国会質問

<第193通常国会 2017年02月07日 予算委員会 8号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今回の文科省の再就職あっせん、いわゆる天下りあっせん事件で、総理は、再就職等監視委員会が機能していると述べておられます。そして、国交省の天下りあっせんの事例を使って再就職等監視委員会が機能したと繰り返し強調しておりますが、国交省の天下りあっせん事件、最初に監視委員会が取り上げたというこの国交省の天下りあっせん事件というのはどういうものか、この点、まず再就職等監視委員長から説明をお願いしたいと思います。

○大橋参考人 お答えいたします。
 当時の再就職等監視委員会の調査においては、関係者からの聞き取りや証拠などから、元国土交通審議官が、海技振興センターに対して再就職者の情報を提供し、地位に関する情報の提供を依頼したこと、それから日本民営鉄道協会に対して再就職先の地位に関する情報の提供を依頼したこと、これら二件について再就職規制違反があると認定をいたしました。

○塩川委員 今委員長が答弁をしました国交省の天下りあっせんの二つの事例を調査する、その端緒というのが、二〇一一年のときの七月、十月におけます衆議院内閣委員会における国会の質疑が契機だということでよろしいですか。

○大橋参考人 再就職等監視委員会が調査をする前にそのような経緯があったということは承知しております。

○塩川委員 この二〇一一年のときの国会での指摘と総理も言っていた質問は、私が質問したものであります。私が内閣委員会でこの問題を取り上げた。それがこのパネルにあらわれているわけであります。私が指摘をした、国交省における天下りあっせんの仕組みを図式化したものであります。
 上から二つ目の横にある、棒になっているところ、これが日本民営鉄道協会理事長ポストとなるものですけれども、見ていただきたいんですが、いわゆる国交省のOBが最終官職で天下っているということが出ているわけです。左から見てわかるように、最終官職、最終の役職が、海上保安庁次長、その次には関東運輸局長、次にはまた後の関東運輸局長、その後にはまた後の関東運輸局長がつき、大臣官房の運輸安全政策審議官に引き継ぐ、こういう、民営鉄道協会の理事長職が歴代、国交省のキャリアOBで占められているということが見てとれるわけであります。このように、同一ポストに何代も天下りが続くという、固定ポストと言われているものであります。
 そして、矢印がついています。右斜め下に向いているこの矢印というのが、複数の天下り先を渡り歩く、わたりというものを示しております。
 上から四つ目の海技振興センターの常務理事のところを見ていただきたいんですが、ここのところにあらわれているように、その上に小型船舶検査機構というのがあって、そこから大臣官房付という最終官職の人が海技振興センターに常務理事でつく。その際に、それの前職だった船員中央労働委員会事務局長という最終官職の人が今度は日本冷蔵倉庫協会理事長に天下るということになるように、それぞれ渡っているわけですよね。
 加えて、こういった固定ポストとわたりというのが、二〇一一年六月、赤い破線で書いてありますけれども、そこで一斉に行われているんです。二〇一一年六月の時点、これを前後して、赤い下向きの矢印があるように、幾つものわたりが一斉に行われている。つまり、固定ポストとわたりが組み合わさった、まさに玉突き人事が一斉に行われているということがここに見てとれるわけであります。
 私が指摘をしたのは、このような固定ポスト、わたり、そしてそれらが組み合わさった玉突き人事の全体像を明らかにせよということだったわけです。それなのに、監視委員会が明らかにしたのは、赤いところに記してある日本民営鉄道協会理事長それから海技振興センター常務理事、このたった二つなんですよ。このたった二つしか監視委員会は明らかにしなかったじゃないですか。
 私が指摘をしたのは、こういう天下りの全体像を明らかにせよ、これこそ解明すべきだと要求していたのに対して、何でこういう解明を行わなかったのか。
 監視委員長に聞きますけれども、固定ポストやわたりや玉突き人事、こういった天下りの全体像を監視委員会は明らかにしたんですか。

○大橋参考人 お答えをいたします。
 この国土交通省に関する事案につきましてどのような調査を行ったというようなことにつきましては、過去の事例とはいえ、その内容をここで明らかにすることは今後の調査に支障を来しかねないというふうに思っておりますので、詳細についてはお答えを差し控えさせていただきます。

○塩川委員 こういった問題について調査しなかったのかと聞いているんですよ。二〇一一年の話だよ。何で答えられないんだ。もう一回。

○大橋参考人 事案の解明に必要な調査を行ったということを申し上げるだけで、それ以上詳しいことについてはお答えを差し控えさせていただきます。

○塩川委員 これで監視委員会が機能したと言えるのかというのが問われているんですよ。
 総理にお尋ねしますけれども、第一次安倍政権のときの公務員制度改革担当大臣が当時答弁をしておりました。大体、固定ポストになっているところは、ほとんどあっせんがあると見るのが常識だ、だから、固定ポストになっているところに請われて行ったという形をとっても、やはり外部監視機関、これは監視委員会のことですけれども、この外部監視機関はきちんとチェックの目を光らせるということですと言っていたじゃないですか。
 第一次安倍政権の公務員制度改革担当大臣がこういう答弁をしていたにもかかわらず、監視委員会は、この固定ポストさえまともに調査したということの説明もしない、わずか二件の例しか挙げない。これでどうして監視委員会が機能したと言えるのか。総理はそのことを承知していたんですか。

○安倍内閣総理大臣 この案件は、確かに委員が最初に国会で取り上げられたということは承知をしております。
 同事案については、国会での指摘に対し、当時の、これは民主党政権時代でありますが、当時の国土交通副大臣らをメンバーとする調査委員会が二度にわたって違反行為はなかったと認定したわけでございますが、しかしながら、第二次安倍内閣が発足後、平成二十五年三月に、再就職等監視委員会が調査した結果、違反行為が認定をされているわけでございます。
 つまり、その前の段階では全く摘発されていないというか、これは違反行為はなかったと認定されていたものが、調査委員会の調査によって明らかになった、こういうことでございます。
 今委員が御議論の点については、これはまさに監視委員会がお答えをするものであろう、このように思います。

○塩川委員 固定ポストがまさに天下りあっせんだというのは当時の担当大臣も言っていた。そういうことさえ調査したということも示せないのが監視委員会の実態なんですよ。まさに、天下りあっせんについて監視委員会が機能していると言えないということがこういうところにもはっきりとあらわれている。この全体像を明らかにしたのに二つしか言えなかったというところに、監視委員会がその役割を果たしていない、仕組み上がそうなっていることを示しているということを強く指摘するものであります。
 重ねて総理に聞きますけれども、文科省でも国交省でも官僚トップの事務次官が関与していたように、役所ぐるみの天下りあっせんが一度ならず二度までも行われているというのは、まさに構造的な問題です。
 第一次安倍政権の国家公務員法改正の重大な問題は、営利企業への天下り禁止という事前規制の仕組みをなくして、天下りを原則自由化したことにあります。そして、天下りあっせんだけを問題にしてチェックする仕組みをつくったけれども、その結果、まともなチェックもできなかった、そういうことになるんじゃありませんか、総理。

○山本(幸)国務大臣 先ほどの渡辺当時の行革大臣の発言は、その当時は再就職のあっせんというのが許されていたわけでありまして、その意味でそういう発言になったと思います。現在とは事情が違うと思います。
 平成十九年の公務員法改正以前は、国家公務員は、まさに離職後二年間、その離職前五年間の在職機関と密接な関係にある営利企業への再就職は禁止されていたわけであります。
 他方、当時は各省庁において、組織の新陳代謝のために、人事当局による勧奨退職と再就職先のあっせんが人事の一環として行われておりました。
 このような再就職は、個々の職員と再就職の間に必ずしも密接な利害関係が存在しないものであっても、官庁が組織的にあっせんを行うため、結果的に、当該官庁が有する予算や権限を背景に民間に押しつける形で行われることが多かった、これが公務員OBによる口ききなど官民癒着につながっていたというのが問題の核心でありました。
 第一次安倍政権では、このような官民癒着の温床を根源から排除するため、営利企業はもとより、非営利法人への再就職についても、官庁によるあっせんを一律に全面禁止することとしたものであります。
 一方、法令に違反することなく再就職し、公務部門で培ってきた能力や経験を活用して社会に貢献することには意味があります。
 このため、密接な関係のある営利企業への離職後二年間の再就職の原則禁止にかえて、平成十九年の国家公務員法改正により、それまで禁止されていなかった各府省による再就職あっせんの全面禁止等、厳格な規制を導入することにしたものであります。
 その際、規制を実効性あるものにする観点から、離職後二年以内に再就職した場合にはこれを公表するとともに、極めて独立性が高く、かつ強力な調査権限を有した再就職等監視委員会を設置して厳しく監視することとしたものであります。
 この現行制度による厳格な監視が機能したからこそ、今般の文科省事案が明らかになったものではございますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭する必要があり、今後、しっかりとした調査を行い、その結果を明らかにすることにより国民の疑念払拭に努めてまいりたいと思います。

○塩川委員 答弁が長いのは、機能していないということを言いたいだけということです。
 総理に重ねて聞きますけれども、そもそも、監視委員会がこういう形で、機能していない。今言ったように、公益法人を対象にというのがありますけれども、そもそも、営利企業だけではなくて公益法人も天下り禁止の対象にする、範囲を広げろと要求してきたのは私たちであるわけで、そういうことこそ必要で、原則自由化、天下りの自由化を図ったというところに大もとがある。
 総理にお尋ねしますけれども、二〇一一年三月の東電の原発事故、その直前の一月に、電力会社を所管する経産省の資源エネルギー庁長官が、退職後わずか四カ月で東電顧問に天下りました。原発を推進してきた経産省と東電の癒着を示すものであり、原発事故への反省がないと厳しい批判を受け、結局辞任に追い込まれました。それ以前は二年間はまさに営利企業、関連するところに行けなかったのを、それを撤廃したために、わずか四カ月で天下りをするということが可能となった。
 これは、第一次安倍政権で天下り規制をやめて、天下りを原則自由化したから可能になったということじゃありませんか。

○安倍内閣総理大臣 それは自民党政権当時ではございませんが、民主党政権時代でございますが、まさにそのときに再就職等監視委員会のメンバーが決められていなかった、いわば発足していなかったという大きな問題があった中において、発足していれば恐らく、それは間違いなく、エネ庁の長官が東電ですから、当然指摘があったのではないかと推測されるわけでございます。

○塩川委員 私が指摘したことの一部しかやれていないんですよ。これでどうして機能したと言えるのか。
 そもそも東電への天下りというのは、歴代の自民党政権でずっと続いていたんですよ。東電への天下りというのは、通産省、経産省から五代五十年にわたっているんですよ。連綿と天下りが続いていた、固定ポストとなっていたというのが、この経産省、通産省の東電の人事だった。顧問から入って、最後は副社長に上がっていく、そういうルートさえ全部同じなんですよ、こういうのを見ても。
 まさに、こういった天下りの禁止を撤廃した、だからこそ資源エネルギー庁長官が天下ることができたというのは、第一次安倍政権がやった結果じゃありませんか。
 官業の癒着をもたらした天下りというのは、全体の奉仕者たる公務員の仕事をゆがめ、国民の利益を損なうものになる、きっぱりと断ち切るべきであり、実効性ある天下り規制は、規制対象を民間企業だけではなく公益法人や特殊法人などに拡大し、離職後二年間の規制期間を五年に延長するなど、かつて行っていた天下り規制の抜本的強化を図ることであり、公務員を定年までしっかり働けるようにする、こういう取り組みこそ必要だ、この立場に立つことを強く求めるものであります。
 それで、もう一つ指摘をしたいのが、民から官への天上がりの問題です。
 第一次安倍政権は、二〇〇七年の四月に「公務員制度改革について」を閣議決定しました。天下り原則自由化の国家公務員法改正を行うとともに、公務員制度の総合的改革を行うための国家公務員制度改革基本法の立案を決めております。その中には、「官民交流の抜本的拡大」として、「官から民、民から官の双方での官民交流の抜本的拡大に向け、早急に所要の制度整備を行う。」とあります。官と民の間を自由に行き来できるようにするという回転ドアの実現を目指すものであり、その推進役を果たしたのが第一次安倍政権であります。
 パネルを見ていただきたいんですけれども、民間企業から国への職員の受け入れ状況のグラフであります。
 営利企業から国への職員受け入れの拡大を示しています。青い棒グラフですけれども、第一次安倍政権の二〇〇七年度のときに八百四十五人だったのが二〇一五年度には千八百八十二人へと、二・二倍に大きく増加をしています。
 総理にお尋ねしますが、こういった営利企業にとって官民人事交流を行うメリットというのは何なのでしょうか。

○山本(幸)国務大臣 官民人事交流法に基づきます交流採用は、民間企業における実務の経験を通じて効率的かつ機動的な業務遂行の手法を体得している者を採用して職務に従事させることにより行政運営を活性化することを目的とするものであります。
 交流採用を実施した民間企業においては、人材の育成や相互理解の深化等に資するとの評価がなされているものと承知しております。
    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

○塩川委員 人材育成、相互理解ということがありましたけれども、第一次安倍政権の国公法の改正時に総務省が行った委託研究があります。民間企業等における官民人事交流に対する意識に関する調査研究というもので、ここに、官民交流によって民間側が得たいと考えるメリットは三点ある。一つが派遣する職員の人材育成、二つが官庁との人脈形成、三つが新たなビジネス機会の創出というものであり、つまり、官庁との人脈形成、新たなビジネス機会の創出が営利企業のメリットだということになります。そこに官民癒着が生じるのも当然であります。
 政権の政策立案の司令塔が内閣官房であります。内閣官房に置かれたTPPや健康・医療戦略、働き方改革などの事務局には、民間企業から多数が勤務をしております。赤い折れ線グラフですけれども、内閣官房における民間企業出身者数は、二〇〇七年度の六十人が二〇一五年度には二百五人へと、三倍以上に拡大をする。まさに、政権中枢で政策立案に深く関与するものとなっています。多数が出身企業の身分を持ったまま勤務し、数年後には出身企業に戻っていく。そうなれば、営利企業の利潤追求を代弁することになる。
 総理にお尋ねしますけれども、例えば、第二次安倍政権で成長戦略に位置づけられた健康・医療戦略は、先端医療分野に予算配分などを集中し、省庁の縦割りを排除した連携を進めるものです。その推進体制の事務局である健康・医療戦略室には、製薬メーカートップファイブの武田薬品、アステラス製薬、第一三共、大塚製薬、エーザイなどの大企業が加わっております。
 このように、予算の重点配分などの利益を得るような業界関係者を直接国家戦略の作成に当たらせるもので、これは公平公正な政策をゆがめるものとなると思いませんか。総理、いかがですか。

○山本(幸)国務大臣 官民人事交流法に基づいて民間企業から国に採用された職員は、当該民間企業と密接に関係する官職にはつかせず、当該民間企業の事業または事務に従事させないこと等の措置を通じて官民の癒着を防止しているところであります。
 また、採用昇任等基本方針においては、職務の特殊性等を踏まえて、官民癒着等の懸念が生じないように、制度を的確に運用することを定めております。
 これらに沿って、民間から国への職員の受け入れについては、官民の癒着との批判を招かないよう適切に行うことが必要と考えております。

○塩川委員 内閣官房における民間企業出身者二百五人のうち、非常勤職員が百五十九人なんですよ。ということは、皆さん、何年間か勤めたら帰っていくんですよね。そういう関係になっています。健康・医療戦略室においても、民間企業の出身者は十人おりますけれども、全て非常勤職員であります。先ほど紹介した製薬メーカートップファイブの企業など、大企業ばかりです。
 そこで、石原大臣にお聞きしますけれども、そういう民間企業から来た職員のうち、課長補佐クラスの参事官補佐、それから係長クラスの主査の勤務時間とか給与などの勤務条件はどうなっていますか。

○石原国務大臣 委員御指摘の健康・医療戦略室では、今委員が御指摘されましたような企業等々を含めまして、民間における研究開発やグローバルな産業競争の最前線で活躍している方々の専門的な知見を企画立案等に生かす、もちろん山本大臣の御指摘されたような方法でございます、任命しております。
 そこで、御質問でございますが、健康・医療戦略室に勤務する民間出身の職員の勤務時間は、月曜日から金曜日まで、午前十時から十二時及び午後一時三十分から五時十五分まで、一日五時間四十五分であると承知をしております。(塩川委員「給与。給与を質問したでしょう」と呼ぶ)

○葉梨委員長代理 給与についても、石原大臣。

○石原国務大臣 健康・医療戦略室に勤務する民間出身の職員の給与については、一般職の職員の給与に関する法律、いわゆる給与法でございます、これの第二十二条第二項において、常勤の職員の給与とのバランスを考慮するとされており、これに基づき支給をしているものと承知しているところでございます。

○塩川委員 具体的には幾らですか。

○石原国務大臣 個々人が幾らということは、個人情報がございますので、予算書の中で計上している金額を申し述べさせていただきたいと思います。一日当たり、ただいま委員が御指摘をされました課長補佐クラスでおよそ一万一千円、係長クラスで一万円弱となっております。

○塩川委員 ですから、係長クラス一万円弱ということで、週五日ですから、月に二十日、年間にすると二百四十万円です。非常勤職員の方です。
 この募集要項を見ると、この非常勤職員の場合には昇給はありませんし、ボーナスもありません。社会保険の適用もないということになると、暮らしていくのも大変なんですよ。だから、実態は、こういった民間企業からいわば出向で来る人に対して、民間企業側が給与等の補填をしているということになるんじゃないですか。そうなれば、まさに見返りを期待するようになるのも当然じゃないでしょうか。そこに、官から民と同時に民から官が官民癒着、官業癒着をもたらすということが問われてくるわけであります。
 こういった官民交流が官民癒着、官業癒着になる、民間から利潤追求で効率のみを優先する意識と制度が持ち込まれれば国民全体の奉仕者という公務の性格がゆがめられる、官民癒着、官業癒着をきっぱりと断ち切るべきだということを申し上げ、お呼びした方でお聞きできなかった方は申しわけありませんでした、以上で質問を終わります。