国会質問

<第193通常国会 2017年02月21日 環境委員会 2号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 環境大臣の所信質疑をさせていただきます。
 きょうは、原発事故に対する東電の汚染者負担原則について、昨年末に、除染の経費についても大きくその試算額が増加をする、そういったことに対する政府としての対応策をめぐって質問をいたします。
 東電原発事故に伴うコストが幾らかかるかという試算額が、昨年の十二月、経産省などが出した数字で、大きな話題となりました。二兆円と見積もっていた廃炉費用が八兆円になる、賠償は五・四兆円が七・九兆円に、除染は二・五兆円が四兆円に、中間貯蔵施設は一・一兆円が一・六兆円に、合計で十一兆円が二十一・五兆円となるもので、従来の試算額が倍増するもとで、原発事故が巨大な被害をもたらすことが一層浮き彫りとなったわけであります。
 昨年十二月二十日、政府は新たな福島復興基本指針を閣議決定いたしました。原発事故の加害企業である東電に対して、賠償や除染の費用負担を回避する仕組みをつくるものと言わざるを得ません。賠償については電気料金への転嫁、除染については税金投入ということが大きく報道されたわけです。原発事故の加害企業である東電の汚染者負担原則を棚上げするやり方は容認できない、この見地で質問をいたします。
 最初に、大臣に確認をいたします。
 放射性物質汚染対処特措法、除染特措法における汚染者負担原則について確認をしたいと思います。
 この特措法に基づいて講じられる措置というのは、東電の負担のもとに実施をされるというのが費用負担の基本的な考え方ではありませんか。

○山本(公)国務大臣 御指摘の放射性物質汚染対処特措法、いわゆる除染特措法第四十四条第一項に「この法律に基づき講ぜられる措置は、」「関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする。」とあり、これが除染特措法における費用負担の考え方を示しているという考えでございます。

○塩川委員 つまり、東電の負担のもとに実施をされるということであります。
 環境省にお聞きしますが、これまで帰還困難区域における除染の費用というのは東電に求償してきたと思いますが、その点についてお答えください。

○高橋政府参考人 お答えいたします。
 これまで、環境省の方では、帰還困難区域につきまして、一部先行的に除染を実施してきております。それらについては、特措法四十四条に基づきまして、東電に求償をしているところでございます。

○塩川委員 その理由は何かをお聞きしたいんですが。

○高橋政府参考人 今申し上げた措置につきましては、放射性物質特措法に基づく措置であるということで、原因者である東京電力に求償しているということでございます。

○塩川委員 除染特措法にもありますけれども、放射性物質による環境の汚染が人の健康または生活環境に及ぼす影響を速やかに低減する目的で行う除染については、これは除染特措法に基づいて東電に求償しますと。
 ですから、帰還困難区域において例えばインフラの整備を行う、道路の除染を行うということであれば、そういう経費は、当然のことながら、帰還困難区域ということであっても東電に求償する、そういうことでよろしいですね。

○高橋政府参考人 帰還困難区域におきましても、除染特措法に基づいて必要な除染を行う場合には、当然東電に求償するということでございます。

○塩川委員 これまで、除染特措法に基づいて、除染関連費用については、帰還困難区域を含め東電に求償してきたわけであります。
 昨年十二月の基本指針によると、これまで明らかにしてきた除染、汚染廃棄物処理関連費用の試算額が大きく変更となりました。これまでの二・五兆円が四兆円になる。そのときの除染、汚染廃棄物関連費用の内訳と増額になった理由について、環境省の方から説明をお願いいたします。

○高橋政府参考人 除染、汚染廃棄物処理に関する費用が、平成二十五年十二月のときの試算に比べて今回増加していることについて御説明をいたします。
 今回、一定の蓋然性を有する費用を現時点での知見等に基づきまして概算をしたわけでございますけれども、除染と汚染廃棄物処理につきましては、二十五年十二月の約二・五兆から今回四・二兆になりました。交付国債発行分については四・〇兆でございますが、それに加えて原賠法に基づく政府措置額がございますので、合わせますと四・二兆円になります。
 増加分の内訳でございますけれども、まず、除染の本体の費用が、一兆二千八百億円から二兆三千九百億円となりまして一兆一千百億円の増加、それから、仮置き場、減容化施設の設置、運営費用でございますけれども、五千六百億円から九千七百億円となりまして四千百億円の増加、それから、汚染廃棄物処理が、五千三百億円から八千二百億円となりまして二千九百億円の増となっております。
 これらの増加の主な要因でございますけれども、除染や廃棄物処理につきましては、需給の逼迫によります労務費や資材費の上昇、現場の状況を踏まえた丁寧な除染の実施によりまして除染の対象物が追加されたこと、また、避難の長期化に伴いまして建物の解体でございますとか仮置き場の撤去の際などの廃棄物の発生量が増加した、こういうような要因があると考えております。

○塩川委員 増額の金額とその理由についての説明がありました。
 丁寧な除染を行う、当然これは被害者、避難者の方の立場で行うべきことでありますし、当然のことながら、人件費、資材費の高騰というものの影響も受けるでしょう。こういった必要な経費というのが当然かかってくるというのが、実際に執行していく中で、ある程度の見通しということで出されているのが四・二兆円であるわけです。
 当然のことながら、これまで、帰還困難区域について、除染特措法に基づいた東電への費用の求償も行われてきたわけですけれども、この試算である四兆二千億円については、この中には帰還困難区域の除染費用というのは含まれているんでしょうか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げました四・二兆円の中には、先ほど御質問がございました、除染特措法に基づいて帰還困難区域において行った先行的な除染等の費用については含まれております。ただ、今国会に提出されております福島復興再生特措法の改正、この改正後に基づいて行うこととなる除染等の費用は含まれていないということでございます。

○塩川委員 今国会に提出された福島復興特措法の中にこの除染特措法について特例を入れるということですので、そういったことについては、その措置に係るものについては含まれていないということですけれども、実際、でも、いずれにせよ、帰還困難区域についても、特定復興拠点を設けるとかという基本指針に基づいた取り組みを行っていけば、インフラと一体的という話はあるにしてみても、除染に係る費用というのは当然あるわけですよね。それはどのぐらい見込んでいるとかというのはないんですか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 今国会で改正がされた場合の福島特措法に基づく帰還困難区域のいわゆる復興拠点に係る除染等については、これは法律が改正された後、それを踏まえて政府と地元市町村、県等がよく協議をして調整してまいるものでございますので、現時点では、その総額などについては明確になっておらないという状況でございます。

○塩川委員 ただ、費用については来年度予算も頭出しにはなっているわけですから、当然のことながら、どのぐらいかかるのかという見通しというのはあってしかるべきだと思うんですけれども、そういうのもないということですか。

○高橋政府参考人 来年度予算につきましては、当面必要なものとして計上いたしましたけれども、全体についての明確な見通しというものはまだ持ち合わせていないという状況でございます。

○塩川委員 昨年十二月二十日の基本指針では、もちろん復興拠点の話も出てくるわけですけれども、十二月の復興指針でも触れていますけれども、昨年八月の「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」という方針、文書では、最後の、終わりの部分には、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除することを決意するというふうに出ているわけですね。
 政府としてはそういった決意を持って臨むということですから、そういう点でも、帰還困難区域の除染費用の見通しというのは、こういう決意がある以上、政府として本来あるべき費用の試算というのが求められるのかなと思うんですけれども、そういうのはお考えにはならないですか。

○高橋政府参考人 今おっしゃられたような決意といいますかは盛り込まれておりますけれども、現時点では、まずは、復興特措法が改正された場合の、それに基づきまして、当面五年を目途に、帰還が可能となる、解除が可能となる地域について拠点として整備をしていく、そのための必要な除染あるいは廃棄物の解体等をしっかりと実施していくというのが私どもとして必要だというふうに考えております。

○塩川委員 帰還困難区域の除染費用の見通しは明らかではありませんが、ただ、除染費用は四兆円にとどまらず、さらに膨らんでいくということだけは明らかだということであります。
 次に、中間貯蔵施設関連費用の内訳と、その増額になった理由について説明をしていただけますか。

○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 中間貯蔵施設関連費用でございますけれども、今回、約一・六兆円という試算をしてございます。内訳でございますけれども、減容、再生利用技術開発などを含みますいわゆる調査費が五百億円、用地の取得に係る費用が一千九百億円、それから施設整備が九千億円、輸送に係る経費が三千六百億円、管理運営に係る費用が一千百億円ということになってございます。
 これも、平成二十五年十二月時点の試算では約一・一兆円でございましたので、増加をしてございます。主な理由は、未確定でありました輸送時の安全対策でございますとか、施設の仕様が具体化をしたためでございます。
 前回試算を行いました二十五年十二月の時点では、まだ地元の自治体にこの中間貯蔵施設の建設の受け入れをしていただく前でございました。まだ事業に着手をしていない状況で見積もりをしたわけでございます。その後、実際に工事や除染土壌等の輸送が始まりまして、事業が具体化をしてきたことによりまして、新たな試算で数字が変わったということでございます。
 施設の仕様につきましては、福島県の専門家会議等でも議論をしていただきまして、具体化を図ってまいり、土壌貯蔵施設につきましては、公共の水域の汚染を防止するための遮水対策、あるいは水処理設備による水質の管理などを行うこととなりました。
 また、福島復興に向けた仮置き場からの早期搬出のため、土壌貯蔵施設が整備されるまでの間、除染土壌等を保管する保管場というものを中間貯蔵施設内に整備をするということにもなってございます。
 また、輸送時の安全対策につきましては、専門家による検討会も経まして、袋単位の全数管理でございますとか、GPSによる全車両の運行管理などの対策を行うこととなりました。
 これらのことを踏まえまして、現時点での最新の情報に基づいて、一定の蓋然性を有するものとして今回試算をしたものでございます。

○塩川委員 一・一兆円が一・六兆円にふえる。その中には、施設整備や輸送に係る費用の試算額が大きく膨らんでいるわけですが、実際にパイロット事業なども行って、輸送に係るような費用の見通し、安全対策ということも当然経費として乗ってくるわけだし、施設整備においても、土壌の貯蔵施設の基本の安全対策をどうやるのかということ、管理上の対策に対しての経費や、そこに持ち込めないような場合の保管場について新たに設けるということなど、それなりに実情に即した経費の上積みというのが積み上げられての金額だというふうには承知をしております。
 具体化をする中で費用が大きくなってくるわけで、今後どうなるのかということもあるんですが、中間貯蔵施設後の対応として最終処分というのもあるわけですが、その費用というのは何らか見積もりなどというのがあるんでしょうか。

○高橋政府参考人 今回の試算の中では、いわゆる三十年以内の県外最終処分、これにかかわる費用については含まれておりません。現時点ではそれについての数字はございません。

○塩川委員 含まれていない、それについての数字はないということですが、当然費用はかかる。
 この最終処分の費用は、東電に求償するという仕組みでしょうか。

○高橋政府参考人 現時点では、先ほど申しましたように、最終処分に関する具体的な方策等はまだ確定をしてございません。ございませんけれども、仮に現在の除染特措法に基づいて最終処分を実施するということになれば、当然東京電力に求償するということになると考えております。

○塩川委員 東電に求償するという仕組みということでの話でした。
 今後、最終処分の費用も見込まれるわけですし、原発事故由来の放射性廃棄物の処理費用はさらに膨らんでいきます。このように除染関連費用が大きく膨らんでいく。その費用負担については、これまで、帰還困難区域を含めて東電に負担を求めてきたわけです。
 しかし、今回、この方針を大きく転換しようとしているわけです。
 昨年十二月二十日の、政府が閣議決定した新福島復興基本指針では、帰還困難区域の復興に取り組むとして、特定復興拠点を整備すること、そのために整備計画を策定し、そのもとで除染とインフラ整備を一体的に行うとしております。そして、整備計画の実施に係る除染費用相当部分等を含む費用負担については、東電に求償せず国の負担において行うものとしました。その理由は何なのかについて、説明を求めたい。

○星野政府参考人 お答え申し上げます。
 帰還困難区域は、平成二十三年十二月の原子力対策本部におきまして、将来にわたって居住を制限することを原則とするものとして設定されたものであります。こうした政府方針を前提としまして、東京電力も賠償を実施してきております。
 今回、福島特措法改正法案におきまして、帰還困難区域の復興拠点整備の一環として行うこととした除染事業は、新たな法的枠組みにおける一つの計画のもとで、インフラの整備と一体的に行われるものと位置づけてございます。
 したがいまして、この除染事業は、従来の政府が示してまいりました方針から一歩前に踏み出して、新たな町づくりを進めていくという事業の一部でありますことから、除染特措法ではなく福島特措法に基づいて実施することといたしまして、これにより、国の負担のもとで行うと整理をしたものでございます。

○塩川委員 大臣にお尋ねいたします。
 汚染者負担原則という基本にかかわる問題ですから、ぜひこの点については環境大臣としてのお考えをお聞かせいただきたいんですが、今経産省の方でいろいろと説明がありましたけれども、基本指針の中身についてですが、一歩前に踏み出す、今までと違う、ステージが変わったんだと。だから国でという話にはならないわけで、もともと、将来にわたって居住を制限するとしていた地域において除染を行うという場合には、既にそういった長期避難を前提としたような賠償もやってきている、それに除染を乗せるからとなると、そこの部分はちょっと考えようねという話なわけですよね。でも、これは納得いかないんですよ。
 環境省は汚染者負担を大原則として掲げてきたわけで、帰還困難区域における除染費用負担についてもこの間も東電に求償するということを行ってきたわけですから、こういう除染費用負担を国が行うという方針というのは、除染特措法の東電に費用負担を求めるという汚染者負担原則を大きくゆがめるものになる、投げ捨てるものになるんじゃないか、このように思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

○山本(公)国務大臣 東電の事故に関する費用を社会的にどう負担していくかについて、復興拠点整備は、それまでの方針から、国として、今お話がありましたように、一歩前に踏み出し、復興のステージに応じた新たな町づくりとして実施するものであること、除染とインフラ整備を一体的かつ効率的に実施するものであることといったさまざまな事情を勘案した上で、除染特措法ではなく福島復興再生特措法に基づいて実施をすることとし、国費で実施するとの方針となったものでございまして、汚染者負担原則をないがしろにするような御指摘は当たらないと考えております。

○塩川委員 それは説明になっていなくて、一歩前に踏み出す、それは、帰還困難区域で復興拠点を設ける、地元の要望もある、戻りたいという方もいらっしゃる、そういうことで一歩踏み出すというのはあるわけですよ。でも、そのときに、では東電に求償をやめましょうという話にならないんですよね。
 インフラと除染を一体的に進めると。それもあるでしょう。でも、ここにも書いていますように、そういうインフラの費用とともに、除染の費用負担についても、ともに東電に求償せず、国が負担する。そもそも、分けることができる除染の費用について何で国の負担にするのかと。これは全然筋が通っていないと思うんですけれども、改めていかがですか。

○山本(公)国務大臣 帰還困難区域の復興拠点整備に関しては、新たな町づくりとして除染とインフラ整備を一体的かつ効率的に実施するという観点から、政府部内で検討した結果、国費で実施するという方針になったものと承知をいたしております。

○塩川委員 ですから、除染とインフラを一体的に整備すると。その費用負担について、インフラの整備の部分を国が見るというのはあるかもしれない。しかし、除染の費用については今まで東電に求償してきたわけですから、そこは切り分けることができるわけで、何でそれを東電に求償しないのかというのを聞いているんですよ。

○山本(公)国務大臣 繰り返しになりまして恐縮ですけれども、今回、除染とインフラ整備を一体的かつ効率的に実施するという観点から、政府部内で検討した結果、国費で実施するという方針になったということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

○塩川委員 いや、全く納得ができないわけで、ここは、もしこういう形で穴をあけたら、今後の話にもなるわけですよ。
 そもそも特措法上は、こういった汚染者負担原則に立って、事故由来の放射性廃棄物の除染については東電に費用負担を求めましょう、求償しましょう、こういうスキームで来ているわけです。それについて、一体的な整備だからというだけでそこを曖昧にするというその合理的な理由がわからないんですよ。政府部内で検討して決定しましたからというのでは、国民に何の説明もしていないじゃないですか。もう一度。

○山本(公)国務大臣 何度も繰り返しになって恐縮でございますけれども、従来、将来にわたって居住を制限することを原則とするとされてきた帰還困難区域において、除染とインフラ整備を一体的かつ効率的に行い、政府と地元が一体となって、復興のステージに応じた新たな町づくりに取り組むことになったということで、福島の復興が加速化をされるものだというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。

○塩川委員 今まで居住を制限されたところに住めるような環境づくりをしましょう、そのために除染もしましょう、インフラの整備をしましょう、これはわかるんですよ。それは国が前面に立ってというのもあるでしょう。しかし、その費用負担のあり方なんです。そのときに、除染についてはせめて東電に求償するのは当然だというのが特措法のスキームだったんですから。私なんか、インフラの整備だって東電が持てと言いたいくらいなわけですけれども、何で東電に対して除染の費用分は求償しないのかという説明がないと、これは国民は納得できないという話なんですが、どうですか。

○星野政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の、帰還困難区域の復興拠点の整備の一環として行うことといたしております除染事業は、先ほど来申し上げておりますとおり、従来の方針から一歩前に踏み出した新しい町づくりを進めていくという事業の一部でありますことから、除染特措法ではなく福島特措法に基づき実施するという整理のもとで考え方を示したものでございます。

○塩川委員 そういうふうに整理したと言っているだけじゃないですか。何で特措法において東電に求償する仕組みになっている除染部分の費用まで国が持つのかということについての合理的な説明が聞きたいんですよ。
 大臣、説明できないということですか。

○山本(公)国務大臣 何度も繰り返しになって恐縮でございますけれども、帰還困難区域については、政府一丸となって一日も早い復興を目指して取り組んでいくという決意のもとに今取り組んでおりまして、閣議決定された福島復興再生特措法の改正案もその実現のためでございます。

○塩川委員 やりとりの中でも、東電に求償するという除染の費用について今度国が負担するということについての合理的な説明はないですよ。新しいことをやります、新しいことを始めるからというだけの話じゃないですか。それでは国民は納得できないという話なんですよ。
 多くの被害者、避難者の方々がもとの生活に戻れない中で、賠償だって極めて不十分なんですよ、営業補償の問題や営農の補償の問題だって。多くの皆さんが先が見えない暮らしをしているわけです。長期避難の中での多くの御苦労というのがあるわけですよね。賠償に対してだって不十分だという声があるのに、除染の費用について、これを東電に求めるんじゃなくて国が負担するというのは、私は、こういう原発事故を起こした東電に対しての国の姿勢そのものが問われる一番の問題だと思います。
 そういう点でも、このような除染費用を東電に求償せず税金を投入するということは、環境政策の汚染者負担原則をないがしろにするものだ、断じて認められないということを強く申し上げておきます。全く合理的な説明がない。こんなことでは国民は絶対納得しないということを申し上げておきます。
 次に、除染関連費用についての回収方法についてお尋ねをいたします。
 除染関連費用については、その支払いは汚染者である東電が負担するのが原則というのは申し上げてきたところです。その際、除染特措法のスキームは、除染関連費用について、国がまず費用負担を行って、その後東電に求償するということになっております。東電が必要とする資金繰りは、原賠機構法に基づき、支援機構への交付国債の交付、償還により支援することになっています。実際には、除染関連費用に充てる交付国債の償還費用の回収というのは、支援機構が保有する東電株式を中長期的に売却して、それにより生じる利益の国庫納付により除染費用相当分の回収を図るというものです。
 これは前回も少しやりとりをいたしましたけれども、支援機構が一兆円持っていますから、その一兆円の株が値上がりすることによって、売却をすれば、その上がり分について除染の費用に充てるというスキームで、これが本当に東電の汚染者負担原則なのかというところも疑問なしとはしないところでありますけれども、これは、そもそも、二・五兆円が四兆円になったわけですが、この四兆円を出すために東電の株価がどのぐらいになるかというのは、これは経産省とかは見通しを持っているんですか。

○村瀬政府参考人 個別の企業の会社の株式価値に関することでございますので、回答は控えさせていただきます。

○塩川委員 会計検査院が一昨年の報告書でこの試算もしているわけですけれども、従来の二・五兆円を株式売却益で賄うには、機構保有の種類株が全て普通株に転換した場合、平均売却価格が千五十円になる、このことが必要と指摘をしています。
 この数字を使えば、会計検査院が指摘したやり方に沿って四兆円に相当する株価を見ると、千六百八十円ということになります。午後冒頭の東電株価が四百三十九円ですから、三・八倍ということでは、大きな費用負担、見通しというのはなかなか見えてこないわけですけれども、もちろん中長期と言っているわけですが。
 東電の株価が上がるというのは、要するに、原発再稼働しましょうというときなんですよね。そういうのでは、東電の株価が上がるというのが、原発の再稼働を前提にした、こんな回収方法というのは決して認めることができないということは申し上げたいと思います。
 その上で、中間貯蔵施設の費用についてですが、これは経産省でしょうか、この中間貯蔵施設の費用はどのように回収するのか。

○村瀬政府参考人 お答えさせていただきます。
 機構法第六十八条に基づきまして、必要な資金につきましては、エネルギー特別会計に計上することによって対応させていただく、このようになっております。

○塩川委員 機構法の六十八条に基づく資金交付ということで、エネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定に計上するということですけれども、これが、これまで三百五十億円だったものが、一・一兆円が一・六兆円になることで四百七十億円にふえたわけです。
 重ねて経産省にお尋ねしますけれども、この中間貯蔵施設費用相当分については、支援機構に対し、機構法第六十八条に基づく資金交付を行うというのが説明でありました。この六十八条に基づく政府による資金の交付というのは、どういうスキームになっているんでしょうか。

○村瀬政府参考人 六十八条でございますけれども、まず、除染につきましては、除染特措法に基づきまして、環境省から東電に対して求償される、その資金繰りについては、国から原賠機構への交付国債の交付により支援する、こういうことになっております。
 その場合、電力会社の負担金などを原資として原賠機構から国庫納付される、こういうことになっているわけですけれども、この六十八条に基づきまして、被害者の方々への賠償に加えまして、こういう中間貯蔵の費用相当分ということにつきましては、負担金の年間支払い額が非常に大きくなる可能性がある等々の理由から、国民負担の増大を抑制する、かつ電力の安定供給に支障を生じさせないようにするといったような観点から、この六十八条に基づきまして、必要な資金がエネルギー特会に計上されて、このものが原賠機構に支払われる、こういうことになります。

○塩川委員 つまり、原子力事業者の負担金でそもそも回収するということなんだけれども、原子力事業者の負担金の年間支払い額が大きくなる、そうなれば、原子力事業者に負担がかかるので、電力の安定供給にも支障が出かねないということで、その分について、このように、六十八条に基づいて、いわゆる電源開発促進税で手当てをするということでよろしいですか。

○村瀬政府参考人 この中間貯蔵施設につきましては、昨年十二月の閣議決定におきまして、福島復興の観点から、中長期にわたって安定的に管理する施設であるものであるからして、国がその費用の確保に万全を期す必要がある、このような考え方に立ちまして、六十八条に基づいて、必要な資金を予算でエネルギー特会に計上した上でその費用を充てる、こういうことになっているということでございます。

○塩川委員 中長期的に安定的に管理する必要があるということで中間貯蔵施設の話がありました。
 ちょっとそういうのを答弁として押さえた上で、もう一つ経産省にお聞きしますけれども、機構法の第六十八条に基づく政府による資金の交付は、今答弁ありましたけれども、原子力事業者の負担金がふえることを軽減するという形で、結果とすれば、原子力事業者の負担の軽減、免除ということにつながるわけですね。

○村瀬政府参考人 六十八条には、国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあるといったような場合にしっかりとこれを予算の定める額の範囲内において対応する、このように規定されているところでございます。

○塩川委員 聞いているのは、結果として原子力事業者の負担軽減になるよねと、そのことなんですが。

○村瀬政府参考人 昨年十二月に閣議決定されました福島復興加速化指針の中では、福島復興の加速を行うために対応する、こういう方針になっているところでございます。

○塩川委員 ということで、原子力事業者の負担軽減ということですよね。

○村瀬政府参考人 繰り返しになって申しわけございませんが、長期的、安定的に継続する事業について、これを国が責任を持って管理し対応する、こういった観点から今回の措置が講ぜられているもの、このように理解しております。

○塩川委員 条文の六十八条に、国民生活及び国民経済に重大な支障のおそれがあると認められる場合に限り、機構に対し必要な資金を交付することができるということですから、国の方が税金を入れるわけですよね、それが電促税なわけですけれども。そうすれば、本来原子力事業者の特別負担金、一般負担金で手当てする部分が減るという話なんですよね。
 そこで、だから、そういうお金の出し方でいいのかという話になってくるんですけれども、電気料金に上乗せ徴収されている電源開発促進税を、今後三十年間にわたって、本来東電が負担すべき除染関連の中間貯蔵施設の費用に流用するものです。二〇一七年度の、来年度の電促税の税収というのが三千四百五十三億円と見込んでいますので、毎年四百七十億円というのはそれの一割を超えるような金額なんですよ。大変大きな額を払うことになる。それは電気料金に上乗せされていますから、国民の皆さんが負担をしているんです。
 中間貯蔵施設の建設の費用というのは、本来事故を起こした東電に求償する話であって、その費用について東電が本来回収する筋であるにもかかわらず、実際には国民の皆さんの税金にツケ回しになっているということになるわけで、さっき言いましたけれども、こういった仕組みというのは、これはやはり国民は納得できないんじゃないかなと思うんですが、この辺、大臣はどうですか。

○山本(公)国務大臣 環境省としては、財源についてお答えする立場にはございません。必要な措置を実施するために今後とも必要な予算を確保し、執行してまいりたいと思っております。
 また、原発の再稼働についても、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○塩川委員 本来、除染にかかわる話ですから、それについては当然環境省としてふさわしく役割を果たすということが必要であるわけで、私、そういう点では、財源の話とか原子力事業についてはというのでは本来の環境省の役割は果たせないんじゃないかなと率直に思うんですが、改めていかがですか。

○山本(公)国務大臣 ただいまやっている除染特措法に基づく除染も、私は、まだまだ拡大されていく、かように思っております。予定されて、ここで終わりということはないんだろうと思っておりますので、そういうこと等を勘案するときに、今回の除染特措法と福島再生特措法、分けた物の考え方というのはあっていいんだろうと思っています。

○塩川委員 では、経産省にお聞きしますけれども、こういった、本来東電に求償して東電に回収を求めるような中間貯蔵施設の部分について、電促税という形で、電気料金という形で国民が負担をする、こういうスキームというのは国民が納得できないんじゃないかなと思うんですが、その点どうですか。

○村瀬政府参考人 お答えさせていただきます。
 現状の機構法第六十八条におきましても、「国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあると認められる場合」ということで、「予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。」と規定がございます。
 この法律に基づきまして適切に対応していきたいと思っておりますし、当然のことながら、発災事業者である東京電力がこの事故の資金をしっかりと対応するというのが大原則でございますので、昨年末に東京電力委員会で提言された改革提言を踏まえまして、東京電力が大胆な改革をしっかりと実現していく、このような中で、企業価値を高める、もしくは必要な資金を捻出してしっかりと対応していく、こういうことは不可欠だと思いますし、その東京電力の大胆な改革を全力で東京電力が取り組んでいくよう、国としてもしっかり指導してまいりたい、このように思います。

○塩川委員 大胆な改革の支援の前に、このスキームそのものを検討すべきだ。
 先ほどの答弁にもありましたけれども、中長期的、安定的に継続するような事業について出しますよという話ですよね。そうなりますと、この原発の事故に伴う事業というのはずっと続くんですよ。
 除染は一定の期限でやりましょうという話でありますけれども、廃炉だってかかるわけですし、賠償だって、この先、打ち切りなんという話というのは当然のことながら認められないという被害者の方の声があるわけですよね。中間貯蔵も長くなるとなると、中間貯蔵で、中長期的に安定的に継続するような事業で、この六十八条に基づき税金投入という仕組みを容認するということになれば、ほかの事業もこれでどんどんいきましょう、税金投入しましょうということをどんどんどんどん重ねることになるんじゃないですか。
 その理由が、原子力事業者の負担金の年間支払い額が大きくなるから、それを軽減するためにというのが六十八条なんですから。こんな六十八条に基づくような税金投入の仕組みは、きっぱりとやめるべきだ。
 その点、経産省と、もう一回、環境大臣にお尋ねします。

○村瀬政府参考人 六十八条に基づく措置は、先ほども申し上げたとおり、国と東京電力の役割分担について、まず、平成二十五年十二月に福島復興加速化指針を閣議決定いたしましたときに、方針として出されているものでございます。
 今回の、昨年末に閣議決定をして策定をした福島復興加速化指針におきましても、基本的にこの平成二十五年十二月の方針を維持する、こういうことになってございます。
 引き続きまして、この法律に基づいてしっかり適切に運用してまいりたい、このように思います。

○山本(公)国務大臣 いずれにせよ、除染や中間貯蔵施設整備の全体工程の効率化について、福島復興を加速する観点から、今後も地元の御理解を得つつ、関係省庁の御協力をいただきながら進めてまいりたいと思います。

○塩川委員 私は、きょうの質疑で改めて実感をしたのが、もう汚染者負担原則は投げ捨てるというスキームになっているということなんですよ。二つある。一つは、除染費用への税金投入の問題です。もう一つが、今指摘をした中間貯蔵施設の費用回収に電促税を充てるという形で国民に負担を転嫁する。
 ですから、こういった大原則である汚染者負担、これをないがしろにするようなやり方ということは認められないということを申し上げる。
 最後に一問、大臣に率直にお聞きしたいのが、現時点でもう二十一・五兆円という原発事故コストの問題なんです。
 こういう巨額の原発事故コストが発生している、そういう原子力の事業について、というよりも、原子力事業といくとあれなのかもしれないけれども、この二十一・五兆円の原発事故コストの重みといいますかについて、率直に大臣としてどのように受けとめておられますか。

○山本(公)国務大臣 原子力発電のことにつきましては、環境大臣として、独立性の高い第三条委員会である規制委員会が環境省の外局として存在をいたしておりますので、原子力発電等々についての予断を与えるような発言は差し控えさせていただきたいと思います。

○塩川委員 率直に、二十一・五兆円というコスト、これをどういうふうに受けとめているのかというのはぜひお聞きしたいんですけれども、改めていかがでしょうか。

○山本(公)国務大臣 決して安いものではないと思っております。

○塩川委員 私は、一度事故を起こせばこれだけの多大な被害をこうむるというのが今の原子力事業だということを出発点に、施策の見直しを図るべきだと思います。
 一つは、この負担の問題についても、東電の責任、東電の経営責任、株主責任、メガバンクなどの貸し手責任、ステークホルダーの責任を厳しく問う。私は、率直に、東電を破綻処理すべきだと思いますけれども、こういった責任ある対応を行うということと同時に、それで賄い切れないような大きな被害になっているわけですから、国費を入れるということであれば、国のエネルギー政策への責任が問われているんですよ。
 安全神話を振りまいてきた、原発を推進してきた、そういうエネルギー政策を転換する。省エネを大きく進めて、再生可能エネルギーを急速に普及する、そういうエネルギー政策への根本的な転換を国が行うということがその責任を果たすことだ。このことを求めて、質問を終わります。