国会質問

<第193通常国会 2017年03月17日 環境委員会 5号>




○塩川委員 私は、日本共産党を代表して、原子力利用における安全対策の強化のための核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 反対の第一の理由は、本法案にある原子炉等規制法の改定が、原子力発電所等の検査を事業者任せにし、事故防止のための国の責任を後退させるものだからです。
 改定では、施設の安全確保に対する事業者の一義的責任を明確化するという理由で、事業者みずからが検査を行うよう義務づけ、国は事業者が行った検査をチェックし、その結果に基づいて総合的な評定を行うというものです。
 福島第一原発事故の根底にあるのは、重大事故に至れば炉心溶融が起きることを知っていながら、その対策を事業者任せにしてきたことです。国会事故調査委員会報告書も、規制当局が事業者のとりことなり、規制の先送りや事業者の自主対応を許し、国がみずからの責任を回避してきたことが事故の背景にあると指摘しました。しかし、審議の中で、福島原発事故の教訓がどのように反映されているか、明快な答弁はありませんでした。
 また、国が直接検査を実施してきた背景には、東京電力に代表される検査記録隠しやデータ偽造など、事業者が、これまで検査時の不正行為を頻繁に引き起こしてきたことがあります。国は、その都度、検査の方法や対象や体制を改めてきました。不正が発覚し、是正措置をしても、法令違反は繰り返されています。事業者任せの検査の見直しは、福島原発事故の教訓をないがしろにし、過去の検査制度の改定の経緯にも逆行するもので、認められません。
 第二は、放射性廃棄物の埋設処分規制が不十分だからです。
 今回の法案では、低レベル放射性廃棄物の浅地中処分、トレンチ処分とピット処分についての見直しは全くなく、公衆への被曝防止や環境汚染防止の対策として問題があります。浅地中処分に対して、遮断型構造による施設建設、強化を図るといった規制を加えない改正は不十分です。
 第三に、放射性物質であるRI防護は当然です。
 本改定では、物的防護に加え、二〇〇五年に原子炉等の核物質防護の強化で原子炉等規制法に導入された国家公安委員会との関係が持ち込まれています。警察による人権侵害、大学、研究機関の自治への介入が懸念されます。研究活動の自主、民主、公開の原則にも反するものであり、認められません。
 最後に、本法案は、原子炉等規制法、放射線障害防止法、放射線基準法の三法を束ねた法案となっています。本来、法案ごとの慎重な審査を要するものであり、このような法案の提出のあり方を改め、委員会における慎重審議を行うことを申し添えて、反対の討論を終わります。