国会質問

<第192臨時国会 2016年11月22日 原子力問題調査特別委員会 2号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 放射性指定廃棄物汚染対処特措法は、東電の原発事故を原因とする八千ベクレル以上の放射性物質で汚染された廃棄物を指定廃棄物として、その管理と処理を求めています。
 そこで、栃木県における指定廃棄物処分場建設問題について質問をいたします。
 二〇一四年七月三十日、環境省は、栃木県内の指定廃棄物処分場建設候補地として、栃木県塩谷町の寺島入という地域を選定いたしました。建設候補地は、環境省が選定した全国名水百選の尚仁沢湧水群や天然記念物のイヌブナ自然林を含む栃木県自然環境保全区域に隣接をし、周辺には希少生物も生息している貴重な場所であります。
 伊藤環境副大臣にお尋ねをいたします。
 このような場所への候補地選定は、町民の皆さんに大きなショックを与えるものでした。見形和久塩谷町長は直ちに反対を表明し、町議会も建設候補地の白紙撤回を求める意見書を全会一致で採択しております。住民の皆さんも立ち上がって、処分場反対同盟会を結成し、候補地選定の白紙撤回を求めて活動を始めました。人口一万二千人の町ですけれども、この間、白紙撤回を求める署名が町内外で十七万人以上集まっております。町と議会、住民が一体となって反対運動に取り組んでおります。
 副大臣にお尋ねしますが、環境省は、このように塩谷町が町を挙げて計画に反対しているということを承知しておられますか。

○伊藤副大臣 塩川先生の御質疑に答えさせていただきます。
 塩谷町の方々が反対をされておられることにつきましては、環境省としても承知をさせていただいております。
 このため、塩谷町の方々との丁寧な意思の疎通が少しでもできるように努めることが重要であると私たちは考えておりまして、施設の安全性などについて御説明をさせていただく機会を得られるように、私たちも精いっぱいの働きかけを行ってまいりたい、かように考えております。

○塩川委員 説明の機会を得られるように努力したいというお話がありましたけれども、そもそも、この候補地選定そのものを承服できないというのが町民の皆さんの声となっておりまして、環境省による候補地選定の二〇一四年七月以降、各種の選挙が行われました。塩谷町では、それぞれ候補地の白紙撤回を訴えた候補者が常に多数票を獲得しております。二〇一四年十二月の衆議院選挙、二〇一五年四月の県議選挙、二〇一六年七月の参議院選挙、そして八月の町長選挙。直近では、一昨日投開票が行われました栃木の県知事選挙では、建設候補地の白紙撤回を求めた小林年治候補の得票が計画容認の立場の現職知事の票を上回っております。
 五回の選挙全て、塩谷町の有権者の白紙撤回という意思が示されております。その民意は大変重いのではないでしょうか。どのように受けとめておられますか。

○伊藤副大臣 確かに、私たち環境省は地域の皆様方に理解を得られていないという現下の状況を承知してはおりますけれども、しかし一方で、詳細調査候補地の選定手法等につきましては、塩谷町の町長さんも御出席を賜りました市町村長会議で御議論をいただいております。
 そして、この選定手法に基づいて塩谷町寺島入を詳細候補地として選定させていただき、提示をする前の段階では、確かに塩谷町の町長さんの意見は伺っておりませんけれども、これを理解していただくべく、私たちは今努力をさせていただいているところでございます。
 この努力とそれから町のお気持ちがまだ乖離をしておるということについては、何度も申し上げましたけれども、理解をした上で、何とかここを理解していただくべく努力をさせていただいているところでございます。

○塩川委員 今、市町村長会議の話がありました。選定手法、選定基準などについて、それを議論する、環境省の方が事務局として段取りをして市町村長会議にかけるというわけですけれども、当然、その絞り込みをする際に、この市町村長会議の議論の中でも、処分場候補地の選定手法、提示方法の検討過程では、環境省は、地元の意向を十分に聴取した上で候補地の提示方法を検討すると述べているんですよね、二〇一三年十二月の第四回の市町村長会議で。
 そういう意味では、この候補地の提示前に、塩谷町の地元の意向を聴取するということを行う必要があったのではないかと思うんですが、その点はどうなんですか。

○伊藤副大臣 実は、私も、この副大臣に着任させていただきまして、塩谷町に伺いました。その折、マスコミに完全オープンで町の皆様方との対話もさせていただきました。
 実際に、直接、地域の皆さんが大変御心配をされておられるということについては私も自分で伺いましたので、その場で自分でも申し上げましたが、今の段階では、信頼関係というのは非常に離れたところにあるということは私自身も申し上げたんです。
 一方で、地元の御意見を実際の詳細候補地選定に向けていろいろと伺って一つの結論をつくっていくプロセスは、地元の御意見をいただいていく本当のプロセスは、私たちは、詳細調査を実際に行って、その結果について評価をするときに厳しく頂戴をしてまいろう、こう考えているところでございまして、その際には、風評被害の防止でございますとか地域振興の観点からのしっかりとした地元のそれぞれの御意見を聞いて、それをしっかりと受けとめて対応してまいりたい、かように思うところでございます。
 したがいまして、ぜひ、詳細調査を一度させていただきました後に、そうした全ての御意見を伺って、一つの結論をつくり上げていく道すがらとさせていただければというふうに考えております。

○塩川委員 いや、そもそも詳細候補地の選定手法、提示方法がおかしいというのが、町民の皆さん、町議会、そして町長の声だということこそ受けとめるべきなんですよ。
 ですから、こういった検討過程において地元の意向を十分に聴取した上で検討するという話が出たわけですけれども、実際には、その地元というのはどこかといったら、栃木県の市町村長会議を指しているんですよ。塩谷町じゃないんですよね。こんなので納得するはずがないじゃないですか。
 だから、今言ったように、信頼関係が離れていると言うんだけれども、それは、信頼関係を壊したのは環境省なんですよ。そんなもとで話が進むはずがないというのが現実の実態であるわけで、これはきちんと本当にことわりをもって行うのであれば、この住民合意のない建設候補地の選定は撤回をすべきだということを申し上げておきます。
 その上で、そもそも環境省が決めた選定基準に照らしても、候補地選定には問題があります。
 候補地選定に当たっては、「安全な処分に万全を期すため、地すべり、地震、洪水、津波等の自然災害が生じうる地域をできるだけ避けることが重要である。これらの地域を候補地から除外することで、最終処分場等の安全性をより確実に確保することができる。」としております。そして、自然災害を考慮して安全な処分に万全を期すため避けるべき地域の評価基準を示しています。
 まず指摘をしたいのが土石流についてであります。選定基準では「地形と土砂の堆積状況、および過去の土石流の氾濫実績から、土石流が氾濫することが予想される区域を除外する。」とあります。「具体的には、」「土石流危険渓流に該当するエリアを除外する。」としていますが、この土石流危険渓流とはどういうものかについて簡単に御説明ください。

○中井政府参考人 お答えいたします。
 今先生御指摘の土石流危険渓流につきましては、土石流の発生の危険性があり、人家や施設に被害を及ぼすおそれがある渓流ということで、旧建設省の通知などで明らかにされておるところでございます。

○塩川委員 土石流発生の危険性があり、人家や公共施設に被害のおそれのある渓流のことということですよね。そうしますと、近くに人家や公共施設がなければ、どんなに危険な場所であっても土石流危険渓流には該当しないんです。この選定をしている、いわゆる詳細候補地なるものになっているこの寺島入という場所は、当然、人家が近くにあるわけでもない、公共施設があるわけでもない。ですから、どんなに危険な場所であっても、今指摘をしている土石流危険渓流に該当することにはなりません。
 実際、候補地選定のルールでも、候補地から住民の住居までの直線距離を五百メートルとすることを一つの目安として挙げていますから、人家がないということが前提なので、副大臣、伺いますけれども、土石流危険渓流をそのまま選定基準に当てはめることは不適当だというふうになると私は思うんですが、この点はどうですか。

○伊藤副大臣 選定の手法では、まず、一次スクリーニングにおきまして、全国一律に整備されている既存の地図情報等を用いて詳細調査候補地の絞り込みを行いました。その上で、詳細調査を実際に実行させていただいて現地固有の情報を把握して、有識者会議での評価を経まして、最終的な候補地を決定することといたしております。
 一方で、我々環境省におきましても、詳細調査候補地の一部で冠水があったものとは承知をしておりますし、御指摘の豪雨の影響も考慮すべきものと受けとめております。
 このため、一次スクリーニングでは把握していない豪雨に関する現地固有の情報については、詳細調査の中で確認をさせていただきたいものと考えております。
 町の十分な御理解をいただきながら、ぜひ詳細調査を行わせていただいた上で、有識者会議での安全性の評価もいただいた上で、最終的な候補地としての妥当性については今後判断をさせていただきたいものと考えているところでございます。

○塩川委員 この土石流危険渓流というのは、具体的には谷津地形のところを指すわけですよね。ですから、幅よりも奥行きがあるようなところは土石流が起きやすい渓流なんだということで、その麓に人家や公共施設があれば土石流危険渓流になるんですよ。
 ですから、地元の塩谷町に尋ねれば、たまたま下流に民家等がないために土石流危険渓流にはなっていませんが、民家があれば危険渓流に指定されてもおかしくない場所なんです、このように述べているわけですから、環境省がお膳立てをしたこういう選定基準に照らしても、この候補地というのが不適地であるということは明らかじゃないでしょうか。

○伊藤副大臣 何度も申し上げて恐縮でありますが、いまだ絞り込みの前の、候補地としての選定をさせていただいて、実際の詳細なる調査をぜひさせていただきました後、意見集約をしてまいりたい、かように思っております。

○塩川委員 詳細調査に入るまでもなく、不適地だということは今言った指摘でも明らかであるわけで、候補地選定というのは、改めて白紙撤回ということを求めたい。
 もう一つ指摘をしたいのが、洪水の問題であります。
 先ほど伊藤副大臣もお話をされておりましたけれども、選定基準では「降雨により河川がはん濫した場合に浸水が想定される区域を除外する。」とあります。
 昨年九月の関東・東北豪雨では、栃木県内でも多数の浸水被害世帯が生じました。この候補地のあります西荒川沿いでも大きく雨が降って、候補地においても浸水したということを町長も環境省も認めているところであります。
 ですから、この候補地は、選定基準にあるように、降雨により河川が氾濫した場合に浸水した場所に当然該当するわけですから、詳細調査を待つまでもなく、処分場建設候補地から除外するというのが当然だと思いますが、いかがですか。

○中井政府参考人 お答えさせていただきます。
 先ほど副大臣の方から御答弁させていただいたとおりでございますが、今、詳細候補地を選定するに当たりまして、一次スクリーニングということで、既存の地図情報等を用いての段階でございます。
 先般の豪雨の影響ということについては、現在挙がっております詳細候補地の一部で冠水があったということは事実でございまして、この点についての影響を考慮していくことは必要であるとは受けとめてございますが、いずれにいたしましても、このような豪雨に関する個別の、現地の固有の情報につきまして、環境省といたしましては、詳細調査をやらせていただく中で確認させていただきたい、こういうお願いをさせていただいているところでございます。

○塩川委員 選定に当たって、具体的に一次スクリーニングの話とかをされましたけれども、そもそも選定基準にどういうふうに書いてあるのか。つまり、災害を受けるようなところは外しましょうねという大きな原則を掲げているわけですよ。その際に、「降雨により河川がはん濫した場合に浸水が想定される区域を除外する。」とあるわけでしょう。現に、浸水して、冠水したということを認めているじゃないですか。だったら、もう最初から対象にならないよねという話になるんじゃないか。そう思いませんか。

○伊藤副大臣 冠水をしたということについては私たちも承知をしておるんですけれども、その冠水のいたし方、現場のあり方も含めてなんですけれども、ぜひ詳細調査をさせていただきました上で、全てを検討の俎上にのせて決めさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 もともと、一次スクリーニングの詳細調査の候補地の絞り込みのところですけれども、一次スクリーニングに当てているのが、河川管理者提供データを用いて浸水エリアを除外するというやり方をしているわけですよね。その河川管理者というのは誰かというと、国と県に限定されているわけですよね。その点、確認です。

○中井政府参考人 一次スクリーニング時点での情報につきましては、今、塩川先生がおっしゃったように、国と県の部分についてということでございます。

○塩川委員 この西荒川という、建設候補地に接するように流れている川というのは、一級河川、二級河川に当たりません、普通河川ということで、市町村の管理なんですよ。ですから、そこでもし浸水が起こったということであれば、それについての判断は誰が行うかといえば、これは市町村、町長となるわけです。
 町長がここはもう浸水していますと認めているわけですから、そういう地域を候補地から除外するのは当然じゃないかと。最後に、いかがですか。

○中井政府参考人 先般の豪雨の影響につきましては、一部で冠水があったということでございまして、この点につきましては、地元も立ち会いの上、環境省としての調査を出してございます。
 そのようなことを踏まえまして、今、全体として、おっしゃられましたように、一次スクリーニングで出てこなかった情報について、詳細調査をやらせていただく中で判断をさせていただきたい、こういうお願いでございます。

○塩川委員 詳細調査に入るまでもなく撤回をすべきだ、住民の声にも耳を傾けず、みずから決めた選定基準に照らしても不適地である塩谷町の候補地選定作業はきっぱり撤回することを求めて、質問を終わります。