国会質問

<第193通常国会 2017年04月25日 環境委員会 14号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、種の保存法の審議に当たりまして、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
 早速質問をさせていただきます。
 今回の法改正の中でも、国内希少野生動植物の種の指定に当たっての取り組みの改善方についての提案をされているわけですが、きょうの参考人質疑でも議論されておりますように、種の指定がされても、やはり生息域における保全をどう進めていくのかが肝心だと、保護増殖事業や生息地等保護区の設定が進まないような問題などについても、現状や対応策についてお二方からの御意見もいただいたところであります。
 こういう取り組みに当たりまして、今回の法改正で新たに盛り込まれました科学委員会、また提案募集制度、これがやはり積極的に役割を果たすのではないかなと思っております。
 ですから、種の指定とともに、保護増殖事業や生息地等保護区の指定等に当たって、科学委員会がその役割を果たすということや、また、提案募集制度を活用する、こういうことは重要だと思いますが、このことについてのお考えをそれぞれお二方にお聞かせいただきたいと思います。

○辻村参考人 ありがとうございます。
 そうですね、種の指定だけではなくて、生息地等保護区についても、それから保護増殖事業についても、提案制度が重要であるというふうに考えております。
 その一つの視点として、今の制度ですと、中環審に案が上がってくるまでの過程というのは全く透明性がないのでわからないんですね。要するに、ブラックボックスの中で議論されて、それが諮問されて答申されるというだけなんですが、今回それを科学委員会にするというのは、議論の過程が透明性を持つということが重要なんだろうと。
 要するに、この種を指定します、この場所を生息地等保護区にします、そこでどういう議論が行われ、どういう判断がされ、そういったものが我々国民がきちんと目にすることができる、間違った判断があれば、それは間違いであるということをきちっと言える場がつくられるという意味も含めて、科学委員会、提案制度というのは重要なので、それを今回もう少し広げるべきだというのが私どもの考え方になります。
 以上です。

○石井参考人 御質問ありがとうございます。
 科学委員会でございますけれども、基本的には必要なものであるというふうに考えております。
 ちょっと別の話をしますけれども、ゼニガタアザラシという希少種がおりまして、北海道において、定置網漁に入ってサケを食べてしまうということでかなり問題を起こしている。
 それで、私が漁民に呼ばれまして、少し説明してほしいと。環境省の立場というんですか、委員長をやっている立場で行かせていただいたんですけれども、そのときの主張は、環境省というのは勝手にレッド種を決めておいて、我々を守ってくれないという言い方をされたので、私は、違います、レッド種というのは、レッドリストを決めるときは純粋に科学的にやらせていただいています、絶滅危惧種というのは減少率が激しいということで選ばせていただいているんだ、それと、鳥獣保護管理法というのをつくって管理をしていくというのは違うと。だから、科学的につくるという選定の部分は、本当に極めて学問的、専門的にやる必要がある。
 ですから、科学委員会も、例えば、種の選定においては本当に専門家がやるべきだと私は思っているんですけれども、生息地等保護区の場合には、ある意味、自然保護団体というのはいろいろな土地の自然を守ってきている人たちですので、そちらの方には委員に入っていただくというふうな、例えば二つのパターンがあるのかなと、委員会としまして。科学委員会にも二種類あるというふうに私は認識しております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、象牙の取引の関係についてお尋ねいたします。
 今回の法改正で、象牙の事業者の管理強化の措置がとられておるわけですけれども、しかし、やはり国内取引の規制や登録制度の強化が問われているのではないかと思っております。
 先ほど、辻村参考人、その関連でお答えいただいたものですから、石井参考人に、こういった象牙の取引におきまして、国内取引規制、登録制度の強化が必要ではないのか。その際、国内市場閉鎖についての考え方についてもあわせてお聞きしたいと思っています。
 関連して、辻村参考人に、補足があるようでしたらお願いしたいと思っています。よろしくお願いします。

○石井参考人 御質問ありがとうございます。
 幾つかを混線させてはいけないと私は思っていまして、象牙の市場における不正行為というものと、それから、種の保存法の精神というのはアフリカゾウを守ることにあるのだと。だから、どちらを選択した方が施策としてアフリカゾウのためにいいんだというのを選ばなきゃいけないというふうに思うんですね。
 要するに、象牙というのが、アフリカゾウの生きた個体をとらなくてもいい状態で市場を出回っている状態が確保されているとすれば、アフリカゾウをとりに行く人はいなくなるということもあるので、その辺が重要かなというふうに考えています。
 ということで、観点としてはアフリカゾウを守るんだということに立ちますと、日本の市場を閉鎖するという考え方よりも、やはり適正に管理する、厳格に管理するというようなところが必要なのではないかなというふうに私は考えております。

○辻村参考人 先ほど大分熱い思いを述べさせていただいておりますので、私は、最も費用対効果がいいのはやはり市場を閉鎖するということだろうというふうには思っていますが、後半の部分はもう石井先生と一緒で、しっかりとコントロールできる状態をつくる。
 例えば、僕は持っていませんけれども、この印鑑は一体どこから来て、いつ来て、どこに渡ってきて、どう製造されてここに至ったのかということが全て透明であるという状態が全ての象牙の製品においてつくられるという状態をつくることが徹底管理だというふうに思っていますので、それが必要だというふうに思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、国際希少野生動植物種の流通管理強化の関連で、個体識別措置の導入の問題であります。
 今回の法改正では、国際希少野生動植物種の登録手続について、新たに登録の有効期限を設定するとともに、個体識別措置を導入する措置が行われることになります。
 そこで、個体識別措置につきましては、原則、やはり全てを対象に行うということではないのか。お二方にお聞きしたいと思いますけれども、この法案の中身の説明、環境省の説明紙などを見ると、可能かつ必要な種というふうに書いてあるわけですけれども、もちろん答申の中にもそれに相当する部分というのはあるわけですが、基本はやはり、本来の趣旨に立てば、こういう個体識別措置というのは全ての国際希少野生動植物種を対象に行う、それが基本ではないかと考えますが、この点についてのお考えをお聞かせください。

○石井参考人 御質問ありがとうございます。
 有効期限を設定するということがとても大切というふうに思っていまして、これを、証明書とその個体というものの一対一対応というのを厳しくやっていくということが必要だということは、私も全く同じです。
 ただ、そのためのコストというのがあったり技術論があったりする部分もあるんですね。マイクロチップを埋め込むとかそういう技術の場合にコストがかかるし、実際にそのマイクロチップがいつまでもあるわけじゃないかもしれないということもあったりするので、その辺については、個体識別は原則論として私もすべきだとは思いますが、コストとの関係、技術論との関係で、検討すべきところはあるのではないかというふうに考えています。

○辻村参考人 ありがとうございます。
 コストの問題があるにせよ、やはり全てがきちっと登録されている状態をつくるべきだというふうに私どもは思っています。
 例えば、その中で、今登録票に書かれている情報というのは、その持っている人の名前とか住所とかも書かれていないんですね。だから、仮にその登録票を持って違法と思われる生き物を持っていたとしても、その人が誰なのかもわからない状態で、警察は摘発ができないという状況がありますので、費用対効果を考えた上でも、もう少し登録票の情報を、せめて動物愛護法で求めている情報と同等ぐらいの量を求めるべきではないのかなというふうに思っています。

○塩川委員 ありがとうございます。
 次に、海洋生物の国内希少野生動植物種の指定について、関連してお尋ねしたいと思っております。
 レッドリスト作成、評価に当たりまして、海洋生物につきましては、環境省が新たにレッドリストを作成しましたけれども、同時に水産庁も行っているわけであります。つまり、環境省以外の国の機関でレッドリストにかかわっているのは水産庁だけと承知をしているわけなんですが、何でこんなふうになるのかということであります。
 言われるところでは、海洋生物については、一九九二年に当時の環境庁と水産庁が交わした絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律案に関する覚書があって、水産庁の方は、水産資源保護法に基づく採捕制限により保護すべき水産動物、そういう観点で、種の保存法の指定の対象外として、そういう種については水産庁の方がやりましょうねと。
 私は、やはりこういう区分というのが、本来、種の保存法という一本の仕組みに対応して、もちろんレッドリストそのものは法的な権限に直接かかわるものではありませんけれども、やはり多くの国民の皆さんにこういった絶滅危惧が懸念されるような種について広く周知をする、その際に科学的な見地で行う、大変大きな役割を発揮しているわけで、本来一本で行うべきものを分かれて対応するような今の仕組みというのはおかしいんじゃないかなと思うんですが、御意見をお聞かせください。

○石井参考人 御質問ありがとうございます。
 おっしゃるとおりだと思います。
 先ほどゼニガタアザラシの話をしたのでございますけれども、あのケースの場合には、ゼニガタアザラシはやはり科学的に見て希少種なんだという認識はもう揺るがないんだけれども、でも、ここが人間の生活に影響を与える、産業に影響を与える場合には何かの措置をとるというやり方をすべきだと思うんですね。
 水産庁は、やはり水産資源というところが結構重要なので、純科学的にできるかどうかは、ちょっと失礼な言い方ですけれども、難しいところがあるのかもしれないと思っています。
 そういう意味でいいますと、できるだけ早く環境省側で、水産生物についてもレッド種は科学的につくるようにする、そして、それをどのように資源として利用するかというのは、水産庁さんを中心に例えばやっていくというような形に持っていくのが理想ではないかというふうに思っております。

○辻村参考人 ここに関してはもう意見は完全に一致です。水産庁と環境省がそれぞれレッドリストを出すというのはおかしな話ですので、水産庁の方がデータを持っているのであれば、水産庁からデータの提供を受けて、環境省でしっかりとしたレッドリストを科学的につくるべきだというふうに思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 最後に、ジュゴンのことでお尋ねしたいんですけれども、やはりいろいろ、ジュゴン、レッドリストには掲載されておりますが、ただ、種の保存法の指定には至っておりません。いろいろ環境省なりの理屈があって、もともとこの法律によらなくても保護ができるという趣旨のことを述べているんですけれども、率直に、それでいいのかなということは疑問に思わざるを得ません。
 やはり、単に種を保護するというにとどまらず、その生息環境の改善を図らなければならないわけであります。そういった点でも、私はやはり種の保存法のスキームに乗せることによって、個体の保護とともに生息環境の改善を図っていくといった取り組みにつなげていく。もうちょっとほかに工夫もできるところがあると思うんですけれども、そういう観点で、種の保存法の指定の対象にならないというのは大変疑問に思っております。
 この点について、短くで結構ですが、お二方に、御意見お願いできないでしょうか。

○石井参考人 御質問ありがとうございます。
 ジュゴンという生物は本当に数が少なくなってしまっておりまして、当然これは守るべき対象であるというふうに私は思います。
 海洋環境ということがあってなかなか難しいところがあるのかもしれませんけれども、原則としては、科学的にはジュゴンはもう本当に危なくなっている生物であるという認識のもと、何かの対策を打っていく、生息環境の改善、回復とかというのをすべきであろうというふうに私は思っております。

○辻村参考人 ありがとうございます。
 自然保護協会は、ずっとジュゴンの保全に取り組んできております。
 ほかの法令で守れるというのは私にとってはちょっと納得がいかなくて、御指摘のとおり、種の保存法の指定種にし、しっかりとした保護増殖計画を立て、その上で個体数復元を図っていく。そのためには種の保存法の指定をしないとできませんので、もう早急にするべきだというふうに考えております。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。