国会質問

<第193通常国会 2017年03月17日 環境委員会 5号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、それぞれの御専門のお立場から貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。
 私は、今回の法案の審議で、火曜の質疑の際に、やはり原子力事業者が過去さまざまな事故やトラブル隠しを行っていた、いわば隠蔽体質と申し上げてきましたけれども、その重大性について指摘をしたところであります。それに関連して皆さんにもお尋ねしたいと思っております。
 最初に、関村参考人にお尋ねいたしますが、お話の中で、この検査制度について、事業者が第一義的な責任を持つというのが国際的な常識だ、その際、罰則ではなく安全文化の構築が重要だというお話をされました。
 こういう点で、日本の原子力事業者、例えば東電をとっても、私も経済産業委員会で議論したことがありますが、二〇〇二年のシュラウドのひび割れデータの改ざん問題もありましたし、密閉性試験についての捏造の話もありました。また、二〇〇七年には、原発検査データの改ざんですとか一F三号機での臨界事故隠しが判明をしたということもありました。柏崎刈羽周辺の活断層についての隠蔽の話もありましたし、私は、それが大きく言って福島の原発事故につながったと考えております。
 それ以降も、では、隠蔽がなくなったかというと、広瀬社長自身も隠蔽だと言わざるを得ないというようなメルトダウンの話もありましたし、免震重要棟の耐震性不足、柏崎刈羽において三年近くも公表しなかった。私は、これは、率直に言って一貫しているんじゃないのかという強い危惧を持っているわけですね。
 そういったときに、どうなんでしょう、国際的にもこれは常識なんでしょうか。つまり、日本が非常に、事業者の姿勢というのが、世界を知りませんけれども、日本が特異なのか、世界的にもこういうのがまかり通っているのか、その点はどうお考えでしょうか。

○関村参考人 これも非常に重要な点の御指摘、本当にありがとうございます。
 先ほど私、安全文化というものをどのように醸成していくかという観点から、具体的なことについては申し上げませんでしたが、マネジメントシステムの話は申し上げました。それから、御指摘のように、トップマネジメントが重要である、これは言をまたないわけです。
 しかし、例えば、WANOという機関がございますが、そこが、健全な安全文化の醸成という観点で幾つか指針を挙げているところでは、マネジメントシステムをつくる、トップマネジメントをする、この前提としての、個々の、あらゆる人材、あらゆる方々が、自分自身が原子力の安全にかかわるのであれば、しっかりと説明をしていくという態度をとれるようにする、もし疑問があったら、それは質問をしていく、クエスチョニングアティチュードという言葉を使っています。
 このように、個の、個人の力量の充実、個人が研さんをしていく仕組みというものが、マネジメントシステムであったり、トップマネジメントの中でさらにいい原子力安全を充実させていく仕組みをつくっていく、この前提であるということがうたわれております。
 一方で、日本の、ある意味では和を重んじる組織文化というものが、それに対して個々の方々が、例えば質問をするということをためらうような文化がありはしないかということについては、日本の、あるいはアジアの特徴としてこれから検討を加えていく必要があると思いますし、そういう意味では、今回の、例えば検査制度の中でも、個別に御担当の方々に対して規制庁の検査官が質問を加えていく、こういうような仕組みがうまく導入されていけば、このような安全文化を醸成するという仕組みの、一つ欠けているのではないかというふうに考えられるような部分が補われていく、こういうことも考えなくてはいけないというふうに思っております。

○塩川委員 和を重んじるというのはいい意味では結構なんですけれども、それが実際の職場の中において隠蔽体質につながるようなことになれば極めて重大であって、そういう点で、そこに日本的な特徴があるとすれば、何らか、国際標準でいきましょうと言うにとどまらない、日本独自の対策も当然求められてくるんだと。
 ですから、IAEAのIRRSのさまざまな評価について、これに適合的にという趣旨もわかるわけですけれども、しかし、日本における過去のトラブル隠し、事故隠しを踏まえた独自の対応策というのが求められているんじゃないのかという点で、私は、この法案も考える必要があるなと思っております。
 続いて、伴参考人にお尋ねいたします。
 お話の中で、原子力事業者の不正、トラブルは今も変わっていない、コスト意識が強まる電力自由化のもとで規制強化こそ必要ではないのかというお話については、私も同意をするところであります。
 そこで、具体的なこの法案についてのお考えで、規制機関の定期検査を維持すべきだという理由について、その意味するところをもう一度御確認をしたいと思っております。

○伴参考人 その理由は二つあると思います。
 一つは、結局、そのことによって事業者との緊張というものが出てきますし、そのことによって、客観的な検査における安全の、安全はどういうものかという定義もあるんですが、とりあえず規制に合格しているということの客観的な証左になっていくということから必要であるということが一点です。
 二つ目は、これまでの幾つかの質問にありましたが、結局、現場での対応、現場での、実際物を見て、そして実際に検査をして、規制庁の検査官が能力を高めていかないと、ペーパー上のチェックと、もちろん、それで疑問があれば現場に行くことは可能のようになっていますけれども、基本的にペーパー上のチェックだけでは規制庁の検査官の能力の向上にはつながらない。したがって、どうしてもやはり現場でチェックをするということを残しておかないと、どちらの面からも、つまり、検査の客観性の面、それから規制庁の検査官の能力の向上という面からも必要であるというふうに考える次第です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 定期検査の問題では、これは、一F事故以前、ずっと電力会社の定検の期間の短縮競争というのが問題になりまして、そういうのがあの美浜の背景なんかにも問われたところだったわけですね。
 そういう意味でも、今回の見直しが結果として定期検査期間に規制機関が検査をするということを除くというふうになる場合に、定検の短縮に資するような、率直に言って、安全対策に対して、それを担保することに逆行するようなことになるとしたら極めて重大だということも言わざるを得ないと思っております。その点でもコスト優先というところがまさに問われてくるところだと思うんですが、そのことは指摘をしたいと思います。
 もう一点、伴参考人にお聞きしたいのが、IRRSの勧告との関係で、規制庁はフリーアクセス、いつでもどこでも事業者の検査をチェックできるという説明をしているわけですけれども、先ほど伴参考人のお話ですと、IRRS勧告の事前通告なしの検査というのと規制庁が言っている今回の措置が違うのじゃないかという趣旨として受けとめたんですが、その点についてもう少しお話、説明いただけないでしょうか。

○伴参考人 参考資料の中には、既にフリーアクセスとか、エスコートなしのアクセスができるような体制になっているというふうな説明があります。実は私も、その実態、一体どれぐらいの頻度でそれを行ったのかとか、抜き打ち検査もやったというようなことも書いてありますが、それがいつどういうふうに行われたのかという具体的なことがわかりませんので、これについてはどう考えたらいいのか、どう受けとめたらいいのかというのは、正直なところ、わからないです。
 しかし、このIRRSの報告書が昨年の一月にまとめられて日本に提出されているということから考えますと、それ以前においては、そういう制度が十分ではなかったということが推定されます。そうすると、この一年の間にそういった制度が充実してきたのかということを考えると、実際問題として、動いている原子炉は今は三基しかないわけですから、本当にそのことが書かれているように実践されてきているというふうにはとても思えない状態です。
 したがって、フリーアクセスとか書いてありますけれども、それは、IAEAが勧告に言う事前通告なしの制度とはちょっと違う内容を規制庁は言っているのではないかというふうに考えざるを得ないということです。そして、今の原子炉等規制法を見ましても、そのことについて、つまり、事前通告なしの検査については一言も言及されていない。規則の中にも、全部は調べ切れていないんですが、書かれていなかったというふうに思います。
 その意味から、それを明記することが必要だというふうに考える次第です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、二ツ川参考人にお尋ねいたします。
 この間の原子力事業者のトラブル隠し、事故隠しの話があるんですが、アイソトープに係る事業者においてこういった事故、トラブル隠しを起こしたような事例というのがあるのか、その辺について御存じのところで教えていただけないでしょうか。

○二ツ川参考人 RIの面だけに限りますと、特別何か重大な事故があって、それを届け出なかったというようなことを聞いてはおりません。
 今の障害防止法上からいいますと、事故また危険時の措置、そういうところがありますと、速やかに原子力規制庁への届け出ということがございまして、それが原子力規制庁の中でまたホームページで公開するという仕組みができておりますので、今、私どもが認識している限りでは、そのような事例があったというふうには認識しておりません。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、小倉参考人にお尋ねいたします。
 原子力の技術者としての現場のお話の貴重な御意見、本当にありがとうございます。
 そこで、やはり原子力事業者の事故隠し、トラブル隠し、隠蔽体質の問題について、この点で、小倉参考人がみずからプラントの設計、建設にかかわってきた体験を通じて、具体的にそういった原子力事業者の事故隠し、トラブル隠しに接したことですとか、あるいは、職場の中でそういうことが問題となったとか、その辺の体験等がありましたらお聞かせ願えないでしょうか。

○小倉参考人 大変微妙な御質問なんですよね。
 というのは、私が働いていたときは、あくまで東電さんがお客さんで、私は注文を受ける側でありましたから、答えにくいんです。でも、なかったわけじゃない。それはありました。そうですね、何例かあるんですけれども、どうしましょうね。恐らく本邦初公開みたいになっちゃうんですね。
 例えば、再循環ポンプというのがありますね。再循環ポンプで原子炉の炉心冷却水の流量を調節するわけですよ。それはどういうふうにやるかというと、ほとんどの場合が、再循環ポンプの回転数を変動させて、それで流量を調節する。では、再循環ポンプの回転数はどうやって変動するかといったら、MGセット、モーターと発電機を組み合わせたMGセットというのがあるんですね。だから、福島第一も第二も、それから柏崎も、そのほか全部同じなんです。そのときに、要するに、一定回転数で回っているモーターで発電機の方の回転数を変えるために、そこに油を使った流体継ぎ手を持ってきて、そしてその回転数を流体継ぎ手によって変える。そうすると、発電機側の回転数が変わって、周波数が変わって、再循環ポンプの回転数が変わっていくということです。
 ところが、流体継ぎ手というのは、非常に、要するに、物すごい枚数の薄い羽根が向き合って油の中で回っているものだから、すごい、繰り返し荷重を受けるわけですよ。羽根が疲労破壊したんですね。それが何かといったら、要するに、羽根を溶接しているところが弱くて、結局それをどうしたかといったら、溶接じゃない、削り出しの一体物の羽根にするというようなことで、その改善というのは間違ってはいないと思うんですけれども、それは結局公表しない形でそういう処置をしていますね。そういう例があります。よろしいですか、この程度で。

○塩川委員 ありがとうございます。本当に現場の話で。
 実際、ですから、本当に現場の中で、本来は、安全文化というのであれば、こういうことについて公表して、水平展開をするとか、当然求められる。それこそ全体の安全を確保することにつながる。そういうのを行わないというところに、逆に言えば、さまざまなトラブル隠し、隠蔽体質を通じての重大事故につながるというところは、やはり厳しく戒めとしなければならないと思っております。
 それで、小倉参考人がお話の中で、安全という場合に、それは立場によって違うという話がありました、事業者の立場、あるいは規制機関の立場。しかし、やはり国民の立場ということが重要ではないかというお話がございましたが、その点で、この間、小倉さんとしてお考えのこと、お話しされているようなことがありましたら、御紹介をいただけないでしょうか。

○小倉参考人 お答えします。
 塩川さんがおっしゃったように、行政府が電力の政策を進める上で、原子力というものをある程度位置づけて、それで安定な電力源を確保する、そういう方針で進んでいる。電力会社はまた株式会社として電力事業で経営を成り立たせる。そして、国民はその電力を使って安全な生活をする。ですから、三者の立場が違うわけですよね。立場が違う、その間で使われる安全という言葉がはっきりと統一されていない。そして、立場が違うがために、例えば電力会社は、もちろん安全を無視はしないけれども、経営の目標としては、半期ですか、あるいは一年間を通して安定した利益を上げる、そういう目標を持っているわけです。
 問題なのは、いろいろな価値がある、安全が大事だというのと、それから、利益を上げるという価値と矛盾するんですね。コストを下げるために、例えばさっきから出ていました定検を短縮する、そうすると、原発をとめている時間が少なくなって稼働率が上がって利益が上がる、そういう株式会社としての動機があるわけですよ。だけれども、それによって安全性が低下されたんじゃ困っちゃうのが国民の立場ですよね。
 では、政府はどういう立場に立つのか、そういうことですよね。どっちに。政府としてもなかなかそれは難しいと思うんですね。電力源を確保するためには電力会社の経営がよくなってほしいし、そして、国民も事故で被害があっちゃ困る。
 だから、非常に割り切りにくい。政府の立場は本当に割り切りにくいんだと思います、私も同情したいんだけれども。しかし、あの三・一一の事故をとにかくもう経験しちゃったわけですね。そして、国民がもう大被害をこうむっているわけですよ。直接、避難する人たちばかりではなくて、放射能で、今まで全然含有放射能が少なかったのに、今では百ベクレルですか、一キログラム百ベクレルの放射能を含むものが流通していって、合格したといっても安心できないというような不安感を持って暮らさなきゃならない。
 だから、そういう状況の中で、政府は、行政は、やはり国民の方にもう少し寄った、そういう政治をやっていただく。そういう考え方から、定検における検査もどういうふうにやったらいいかというふうに考えていただきたいと切に思います。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。