独立行政法人海技教育機構の実習生や、同機構が運営する海上技術学校、海上技術短期大学校及び海技大学校の生徒や学生、さらに公益財団法人日本船員雇用促進センターが実施する外航基幹職員養成事業により同センターに登録されている訓練生、こういう方々が想定されているところであります。

○塩川委員 練習船実習生証明書の交付を受けている、これが「船員手帳に準ずる文書」ということであります。
 「学生、生徒その他の者」とあるんですけれども、「その他の者」というのが何を指すのか。あるいは、教職員の人も全員船員ということでいいんでしょうか。その辺の整理はおわかりになりますか。

○佐藤(茂)委員 教職員の方々というのは、もちろん生徒や学生ではございませんので、我々法案提出者の統一した見解としては、船員と同様の扱いという形にさせていただきたいと考えております。

○塩川委員 「その他の者」というのは、いわゆる学生、生徒以外の訓練生、そういう受けとめでおるんですけれども、よろしいでしょうか。

○佐藤(茂)委員 まさに今御質問の中で答えておられますように、「その他の者」というのは訓練生という意味合いで捉えていただければありがたいと思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 選挙権年齢が二十歳のときでも商船大学の学生などは同じように洋上投票は利用できなかったわけですが、残念ながら、そういう要望が上がっていたというのは承知をしておりません。ことしの参議院選挙の公示直前に、実習船に乗っているため投票できないという事態が明らかになったわけであります。もちろん、今回の参議院選挙から実習生が洋上投票を利用できれば本当によかったなと思っております。
 最後にお尋ねしますが、今回このような事態が明らかになったということは、私は、十八歳選挙権の実現によって、新有権者とともに学校の先生ですとか大人たちの意識も、この権利行使のために何とかしなくちゃいけない、そういう思いというのがあらわれているんじゃないのか、これ自身が選挙権の拡大ということを通じて民主主義の発展と捉えられると思っていますが、この点についての提出者のお考えをお聞かせください。

○牧原委員 御指摘のように、選挙権年齢が十八歳に引き下げられたからこそ、マスコミを初め社会の注目が今回洋上投票することができなかった実習生に集まったというふうに理解をしております。その意味では、先生御指摘のとおり、民主主義の発展の一つのあらわれではないかというふうに考えております。
 投票機会の確保というものが民主主義にとって重要な課題であるという認識のもと、引き続き、選挙の公正の確保を図りつつ、投票環境の向上について真摯な議論を行っていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 茨城県立海洋高校の生徒さんの例が報道されていました。
 新しく有権者となった高校三年生の七人は、参議院選挙の公示を目前に控えた六月二十日に出航し、一カ月間、日本近海のマグロのはえ縄漁を学ぶ乗船実習に参加をしていた。そのために、公示日から投票日までの間、茨城を離れてしまう、どうしようかと校長先生が教育委員会などと相談して、不在者投票を利用しようということになって、この海洋高校の生徒さんが、選挙期間中に船が立ち寄る高知市に投票用紙を送ってもらって、高知市内で投票用紙を受け取って、高知市の選管で投票を行う。住んでいる市町村に送ってもらった。
 私も、そのお話、報道を見ましたけれども、投票した高校生たちが大変誇らしく語っているのが印象的でありました。
 憲法は、主権者国民が政治に参加する機会を保障しております。この権利行使には投票機会の保障が不可欠です。実習のために航海に出ている学生、生徒などの投票機会を拡充するため、実習生を洋上投票の対象とする本案に賛成ということを申し述べて、質問を終わります。