国会質問

<第193通常国会 2017年03月17日 環境委員会 5号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、まず、今回の法改正における放射性廃棄物の埋設施設の規制の見直しについてお尋ねをいたします。
 この放射性廃棄物の埋設施設の規制の見直しの内容について、まず、ポイントの説明をお願いしたいと思います。

○田中政府特別補佐人 原子炉の廃止に際して発生する、炉内等廃棄物と称しておりますけれども、その処分が安全に行われるための規制の整備として、炉内等廃棄物の埋設地について、まず、坑道の埋め戻しに関する規制を整備するとともに、炉内廃棄物及び高レベル放射性廃棄物の埋設地について掘削を制限することを求めています。
 坑道の埋め戻しについては、地下の埋設地への坑道が適切に埋め戻されることの確認をより確実に行うため、坑道の閉鎖に係る計画の認可や、認可された計画に沿って工程ごとに原子力規制委員会の確認を受ける義務等を課すものでございます。
 また、掘削の制限については、人為事象による埋設地の擾乱の可能性を低減するため、事業が開始してから、規制期間が終了した以降においても、一般の人々に対して、埋設地を含む一定の範囲の掘削を制限するものでございます。

○塩川委員 お配りしました資料にありますように、数万年の長期間にわたって管理が必要な高レベル放射性廃棄物の地層処分と、炉内構造物などや制御棒等を埋設する中深度処分について、区域指定や掘削禁止等の規制制度を設けようとしているものです。
 きょうお聞きしたいのは、そこに入っていない部分で、この図の上の方でいえばピット処分、トレンチ処分に当たるところ、いわゆるL2、L3に相当する部分のところですけれども、操業中の、青森県六ケ所村の、日本原燃、低レベル放射性廃棄物埋設センターのピット処分地や、日本原電の東海原発放射性廃棄物埋設地、トレンチ処分地ですけれども、こういった浅地中処分の見直しは行いません。
 このような浅地中処分について、今回見直しをしない理由は何なのかについてお答えください。

○田中政府特別補佐人 埋設地の坑道埋め戻しに関する規制については、坑道というのは、地下の埋設地と地上をつなぐためのトンネルを意味しております。地表または地表付近につくられる浅地中処分には坑道が存在しないということで、適用しておりません。
 埋設地を含む一定の範囲の掘削を制限する制度については、浅地中処分の対象となる廃棄物の放射能は、事業者の規制が終了するまでに十分に減衰すると考えられていることから、適用しておりません。

○塩川委員 そういう御説明ですが、文科省の方にお尋ねしますが、浅地中処分に相当する、原子力研究開発機構の動力試験炉、JPDR解体に伴う放射性廃棄物の処分に関してですけれども、このJPDR解体に伴う放射性廃棄物が、内訳がどんなふうになっているのかが、L1、L2、L3相当ということでわかりますでしょうか。そのうち、埋設廃棄物の内容と、埋設施設の概要について説明をしてください。

○板倉政府参考人 お答え申し上げます。
 JPDRは、昭和三十八年に我が国初の原子力発電に成功した動力試験炉でございまして、昭和五十一年に運転を終了するまで、原子力発電技術の構築や技術者の養成等に重要な役割を果たしました。その後、昭和五十六年度から平成七年度まで、解体技術の開発と実地試験を行いました。その結果、発生した解体廃棄物量は全体で約二万四千四百トンでありまして、そのうち約一五%が放射性廃棄物、残りの約八五%が非放射性廃棄物でございます。
 発生した放射性廃棄物約三千七百七十トンのうち、放射能レベルが極めて低いコンクリート廃棄物約千六百七十トンにつきましては、廃棄物埋設実地試験としてトレンチ処分を行っております。また、残りの約二千百トンの金属等の放射性廃棄物につきましては、ドラム缶や遮蔽容器等に収納して保管施設で管理しております。
 また、その保管施設で管理している放射性廃棄物につきましては、L1相当の廃棄物は、金属廃棄物が四トンでございます。L2相当の廃棄物は、金属廃棄物が三十七トン、コンクリート廃棄物が六十トン、付随廃棄物が四十トン。L3相当の廃棄物は、金属廃棄物が千百四十八トン、コンクリート廃棄物が四百十六トン、付随廃棄物は三百九十七トンとなってございます。

○塩川委員 JPDRの埋設施設、廃棄物埋設実地試験に使用されているということですけれども、そういうことでよろしいんでしょうか。

○板倉政府参考人 廃棄物埋設実地試験として用いてございます。

○塩川委員 そこでは、いわゆる埋めているのがL3相当のコンクリートということで、L3相当の金属廃棄物を入れていないということなんですが、その理由は何なんでしょうか。

○板倉政府参考人 お答え申し上げます。
 埋設を行った当時は、まだ法整備をしている段階でございまして、この段階におきまして、規制側でコンクリートのみという判断をしたということでございます。
 現在は法制化されておりまして、申請すれば基準値以下の金属も埋設できるということになってございます。

○塩川委員 規制側の何か基準があったんですかね。

○板倉政府参考人 失礼いたしました。
 当時、政令に基づきましてこのような基準で埋設を行っております。

○塩川委員 そういう点で、JPDRが、L3相当の埋設施設といいますか、廃棄物埋設実地試験地ということですけれども、金属廃棄物については埋めていない。その後、法規制ができて、現状ではL3相当の金属廃棄物も含めて処分の対象ということだということであります。
 そこで、あわせて、規制庁の方に、東海原発の廃止措置についての状況を、まず簡単に説明していただけますか。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 御質問のありました日本原子力発電株式会社東海発電所につきましては、平成十八年六月三十日に原子炉等規制法に基づく廃止措置の計画の認可を受けて、現在、廃止措置を実施しているところでございます。
 廃止措置の進捗状況ですが、現時点では、放射能レベルの高い原子炉領域以外の解体撤去を進めておりまして、平成三十一年度から原子炉領域の解体撤去に着手する計画と聞いております。
 解体に伴って発生する放射性固体廃棄物でございますけれども、そちらにつきましては、放射能レベルに応じて分別管理しておりまして、廃止措置期間終了までに廃棄事業者の廃棄施設に廃棄することとしております。
 このうち、放射性レベルの極めて低いいわゆるL3、低レベル放射性廃棄物につきましては、発生量は約一万二千三百トンと記載されております。
 以上でございます。

○塩川委員 L3についてですけれども、東海原発のL3廃棄物埋設施設計画というのはどのようなものでしょうか。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 御質問のありました、東海発電所で発生した放射性廃棄物のうち放射能レベルの極めて低い廃棄物につきましては、東海発電所の隣接地であります東海第二発電所の敷地内に埋設処分、我々トレンチ処分と呼んでおりますけれども、トレンチ処分される予定でございまして、その事業につきましては、平成二十七年の七月十六日に、日本原子力発電株式会社から、東海低レベル放射性廃棄物埋設事業所の第二種廃棄物埋設事業許可申請が行われたところでございます。
 当該施設は、金属、コンクリート殻、コンクリートブロック等について、合計約一万六千トンを容器に収納またはこん包した状態で埋設、管理することとしております。我々は現在、原子力規制委員会として、同申請について審査中であるところでございます。

○塩川委員 このトレンチ処分というのが、いわゆる素掘り埋設と言われるように、地下水よりも上のところだということですけれども、何らかコンクリートの擁壁とかを設けるのではなく、直接、土質、土壌と接するような格好での処分形式というふうに聞いていますが、そういうことでよろしいですか。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 現在、個別の案件については審査中でございますので、お答えはちょっと今用意しておりませんけれども、いずれにせよ、我々としては、そうした設備が、周辺住民等の安全を確保するために、埋設した放射性廃棄物による人への被曝線量が一定の水準を超えないということを審査で確認したいと考えております。

○塩川委員 そもそも日本原電の方は、いわゆる素掘りということでコンクリート擁壁をつくらない形で申請をしているんですよね。その点、もう一回。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 先ほど御説明しましたように、素掘り、トレンチ処分をするということで申請を受けているところでございます。

○塩川委員 トレンチ処分というのは素掘りということです。
 文科省の方にお聞きしますが、JPDRの関係なんですけれども、日本原電が、L3の廃棄物埋設施設、トレンチ処分の計画について説明している資料の中では、L3廃棄物は既に埋設処理した実績があります、JPDRの解体実地試験においてL3廃棄物の埋設が実際に行われていますとありますけれども、実績と言うんですけれども、現状は実地試験中なんじゃないんですか。

○板倉政府参考人 お答え申し上げます。
 現在は実地試験中でございます。

○塩川委員 そうしますと、この原電の説明というのが、あたかも、JPDRのL3の廃棄物埋設施設というのが既に終了していて、それを踏まえた実績だ、そういう実績があるから大丈夫ですよという趣旨の資料になるわけですよね。これはまずいんじゃないかと思うんですけれども。
 この点はやはり、埋設処理して、いわゆる安全とされるような実績という形になっていないんですから、こういう誤解を与える記述については改めるべく事業者を指導する必要があるんじゃないでしょうか。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 トレンチ処分につきましては、我々は、平成二十五年に策定しました原子力規制委員会の基準に基づきまして、周辺住民等の安全を確保するか否か、そういう点から審査しているところでございます。
 規制当局としましては、事業者がどのような説明をするかということについてコメントする立場ではありません。

○塩川委員 いや、規制庁として、この廃棄物埋設実地試験については、これは規制の対象として監督する立場なんですよね。ですから、JPDRの廃棄物埋設実地試験について、現段階というのは、その試験は終了しているという判断なんですか。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 試験が終了か否かということは、ちょっと規制当局からコメントはできませんけれども、規制の観点からいいますと、JPDRにつきましては、いわゆる覆土、土をもう一度かけまして、その後の保全段階に入っております。その保全段階についてはまだ規制の対象でございますので、原子力規制委員会として規制を行っているところでございます。

○塩川委員 試験中というのは文科省が言っていましたので、継続中。そういう点で、規制庁的には保全段階だ、規制委員会の管理下にあるという点では、要するに、安全です、オーケーですという立場に立つのか立たないのか。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 原子力規制委員会としましては、我々は安全か否かということよりも、我々が決めました規制基準に基づいた基準を満たしているか、そういう観点から検査等を行っているところでございまして、その観点からは、我々は問題ないと考えております。
 安全という言葉になりますと、皆様主観的な印象を持ちますので、この場ではちょっと使うのは差し控えさせていただきます。

○塩川委員 規制委員会の管理下にあるということですので、そういう点でも、この事業者の説明というのは誤解を招くものということは指摘をせざるを得ません。こういうことで住民の信頼を得ることができるのかということは指摘をしたい。
 そこで、規制委員長に伺いますけれども、こういう素掘り埋設であるトレンチ処分を行うL3廃棄物埋設施設に対して、やはり近隣の水田への影響ですとか土壌の汚染ですとか海洋への汚染など、住民の不安の声があるわけです。こういうのについて、例えばトレンチ処分ではなくピット処分にするような、より安全のサイドに立った対策をとるということというのは考えませんか。

○田中政府特別補佐人 廃棄物の種類、レベルによってそういう判断をさせていただいていまして、L3の廃棄物というのは極めて放射能レベルの低いものであるということで、トレンチ処分が可能という判断をさせていただいておりますので、それをピットにしなければいけないとかということかどうかは、放射能のレベルによって判断すべきものと思います。
 もちろん、処分地についての問題というのはありますので、御指摘のように、地下水の問題とか、地下水を利用されているのかどうかとかいろいろなこともありますので、そういった点について全て考慮した上で、仮にトレンチ処分するとしても、その立地についてはきちっと判断するということになります。
 ちなみに、日本原電が今やろうとしている、多分、東海村、自治体でいろいろ議論されていると思いますけれども、あそこは海岸のところで、陸から海側に地下水が流れていて、トレンチ処分地の下の方を地下水が流れているというふうに私は承知しておるんですけれども、その点も含めて、きちっと判断していきたいと思います。

○塩川委員 水は浸透しますので、それが、地下水の流れそのものを全て確認できているわけではないわけで、その表層の部分が海側だとしても、さらに地下水の流れに行った場合に、そのすぐ北側には水田地帯もあるわけですよね。そういったところへの懸念がないのか、そういう住民の皆さんの不安の声というのは当然出てくるわけであります。
 そういったときにも、やはりJPDRの例も挙げて、実績だとかと言っていますが、実地試験中であるわけですし、まだわからないことも多いわけですから、何か起こっても対応できるように、コンクリート擁壁で外的環境と遮断した施設をつくるなど必要なコストをかけるべきじゃないかと思うんですが、そういうふうな立場での規制措置はお考えになりませんか。

○青木政府参考人 お答えいたします。
 先ほどの繰り返しになりますけれども、我々はやはり、我々の決めた規制基準に基づいて、周辺の方々に影響を与えないということをきちんと証明してもらうことが大事だと思っています。
 そういうことで、具体的には、例示がありました地下水の利用によるシナリオ、そういったものも含めて、規制期間が終了すると申しますか覆土した後の期間も含めて、そういった被曝線量が一定の水準を超えないということをきちんと確認していくのが規制当局の役目でございます。
 もちろん、そういうことを満たさないのであれば我々は許可を与えない、そういうことでございます。

○塩川委員 東海村の村議会でも議論が行われておりまして、昨年十一月には、このL3廃棄物埋設計画についての参考人への意見聴取などが行われておりました。その際には、原子力の廃止措置、放射性廃棄物の処理処分を専門としている研究者の方もいらっしゃったわけですが、その議論の中では、ピットがいいのかトレンチがいいのか、放射性廃棄物の廃止措置は利益を生まない、安全だ安全だといって過度の対策をとることは疑問に思う、コストだけで判断するとそのお金を別のところにもっと有効に使えることもあり得るのではないか、そういう趣旨の発言があったところです。
 利益を生まない廃棄物の処理にはお金をかけないという意味と受け取れるわけですけれども、規制委員会がそういう立場に立っているということではありませんね。

○田中政府特別補佐人 繰り返しになりますけれども、私どもは、コストがかかるからということではなくて、あくまでも安全上の観点から評価させていただいております。

○塩川委員 その点でも必要な安全対策を講じるという形で、このトレンチ処分についての、ピット処分に相当するような措置を行う、こういうことこそ必要だということを申し上げておくものであります。
 東海原発は廃止措置に入っておりますが、東海第二原発の再稼働をめぐる、あるいは四十年を超える時期にも来ております、三十九年ということですから運転の延長の話というのも事業者サイドでは当然視野に入っている。そういう中で、東海第二原発の避難計画についてもさまざまな心配の声があるところです。
 内閣府の原子力防災の担当にお聞きしますが、東海第二原発における茨城県の広域避難計画というのはどのようなものでしょうか。

○平井政府参考人 お答えいたします。
 茨城県が策定した原子力災害に備えた茨城県広域避難計画は、東海第二発電所からおおむね三十キロ圏内の十四市町村、約九十六万人を対象としております。
 具体的な避難先としては、県内の三十市町村及び茨城県外とされております。

○塩川委員 資料の二枚目に、茨城県が作成をしました原子力災害に備えた茨城県広域避難計画の避難先地域の地図があります。東海第二発電所から破線で描かれた円の部分が三十キロ圏で、この内側に十四市町村、九十六万人の方がお住まいであります。ですから、UPZ、この三十キロ圏に相当する人口というのは全ての原発の中で一番多いという地域になるわけであります。そういう点でも、実際に避難できるのかという声は、あの三・一一のときから多くの住民の皆さんが懸念を訴えているところであります。
 そこで、十四市町村の避難計画の策定状況はどのようになっているのか、なかなか進んでいないと聞いていますが、その理由は何なのかについて御説明ください。

○平井政府参考人 お答えいたします。
 東海第二地域については、災害対策基本法等に基づく地域防災計画はひたちなか市を除いて策定されているものの、避難計画は茨城県内十四市町村全てにおいて策定されておりません。
 現在、各市町村の避難計画の策定に向け、東海第二地域原子力防災協議会の枠組みのもと、関係自治体等と一体となって検討を積み重ねているところでございます。
 現在策定されている状況ではありませんが、国と一緒になって策定に向けて今努力しているところでございます。

○塩川委員 これらの地図を見ていただいて、このように、茨城県内では三十キロ圏内の市町村の避難先というのを、県内の他の市町村と相談しながら受け入れの体制をつくるということでやっているわけで、例えば東海村の場合には、南の方にありますつくばみらい市、守谷市、取手市、こういう地域への避難計画になるわけです。
 もちろん県内ではおさまりませんで、九十六万人の住民の方のうち、県外が五十二万人にも上るわけですね。五県に及ぶ百自治体相当のところに避難をということが県の想定ではあるんですが、県内もいろいろと課題があるわけですけれども、県外避難のこういう具体化の状況、それは実際なかなか進んでいないわけですけれども、その課題というのはどのように把握をしておられますか。

○平井政府参考人 お答えします。
 県外避難については、現在、避難先として、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県と協議を進めているところでございます。
 県外避難先の確保に向けて、具体的な避難施設の確保や避難者の受け入れのための必要となる準備など、さまざまな課題がございます。国が前面に立って、茨城県と受け入れ先の自治体との調整や必要となる物資等の確保など、強力に一緒になって推進しているところでございます。

○塩川委員 実際には、こういう原発に伴うようなさまざまな手続等について、県外の自治体、原発もないわけですから、なかなか認識が及ばないという点での御苦労も大変多いということも聞いているところです。
 そこで、実際の避難ということになりますと、特に入所施設の入所者の方の避難というのが困難だということが常々言われております。福島第一原発の事故においても、入所者の方の痛ましい事例なども取り上げられているところであります。
 こういった入所施設の入所者の方の避難計画の検討状況と課題について御説明ください。

○平井政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、福島の事故の教訓といたしまして、病院の入院患者さん等の要支援者の健康リスクを高めるような避難が実施されたことなどから、国会事故調査報告書あるいは政府事故調査報告書等によって、その点が福島の教訓として挙げられているところでございます。
 そのため、新たな原子力災害対策指針に基づく避難計画においては、こうした教訓を生かして、早期の段階、全面緊急事態に至る前からPAZ内の要配慮者の避難を開始すること、その際には十分なケアができる施設を避難先とし、移動手段も要配慮者の方の体の状況に応じたものとすること等としております。
 また、避難によって健康リスクがかえって高まるような方につきましては、安全な搬送の準備が整うまで、放射線防護対策を講じた施設に屋内退避をしていただくこととしております。
 非常に人口が多い地域でございますので、この辺のところを、関係自治体、関係県と一緒になりながら、国が前面に立って支援してまいりたいと思っております。

○塩川委員 避難先の確保の必要性の話と、一時的な屋内退避という選択肢もという話でしたけれども、実際に現場の声としてお聞きするのが、例えば、これは東京新聞が紹介をしている例ですが、高齢者百八十人が入所をする常陸東海園というところが東海第二原発からわずか三キロのところにあるそうです。
 東日本大震災で特養ホームのスプリンクラーが壊れ、一棟が水浸しになる。停電でエレベーターが動かず、歩けない入所者を職員が一人一人抱えて階段を移動した。停電と断水が続く中で、何とか三日間を乗り切った。入所者は、百四歳の三人を最高に、九十歳以上が三分の一を占めている。寝たきりの人は乗用車なら一人しか乗せられない。東海第二原発で福島と同じような事故が起きれば全員の避難は不可能だ、しかし、逃げる順番を決めることはできない、こういう声があるわけです。
 こういうのに本当に対応できるような避難計画になるのかということなんですが、改めて、どうですか。

○平井政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、この東海第二の地域については、現在、詳細な避難計画を含めた緊急時対応を取りまとめているところでございますが、既に内閣府と、ほかの地域では、例えば伊方でありますとか、玄海でありますとか、泊でありますとか、現在五カ所で緊急時対応を取りまとめております。そこにおきましては、それぞれの地域で要配慮者の方がございまして、その方一人一人がどのように対応したらよいかということを細部まで詰めまして、いざとなったときに、緊急時には行動を起こしてもらうようにしております。
 この東海第二の地域におきましても、そのような緊急時の対応について、一人一人の要配慮者まで配慮した形で作成していくこととしております。国が前面となって支援をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○塩川委員 実際にそういうのが本当にできるのかというのはいろいろな施設で出ているわけです。
 例えば、原子力研究開発機構、旧動燃がある場所のすぐ隣にありますある病院の場合は、一病棟にベッドが六十床あって、二棟あるという場所です。ただ、百二十床が重症心身障害児の施設で、では、その際にどうするのか。実際にすぐ避難というのも、本当に体調を崩す場合もありますから、一時的に屋内退避という場合に、二つの病棟のうちの一つの方をシェルター化するという形、そこに全員を移す。ですから、二棟ある入所者の方を一棟に入ってもらうという作業そのものが大変な困難を伴うわけですよね。仮に屋内退避でシェルター化をしたところに入ったとしても、それこそ目の前が東海第二原発のところですから、では避難しましょうかといったときに、それが本当にできるのかというのは切実な声になっているわけです。
 ですから、みずから動くことも困難で、食べることも困難で、たんを取ることも困難な、そういう入所者の方々が、本当に全介護が必要な方々の移動には、一人の入所者に二人、三人の介助者が必要なんですよ。ですから、膨大ないわば介助者の方も現地にとどまるということを想定する。こういう計画になるのでいいのかということが問われてくるのではないでしょうか。
 私は、その点でもこういった現状について本当に考慮しているのかと思うんですけれども、こういう具体的な話というのは聞いていますよね。こういう具体的な話に対して、こうやればできますという説明ができるんですか。

○平井政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、他地域で緊急時対応を既に取りまとめられたところにつきましては、一つ一つの施設につきまして、一人一人の方がどのような形で屋内退避あるいは避難できるか、詳細に検討しております。
 今後、現在この茨城・東海第二地域につきましてもそのような形で詳細な計画をつくるとともに、もちろん、つくっただけではなかなか動くかどうかというのがわかりません、それで、訓練を通じて本当にそれがきちっと機能するかどうかをチェックしながら、さらによい計画をつくっていく、そういう形で進めてまいりたいと思っております。

○塩川委員 本当にそれができるのか。
 実際に今茨城県がつくっている計画そのものは、原発事故だけを想定した単独災害想定なわけです。ですから、実際にはその原発事故が津波や地震などと一体に起こるという複合災害となる可能性があるわけで、そういう複合災害となった場合の避難計画が本当につくれるのかという話になってくるわけです。
 茨城県も東日本大震災で大きな被害をこうむりました。津波の被害もありました。液状化でも大変な被害をこうむった地域で、そういう方々の避難所というのも大きく確保する必要があったわけですよね。そういったときに、例えば海沿いの方の地域などでも液状化の地域がたくさんあったわけですから、ではそういうところに原発近くから避難、行けるかといったら、実際には避難所がもういっぱいとかいう話になってくるわけですよ。
 ですから、複合災害を想定したことについて、いつまでにどんなふうにできる、そういう見通しとかというのはわかるんですか。

○平井政府参考人 お答えいたします。
 原子力災害対策指針に基づく避難計画では、複数の避難経路を設定しており、また、自然災害等により使用できない場合、代替経路の設定、道路等の管理者による復旧作業、警察、自衛隊等の実動組織による支援など、複合災害にも備えた対応を検討しております。
 また、地震により家屋が倒壊したり、相次ぐ余震の発生により家屋による屋内退避が困難であるような場合には、自治体により設定される近隣の避難所等に屋内退避をすることを検討しております。
 現在、東海第二地域の避難計画策定においては、内閣府が設置しております地域原子力防災協議会のもと、関係省庁とも連携し、複合災害時の対応を含めた避難計画の策定、充実化を行っております。

○塩川委員 そもそもそれが実効性あるものになるのかというのが問われているわけです。
 大臣にお尋ねいたします。
 原子力防災担当大臣として、今の現地における現状についてどのように受けとめておられたかをお聞きしたいんですが、先ほど紹介しました常陸東海園でも訴えておられるのが、全員避難は不可能だ、でも、逃げる順番を決めることはできないと。当然のことだと思います。そうしましたら、逃げられないんだったら再稼働を許してはいけない、行政は、逃げられない人がいることを前提に原発再稼働の是非を考えてほしい、このように訴えておられます。
 三十キロ圏、九十六万人が避難するという計画は本当に現実的なものなのか、そのことについての大臣の御認識を伺いたいと思います。

○山本(公)国務大臣 東海第二地域については、原子力災害対策重点区域内に先生御指摘のように約九十六万人、そのうちPAZ内でも約八万人と、非常に人口が多いことが特徴の一つでございまして、現在、国としては、特に県外避難先や移動手段の確保など、避難計画の策定、充実化に向け、東海第二地域原子力防災協議会のもと、地域の実情を熟知している関係自治体と一体となって検討を重ねているところでございます。
 また、原子力防災体制の整備に必要な資機材や放射線防護施設の整備などに対しても財政面で支援をしております。
 今後とも、国がしっかり関与しながら、関係自治体とともに地域の原子力防災体制の充実強化に取り組んでまいりたいと思っております。
 先生の御懸念の意味、よくわかります。私どもは、とにかく地域の実情を一番よく知っている方々と相談しながら避難計画というのはつくり上げていきたいというふうに思っております。

○塩川委員 ですから、現場の皆さんが本当に避難できるのかといったときに、こういった避難計画そのものが現実的とは言えないというのが率直な状況だということを指摘しなければいけません。
 こういった要配慮者への対応の問題もあるし、県外避難の困難さもあるし、もちろん複合災害を想定したような実際の具体的なやりとりというのは現時点でもできていないわけですから、私は、こういう避難計画が成り立たない、逃げられないのであれば、再稼働そのものをやるべきではない、東海第二原発の再稼働は行うな、廃炉こそ住民の声だということを申し上げて、質問を終わります。