国会質問

<第192臨時国会 2016年11月25日 環境委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 COP22、パリ協定についてきょうは質問をいたします。
 このCOP22等の会合に関する日本政府代表団による概要と評価というのが出されております。そこには、「パリ協定特別作業部会等におけるパリ協定の実施指針等に関する検討については、緩和、市場メカニズム、適応、透明性、グローバルストックテイク等それぞれについて、来年以降技術的な作業を効率よく進めるため、次回交渉までの期間に行う具体的な作業が決定された。」とあります。
 これがどのようなものなのか、日本政府はどのように関与するのかについて、まず説明していただけますか。

○山本(公)国務大臣 事務方が答えさせていただくそうでございます。

○鎌形政府参考人 パリ協定特別作業部会、APA等におけるパリ協定の実施指針等の交渉の進展については、今後も全ての国の参加のもとで交渉を行い、遅くとも二〇一八年までに指針を策定することを決定いたしました。また、次回交渉までに行う具体的な作業を決定したところでございます。
 具体的には、二〇一七年に、パリ協定の締約国会合、CMA1を一度再開し、作業の現状確認を行った上で再び中断する、また、二〇一八年にCMA1を改めて再開し、実施指針を採択する、こういうスケジュールでございます。そして、それぞれの項目につきまして、サブミッションの提出の期限、あるいはワークショップを開くかどうかといったことも決まってきたということでございます。
 今後、二〇一八年までにパリ協定の実施指針等を採択するために、緩和、適応、透明性等、さまざまな分野における各国間の異なる立場を調整していく必要がございます。そのためにも、今後、実質的な議論を進めていく必要があります。
 我が国といたしましては、パリ協定をさらに実効的なものとするべく、関係国と緊密に連携しながら、実施指針等の策定に取り組んでまいります。
 失礼いたしました。私、指針の策定を二〇一七年までと申し上げたかもしれませんが、二〇一八年までということでございます。失礼いたしました。

○塩川委員 後でちゃんとお答えになっていたと思いますけれども。
 二〇一八年までに実施指針の採択、それに向けて全ての国が参加する形での議論が行われる。日本も当然そこに参加をして、実施指針をつくる交渉に関与するということであるわけです。
 続いて、外務省に確認しますけれども、COP22において、日本政府は、気候変動に関係する途上国支援について、二〇二〇年に官民合わせて約一・三兆円、これまでの実績の一・三倍にすることを表明しました。これは、昨年のCOP21で安倍総理が表明されたものについて、山本大臣の方も改めて表明をされたところであります。
 この途上国支援についてですけれども、直近の途上国支援の実績とその内訳がどうなっているのかについて、説明をお願いいたします。

○森政府参考人 お答えいたします。
 COP21において安倍総理より表明いたしました二〇二〇年における約一・三兆円の対途上国支援は、二〇一三年から二〇一四年までの間に我が国として実施いたしました同種の支援額である年平均で約一兆円、米ドルで約百億ドルの支援を土台に算出したものでございます。
 この中で、太陽光等の再生可能エネルギーの使用促進や省エネ設備の導入等の支援を主眼とする緩和、いわゆる温室効果ガス削減分野の支援でございますが、約百七十二・六億ドル、気候変動に伴う自然災害への対処能力の強化を目的といたし、洪水や干ばつ等の被害対策及びその予防対策等に必要な機材や設備を供与することを主眼とする適応分野の支援は約二十四・六億ドル等となっております。
 また、この中で、石炭火力案件にかかわる支援には、例えば、インド・クドゥギ地区の超臨界圧石炭火力発電所約三・四億ドル、バングラデシュ・マタバリ地区の超超臨界圧石炭火力発電計画約四・一億ドル及びベトナム・ビントゥアン省の超臨界圧石炭火力発電所約三・三億ドル等となっております。

○塩川委員 今お答えいただきましたように、気候変動に関係する途上国支援について、二〇一三、一四年で二百億ドル、そのうち緩和が百七十二億ドル余り、適応が二十四億ドル余りということで、この緩和、温室効果ガスの削減に関して石炭火力発電も含まれているという説明でありました。
 ちょっと重ねてお聞きしますけれども、この三件について、関与した公的金融機関がどこなのか。その関与の仕方ですけれども、融資あるいは出資、投資、債務保証、この辺どうなっているのかがわかりますか。

○森政府参考人 お答えいたします。
 申しわけございません。今、手元に関与した金融機関の資料を持ち合わせておりませんもので。

○塩川委員 後でまた教えていただきたいんですけれども、途上国への温暖化ガス排出抑制に関する日本の資金提供というのは、石炭火力発電所を含むということを確認しました。
 そういう中で、例えばインドのこの事例というのは、国際協力銀行、JBICが支援を行っていると承知をしております。公的金融機関が海外における石炭火力発電所の建設の支援を行っているわけです。
 次に、環境省にお聞きしますが、日本政府は、パリ協定の第六条、市場メカニズムにおきまして、二国間クレジット制度、JCMの仕組みが位置づけられたとしています。この二国間クレジット制度は、日本の技術や製品を提供して新興国や発展途上国の温暖化ガスを減らし、その削減分を排出枠として得る日本独自の制度とされています。
 そこで、お聞きしたいのは、この二国間クレジット制度というのは、大規模石炭火力発電も対象とするのか。

○鎌形政府参考人 JCMは、温室効果ガスの排出削減に資する技術を用いた排出削減事業を対象としているものでございます。具体的な対象事業の決定は、各国の状況に応じて、また国際的な理解が得られるかも考慮した上で、一つ一つ両国で議論していくことになります。
 石炭火力についても同様の考え方でございまして、具体的な事業内容をもとに、両国の間で、温室効果ガス排出量を削減する事業として位置づけられるかを議論することとなります。
 現時点で、JCMとして実施している石炭火力発電の具体的な事業はございません。また、今後も予定しているものはございません。

○塩川委員 今までの実績の話は聞いていないので、スキームとしてどうなのかという話であります。
 そういう点では、石炭火力について、明示的にこれはJCMの対象から除外します、そういうふうになっているんですか。

○鎌形政府参考人 JCMのスキームにおきましては、具体的な事業は、その事業内容を踏まえて、個別案件ごとに相手国との議論により決定されるというものでございますので、一概に決められるものということになってはございません。

○塩川委員 だから、除外されていないんですよね。明示的に除いているものではありません。相手との関係で、国際的な理解云々とありますけれども、大規模石炭火力発電を除くというふうになっていないんですよ。
 大臣にお尋ねします。
 これは、過日、外務委員会でパリ協定の審議を行った際に、経済産業省にもこの点についても同様にただしました。高木経済産業副大臣は、二国間クレジット制度について、大規模火力発電も対象となることは可能だと答弁をしています。これは環境大臣としても同じ認識でしょうか。

○山本(公)国務大臣 JCMの対象は、温室効果ガスの排出削減に資する技術を用いた排出削減事業でありまして、具体的には、その事業内容を踏まえて、個別案件ごとに相手国との議論により決定されるものであるため、一概に決められるものではありません。

○塩川委員 一概に決められないということでありますけれども、大規模石炭火力発電を除くものとするとしているわけではないということでもあるわけですね。
 経産省のいろいろな検討の中で、長期地球温暖化対策プラットフォーム、海外展開戦略タスクフォースというのがあるんですけれども、その資料を見ますと、二国間クレジット制度の課題というのを指摘しています。その中では、「大型・ビジネス案件のJCM化が必須。」とあります。パリ協定の詳細ルールづくりにおいて、大型・ビジネス案件のJCM化を求めているわけです。
 私は、日本政府の姿勢として、途上国に対する支援として再生可能エネルギーですとか省エネの推進、そういう資金というのは当然あり得ると思います。これを自国に削減量としてカウントするかどうかというのはまた別な議論であって、我々とすれば、それは国内の排出抑制の努力そのものを弱らせることになるというので問題だということでありますけれども、議論したいのは、こういった二国間クレジット制度の枠組みに、大量のCO2、温室効果ガスを排出する石炭火力発電を含めるのかということが問われているわけで、大臣にお聞きしたいのは、こういう石炭火力発電を二国間クレジット制度の対象から除くという考えはありませんか。

○山本(公)国務大臣 石炭火力を選択せざるを得ない国もあるというのも事実だろうと思うんです。供給安定性等、国力に応じた選択をせざるを得ない国がある。であるならば、今ある、多分古い石炭火力発電所があるんだろうと思います、であるならば、より高効率な石炭火力発電設備を導入することも、ある意味からいったら、地球温暖化防止のために資するものであるという考え方もあるということであります。

○塩川委員 この辺はまた後で、世界の流れとの関係での議論はしたいと思いますけれども、私は、率直に言って逆行していると思います。
 老朽石炭火力発電があるのであれば、それはもう閉鎖をして、やはり大きな形での再生可能エネルギーの普及を図るような支援こそ日本としてとるべき姿勢であって、環境省がこういった大規模石炭火力発電を容認するような姿勢というのが、私は日本に対する各国の厳しい視線になっているということを指摘せざるを得ません。
 ですから、冒頭、この詳細ルールづくり、実施指針づくりに日本政府もかかわっていくわけですけれども、このパリ協定の詳細ルールづくりに当たって、日本政府が、大規模火力発電所も二国間クレジット制度の対象となるような、そういうスタンスで交渉に臨むというのはもうきっぱりとやめるべきだと思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。

○山本(公)国務大臣 IPCCの第五次報告書においても、石炭火力発電は原子力発電とともに認められております。ただし、CCSという条件つきだというふうに思っておりまして、これから石炭火力発電所をつくろうとする方々は、CCSという問題も同時にやはり考えていっていただきたいなと私自身思っております。

○塩川委員 私は、東電の原発事故の教訓を真に学ぶのであれば、もう原発に依拠しない、そういうエネルギー政策こそ必要でありますし、パリ協定を本当に成功裏に終わらせる、そういう努力を行うということであれば、石炭火力発電に肩入れをするような、そういう政治こそ見直す必要がある。それに対しての言明がないというのは極めて残念であります。日本政府がパリ協定の詳細ルールに参加をしても、こういった大規模火力発電を推進する立場で臨むということになる。これではやはり温暖化対策の足を引っ張ることにもなるということを言わざるを得ません。
 重ねて大臣にお聞きしますけれども、今、先進国においては、こういう石炭火力発電への資金支援について見直しをする動きが広がっております。WWFを初めとした環境NGOの団体の調査では、G7諸国の石炭に対する資金支援というのは、二〇〇七年から二〇一五年で四百二十億ドルを超えるということだそうです。その半分以上が日本だとされております。
 大臣にお聞きしたいのは、海外の石炭火力発電への資金支援というのは、先進国においては日本が最多だ、こういう認識はお持ちでしょうか。

○山本(公)国務大臣 WWF等が公表したレポート「新・隠された石炭支援」において、日本の石炭火力支援について、G7の中で最悪であり続けているという指摘があることは承知をいたしております。
 我が国の国際協力銀行、日本貿易保険、国際協力機構から、一件当たり数百億円を超える大規模な資金支援が複数なされていることは事実だろうと思います。
 こうした資金支援について、途上国の中には、先ほど申し上げましたように、供給安定性等の観点から石炭火力を選択せざるを得ない国もあるという事実を踏まえると、そのような場合には、より高効率な石炭火力発電設備の導入を支援することも地球温暖化対策の一つになり得るとの考えによるものと理解しております。

○塩川委員 極めて残念であります。
 世界の流れということを考えたときに、日本ほど石炭火力発電への資金支援を行っている国はない。大臣が紹介していただいたような国際協力銀行や日本貿易保険や、また国際協力機構が大きな支援を行っているところです。
 今、世界では、この間、ダイベストメントと言われるような、化石燃料事業からの投資の撤収を図る、こういう大きな流れが広がっているわけです。これは、多分COP22の中でもいろいろな議論の中で出ているということは、大臣もよく御存じのことだろうと思います。
 英国のシンクタンクのカーボントラッカーが発表したことが契機になっていますけれども、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて二度未満に抑えようとすると、現在企業が資産として計上している化石燃料の八割は、実際にはその価値が実現できない回収不能な資産、いわゆる座礁資産だということが指摘をされているわけです。ですから、過大に評価をされた資産価値がはじけるようなカーボンバブルが起これば、これが大きな金融危機を新たにもたらすおそれがあるという警告だったわけです。
 IEAも同様に、確認されている化石燃料の三分の二は燃やしてはいけないと指摘をしていると承知をしております。
 だからこそ、先進国、欧米諸国における途上国への石炭火力の輸出の規制ですとか、OECDによる輸出信用ガイドラインの改定ですとか、世界銀行を初めとする国際金融機関による融資の規制が行われているわけで、大臣が、石炭火力発電を新増設するということは世界の潮流に反すると答弁しておられましたが、日本政府による海外の石炭火力発電への資金支援というのは、まさにこういう世界の潮流に反するものなんじゃないのか。
 この点についての大臣の率直な受けとめをお聞きしたいと思います。

○山本(公)国務大臣 先ほどから何度も申し上げますけれども、相手国の事情ということも勘案せざるを得ないということだけはぜひ御理解を願いたいと思っております。
 より高効率な石炭火力発電所ということと同時に、私は、やはりCCSという問題も、考え方だけではなくて技術的なことも含めて、海外に協力を求めていく姿勢が大事なんだろう、かように思っております。

○塩川委員 世界の流れに逆行している日本ということを示すようなお話ということで、こういうスタンスこそやはり変えるべきときだということを申し上げたいと思います。
 もう一つきょう取り上げたいのが、国内における石炭火力発電の新増設問題であります。
 環境省にお聞きしますが、国内における石炭火力発電所の新増設の計画がどうなっているのか、その件数と出力の総計を示していただきたいと思います。

○鎌形政府参考人 平成二十八年十一月時点で、各社の公表資料をもとにいたしますと、石炭火力の新増設計画は、三十七カ所、総計で約二千五十万キロワットとなってございます。

○塩川委員 資料を配付いたしました。環境省が各社の公表資料を踏まえて取りまとめたもので、石炭火力発電所の新増設等の計画の一覧です。左側に事業者、出資事業者、発電所名、出力、発電の形式ということで整理をしてもらっています。このように石炭火力発電所の新増設が相次いでいるということが、この間、問題になってきているわけです。
 答弁にありましたとおり、ここには鈴川エネルギーセンターというのも表には入っていますが、これは既に稼働しているということで、それは合計値には含まれていないということですので、それを入れれば三十八カ所ということになります。二千万キロワットを超える規模での新たな新増設の計画というのは極めて大きいものであります。
 環境省にお聞きしますが、こういった集計をNGOの気候ネットワークも行っております。
 気候ネットワークが集計している石炭火力発電の新設の一覧表では、四十八件、設備容量の合計が二千二百八十四・一万キロワットとなっているんですが、若干違いがあるんですけれども、この違いがどんな理由なのかはわかりますか。

○鎌形政府参考人 結論から申し上げますと、気候ネットの調べにつきまして、詳細に調べておりませんので、よくわからないところでございますけれども、先ほど私は新増設計画三十七カ所と申し上げましたけれども、基数にすると四十四基ということでございまして、数字の数え方もいろいろあろうかと思います。
 ただ、総計は約二千五十万キロワットというのが私どもの計算ということでございます。

○塩川委員 おっしゃるとおりで、気候ネットワークの場合は基数で分けているものですから、一カ所に二基あれば二つ、それを環境省の方は一カ所でカウントしている。その数としては差が出るけれども、先ほど言いました出力ではほぼ同等ということで、気候ネットワークの方が若干報道ベースのを含めて取り上げているようですので、それが公表資料でないということで環境省の方には入っていない、若干のその差はあると思うんですが、いずれにしても、環境省の調べでも、大変大きな規模での石炭火力発電所の計画がありますし、環境省の集計にも入っていないような、計画中のものもあるだろうということも推察されるわけであります。
 こういったたくさんの新増設計画について、もう一つ、発電技術形式の特徴がどうなっているのかについて、環境省の方から簡単に説明していただけますか。

○鎌形政府参考人 私どもで把握しております新増設計画の中の計画では、USCと呼ばれるものと、IGCCと呼ばれるものの計画がなされております。
 USCは、超超臨界圧発電と申しまして、SC、超臨界圧発電の発展型でございます。微粉炭を燃焼させ、蒸気タービンを回すことにより発電する方式であります。発電効率は四〇%程度、排出係数は一キロワットアワー当たりCO2で〇・八二〇キログラム程度、蒸気温度は五百六十六度を超えるものとされております。
 また、IGCC、石炭ガス化複合発電は、石炭をガス化、燃焼し、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせることにより発電する方式でございます。発電効率は四六から五〇%程度、排出係数は〇・六五〇キログラム程度とされてございます。
 また、現在新増設が計画されているもののうち、環境影響評価法に基づく環境影響評価を行っているものについてはそうした形式がわかってございまして、USCが十四件、IGCCが三件ということになってございます。

○塩川委員 IGCCが最新型の石炭火力とされているわけです。USC、それ以前の超臨界等々従来型の石炭火力と区分がされているわけですけれども、御案内のとおり、この最新型の石炭火力においても、天然ガスの発電に比べて二倍のCO2の排出の規模だとされておりますように、石炭火力というのが大量の温室効果ガスを発生させるということが問題となっているわけです。
 ですから、この形式を見ても、不明のところはわからないわけですけれども、実際には、最新型のIGCCでない形式、従来型の石炭火力がかなり含まれている可能性があります。
 ですから、いずれにしても、最も温室効果ガスを発生させ得る石炭火力発電の計画がこのように新増設で実行された場合に、二〇三〇年の削減目標との整合性がとれるのかどうかということが問われるわけですけれども、この点については環境省はどのようにお考えですか。

○鎌形政府参考人 先ほど申し上げました計二千五十万キロワットの新増設計画が全て実現し、かつ、既存の老朽石炭火力発電所が稼働から四十五年で一律廃止されると仮定した場合でございます、あくまで仮定でございますが、二〇三〇年の石炭火力発電所の設備容量は約六千百万キロワットになるという計算になってございます。
 この場合のCO2排出量につきまして、エネルギーミックスの想定と同様の稼働率七〇%で稼働すると仮定すれば、想定排出量はCO2で約三億トンになりまして、我が国の二〇三〇年の削減目標を七千五百万トン超過するという計算になるというところでございます。

○塩川委員 ですから、現状でも既にエネルギーミックス以上の容量になっているわけです。それが、この計画がどんどん進めば、対策がとられないということになれば、大幅な排出超過になる。約七千五百万トンの超過をする可能性があるということも環境省が指摘をしているところです。極めて深刻な事態だと思うわけです。
 この点で山本大臣にお尋ねをしますが、こういった石炭火力発電所の新増設計画というのは温暖化対策にとって極めて深刻な事態だと思いますが、大臣の御認識をお聞かせください。

○山本(公)国務大臣 CO2排出量の多い石炭火力発電の新増設が制約なく進むと、国の削減目標等の達成が危ぶまれると考えております。
 このため、二月の環境、経産両大臣合意に基づきまして、政策的対応等を行うとともに、毎年度、その進捗状況をレビューし、目標が達成できないと判断された場合には施策の見直し等について検討することとしております。
 また、両省の合意以降、石炭火力発電の環境アセスメントの環境大臣意見において、事業者が省エネ法の発電効率指標を達成できないと判断した場合には事業の見直しを検討すること等を含む意見を述べてまいりました。
 これらを通じまして、石炭火力発電の問題にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

○塩川委員 今、新増設が制約なく進んでいくと、この削減目標との関係、達成が危ぶまれるというのはまさにそのとおりだと思いますが、制約なくという条件でおっしゃっておられるわけですけれども、それは、今御答弁にありましたことし二月の環境、経産大臣の合意に基づく電気事業分野における地球温暖化対策に基づいて、経産省としても幾つかの措置をとり、それを環境省でしっかりレビューもしていくということでフォローするという話ですけれども、ことし二月の環境、経産両大臣の合意に基づく電気事業分野における地球温暖化対策というのがどんなスキームなのかについて、簡単に説明してもらえますか。

○鎌形政府参考人 ことしの二月に環境大臣と経済産業大臣との間で合意いたしました電気事業分野における地球温暖化対策についてということでございますけれども、まず、電力業界について、電力業界の自主的枠組みで取り組んでいただく、それにつきまして、引き続き、実効性、透明性の向上や加入社の拡大に取り組むということで、二〇三〇年度に排出係数で一キロワットアワー当たりCO2にして〇・三七キログラムという目標を掲げられてございますが、この目標に向けて取り組むことを促していく、これがまず第一点でございます。
 また、政策的な対応として、省エネ法に基づきまして、電気事業法の全ての発電事業者に対して、石炭火力発電所等の新設基準や火力発電の運転時の発電効率のベンチマーク指標を設定するということ、また、エネルギー供給構造高度化法に基づきまして、非化石電源についてエネルギーミックスと整合的な数値を設定していくというような措置を講じていくということです。これらを、指導、助言、勧告、命令を含め適切に運用していくということでございます。
 さらに、これに対しまして、毎年度、その進捗状況をレビューしていくということでございます。取り組みが著しく不十分と判断される場合には指導監督等が行われますし、また、電気事業分野からの排出量や排出係数等の状況を評価して、〇・三七キログラムの目標の達成ができないと判断される場合には施策の見直し等を検討していく、こういった取り組みでございます。

○塩川委員 前提が、電力会社の自主的枠組みを求めると。もちろん、今言った、目標の〇・三七を含めて、個々の事業者がしっかりと対応するということが前提になっているわけですけれども、それを促していく上での政策的な対応ということで、経産省の省エネ法や高度化法の対応があり、これについて環境省として毎年度レビューをしていくという話ですけれども、実際、環境省がどんなことをやるのかということについて、進捗状況のレビューのお話とかがあると思うんですけれども、現段階でどんなことをやってきたか、それともこれからなのかな、その辺の、環境省として、この両大臣合意に基づく取り組みにおける措置はどんなことをやるのか、やってきたのか、その点について教えてください。

○鎌形政府参考人 今申し上げました枠組みでは、毎年度レビューをしていくということでございますが、このレビューのプロセスに私ども既に取りかかってございます。
 具体的に、必要な情報を集めて枠組みの状況についてレビューするということでございますが、十一月、今月の上旬に有識者にお集まりいただいて、どういう視点からレビューを行うべきかということの意見をヒアリングという形でお聞かせいただきました。それを踏まえて今私ども作業を進めてございまして、これに基づいて枠組みの進捗状況についてのレビューをしていく、そういう状況でございます。

○塩川委員 そうしますと、その二月の両大臣合意で、事業者、経産省の枠組みでの実際の電力業界の取り組みについてレビューしていく、経産省にもきちっと資料も出させるということになるわけですけれども、ただ、では何のレビューをするかというと、その中身はまだ決まっていないということなんですか。

○鎌形政府参考人 具体的なレビューの視点については、先ほど申しました有識者から意見を賜ったところでございます。そういう意味で、どういう視点からレビューを行うべきかということも含めて、今私ども整理をしているという段階でございます。
 もちろん、進捗状況ということでございますから、自主的枠組みの進んでいる状況とか、あるいは省エネ法や高度化法の状況とか、そういうものについてのレビューということでございますけれども、その具体的な視点について、今私どもで整理している最中というところでございます。

○塩川委員 そうなると、二月の両大臣の合意が何だったのかという話になるわけですよ。そこできちっとレビューするとなっているんだけれども、では何をレビューするのかということはこれから考えますということになると、この二月の両大臣会合も、これは経産省の都合でというか電力業界の都合で、それに環境省がそのまま乗っているようにとられる、皆さんが言う環境省としての役割を果たしているのかと率直に思うんですけれども、何で二月の両大臣合意のときに、具体的なレビューのポイントとか、どういう視点なのかということまで詰めてなかったんですか。

○鎌形政府参考人 二月の合意の時点では、まず、政策的な対応としては、省エネ法やエネルギー供給構造高度化法に基づく指針ないし基準をつくっていくということがありました。その進捗状況を見ていくということ、そこは当然レビューの項目としてあるわけでございますけれども、さらに、どういう観点から見ていくかという詳細についての検討を今している、整理をしているというところでございます。
 そういう意味で、レビューについて、何を見ていくか、自主的枠組みの動き、それから政策的対応の動向を見ていく、この辺は当然のこととして共有されているということでございます。

○塩川委員 非常に対応が甘いのではないのかということを指摘したいのと、そもそも電力業界の自主的枠組みでいいのかというのが問われているわけで、電力業界、電事連を中心としてつくった実行計画においても、私は〇・三七というのは低い目標だと思いますし、総量での削減量というのが明らかにされていないという問題も当然あるわけで、ここに依拠してということで本当に進むのかということを指摘したいと思います。
 そこで、この二月の環境、経産両大臣の合意というのは、もともと経緯があるわけですよね。その過程では、電力業界の自主的枠組みづくりについて不十分な対応ということで、環境省が石炭火力発電のアセスメントについて、これはだめだと何度もだめ出しするような場面もあったわけですよ。そういう中でこの二月の両大臣合意に至っているということは承知をしているわけですが、そもそもの出発点の、平成二十五年の東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ、電気事業分野における地球温暖化対策のもとになっているこの取りまとめの内容について、簡単に説明をしていただけますか。

○鎌形政府参考人 御指摘の平成二十五年の局長級会議の取りまとめでございます。電気事業分野における実効性ある地球温暖化対策のあり方と、環境アセスメントにおける二酸化炭素の取り扱いについて取りまとめたものでございます。
 まず、電気事業分野における実効性ある地球温暖化対策のあり方につきましては、国の温室効果ガス排出削減目標と整合的な形で電力業界全体の実効性ある取り組みを確保するため、以下を主な内容とする枠組みの構築を促すことといたしました。
 その内容といたしましては、一つは、国の計画と整合的な目標が定められていること。二つとして、新電力を含む主要事業者が参加すること。三つ目、責任主体が明確なこと、これは小売段階に着目するということでございます。四つ目といたしまして、目標達成に参加者が全体として明確にコミットしていること。五番目といたしまして、新規参入者等に対しても開かれており、かつ事業者の予見性が高いこと。以上のような枠組みの構築を促すこととしたのがまず第一点でございます。
 それから、環境アセスメントにおける二酸化炭素の取り扱いにつきましては、これから申し上げる観点により、必要かつ合理的な範囲で審査することといたしました。
 一つは、竣工に至るスケジュール等も勘案しながら、アセス手続中の最新発電技術等の採用の可能性を検討した上で、既に商用プラントとして運転中の最新鋭の技術以上を採用するように努めること。また、国の中期目標や二〇五〇年目標との整合性を図ること。以上の観点からのアセスメントを行うということでございます。

○塩川委員 今、丁寧な説明をいただきました。
 答弁にもありました電気事業分野における実効性ある地球温暖化対策のあり方で、電力業界全体の枠組みの構築ということで五点説明がありました。
 そこで、この四点目に「目標達成について参加事業者が全体として明確にコミットしていること」とあるんですけれども、その後の括弧書きがあるんですが、この部分についての説明をお願いできますか。

○鎌形政府参考人 失礼いたしました。
 「目標達成について参加事業者が全体として明確にコミットしていること」の後に括弧書きがございます。「目標達成の手段として、二国間オフセット・クレジットやCDMの取得など我が国の優れた発電技術等の国際展開による排出削減等の取組も可能」というふうにされてございます。

○塩川委員 そうなりますと、電力業界の自主的枠組みにおいて、このように、二国間クレジット制度等々、国際展開による排出削減等の取り組みも可能ということが両大臣合意の対策の大もとにあって、いわば、この二国間クレジット制度のように、国際展開による排出削減の取り組みもビルトインをされた仕組みということになるわけですよね。

○鎌形政府参考人 目標達成についてのコミットに関して、二国間オフセットクレジットやCDMの取得なども活用可能とした枠組みということでございます。

○塩川委員 先ほどは、この二国間クレジット制度の問題について、せめて石炭火力は外したらどうかというのに対しては、そういう姿勢がないということがあったわけですけれども、私は、やはり国内での排出抑制の努力を本気でやるということこそ事業者に求めるべきであって、このように途上国等を含めた国際展開による排出削減の取り組みも織り込むということでは、本気でこういう事業者に対して削減努力を、もっと国内における排出抑制の取り組みを求めることに大きな障害が生じることになりはしないのかと思うんですが、その点、どうですか。

○鎌形政府参考人 御指摘のとおり、我が国としての温暖化対策の取り組みというのは、まず国内での削減をしっかりとやるというところが前提と思います。その上で二国間クレジットなどの活用というものを考えていく、こういうスタンスで臨んでいるというところでございます。

○塩川委員 これはことしの通常国会でも議論したところですけれども、結局、国内の石炭火力の新増設による温室効果ガスの増加が行われたような場合でも、そっちの方を減らすんじゃなくて、国内で減らすんじゃなくて、海外の削減分を手当てするという話になりはしないのかということなんです。
 国内で石炭火力をどんどんつくりました、温室効果ガスがたくさん出ます、こういうことに対して海外でクレジットで持ってくれば、そのクレジットも大規模火力発電も排除されていないんですから、国内でも石炭火力発電をつくり、海外でも石炭火力発電をつくり、それが結果として排出抑制の目標に適合的だというスキームだと、これはとても納得できるものではないと思うんですが。
 大臣にお尋ねしますが、こういったスキームそのものが国内での削減努力をおろそかにすることになるんじゃないのか、環境省としてはこういうことを容認しているのではないのか、このことが厳しく問われるわけですが、いかがでしょうか。

○山本(公)国務大臣 御指摘は痛いほどわかります。
 その上で申し上げたいと思うんですけれども、長期的には、電力部門から排出されるCO2は大きく低減しなければならないと思っております。
 その意味において、石炭火力発電は、高効率なものであっても、天然ガスに比べCO2を二倍程度多く排出します。こうした石炭火力発電の新増設が制約なく進むと、国の削減目標等の達成が危ぶまれるというふうに考えております。これを踏まえると、石炭火力についてはより抑制的であるべきだと考えております。
 いずれにせよ、計画に基づき、国内対策を強力に推進していきたいと思っております。

○塩川委員 抑制的と言うのであれば、こういったいろいろな意味での国内での排出削減の努力、あるいは大量の温室効果ガスを出す石炭火力発電そのものを認めない、こういう方向での取り組みこそ求められているわけで、電力業界の自主的枠組みに任せるというわけにいかない。世界の潮流に反する政策を推進しているのは日本だ、こういうことこそ転換をすべきだということを申し上げたいと思います。
 そこで、この資料にありますように、たくさんの石炭火力発電所の新設計画があるんですけれども、そもそも何でこんなに多くの石炭火力発電所の新設計画がされているんでしょうか。

○鎌形政府参考人 それぞれの事業者においてどのような投資計画を立てるかということによるかと思いますけれども、一つには、石炭火力につきましてはランニングのコストが低いというようなところも考慮されているのではないかというふうに考えます。

○塩川委員 ランニングコストの話、要するに安いという話ですけれども、きっかけはやはり東電の事故なんですよ。東電の事故で、東電は原発を動かせません、経営的にも非常に深刻だといったときに、安い火力で動かしたいというのに経産省が動いて、環境省がそれに対して注文をつけたんだけれども、スキームとすれば今言ったような枠組みで、石炭火力も結果とすれば容認をするし、二国間クレジット制度で国内の排出抑制の努力をおろそかにしかねないような、そういうスキームで両大臣合意につながっているということを考えても、私は、こういったことを容認する大もとの一つにエネルギー基本計画があると指摘をしたい。
 もともと、東電の原発事故の後に作成をされたエネルギー基本計画の中で、電源確保のために、石炭火力発電所を安定供給性や経済性にすぐれた重要なベースロード電源として位置づけている、ここがそもそも間違いなんじゃないのか。このエネルギー基本計画そのものを根本的に見直すということこそ必要だと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

○山本(公)国務大臣 今、先生の御指摘は、私も同感するところ多々ございます。

○塩川委員 共感していただけるのであれば、では、そういう施策を進めていただけますか。

○山本(公)国務大臣 なかなか難しい問題等々もあろうかと思いますけれども、基本的な考えだけは私はずっと持ち続けていきたい、かように思っております。

○塩川委員 問題意識だけ持っていても、大臣なんですから、執行してもらわないといけないわけで、思っていてもやらないんじゃ、現行の政策を追認するだけなんですよ。このことこそまさに問われているんじゃないのか。
 そもそも、安倍政権がインフラシステム輸出戦略のもとで石炭火力発電の輸出を位置づけているというのも重大なんですよね。
 私も、この前の外務委員会のパリ協定の質疑の際に、インフラシステム輸出戦略で、総理大臣がたくさんの財界人を連れて政府専用機で、政府専用機に民間の財界人も乗せて海外を回っているんですよ。そういう中に、たくさんの石炭火力発電を売り込むという話もいっぱい入っているんですよね。
 私は、こういった枠組みそのものが、結果として温暖化対策に逆行するような話になっているし、国内での石炭火力発電の新増設のラッシュにもつながっている。国際的な、石炭火力発電を転換していこう、減らしていこう、そういう流れに逆行するような石炭火力発電の輸出戦略であるインフラシステム輸出戦略そのものを転換する必要があるんじゃないのか。これこそ今はっきりと環境大臣として言うべきことじゃありませんか。

○山本(公)国務大臣 この間マラケシュで、ケリー国務長官がある会合で、決して石炭火力は安いコストではないということをおっしゃったんです。回り回って大変高いコストがつきますよという表現をされたんです。私どもは、その考え方に大いに共感をいたしました。

○塩川委員 共感だけではだめで、執行することこそ政治の責任であります。
 石炭火力推進のインフラシステム輸出戦略はもう見直すべきだ。エネルギー基本計画を抜本的に見直して、石炭とそれから原発から撤退をし、省エネを進め、再生可能エネルギーの急速な普及へと大きくかじを切ることを求めて、質問を終わります。