国会質問

<第193通常国会 2017年03月31日 環境委員会 8号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 カルタヘナ法の改正案について質問をいたします。
 最初に、カルタヘナ法の議論をする前提となります名古屋・クアラルンプール補足議定書についてお尋ねをいたします。
 外務省にお聞きしますが、この補足議定書の前文に、この補足議定書の締約国は、環境と開発に関するリオ宣言の原則十五に規定する予防的な取り組み方法を再確認しとあるわけですが、この予防原則というのはどういうものかについて御説明をお願いします。

○森政府参考人 お答えいたします。
 環境保護の分野におけます予防原則ないしは予防的な取り組み方法と申しますのは、一般的には、環境に重大または回復不可能な損害のおそれがある場合に、完全な科学的証拠が欠如していることを対策を延期する理由とはすることなく、損害を未然に防止するための対策を講じるという考え方を指すものと認識しております。
 委員御指摘のように、名古屋・クアラルンプール補足議定書においても言及されておりますリオ宣言の原則十五と申しますのは、予防的な取り組み方法を、環境及び開発の問題に関する基本原則の一つとして定めております。
 具体的には、環境を保護するため、予防的な取り組み方法は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない、深刻な、あるいは不可逆的な被害が存在する場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならないとされております。

○塩川委員 損害を未然に防止するという基本原則として取り上げられているものであります。
 大臣にその予防原則について最初にまずお尋ねしたいんですけれども、そもそも、損害が生じないようにするためにも、生物多様性条約、それからカルタヘナ議定書、名古屋・クアラルンプール補足議定書を貫く原則でありますこの予防原則の重要性について、大臣からのお答えをいただきたいと思います。

○山本(公)国務大臣 十分なお答えができるかどうかわかりませんけれども、大変重要なことだというふうに認識をいたしております。

○塩川委員 その上で、外務省にお尋ねしますが、第一条の「目的」には、「この補足議定書は、改変された生物に関する責任及び救済の分野における国際的な規則及び手続を定めることにより、人の健康に対する危険も考慮しつつ、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に寄与することを目的とする。」とあります。
 この生物の多様性の保全とはどういうものをいうのか、保全の対象はどういうものか、この点についてお答えください。

○森政府参考人 お答えいたします。
 生物多様性の保全と申しますのは、地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全することを意味しております。そのために多様な個体、種及び生態系を保全することを指しております。

○塩川委員 そうしますと、そういう点では、多様な種等を保全するということでいいますと、いわば人を含めて全ての生物が対象となるということでよろしいですか。

○森政府参考人 議定書上の定義は地球上の多様な生物ということでございますので、生物としての人の多様性ということも含むものと解されます。

○塩川委員 あと、持続可能な利用という言葉が使われておりますけれども、これは農業も含み得るものと受けとめてよろしいんでしょうか。

○森政府参考人 生物多様性条約の第二条におきまして、持続可能な利用というのは、「生物の多様性の長期的な減少をもたらさない方法及び速度で生物の多様性の構成要素を利用し、もって、現在及び将来の世代の必要及び願望を満たすように生物の多様性の可能性を維持することをいう。」と定義されております。
 持続可能な利用という概念は、再生可能な資源の利用には一定の量的制限があるという観点から、開発や資源の利用とそれから環境の保全とを調和させるという意味で用いられておるものと認識しております。
 人類は、これまで、さまざまな生物を衣食住のために利用し、その恩恵を受けてきております。農業につきましてもさまざまな生物を利用して発展を遂げてきたことから、生物多様性の持続可能な利用は農業においても非常に重要であるというふうに認識しております。

○塩川委員 生物多様性の保全というのは、人も含めて地球上における生物の多様性をどう確保するのか。その際に、同時に、持続可能な利用ということで、開発に資するような場合についてもその保全と一体に行うという観点では農業も含み得る。そういう点でも、持続可能な利用というのがまさに人間の生活ともかかわって重要なものであることはこの補足議定書の観点として大変意義のあることだと受けとめております。
 外務省にもう一点お聞きしたいのが、補足議定書でも管理者という言葉が出てまいりますけれども、そこの中に幾つか具体の例示もあります。こういう管理者には種子の開発企業も含まれるのか、その点だけ確認します。

○森政府参考人 委員御指摘のとおり、名古屋・クアラルンプール補足議定書の第二条2の(c)という項目におきましては、管理者を「改変された生物を直接又は間接に管理する者」と定義されておりまして、その例として、改変された生物を市場取引に付した者、開発者、生産者、輸出者、輸入者、運送者等を挙げております。
 御指摘のございました種子開発企業というのが、ここで言う「改変された生物を直接又は間接に管理する者」という定義に該当する場合には、本補足議定書に言う管理者に含まれるものと解されると存じます。

○塩川委員 遺伝子組み換えの品種の種子を開発するような企業も含まれるということであります。
 そこで、環境省にお尋ねしますが、今、名古屋・クアラルンプール補足議定書の定義等々を確認してまいりましたけれども、カルタヘナ法上の位置づけがどうなっているかということですが、このカルタヘナ法における、生物多様性の確保とあるわけですけれども、この対象というのは何なのか、その点について御説明ください。

○亀澤政府参考人 お答えいたします。
 一般的に、生物の多様性とは、全ての生物の間の変異性をいい、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む概念であります。
 そういうことからいたしますと、外来種や農作物も、生物である限りにおいては生物多様性の一部ではありますけれども、一方で、農作物は、人が野生植物から改良を重ねてつくり出した植物であり、野生植物とは異なるものであることから、農作物への遺伝子組み換え生物による影響につきましては、カルタヘナ法に基づく生物多様性影響評価の対象とはしていないところであります。
 また、生物多様性基本法における外来種の位置づけといたしましては、生物に対する危機の一つとして外来種による生態系の攪乱を挙げているところでありまして、そういう意味におきましては、国内法であるカルタヘナ法により確保を図ることとされております生物多様性には、外来種や農作物までは含まれていないものというふうに認識をしております。

○塩川委員 農作物は入っていないということですけれども、外来種というのはどこまでが外来種なのかという話なんですよね。もちろん奈良時代から外来種というのは当然入ってきているわけですけれども、それは日本の生態系に溶け込むような、攪乱要素になっていないようなものもあり得るでしょうし、その場合の外来種というのはどういう線の引き方をしているのかということについて説明をお願いしたい。

○亀澤政府参考人 お答えいたします。
 明確な線引きがあるわけではございませんが、明治よりも少し前ぐらいに入ってきたもの、そういうものも含めまして外来種というふうに呼んでおります。

○塩川委員 明治。その線引きというのは、何でそこで線を引いているんですか。

○亀澤政府参考人 太古の昔とか奈良時代までさかのぼるのは現実的ではなかろうということで、明治以降であればある程度の歴史もわかっているということも受けまして、明治時代より少し前ぐらいまで含めまして外来種というような一般的な呼び方をしているというふうに認識をしております。

○塩川委員 明治以降の場合であっても、種によっては自分のふるさとの原風景にもなじんでいるような、ペンペン草の話じゃありませんけれども、そういったものも含めて、ある場合に、ちょっとその線引きがよくわからないんですけれども、もう一回。

○亀澤政府参考人 時代的なこともありますけれども、人の手によって持ち込まれたもの、そういうことがある程度文献等によりまして確認されているもの、そういうものを外来種というふうに呼ぶということかと思います。

○塩川委員 そうすると、それはさかのぼれるんじゃないですか。奈良、平安で持ち込みましたというのが確認できるものは外来種になっちゃうの。

○亀澤政府参考人 お答えします。
 そういう意味では、かなり古いものでも、文献をさかのぼって外国から持ち込まれたというような記録があるようなものであれば、外来種というふうに言えると思います。

○塩川委員 その辺が、それが実際に生物多様性の保全、確保に当たって差しさわりのあるようなものかどうかという線引きでいいのかというのは、何となくしっくりいかないんですけれども、どうですか。

○亀澤政府参考人 具体的に、外来種も含めまして、影響があるかどうかというのは、その種が外来種かどうかということも含めまして、専門家の意見も聞きながら判断をしてまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 今回の法案というのが、さらに損害に対する対応ということで回復措置を求めるということになっているわけです。ただ、そこの部分については、重要な種、地域ということで非常に限定されているということではあるんですけれども、カルタヘナ法そのものはそれなりに広く捉えているわけですから、本来、その立場でこの回復措置の部分についても扱うということが必要なんじゃないのかと思うんですけれども、そこはどうでしょうか。

○亀澤政府参考人 使用者等に回復措置まで求めるということは、それなりの負担を求めるということでもありますので、とにかく広くとればいいということでもないというふうに考えておりまして、ある程度限定された形で対象を考えることが必要だというふうに考えております。

○塩川委員 補足議定書を踏まえた回復措置の国内措置に取り組むというこの趣旨はわかりますし、まずはしっかり始めるということだと思うんですが、その範囲について非常に限定的だなというのは率直に思っているところですので、そのことを指摘しておくものです。
 次に、環境省に引き続きお聞きしますが、実際に野生植物と遺伝子組み換えの品種が交雑をしているような事例というのは確認をされているんでしょうか。

○亀澤政府参考人 お答えいたします。
 環境省では、平成十五年度から、主要な菜種輸入港周辺の主要輸送道路の橋梁やその付近の河川敷等におきまして、輸送中にこぼれ落ちた遺伝子組み換え西洋菜種、いわゆるGM菜種というものですが、そういうもの等の生育状況調査を継続的に行っております。
 これまでの調査では、こぼれ落ちた種子に由来するGM菜種と外来種である西洋菜種、もしくは同じく外来種である在来菜種との交雑が確認をされておりますが、それらの生育は主要輸送道路の橋梁や河川敷付近に限られており、生育範囲が拡大しているというような状況ではございません。
 また、これらの調査結果につきましては、専門家の意見も聴取し、生態系への影響は生じていないというふうに評価をいただいております。

○塩川委員 現行の環境省の実態調査の話というのは承知しているんですが、そういう調査の中で交雑をしている事例というのは紹介がありましたか。

○亀澤政府参考人 遺伝子組み換え西洋菜種、いわゆるGM菜種と日本国内に入っております外来種である西洋菜種、あるいは同じく、在来菜種という名前ではありますけれども外来種である在来菜種とGM菜種との交雑は確認をされておりますが、それらがどんどん生息、生育範囲を広げているというような状況ではありません。

○塩川委員 生息範囲を広げているわけではないという評価ですけれども、そういった交雑の事例というのも挙がっているわけです。
 そこで、次に、今、環境省としての遺伝子組み換え菜種の実態調査、紹介がありましたが、農水省としてこの遺伝子組み換え菜種の実態調査を行っているわけですが、その理由について説明してもらえますか。

○小川政府参考人 お答え申し上げます。
 農林水産省の行っております西洋菜種の生育実態調査でございますが、まず、日本で輸入等が承認されている遺伝子組み換え西洋菜種は、輸入された港湾から運搬される際のこぼれ落ちなどにより生育した場合でありましても、他の植物を駆逐して生育域を拡大することはないことなどから、国内の生物多様性への影響はないと評価をされているところでございます。
 農林水産省といたしましては、遺伝子組み換え農作物による日本の生物多様性への影響を懸念する声に応えつつ、承認した遺伝子組み換え西洋菜種により生物多様性への影響が生じないことを確認するため、西洋菜種の輸入港の周辺地域におきまして、その生育状況や近縁種との交雑の程度などを調査しているところでございます。

○塩川委員 生物多様性への影響がないことを確認するための調査ということですから、これ自身はカルタヘナ法に基づく実態調査ということでよろしいですか。

○小川政府参考人 この調査は、カルタヘナ法第何条というような形で実施しているものではございません。

○塩川委員 そうしたら、何を根拠に調査しているんですか。

○小川政府参考人 失礼いたしました。
 強権的な発動ではございませんが、カルタヘナ法上の三十一条、情報収集という形の一環で実施させていただいております。
 訂正させていただきます。申しわけありません。

○塩川委員 三十一条でいいのかな。

○小川政府参考人 たびたび大変申しわけありません。訂正させていただきます。
 カルタヘナ法の第三十四条、科学的知見の充実のための措置ということでございます。

○塩川委員 基本は研究といいますか、そういうスタンスでの調査ではあるんですよね。ただ、そういう三十四条を使いながらも、実際にどういう影響があるのか、生態系、生物多様性への影響がないことを確認するという趣旨での調査、これ自身がカルタヘナ法のスキームにのっとって行われているものだというふうに承知をしております。
 そういう中で、これは二〇〇四年ですけれども、農水省が日本植物油協会に発出した通知、「セイヨウナタネの輸入、運搬時等における留意点について」という通知があります。先ほど、種のこぼれ落ちということの話もありました。
 農水省が日本植物油協会に発出をしましたこの通知の趣旨と内容について、ポイントを説明していただけますか。

○小川政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘ありました平成十六年に発した文書でございますが、平成十六年八月に、農林水産省から日本植物油協会に対しまして「セイヨウナタネの輸入、運搬時等における留意点について」という文書を発出してございます。
 これは、カルタヘナ法の検討過程におきまして、農林水産省は、平成十四年度から十五年度にかけまして、輸入する遺伝子組み換え農作物の輸送過程でのこぼれ落ちを想定した生物多様性影響評価を行うことの必要性につきまして、これを確認するため、原材料用として輸入した西洋菜種の輸送過程でのこぼれ落ちの実態を調査したところでございます。
 この調査の結果、菜種陸揚げ地点周辺におきまして、原材料用として輸入された西洋菜種の生育が確認されましたところから、こぼれ落ちを可能な限り防止する観点から、陸揚げ時のこぼれ落ち防止や工場敷地内の清掃の励行などの措置の徹底を輸入者に周知していただくよう団体に通知したものでございます。
 なお、この調査は、平成十六年二月のカルタヘナ法施行の前に行われたものでございますが、通知文でも言及されておりますとおり、生育が確認された遺伝子組み換え西洋菜種は、農林水産分野等における組換え体の利用のための指針に基づきまして、カルタヘナ法同様、こぼれ落ち等により野外で生育する可能性も含めて安全性の確認を行っているものでございます。

○塩川委員 カルタヘナ法の施行の時期に合わせて、調査を踏まえてこういう通知を出したというんですけれども、この通知文を見ますと、「近年、国産セイヨウナタネについては、遺伝子組換えでないことを強調した生産・販売の動きが出てきている中で、万が一にでも環境中で生育した輸入由来の遺伝子組換えセイヨウナタネとの交雑が生じ、遺伝子組換えでないセイヨウナタネとして生産・流通している国産セイヨウナタネから遺伝子組換えセイヨウナタネ由来の核酸が検出された場合、生産・流通上の混乱を招く可能性がないとは言えない。」と。
 つまり、ある意味、国産西洋菜種ですというブランドで売ろうと思ったら、自然環境の中で交雑してしまって遺伝子組み換えが入ってしまったということになると、国産西洋菜種で遺伝子組み換えでないということを強調できなくなるということがあるから、運搬時にこぼれ落ちないようにしてねということになっていると承知しているんですけれども、そういうことでよろしいですよね。

○小川政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘ございましたとおり、通知文におきましては、「万が一にでも環境中で生育した輸入由来の遺伝子組換えセイヨウナタネとの交雑が生じ、遺伝子組換えでないセイヨウナタネとして生産・流通している国産セイヨウナタネから遺伝子組換えセイヨウナタネ由来の核酸が検出された場合、生産・流通上の混乱を招く可能性がないとは言えない。」ということで、こういった風評的なものを起こさせないといった観点からの表現というふうに認識しております。

○塩川委員 これは輸入、運搬時等における留意点ということになっているわけですが、カナダから多くは輸入されている遺伝子組み換え西洋菜種が環境中に逸出をする、これが生育するのを可能な限り防止するということで、陸揚げ時のこぼれ落ちの防止、運搬時におけるこぼれ落ちの防止、あと搾油工場敷地内の清掃の励行とか、よろしくお願いしたいということなんですけれども、今もこういう措置は生きているわけなんですか。

○小川政府参考人 この規定は、今も事業者の方たちにおいて取り組むようにお願いしているところでございます。

○塩川委員 その上で、ここにも書かれていますように、遺伝子組み換えでない国産西洋菜種を売りにしたいという話があった場合に、やはり交雑すると困るわけですから、それを防止する、交雑を防ぐ、そういう法制上の、それを担保するような法制度というのはあるんですか。

○小川政府参考人 お答え申し上げます。
 遺伝子組み換え農作物につきましては、今、カルタヘナ法で定めているとおり、使用規程を作成して、それに従って承認どおり使っていくということが一つ。それから、生産者の方としては、みずからの農業活動においてみずからの商品の品質を確保していくということでございまして、これを入れさせないための、国内において交雑をさせないための法的な拘束措置といったものは用意されていないと認識しております。

○塩川委員 拘束されるような措置は認識していないということですが、遺伝子組み換えでないものと遺伝子組み換えのものが交雑することを防ぐような法制度はないということでいいですね。

○小川政府参考人 お答え申し上げます。
 国内で生産している者に対して、そこに一切入れさせないというような法的な強制力あるいは拘束力を持った措置というものはないと認識しているところでございます。

○塩川委員 そういう点で、交雑を防ぐような対策や交雑による損害に対する対策というのは必要だと思います。
 それと、遺伝子組み換えの農作物との関係では、パパイヤの話があります。
 資料の一枚目にお配りしましたが、未承認の遺伝子組み換えパパイヤの生産、販売の問題がかつてありました。これは読売新聞、二〇一一年四月二十二日付ですが、見出しのように「遺伝子組み換えパパイア流通 未承認 年百トン 沖縄の果樹園四ヘクタール伐採へ」とあります。
 これはどのような事例だったのかについて、簡単に農水省から説明をお願いしたいと思います。

○小川政府参考人 お答え申し上げます。
 今委員から御指摘のあった新聞記事に係る事案について説明申し上げます。
 本事案は、端緒といたしましては、平成二十二年十二月、厚生労働省から、沖縄県内で流通するパパイヤの生果実及び苗を分析したところ、一部に未承認の遺伝子組み換え体が混入している疑いがあるとの情報が農林水産省に提供されました。
 この情報提供を受けまして、農林水産省は、科学的信頼性の高い検査法を諸外国に先駆けて確立いたしまして、次に検査体制を整備した後、平成二十三年二月から、カルタヘナ法第三十一条に基づき、輸入されるパパイヤ種子及び苗の水際での検査、さらに国内に流通するパパイヤ種子及び苗の検査を開始したところでございます。
 この検査の結果は、平成二十三年二月から八月にかけて検査を行ったところ、輸入され、国内で流通している全ての種子、これは十九品種二十九商品ございました、及び苗、これは四品種四商品ございましたが、これらを検査した結果、台湾から台農五号という名称で輸入をされ、沖縄を中心に販売された種子、この一品種一商品が我が国で未承認の遺伝子組み換え体であったことを確認いたしました。
 したがいまして、これ以外の種子、一品種除きますので十八品種、それから一商品除きますので二十八商品及び全ての苗、四品種四商品につきましては、遺伝子組み換え体でなかったことを確認いたしました。
 その後、カルタヘナ法の第三十条に基づき、台農五号の流通量あるいは流通経路を特定いたしまして、台農五号と特定されました八千本強、この記事にもございますが、約四ヘクタールの全てにつきまして、平成二十三年十二月までに伐採したところでございます。
 以上が事実関係でございます。

○塩川委員 今お話ありましたように、たまたま、厚労省が、ハワイから遺伝子組み換えのパパイヤが入る、その確認の手続をする関係で、パパイヤにおける遺伝子組み換えの検査ができるような仕組みをつくろうというので沖縄でそれを試しにやってみたら、ハワイから来るものとは別のものがわかったというので、さかのぼってみたら、台湾から来ましたという話です。
 ですから、農家の方は全然、遺伝子組み換えなんということは全く承知もしていない話でありまして、紛れ込んでいた結果、全体のパパイヤの生産の二割ぐらいのところがそういった遺伝子組み換えのパパイヤだった。いため物なんかに使うようなパパイヤですから、日ごろ食卓へ上っているようなものがそういうものだった。
 安全性は確認されていたという話はありますけれども、しかし、こういった未承認の遺伝子組み換えの品種が国内において生産、販売をされていた事例として、極めて重大だと思います。
 これは何でこんなことになったのか、原因究明はされたんでしょうか。

○小川政府参考人 お答え申し上げます。
 本件、先ほど事案について経過を説明申し上げましたとおり、台農五号の流通量なり流通経路ということを調べていきまして、台湾側と話し合ってきたところでございますけれども、台湾の大学におきまして開発をしておったわけです。これは未承認でございます。これがなぜ台湾から日本に出てきたのかということまでは、解明はできておりません。

○塩川委員 ですから、まだ原因がわからないままなんですよ。そうしますと、また繰り返されるんじゃないかという懸念も当然出てくるんですよね。
 そもそも、未承認の遺伝子組み換え生物を栽培し続けることはカルタヘナ法上違法だとなると思うんですが、その点、確認したいと思います。

○亀澤政府参考人 承認を得ずに栽培されているということであれば、違法になると思います。

○塩川委員 ですから、この沖縄における遺伝子組み換えのパパイヤが生産、流通、販売しているというのは、承認を得ていないわけですから、カルタヘナ法上は違法だということになります。
 先ほど農水省の答弁にも、こういった未承認の遺伝子組み換えパパイヤの生産、販売について、カルタヘナ法に基づいた、第三十一条の立入検査、また第三十条の流通経路特定のための報告徴収命令をかけたという話がありました。
 そうしますと、カルタヘナ法で規定をしている第十条の措置命令というのは出したんですか。その点はどうなっているんでしょうか。

○小川政府参考人 お答えいたします。
 先ほど、台農五号と特定された約四ヘクタール、八千本強の全てにつきまして伐採をしたと説明申し上げましたが、その際は、自主的な取り組みとして終了いたしましたので、カルタヘナ法第十条に基づく措置命令は発しておりません。その前段階で終了したということでございます。

○塩川委員 回収または使用中止を求めるような措置命令には至らず、行政指導の段階で自主回収を求める、対処したということであります。
 ただ、スキームとすれば、カルタヘナ法に基づく措置命令という形もかけられるということになるわけです。
 これまで確認しましたように、この未承認の遺伝子組み換えパパイヤの生産、販売の問題というのは、基本、カルタヘナ法のスキームにのっとって対処も行われているわけですけれども、その場合に、ただ、損害をこうむった農家の方がいらっしゃるんですよ。その方に対する補償はどうなのかということが問われてくるわけなんです。
 農家の方は何の責任もないわけで、種苗会社から提供された種で植えてみたらそれが遺伝子組み換えだったということで、未承認ですから、当然のことながら、これは除去せざるを得なくなるということで、資料の二枚目に、沖縄県とJAからの国への要望書があります。
 これは、左側に、段落的には四つ目のところに、今やりとりしました「この事案が確認されるまでの間、生産農家は遺伝子組換え体の品種とは知らずに当該パパイヤ品種による経済栽培を行っており、「カルタヘナ法」に基づく当該株の伐採処理によって、農業経営に深刻な影響を及ぼす状況となっております。 このため、「カルタヘナ法」に基づく当該株の伐採処理については、「植物防疫法」と同様、損失の補償を行う必要があります。」という前書きを踏まえて、右側に四ポツとして、「パパイヤの伐採に伴う生産者等への損失補償を行うこと」ということを国に求める内容です。
 農水省でしょうか、この要望、生産者への損失補償ということについては、農水省はどのように対応されたんですか。

○小川政府参考人 お答えします。
 委員御指摘のとおり、平成二十三年に沖縄県等から、未承認遺伝子組み換えパパイヤの伐採に伴う生産者への損失補償に関する、この内容、四番が含まれている要望書を受け取ってございます。
 この今議論の対象になっておりますパパイヤでございますが、未承認の遺伝子組み換えパパイヤでございまして、これを商業栽培して収穫された生果実、これは食品衛生法に基づく安全性の確認を受けておりません。したがいまして、売ることができませんので、このパパイヤあるいはその生果実につきましては、経済的価値はないものでございます。
 また、種子を購入した農家は、先ほど来委員御指摘のとおり、遺伝子組み換えでない種子と思って購入したものでございます。その意味では、未承認遺伝子組み換えパパイヤの種子を販売した種苗会社は、売買契約の本旨に従った履行を行わなかったことになります。このため、当該農家は、種苗会社に対して債務の履行など民事上の責任を追及できると認識しております。
 農林水産省といたしましては、沖縄県等と連携いたしまして、生産者団体と種苗会社との補償に関する話し合いが円滑に行われるよう、未承認遺伝子組み換えパパイヤに関する情報提供や助言を行ってきたところでございます。
 その後、この結果といたしまして、生産者団体と種苗会社との話し合いが行われまして、種苗会社から生産者団体に対しまして、パパイヤの生産を再開するための苗を供給することにつきまして合意があったと平成二十五年五月に関係者から報告を受けたところでございます。

○塩川委員 もちろん、遺伝子組み換えではないパパイヤの提供を求めたのに対してそうでないものということでいえば、種苗会社に民事上の責任を追及できるというスキームで、ただ、苗の提供なんですよね。もちろん、未承認の遺伝子組み換えのパパイヤだから売ることはできません、だから経済的価値がないと言われたらそれまでかもしれないけれども、農家の方にしてみれば大きな損害なわけですよ、その年の収入にもかかわるような。
 ですから、それなりの面積をやっている方にすれば、数百万円の本来入るべき利益が損なわれたという問題ですので、これはやはり、本来はしっかりと救済、補償するようなスキームというのが必要なんじゃないのか。もともと、カルタヘナ法上の未承認のこういう品種について起こっている事例ですから。
 私は、やはりカルタヘナ法のスキームにのっとった、農作物の被害に対する何らかの対応措置が必要なんじゃないかと思うんですが、この点について、環境省か農水省、答えてもらえますか。

○亀澤政府参考人 今お尋ねの件につきましては、補足議定書で言う金銭上の保証に係ることだというふうに認識をいたしておりますが、補足議定書の規定では、金銭上の保証について一定の考慮義務を規定するにとどまっており、締約国に対して、金銭上の保証について国内法令で定めること自体を義務づけるものとはなっておりません。
 また、カルタヘナ法は、生物多様性への影響に関する法律でございますけれども、御指摘のパパイヤの事例につきましても、生物多様性に対する影響は確認されていないということも含めまして、我が国では、遺伝子組み換え生物等の利用によって生物多様性影響が生じた事例はこれまで確認されておりませんし、また、万が一、生物多様性に損害を生じたと認められるような事案が発生した場合でも、実際に命ずる回復措置の内容としては、実行可能で合理的な内容のものとすることを想定しております。
 そういう中で、保証金とか積立金等の財政的な負担をあらかじめ事業者等に課す仕組みをとるということは適当でないというふうに考えております。

○塩川委員 補足議定書では、生物多様性の保全の大きな枠組みの中に農業も含まれているわけです。ですから、そういう農業に係る農作物の被害が現に起こっているわけですから、これについての補償措置というのも、この補足議定書のスキームにのっとって対応すべきだと考えております。
 この点では、今紹介されましたけれども、補足議定書の第十条に金銭上の保証という規定があるわけですね。こういったものについて、しかるべく国内措置を図る必要があるんじゃないのか。この点について、ぜひお答えください。

○亀澤政府参考人 お答え申し上げます。
 カルタヘナ法につきましては、遺伝子組み換え生物等の利用によりましての生物多様性への影響を評価するというような仕組みになっておりますが、我が国では、これまで遺伝子組み換え生物等の利用によって生物多様性影響が生じた事例が確認をされていないということ、また、万一そういう損害を生じた場合に命ずる回復措置の内容としても、事業者等が実行可能で合理的な範囲のものとすることを想定しているということもありまして、今回の改正法案の中には盛り込むことは考えておりません。

○塩川委員 補足議定書においては、やはり、基金をつくることやあるいは保険制度を設ける、そういうことを選択肢として締約国がやることはできますよということの規定があるわけです。それは国内措置ですから、各国の事情によって決めることなんだけれども、こういうパパイヤの例のように、もともと原因究明というのができないような段階で、しかし現に被害はあるという問題について、種苗会社に対応を求めるのも当然ですけれども、本来、やはり損害がきちんと補償されるようなスキームをつくる必要があるんじゃないのか。こういう工夫というのは大いに大事な点だと思っております。
 せっかくですから、比嘉政務官、この話も御存じでしょうか、一言思っているところを、いかがでしょうか。

○比嘉大臣政務官 沖縄では非常にパパイヤは食されるもので、これを守っていく、生物多様性を守っていくということで、カルタヘナ法の重要性がここで問われるところだと思います。
 おっしゃるような保証金というのも、沖縄県民の農家がこうむった被害でございますので、またいろいろと考えていく必要はあるのかなとは思います。

○塩川委員 最後に、大臣にお尋ねいたします。
 生物多様性の保全や農産物を含む持続可能な利用を保証するために、やはり損害が生じた場合の金銭上の保証措置というのを、補足議定書にのっとって、日本の国内措置としてぜひ検討すべきではないのか。この点について、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○山本(公)国務大臣 先ほど亀澤局長の方から御答弁申し上げたことだろうと思っております。その上で、御指摘の事例については、生物多様性に対する影響は確認をされておりませんので、補足議定書で言う金銭上の保証の対象には当たらないと今局長が言ったとおりでございます。
 私人間で生じた被害については、基本的には民事で解決すべき問題であろうと思っておりまして、環境省としては、カルタヘナ法に基づく承認または確認の手続等の確実な実施により、生物多様性に対する影響の防止を図ってまいりたいと思っております。
 その上で、御指摘のようなことがたびたび生じるようなことがあるならば、やはり考えていかなければいけない課題にはなってくるのかもしれません。

○塩川委員 わかりました。
 補足議定書には一定広い範囲での対象があるんですけれども、国内法の措置というのは非常に限定的だ、私はここは大いに見直すべきだということを申し上げ、大臣の答弁が前向きなものとなることを強く願って、質問を終わります。