国会質問

<第193通常国会 2017年04月11日 環境委員会 11号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
 きょうは、四人の参考人の皆さんから貴重な御意見をいただき、まことにありがとうございます。
 土壌汚染対策法の改正案についてですけれども、最初にお聞きしたいのが、今回の措置の中に、リスクに応じた規制の合理化ということで、規制緩和として臨海部の工業専用地域の特例の話がございます。
 四人の参考人の皆さんにそれぞれお伺いをしたいんですが、なかなか私もイメージが湧かないものですから、余り臨海部の工業専用地域に行く機会もありませんので。どんな現状になっていて、どんなニーズがあるからこういう特例として措置をしようと考えているのか。その辺について、臨海部ですと鉄鋼や石油や石油化学等々大きな事業所もあるわけですけれども、そういった際に今回の臨海部の工業専用地域の特例というのが、具体的な要望、ニーズがどんなものなのかについて、御存じのところをお聞かせいただけないでしょうか。

○大塚参考人 ありがとうございます。
 先ほどからこの資料のページ数が出てきたりしていますので、四十一ページとか四十二ページのあたりに書いてあるところでございますけれども、特に一つだけ申し上げておきますが、臨海部の工業専用地域におきましては、一般の人が地下水の飲用をするということが余りない、それから土壌の直接摂取の可能性もないということでございますけれども、そういう中で、臨海部の工業専用地域の中でちょっとした土地の改変、形質変更をすると、そのたびごとに十二条の形質変更要届出区域の事前届け出というのを都道府県に対してしなければいけないということで、非常に煩瑣だということが産業界の方からの要望として出てきているところでございます。その中には、もちろん、自然由来の汚染の問題も入ってくるということになりますけれども、非常に、実際には健康リスクというのはほとんど考えられないのに手続が極めて煩瑣であるということに対する御批判があるということでございまして、必ずしも経済界だけでなくて、千葉県の方からも要請があるということなので、そのように、合理的なものだというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○細見参考人 御質問は、多分、臨海部の工業専用地域において具体的にどういうニーズがあるのかというような御質問だと思いますが、形質変更に伴うニーズとしては、日々生産現場というのは、生産品を効率化したりあるいは保守点検だとかというのは常につきまとってくるかと思います。具体的にどういう工事が何回行われるかということ等につきましては、別途、環境省のもとで検討されています委員会で今調査中でございます。産業界の方から具体的にこういう形質変更が行われているというのが上がってくるかと思います。

○鈴木参考人 臨海部の工業専用地域のニーズということでお聞きしましたが、まず、臨海部であり、かつ工場は操業しているということで、土地は使われているということになります。また、一つの工場の規模は非常に広大な、大きな規模のものが多いということが臨海部の特徴であるかと思います。
 したがって、先ほどから、私の前の参考人の方からも出ましたように、操業中であることがゆえにどうしても土地の形質変更が生じるということで、その形質変更が生じる数が非常に多いということで、やはり要望が出てきているんだと思います。
 また、リスクの観点からいえば、臨海部ということでございますので、飲用リスクは少ない。また、地下水流動も海側に行きますので、その下流側での飲用の確率は少ないという観点からの要望だというふうに理解しております。

○畑参考人 豊洲の事例を見ましても、東京ガスの大きな工場があったわけですけれども、こういう臨海部の工業専用地域の大規模工場の場合には、やはり汚染されている場合が多いですので、汚染状況のチェックは、やはりできるだけ機会をふやしてやるべきだと思いますので、ここの規制緩和については僕は反対です。

○塩川委員 ありがとうございます。
 それと、今回の改正の中で、国等の、国や自治体が汚染土壌処理の事業を行う場合の特例がございます。
 先ほど鈴木参考人の資料を拝見しておりまして、鈴木参考人にお伺いしようと思うんですが、建設副産物の実態調査という中に、汚染土壌の対策方法、利用方法というのが資料の四ページ目にございます。対策の方法で遮水封じ込めが多いですとか、利用方法で道路盛り土が多いというお話がございました。
 これは、そうしますと、このように汚染土壌の対策方法、利用方法が現行こういうふうにあるということですけれども、今回の第二十七条の五の改正、国や自治体が汚染土壌処理の事業を行う場合の特例によって、こういう現状がどういうふうに変わるのか、その辺について御説明いただけないでしょうか。

○鈴木参考人 私がお示しした資料、図五、四ページでございますけれども、これは法の対象にはなっていない岩石について行われているということをまず御理解いただきたいと思います。また、このようなものは自然由来ということもありますので、そのためにこのような対応がなされているということでございます。
 では、汚染土壌の方についてどうなっていくかということでございますが、やはり土壌についても、自然由来であるということであれば、先ほども申し上げたとおり、適切に管理できる、つまり、土壌がどこに移動するか、私、土壌のトレーサビリティーという言葉を申し上げさせていただきましたが、その性質のある土壌がどこに行って、どのように管理されているかということが明確になっている限り、それはやはり可能であるというふうに考えておるところです。

○塩川委員 そうしますと、今回、こういった改正に向けた議論の中で、東京都からの要望なども出されているわけであります。鈴木参考人に伺いますが、例えば東京都などを念頭に置いた場合に、もちろん処理施設が非常に限られているということもあるわけなんですけれども、こういった今回の改正によって、東京都においては、どういうことがそもそもニーズとしてあって、どのような解決策が図られようとされるのか、その辺についてお聞きしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○鈴木参考人 ちょっと、十分なお答えになるかどうか心配なところはありますが、まず、東京都で自然由来特例区域と呼ばれているところは、私の記憶ですと、三カ所だけだと思います。非常に少ないという現状がございまして、東京都からまず自然由来の汚染土壌を移動させるという事例はまだ今後大きくは生じない可能性はあります。
 ただ、逆に、自然由来特例区域が非常に多い都道府県等もございます。そういうところで、例えば、ある自然由来特例区域のものから発生する土を別の特例区域に置くということ、これが先ほどの法の改正に出てきますが、管理された土地から管理された土地へ置く。ただ、そのときには、当然のことながら、性質の同じ、例えば溶出する特定有害物質が同じものとか、そういう条件をつけることによって余り変わらない状態での管理ができるだろうということが、今回の法案の中で考えられているものだというふうに理解しております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 畑参考人に伺います。
 先ほど意見陳述の中でも、公共事業との関係での汚染土壌の混入の問題のお話がございました。やはり、いろいろ懸念されるところがあると思います。
 現場に足を運んでおられて、公共事業に係るさまざまな汚染土壌の問題等々について御見識を伺わせていただければと思いますが、いかがでしょうか。

○畑参考人 今回、公共事業という意味では豊洲の事例が一番典型的なんですけれども、やはり、東京都の対応というか、調査の仕方についても、東京都がちゃんと、事業者というか、あそこは担当部局は中央卸売市場の方ですけれども、それに対して非常に甘い対応を環境局がしていた。トップは都知事なので。さっきありましたように、京都市の事例でも、ガス工場の跡地とわかっているのに地歴調査すらもさせずに届け出させて、汚染のおそれなしと判定でしょう。京都の卸売市場になったときには、もうガス工場はなくなっているんですよね。だから、有害物質の届け出もありませんし、卸売市場から有害物質は普通は余り出ませんので。
 だから、やはり、公共事業について、自治体の中での事業者と土対法を管理する環境部局との、チェックというか、それはかなり不十分じゃないかと思っています。
 そういう意味で、今回の東京都の例はその一番なれ合いの例だと思いますし、京都市についても非常にひどい話だと思っております。そういうところはやはり正していく必要があると思います。

○塩川委員 今お話も出ました東京都における築地市場の豊洲新市場への移転問題について、幾つか畑参考人に伺いたいと思います。
 先ほどの陳述の中にも、やはり揮発性のガスの懸念の話がございました。
 東京都の専門家会議は、地下の汚染は残るけれども地上は安全だということで安全宣言を出そうとしておりますけれども、やはり、地下の汚染物質でありますベンゼンやシアン、水銀などが揮発をして地上や建物内を空気汚染する可能性がある。
 実際には地下と地上は分離できないので、地上の安全も保証されないのではないのかと思うんですが、この点について畑参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○畑参考人 今回、豊洲の事例で明らかになったのは、やはり汚染土壌と汚染地下水はかなり残置、残されているということがはっきりしました。
 特に、地下水の汚染というか、もちろん土が汚染されているから地下水が汚染されるんですけれども、例の地下空洞は現在底は砂利でして、だから地下水が下から湧いてきて、今水を抜いていますけれども、その地下水から水銀とベンゼンは確実に揮発して、実際に基準を超えたりしているんですね。
 地下空洞だから地上一階以上と関係ないと思われますけれども、実際には地下空洞と一階の間には階段、通路とかがありまして、そういうところが開閉というか開いていると確実に一階、二階にもガスは行きますし、それから、もともと十年前の専門家会議でも検討されていたんですけれども、完璧に地下と地上を分けたとしても、コンクリートで被覆していても、コンクリートは基本的に時間がたてば割れていきますので、そういう割れ目とかすき間からやはりガスが出るので、だから、前の専門家会議でもベンゼンのレベッカ法による予測をやったんですね。
 今回の場合は確実に底が穴があいている状態というか、盛り土もないし、地下水が直接地下空気に接していて、その地下空気がやはり、今換気なんかしていますけれども、もともとはしていなかったですね、していなければ上の建物に行きますし。
 それと、やはり豊洲はもともと軟弱地盤というか、海底のヘドロを埋め立てていますので。築地は、江戸時代に、徳川時代に神田駿河台の山の土を運んで、いい土を使って埋めていますので、三・一一で築地は地震ではびくともしなかったです、建物はちょっと古いですけれども、土地は。しかし、豊洲は液状化しまして、百カ所以上、噴砂といって、砂が下から噴き出したんですね。だから、三十年以内に起こる首都直下型地震を考えると、やはり、地震で豊洲が液状化すれば、地下からそういう有害な、ベンゼン、シアンとか水銀とか、そういういろいろなガスが、そういう有害物質が地上に出てくる可能性があるので非常に危険だと思っております。
 だから、私は豊洲移転には反対で、やはり築地の再整備、それも安くできるという話が今出ていますので、そういうふうに考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 この豊洲移転の問題には、例えば本来都が措置すると言っていた盛り土が行われていなかった問題のように、今厳しい批判を浴びているわけですし、地下水のモニタリング調査も、都独自で行っている措置だとはいっても、一回目から八回目と九回目で大きな数値の差が出るということについても、非常に厳しい目が都民からも注がれているところであります。
 その点で私がやはり懸念をするのが、そもそもこういった地下水のモニタリング調査のデータの信頼性の問題というのがあるということを考えなければならない。というのも、今回の東京都における地下水のモニタリング調査の実際の実施主体というのが、工事を施工したゼネコン自身が行っている。それぞれ三つの街区にわたって、鹿島、清水、大成が請負の業者として建物の建設や土壌汚染対策工事を行っているわけですね。しかし、この地下水モニタリング調査をやっているのが誰かというと、工事を請け負った事業者が受注をしているんです。ですから、みずから土壌汚染対策工事をやっている事業者がモニタリング調査の仕事も受注するという点での、中立公正という観点からいっても非常に疑問が残るあり方というのが非常に納得のいかないところであるわけです。
 さらに言えば、鹿島の場合が、では、そういったパージや採水や分析をする、受注はもちろん鹿島がやるわけですけれども、実際の事業の方は事業者に任せるわけです。いわば指定分析機関となっているような事業者が受けるわけですが、そういった事業者が、いわば鹿島の子会社なんですよね。そうすると、私、中立公正なものと言えるのかなと率直に思うんですが、こういった調査の信頼性を損なうような実態があるということについて、何らかしっかりとしたルールが必要じゃないかなと思います。
 その点について、簡単で結構です、四人の参考人の皆さんに、一言ずつ御意見をいただきたいと思います。

○大塚参考人 ありがとうございます。
 調査についての信頼性で、調査の主体をどう考えるかという問題は、環境法のほかの部分についても時折出てくる問題ですので、全般的に考えていく必要があると思いますが、御指摘の点については、例えば子会社についてはちょっと控えるとかいう運用をしていくというようなことは、信頼性を高めるためには非常に重要だというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○細見参考人 まず、調査の信頼性に関しては、計量証明事業として、分析値が、誰がやっても、公定法に基づいて調査、分析をし、同じ値が出るというのが基本だというふうに思っています。
 その上で、では誰が請け負うのかということの多分御質問だというふうに思いますので、それに関しては、できるだけ第三者というかが望ましいとは思いますが、ちょっと私も、豊洲の件で、うろ覚えですけれども、全ての調査八回が、先ほど言われたゼネコンの方の受注だったかどうかというのは、たしか一回目から三回目ぐらいは違っていたかもしれないと思いますので、そういう意味では、いろいろ情報がちょっと今、確認してから私も発言しないといけないかなと思っています。
 ただ、私としては、土壌汚染対策法というのは、調査地点を決めて、その調査方法を誰がやってもほぼ同じようになるように、いろいろ調査、対策ガイドラインというのを決めて努力してきているわけです。ただ、完璧かと言われると、人間がやることですので、足りない点につきましては、また御指摘があって、それを改善していく努力を常に惜しまないでやっていくべきだというふうに思っています。
 ありがとうございます。

○鈴木参考人 今の御質問の豊洲について、詳細についてはちょっと細かく調べていないのでお答えし切れないところがございますが、基本的に、土壌汚染対策法に基づいた措置、対策が行われたという点で考えれば、対策はいわゆる建設業者さん等ができますが、最終的なモニタリングについては指定調査機関がしなければならないことになっているかと思いますので、そこでの立場は違うということで考えられるのだと思っております。
 以上です。

○畑参考人 この問題は、私も専門家会議をいろいろ傍聴したりしてチェックしていますけれども、一回目から三回目の地下水モニタリング調査は、日水コンという、ゼネコンではないですけれども、今回の豊洲の地下水管理システムを設計、施工した業者なんですよ。つまり関係業者ですね。地下水の管理システムということは、地下水から基準を超えるとやはり困るわけですよ、自分らの対策の失敗を認めることになりますから。
 それから、四回目から八回目は全てゼネコンですね。清水、鹿島、大成という、五、六、七街区ごとに建物も土壌汚染対策工事も地下水のモニタリングも全部同じ会社が随意契約で受けていた。一回目から八回目は全部随契なんですよ。
 九回目、初めて湘南分析センターという一般競争入札で選ばれた第三者的な分析会社が受けて、それが物すごい悪い結果が出たわけですね。
 僕はもともと、テレビ朝日でも言ったことがあるんですけれども、最高が、土壌で四万三千倍のベンゼン、地下水で一万倍のベンゼンが出た地域なんですよ。そんなところが幾ら対策をやったといったって、全部基準以下になるのは僕は考えられないです。
 僕はイタイイタイ病の発生源であった神岡鉱山の亜鉛電解工場の地下水汚染対策を二十年かけてやったんですけれども、まだいまだにきれいにならないので、ずっとくみ上げて処理しているんですよ。一回地下水が汚染されると、土以上に浄化は非常に難しいんです。そういうことを実感していますので、もともとおかしいと思っていたんですね。
 それで、一回目から八回目は、もちろんパージの問題もあったんですけれども、何か従来と傾向が違ったデータが出た場合とか基準を超えた場合は再採水をしています、そういうことを専門家会議の事務局が前回の三月の専門家会議ではっきり言ったんですよ。これで再採水という、これはよく、この水谷さんの資料にもありますけれども、二〇一〇年に環境省通知で、土壌汚染状況調査等の公正な実施に支障を及ぼすおそれのない体制の整備についてという通知を出しているんですね。
 これはやはり、京都市でも清掃工場のダイオキシンであったんですけれども、それから、滋賀県の高島市でもダイオキシンデータの改ざん、何回もはかって基準の低い値を採用する、基準を超えたものは全部飛ばす、そういうことを行政は結構やっているんですね。そういう悪い実績がありますので、そういう意味で信頼をしておりませんでした。
 今回、やはり、第十回目、九回目の再調査として、四者、クロスチェックをやったんですね、専門家会議で。東京都環境研とこの湘南分析センターとあと二者、専門家会議が指定する業者とか。そうすると、ほとんど値は変わらなくて、逆に七十九倍だったところが百倍にふえた、そういう結果が出て、九回目の調査が暫定値じゃなくて正式値に採用されたということなんですね。
 そういう経過があって、一回目から八回目のデータの方が信用できないというか、東京都が再採水を指導していたんです。業者にやらせていた。だから、ゼネコンと東京都、どちらも利害が一致するという立場だったんじゃないかと思っております。
 以上です。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。