国会質問

<第193通常国会 2017年03月14日 環境委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 原子炉等規制法について質問をいたします。
 きょうは、検査制度の見直しの部分について質問をさせていただきます。
 今回の検査制度の見直しは、国と事業者とが行っている現在の原子力施設の検査の仕組みを、事業者みずからが検査することを義務づける仕組みに改めるというものであります。事業者に検査を任せ、国はその検査をチェックする、原子力施設の安全確保に対する事業者の一義的な責任を明確化するというものとされております。
 しかし、これまで原子力事業者が行ってきたことは何なのか、このことを振り返る必要はあると思います。原発に係るトラブル隠し、記録改ざんを繰り返してきた、あの福島の原発事故を起こした東電はどうだったか。
 資料をお配りしておりますけれども、東電における過去の事故隠し、あるいはトラブル隠しという事例が紹介をされているものであります。
 写真がみんな頭を下げている写真ばかりですけれども、これは日経ビジネスの二〇一一年の四月二十五日ですから、あの原発事故の直後に出された特集記事であります。
 左上の写真は、二〇〇二年、原発のトラブル隠しが発覚をしたということで、この際に南直哉社長ら歴代首脳が一斉に辞任に追い込まれた。これは、福島第一、第二、柏崎刈羽原発を点検したアメリカの技術者の告発で、シュラウド、炉心隔壁にひび割れがあったという記録を改ざんしていたということが発覚をしたものだったわけであります。
 左下に甘利大臣の写真がありますけれども、二〇〇七年の二月に、原発の検査データの改ざんが行われたということで釈明をするものでありますし、真ん中の写真は、その直後、二〇〇七年の三月に、福島第一原発の三号機で一九七八年に臨界事故が起きていた、このことを隠蔽していた、極めて重大な問題だったわけであります。
 さらに、その右上の写真は、二〇〇七年の十二月に、柏崎刈羽原発周辺の活断層について隠蔽していたことを謝罪するということで、右下は福島第一原発事故のことであります。
 最初に大臣と田中規制委員長にお尋ねしたいんですけれども、このように東電が、事故、トラブル、その隠蔽を行ってきたということを繰り返しているわけであります。こういう事故やトラブルにかかわる隠蔽が多過ぎるんじゃないのかと。東電がこのように原発に係る事故、トラブル隠し、記録改ざんを重ねてきたことについて、率直にどのように受けとめておられるのか、その認識についてそれぞれお尋ねしたいと思います。

○田中政府特別補佐人 先生御指摘のように、この東京電力の体質とも言えるような隠蔽体質ということについては、私どもも非常に深刻に受けとめております。
 ですから、こういったことが克服できるかどうかということが、今後、東京電力がきちっと原子力施設を運転するに値するかどうかというところの判断の大きな要素になるというふうに認識しております。

○山本(公)国務大臣 先生御指摘の過去の東京電力のさまざまなことについて、私も遺憾に存じております。
 そういう意味において、今回の法改正がある意味で行われていくんじゃないかというふうに考えております。

○塩川委員 その関係についても後でお尋ねしたいと思うんですが、田中委員長がお話されましたように、この隠蔽体質を深刻に受けとめている、それが克服できるかどうかというのが、こういった原子力施設の運営者としてのあり方がまさに問われているということであります。
 私、この二〇〇二年のシュラウドのひび割れデータの改ざん事件のときに、当時、経済産業委員会の委員でありまして、この問題も取り上げたことがあります。極めて重大だったということを思い起こしたところです。
 このシュラウドのひび割れデータの改ざん事件は、さかのぼる一九八六年に、GE、ゼネラル・エレクトリックの子会社GEIの検査技術者で東電の原発の自主点検を担当していたケイ・スガオカ氏が、東電福島第一原発で蒸気乾燥器の取りつけが百八十度逆向きだったことや、炉心シュラウドにひび割れが多数存在することを報告したわけです。
 シュラウドというのが、ステンレス製の筒で、原子炉内の構造物や機器を支える役割を果たしており、シュラウドが壊れると機器が落下をし、原子炉制御不能の大事故に至るという重要な部位であります。しかし、スガオカ氏は、東電から、取りつけ方向間違いの記述は削除せよ、ひび割れのビデオは消去せよと求められてそれに従ったということでした。
 スガオカ氏は二〇〇〇年にこのことを通産省に内部告発をしましたが、スガオカ氏が告発したのは二件だけでしたが、その後の調査で、福島第一原発、福島第二原発において二十九件のトラブル隠しが判明をしました。
 この一連の点検データ改ざん事件の記録を見ると、かかわった東電の社員は約百人に上り、本社原子力管理部の幹部、取締を含む数名と三つの原子力発電所の現場担当者など社員三十名から四十名が組織的に行っていた。原子力安全・保安院によれば、自主点検報告書の虚偽記載は、一九八七年から九五年に二十九件、シュラウドのひび割れなど記載しなかったケースが九件、法令違反が多数ありました。保安院が東電となれ合いになって、事実を知った後も隠蔽に加担したことも明らかになりました。さらに、上記の問題の真相究明の過程で、福島第一原発での格納容器の密閉性試験の際に検査データを改ざんしていたことも発覚をしたわけであります。
 委員長にお尋ねしますが、このような絶え間のないトラブル、事故の隠蔽体質のもとで安全対策がおろそかになった、このことが二〇一一年の東電の原発事故につながったんじゃないでしょうか。

○田中政府特別補佐人 二〇一三年の大事故、その背景には先生御指摘のようないろいろな要素があると思いますが、それがつながったかということになりますと、またいろいろ事故調査等、国会事故調あるいは政府事故調、いろいろな御指摘がありますので、そういったこと全体を踏まえて判断する必要があるんだと思います。
 ただ、先生御指摘のような、安全文化といいますか、そういった安全確保に対する欠如というか、そういうのは確かにあったんだろうというふうには思います。

○塩川委員 安全文化の欠如という話ですけれども、絶え間のない事故、トラブル隠し、隠蔽体質というのが、やはり現場における事業者任せというのと一体となって事故につながったということが問われなければいけないだろうと思っています。
 そもそも国は、東電福島第一原発の事故前に、原発で事故が起きれば炉心溶融に至る危険性はわかっていたわけでありますが、その対策、シビアアクシデント対策を電力会社の自主的取り組みに任せていた、規制の対象としてこなかった、その結果が、電力会社は実際には対策をとらずに福島第一原発事故を招いた。
 こういった隠蔽体質とともに事業者任せというのが結果として事故にもつながっている、そこがやはり一番の教訓ではないかと思うんですが、田中委員長、改めていかがでしょうか。

○田中政府特別補佐人 まず、原子力施設の安全確保の上で一番大事なことは、今私どもが新しく規制基準をつくって要求している対策ですね、重大事故対策あるいは過酷事故に対する対策、そういったことを含めてであります。その起因事象としての我が国特有のいわゆる自然現象、地震、津波等々についての対策、こういったことについてまず求めているということであります。
 ただ、それはあくまでも、そこでとどまるのでは事故を防げるかということにはなりませんので、そういったものを含めて、事業者が常に安全について注意深く自分たちの責任を感じながらやっていただくということが大事だということであります。
 今回の検査制度は、事業者に任せるということよりは、事業者がやる検査を私どもがきちっと監視して、その結果、良好事例もあるだろうし、先ほど御指摘のNRCのようにいろいろなレベルの、悪い事例もあると思います、そういったものを全て公表することにしております。
 それで、その検査官のモラルの問題も私どもとしては非常に重要視しておりまして、いわゆる独立した、きちっとした高い見識を持って技術を持って検査をしていくということ、その検査結果をきちっと国民の目に公表していくということで、事業者にとっても非常に厳しい制度でありますから、決して事業者任せにするということにはならないというふうに私どもは考えておりますけれども、そういった疑いが少しでもないように、今後ともその運用に当たっては注意深く取り組んでいきたいというふうに思います。

○塩川委員 疑いがないようにという話がありましたが、やはり、福島第一原発事故の根底にあるのが、重大事故に至れば炉心溶融が起きることを知っていながら対策を事業者任せにしてきた、そこの部分はあるわけであります。だからこそ、国会事故調査委員会の報告書は、規制当局が事業者のとりことなり、規制の先送りや事業者の自主対応を許し、国がみずからの責任を回避してきたことが事故の背景にあることを指摘しているわけであります。このことこそ教訓にしなければならないと指摘をしたい。
 そもそも、事業者の姿勢の問題、安全文化の欠如の話がありましたけれども、この原発事故を機に、では、東電の隠蔽体質が一掃されたのかということもまさに問われているわけですね。その後も繰り返されているということを言わざるを得ません。
 福島第一原発の事故の後、メルトダウンの隠蔽の問題がありました。東電は、事故発生後、炉心溶融を判定する基準がないとして、原子炉の状態を炉心損傷などと言いかえていました。しかし、昨年二月、炉心溶融について損傷割合が五%超と定義する社内マニュアルがあったと発表しました。そうであれば、三日後には炉心溶融と判定できたわけですが、認めたのは二カ月以上後だったわけであります。また、事故当時の清水正孝社長が、炉心溶融という言葉を使わないよう部下に指示していたということも大問題となりました。
 委員長にお聞きしますが、こういった一Fの事故後のメルトダウンに係る東電の隠蔽について、規制機関としての認識はどのようなものかについてお答えください。

○田中政府特別補佐人 私の方から、どういう事情があったかということの詳細まではわかりませんけれども、当然、炉心が溶けているという状況についてはきちっと速やかに公表すべきであったし、それに基づいてそれなりの防災対策というのも求められていたんだと思っています。
 あの事故の起きた後、先ほど二〇一三年と申し上げましたけれども、二〇一一年の誤りでした。それで、二〇一一年の事故のあの状況を見れば、専門家であれば誰でもほとんど、炉心は程度の差はあれ溶けているということは認識できたはずであります。
 ですから、これからは、事業者がもし仮にそういった対応をとるのであれば、私どもとしては、きちっと専門的立場から、そういった隠蔽みたいなことは許さないという態度で臨んでいきたいと思っております。

○塩川委員 問題は、事故に至る経緯の中で、東電における、事故、トラブル隠しの隠蔽体質があり、事業者任せという、その仕組み上の問題があった。しかし、それが本当の意味で反省がされたのかといったら、事故後においても、このメルトダウンをめぐっていえば、これは具体的にそういったマニュアルが出てきたというのは、新潟県の関与がなければなかったわけですよ。
 そういった点でも、国のやってきたことも問われますけれども、事業者がみずから解明しようということに立つのではなくて、これは当時の清水社長がメルトダウンという言葉を使わないように部下に指示していたということを含めて、やはり引き続く東電自身の隠蔽体質というのが、継続をしているということを言わざるを得ません。この件について、東電の広瀬社長も、隠蔽と捉えられるのは当然だとみずから認めているわけですから、こういった体質というのが拭えていないということを改めて言わざるを得ません。
 もう一つ、指摘もし、お聞きしたいのが、ことし二月、東電が、柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性不足を三年近くも報告していなかったことが発覚をいたしました。この件について、田中委員長に、その経緯と規制委員会としての評価、対応策についてお答え願いたい。

○山田政府参考人 事実関係でございますので、私の方からお答えさせていただきます。
 柏崎刈羽原子力発電所の六、七号炉における免震重要棟について、東京電力は、これまでの審査において、大きな長周期成分を含む一部の基準地震動については基準を満足できないという説明をしてございました。しかしながら、平成二十六年四月の東京電力の解析において、全ての基準地震動に対して緊急時対策所の機能を維持できないという結果が得られていたということで、ことし二月十四日の審査会合でその旨の説明を我々としては受けたところでございます。
 この事案については、審査の前提となる申請内容に疑義が生じたということで、本年二月二十八日に原子力規制委員会を臨時で開催して、東京電力の広瀬社長に対し、社長の責任において審査に対する姿勢を改善することを求めるとともに、審査資料を総点検し、申請書を補正するということを指示したところでございます。
 今後、東京電力からなされる報告の内容について、厳格に確認をしてまいりたいというふうに考えてございます。

○塩川委員 審査姿勢を改善せよと指示した、そこはわかりますけれども、何でこんなことになったのかというところについては明らかになっているんですか。

○山田政府参考人 その点につきましては、審査会合の中で東京電力から説明を受けているところでございますけれども、技術的な担当部署間の情報連絡が悪かったということで、この解析の結果について十分に共有がされていなかったということでこういう事態に至ったというふうに聞いてございます。

○塩川委員 いや、そんなので納得できる話じゃないわけですね。極めて重大な、まさに、新潟県の当局も含めて、このことについて重大な関心を持っているわけで。
 当然のことながら、東電は、このことについては、現場の土木建築の担当と実際に審査業務を行うような部分と、そんな連携がとれていないという話で納得できるんですか。

○山田政府参考人 それにつきましては、審査の中で、私どもとしては、正しい評価結果を出してもらうということが審査の目的でございますので、その中で確認してまいりたいというふうに考えてございます。

○塩川委員 だから、是正するというのはわかるけれども、何でそもそもこういうふうに事が起こっているのか。実際にあるものがないかのような、そういうことにつながるようなやり方について、やはり極めて重大だと。地元の自治体からも、こういった東電の姿勢に対して厳しい叱声というのが寄せられているということは承知もしているところだと思います。
 このように、もちろん、過去から二〇一一年の原発事故までも、多くの事故、トラブル隠し、隠蔽の問題がありましたし、事故をめぐっても、そもそも東電の体質と事業者任せという当時の規制機関の果たした役割というのが事故につながった。その後もこのような形での隠蔽体質が続いているといった際に、今回の法改正で、原子力施設の安全確保に対する事業者の一義的な責任を明確化するということですけれども、こういう隠蔽体質が抜き得ない事業者に安全確保策を委ねることができるのかということが問われているんですが、田中委員長、いかがでしょうか。

○田中政府特別補佐人 少し戻りますけれども、今回の免震棟の問題については私どもも極めて重大に受けとめておりまして、初めての例でありますけれども、臨時委員会で、審査会合の延長線上として五人の委員が集まって、それで広瀬社長を呼びまして、きちっと対応を求めたところであります。今後どういった対応をしてくるかということについては、十分注意深く見ていきたいというふうに思っています。まずそれが一点です。
 それから、その検査制度ですけれども、先ほどの繰り返しになって恐縮ですけれども、検査の一つ一つの細かい項目について、ある程度、一定程度の規則、重要な検査の内容については規則で定めることにしてあります。そういったことに加えて、プラス事業者が検査をきちっと行う、それをオーバーサイトとしてきちっと私どもの検査官が見て評価をするということであります。
 ですから、本当に、例えば、隠蔽するとかそういったことが発覚すれば、当然それなりの処罰を受ける、原子炉の停止も含めた処罰を受けるということになりますので、社会的にも、その結果が公表されますから、事業者にとっては非常に大きな重さがあるというふうに私どもは思っておりますし、そういった形で事業者の責任を明確にして、安全の向上に事業者がみずから取り組んでいただくように図っていきたいというふうに思っております。

○塩川委員 まさにそこのところが本当にそうなのかということが、今回の法案との関係でも極めて重大だと思っております。
 一義的責任を事業者が負うと同時に、それに対して規制機関がしっかりと評価、監視をする。隠蔽のような事態が起これば、当然のことながら厳しく処罰をするということですけれども、そういうお話ですので、法案の中身についてお聞きしたいと思います。
 現在の検査制度は、原子炉等規制法に基づいて、事業者に対して安全確保のために求めている内容について、規制委員会が直接的に関与する仕組みが含まれております。規制制度が導入された当初は、施設が技術基準に適合していたかどうかのハード面の検査が中心でしたが、その後、事業者が自分で行った検査のデータ改ざんや隠蔽が明らかになり、検査の方法や実施体制といったソフト面の検査が加えられてきた経緯があります。
 そこで、そもそも今回の見直しなんですけれども、今回の検査制度の見直しというのは、東電原発事故の教訓を踏まえたものとなっているんでしょうか。その教訓というのは改正内容のどこに反映をされているのか、ここをお聞きしたいんです。

○山田政府参考人 今回の法律の改正における一F事故の教訓でございますけれども、原子力利用における安全性向上に向けた取り組みとしては、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓から、最新の知見を踏まえた原子力施設の安全確保の必要性を認識し、厳格な規制基準が策定され、各原子力施設について、規制基準への適合について審査を行っているところでございます。
 こうした点については、昨年に我が国が国際原子力機関から受領した総合規制評価サービス、IRRSの報告書の中でも良好事例として取り上げられた一方で、これら審査で確認された安全の水準について、事業者に維持向上を促すような運用面での安全確保の状況を確認する検査制度の見直しや、国際的にテロ行為への対応が求められる中での放射性同位元素に係るセキュリティー対策などに注力すべきこと等の指摘がなされたところでございます。
 本法律案は、重大事故の教訓とその後の安全規制の対応状況とIAEAからの勧告等を踏まえ、原子力利用における安全対策を強化するため、原子力事業者等における検査制度の見直し、放射性同位元素の防護措置の義務化、放射線審議会の機能強化等の措置を講ずるものでございます。

○塩川委員 いっぱいしゃべっていただいたのでよくわからないんですが、要するに、原発事故の教訓というのはどういう形で反映されているのかという部分が聞きたいんですよ。
 IRRSの話はわかりますよ。それも当然リンクをしている話だけれども、原発事故について、新規制基準をつくりました、これはわかります。それを実際に実施してもらう事業者に頑張ってもらうというのが今回の検査制度の見直しだというふうに受けとめたんですが、要は、そもそも、運転段階の事業者の検査のあり方そのものについて、原発事故の教訓から学んで今回入れたような措置というのはないのか、そこはどうなんですか。

○山田政府参考人 まず、今回、福島の事故の後に重大事故対策を導入してございます。これがしっかりと実現できているかどうかについては今回の検査制度の中で見ていくということで、福島の事故の教訓を踏まえた安全対策がしっかりと実現するということを担保する上での検査制度であるというふうに考えてございます。
 それから、一F事故の教訓としては、やはり国際水準に沿った規制をするということと、それから、安全性を継続的に向上していかなければいけないという、国際的な一般的な常識になっているものをしっかりと我が国の原子力安全の中に取り入れていくということが必要であろうというふうに考えてございます。
 今回の検査制度の見直しにおきましては、原子力事業者が継続的に安全性の向上に取り組んでいくということを促進するという観点からの検査制度にもなっているというふうに考えてございます。

○塩川委員 検査制度を国際水準にと言うんですが、事業者の方が国際水準かということが問われているわけでありますけれども、規制機関のあり方の方も当然そうであります。
 この間、そういう点でいえば、事業者が行ったデータ改ざんや隠蔽を踏まえた検査制度の見直しが行われてきたわけですけれども、本来であれば、やはり一つ一つの事故、トラブル、その隠蔽等々について対応した措置がこの間とられてきたわけです。それがどういう経緯で設けられ、今回の法改正でどうなったのかについて確認をしたいんです。
 溶接安全管理審査というのがありますけれども、これはどういう経緯で設けられて、今回の法改正ではどうなっているんでしょうか。

○山田政府参考人 溶接安全管理審査制度に関しましては、溶接に関する記録に改ざんがあったということが告発により発覚したことを踏まえて、事業者に対して、溶接に係る検査の実施と記録の義務を法定化して、その実施体制について規制機関が監視をしていく、そういう制度を設けたものでございます。
 今回の検査制度の見直しの中では、この審査、検査も含めまして、原子力規制検査ということで一本化をして、事業者の取り組みを総合的に監視をするという制度にしたものでございます。

○塩川委員 日立製作所が建設をした沸騰水型原発の溶接部分の熱処理データの改ざんということを踏まえた措置だったわけでありました。
 では次に、保安検査というのはどういうもので、どういう経緯で設けられたのか、今回の法改正でどうなるのかについてお聞きします。

○山田政府参考人 保安検査につきましては、ジェー・シー・オーで発生をいたしました臨界事故が、国から認可を受けた保安規定に基づく品質管理の方法などが組織的に守られていなかったことが原因であったことから、保安規定の遵守状況を規制機関によって確認をするということを法定化したものでございます。
 この保安検査につきましても、先ほど申し上げました原子力規制検査の中に一本化をいたしまして実施をしていくという形にしてございます。

○塩川委員 一九九九年のジェー・シー・オーの臨界事故を踏まえて保安検査を導入したという経緯であります。
 次に、定期安全管理審査というのはどういうものでしょうか。どういう経緯で設けられたのか、今回の法改正でどうなるのか。

○山田政府参考人 溶接安全管理審査に関しましては、東京電力が運用する原子力発電所で用いられているシュラウドのひび割れ等に関して、自主点検記録及び規制検査等のデータに改ざんがあったことが告発により発覚したことを踏まえて、事業者に対して、施設の技術基準適合性維持に係る検査の実施と記録の義務を法定化して、この検査の実施体制について規制機関が監視をしていくという形で構築されたものでございます。
 この制度につきましても、新しい原子力規制検査の中に統一をしてございます。

○塩川委員 これが、二〇〇二年に明らかになった東電の原発のシュラウドの検査データの改ざん、格納容器漏えい率検査時のデータ偽装、隠蔽を踏まえて導入されたものであります。
 このように、現行の検査制度に当たっては、過去のこういう事故、トラブル、隠蔽というのを踏まえて対応してきたところがあります。今回、こういう措置が、条文が削除をされる、原子力規制検査に溶け込んでいるというのですか、一体になったということなんでしょうか。
 私は、本当の意味でこの過去の事故や隠蔽の教訓を生かすことになるのかなと率直に思うんですが、その辺はどのように受けとめておられますか。

○田中政府特別補佐人 先生御指摘のように、隠蔽、トラブル隠しというようなことについては、これは極めて重大な本質的な問題で、先ほども申し上げましたけれども、事業者の中での安全文化がきちっと育っていない、安全を確保するのが事業者の第一義的責任であるという、そこのところがまだ十分に定着していないというところがあります。
 そういったことについてはいろいろな形で、私ども、今、月に一回ぐらい社長さんを呼んで、いろいろそういった点についての議論も行っておりますけれども、IAEAではやはりトップマネジメントというのは非常にそういう意味で重要だと言われておりますので、そういうことを踏まえて、今私ども取り組んでいるわけですけれども、それだけで十分ではないということは明らかです。
 それで、今回の検査制度、今までのどこを反省しているのかということですが、まさにそこの、今まではチェックシート方式で、その場の規制を、保安検査なり、検査を通ればいいということであったけれども、その内容まで踏み込んで、私どもは、良好事例あるいは改善すべき事項ということを指摘し、それを公表していくということであります。事業者にとってみれば、国民にそういったふだんの取り組みというのが公表されるということは非常に重いと私は思っております。
 ですから、そういった点で、みずからそういった改善すべき事項をだんだん少なくしていくというふうな取り組みは当然していくものだと思いますし、それをしなければ、私どももそうですけれども、国民からも厳しい判断がされるんだろうというふうに思っています。
 ですから、そういったことで、新しい検査制度は、単に事業者に任せるのではなくて、事業者の責任というのを非常に重くしているという点で、ぜひ御理解いただければと思います。

○塩川委員 安全確保が事業者の第一義的責任だ、それが、トップだけではなくてどう徹底をされるのかということで、事業者の責任を重く見ているのが今度の改正だという趣旨のお話がありました。でも、本当に過去のこういった事故、トラブル、その隠蔽、こういうことが継続をしている中での今回の検査制度の見直しですから、私は、やはり、そこが抜け出ていないような状況の中で、第一義的に事業者に責任を負わせるという検査制度の見直しについての強い懸念を持っているところであり、福島原発事故の教訓に照らしても、過去の経緯に照らしても、逆行するものではないのかということを言わざるを得ません。
 それで、では、実際の規制機関が行う原子力規制検査の中身について何点か確認的にお聞きします。
 法案の参考資料では、事業者の全ての保安活動を常時監視する、今回の法改正により、国はいつでもどこでも事業者の検査をチェックできるようになると説明していますが、これはどこでそんなふうに規定されているでしょうか。

○山田政府参考人 答弁をさせていただきます前に、先ほど、定期安全管理検査を溶接安全管理審査と言い間違えましたので、訂正させていただきます。
 今回の検査制度で常時監視ができるということに関してでございますけれども、現在の保安検査は、例えば、事業者は原子力規制委員会が定期に行う検査を受けなければならないことが法令上明定をされているということで、現在の運用では、時期を限定しまして、四半期に一度の検査という形になってございます。
 保安検査の実施期間外には、事業者の協力を得る形で、保安検査官が施設内を巡視するなどして、事業者の保安活動の実施状況を確認しておりますけれども、法的権限に基づく検査ではないということで、IRRSの報告書の中でも指摘をいただいているところでございます。
 このため、今回の法改正では、保安検査や施設定期検査などの対象を含めて、規制機関が確認すべき事項を網羅的に統合した原子力規制検査という形にしてございまして、これまでの保安検査のように時期を法定、限定せずに、事業者の活動を包括的に監視していくという形にしているところでございます。事前の通告なく事業者の活動に立ち会って実施状況を確認するということで、常時監視をしているというふうに申し上げているところでございます。

○塩川委員 これまでも保安調査ということでやってはいたけれども、それが法定化されていませんねという指摘を踏まえて今回に盛り込んだという話ですから、何か特段新しくというよりは、もちろん現行やっているものをきちっと法定化し、事業者に対してきちっと監督する仕組みづくりということを位置づけているということだろうと思います。
 もう一つ、法案説明資料で、国が検査結果を評定し、これを次の検査に反映する、評価が良好な事業者の検査負担は軽減するなど、実績主義の徹底を図るとありますけれども、これは具体的にどんなふうに行うものなんでしょうか。

○山田政府参考人 原子力規制検査は、第六十一条の二の二第二項において、過去の評定の結果その他の事情を勘案して行うものという形にしてございます。
 保安活動の実施状況が良好な事業者に対する検査は、他の事業者に対する検査に比べて立ち会い確認の量を減らすなどによって、規制機関に対応するための負担を減らすといったようなことを考えているところでございます。
 なお、こうして合理化された分については、規制側としては、より重点的に検査をすべき対象に振り向けていくということで、検査のめり張りをつけていきたいというふうに考えてございます。

○塩川委員 めり張りということで、いいところはそういう形で検査の程度を変える、頻度を下げると。悪いところはどういうふうにするんですか。

○山田政府参考人 先ほどROPという原子炉監視のプロセスというのがございましたけれども、アメリカでも事業者の実績の低いところについては検査の物量をふやすといったような対応をしているところでございますので、その状況もよく勉強した上で、我々としても見習うところは見習って、検査についてめり張りをつけていきたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 こういった対応で、今回の法案によって、これまで繰り返されてきた事業者の事故、トラブルの隠蔽というのは一掃されるでしょうか。

○山田政府参考人 事業者のいろいろな不適合の状況が一掃するかということについては必ずしも、事業者が全て一〇〇%できるかというところにかかってくると思いますので、この検査制度が万能であるというふうには考えてございませんけれども、少なくとも我々の監視の強度が高くなりますので、削減をしていく、削減する傾向が続いていくという形で検査制度を運用してまいりたいというふうに考えてございます。

○塩川委員 その辺、本当に妥当かどうかということの検証も必要だと思います。
 ここで、評定によって検査の程度を変えていく、悪いところについてはROPなどを参考に追加検査などの監視を強めるという話が出てくるわけですけれども、そもそも、事故やトラブルの隠蔽を図った事業者に対して、今回の法改正でペナルティーというのは強化されるんですか。ペナルティーが重くなるんでしょうか。

○山田政府参考人 今回の検査制度の中では、使用前事業者検査、定期事業者検査の結果については、事業者にその結果を記録して保存するという義務づけをかけてございます。
 この検査結果について、記録をしなかったり虚偽の記録をしたり、もしくは記録を保存しなかった場合については新しく罰則を設けてございまして、「一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」ということにしてございます。

○塩川委員 原子力事業者は、それこそ原発一日の稼働で数十億円の話ですから、百万円という話というのは余り、率直に言って、罰則として重きがあるのかということを言わざるを得ません。
 事業者の安全確保に対する一義的責任を明確化するということですが、その事業者が事故、トラブルの隠蔽を図った際のペナルティーの強化は本当に図られるのか。
 一月十八日、原子力規制委員会が開催しました、主要原子力設置者の原子力部門の責任者との意見交換会があります。その場で更田委員が、事業者そのものに悪意があった場合、データの偽造であるとか捏造であるとか隠蔽であるとかいうことがあったときには、新しい制度のもとでは非常に厳しく臨むべきだと述べているんですけれども、そういう中身ではないんですか。

○山田政府参考人 先ほどお答えさせていただきましたのは、罰則を強化したところということで御説明をさせていただきましたけれども、従来の制度の中で、保安上適切な措置がとられていない場合については、原子炉の運転の停止、使用の停止といったような措置もとれることになってございますので、そちらの方の措置を適用することによって、事業者に対しては適切に対応することを求めていくということになってございます。

○塩川委員 個別の事案を見てということでしょうから、今回の制度を通じてペナルティーが強化をされたということが言えるのかということは、そういう状況にないということも言わざるを得ません。
 今回の見直しというのが、検査を事業者に委ねるという形で、それに対するペナルティーの強化策も措置が十分にされないという点では、私は、事故防止のための国の責任を投げ捨てるものとなりかねないということを申し上げ、きょうの質問は終わります。