国会質問

<第193通常国会 2017年05月09日 議院運営委員会 24号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 一宮参考人にお尋ねいたします。
 最初に、国家公務員給与特例法についてお尋ねをいたします。
 一宮参考人は、二〇一三年六月に人事官に就任をし、二〇一四年四月に人事院総裁に就任をしておられます。二〇一二年度及び一三年度に実施をされた国家公務員給与特例法に基づき、給与減額支給措置が実施されました。その時期に人事官の任についていたわけであります。
 給与特例法は、国家公務員の労働基本権が回復されていない段階で、人勧水準をはるかに超える、平均七・八%もの給与削減という不利益を強要するものでした。これは人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割を否定するものだったのではないのか、この点についての認識をお伺いします。

○一宮参考人 人事院勧告は労働基本権制約の代償機能として非常に重要なものでありますので、これについては最大限尊重されるべきであると考えておりますし、政府においても基本的にはそのような姿勢を持っているというふうに理解しております。
 ただいまの二年間の特例、減額特例法につきましては、東日本大震災の復興のために、政府と国会におかれて大所高所の見地から考えられたものであるというふうに理解しております。

○塩川委員 次に、一宮参考人が人事院総裁となって初めて行った二〇一四年の人事院勧告、報告における給与制度の総合的見直しについてお尋ねをいたします。
 職務給の原則や地域経済への影響を考慮せず、地域の民間賃金の水準に公務員賃金を合わせて地域間格差を拡大するものであり、また五十歳代後半層の給与を引き下げるものであります。二〇一五年四月から三年間かけて見直しをしてきております。
 この給与制度の総合的見直しは、職務給原則を損ない、勤務地と年齢による賃金格差をつくるものであり、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割に反する措置ではないか。この点についての認識を伺います。

○一宮参考人 国家公務員法には確かに職務給の原則を定めておりますけれども、俸給を補完するものとして、各種の手当等についての規定も設けられております。
 そういうところで、給与の総合的見直しを行い、先ほどおっしゃられた地域の格差とか地域間の給与配分、民間賃金の低い地域に合わせた給与の再配分をした、そういうことでございますので、何ら職務給の原則に反するものではないというふうに考えております。

○塩川委員 次に、天下りについてお尋ねします。
 今国会では、文科省の天下り問題などが大きな議論となりました。先ほども、あってはならないこととお述べになったところであります。
 一宮参考人は、四年前の所信質疑の際に、「国民の信頼を損なうような天下りの根絶に向けて、厳格に対応することが必要」と述べておられましたが、今の事態をどのように受けとめているか、また、国民の信頼を損なうような天下りの根絶のためにはどのような対処が必要だと考えているのか、この点についてお伺いします。

○一宮参考人 今おっしゃられたように、このたびの文科省の天下りの事案については、大変あってはならないことで、遺憾であるというふうに考えております。
 人事院としましては、先ほども申し上げましたように、採用から退職に至るまでの人事管理全般にわたって、国家公務員法の趣旨が生かされるように、各府省と連携しながら対処していくということでございます。

○塩川委員 最後に、国家公務員給与の国際比較についてお尋ねをいたします。
 国、自治体の財政支出に占める公務員、公的部門職員の人件費の割合は、OECD諸国の中で日本が最も少ないということはよく知られているところであります。
 人件費は人数掛ける単価です。人数の方について言えば、人口千人当たりの公的部門における職員数は国際的にも極めて少ないものです。
 では、賃金の方はどうか。アメリカやドイツなどとの国家公務員の賃金比較はどうなっているか。上級公務員ではない、いわゆる一般のノンキャリアの公務員の賃金というのは米独に比べても低いと承知をしておりますが、この点についての一宮参考人の認識はいかがでしょうか。

○一宮参考人 私は不勉強で、各国との国家公務員の給与の違いについて詳しく存じ上げてはおりませんが、我が国においての国家公務員の給与につきましては、民間準拠ということで民間の企業の給与と均衡するような形で決められております。人事院としましては、綿密な実態調査のもとにおきまして人事院勧告を行っておりますので、これは国家公務員の給与としては適正な扱いであるというふうに考えております。

○塩川委員 終わります。

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○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 更田参考人にお尋ねいたします。
 更田参考人、所信でもお述べになりましたように、東電の福島第一原発事故について後悔と反省を覚えたとお話しでございました。
 この東電福島第一原発事故の原因についてどう考えるのか、事業者や規制機関の不作為と考えるのか、想定外の自然災害によるものと考えるのか、あるいはそれ以外の理由によるものなのか、お考えをお聞かせください。

○更田参考人 非常に難しいところだと思います。
 事故の発生そのものに関して言うと、これは、当時なかなか予想することができなかった厳しい自然災害が事故の引き金になったと思います。
 しかしながら、事故の進展に当たっては、十分な準備がなされていたとは言えないというところもあって、事故の引き金を引いたのは、先生の御質問のお言葉をおかりするとすれば、想定外の事象によって事故が発生した、しかしながら、事故の対処にかかわる準備に関して言えば不十分なところがあったというふうに考えております。

○塩川委員 三月の前橋地裁の判決で、原発事故避難者の損害賠償訴訟がございました。ここにおいては、国と東電は巨大津波の予見は可能だったとして、国については、二〇〇八年三月に東電の自発的な津波対策が難しい状況を認識しており、規制権限に基づき対策をとらせるべきだったのを怠ったと指摘をしているんですが、このような指摘についてはどのようにお考えでしょうか。

○更田参考人 個別の係争中の訴訟に関することですので、お答えできることは限られているというふうに考えます。
 当時の判断として、あのような津波が予測可能なものであったかどうかという点について、これは実際問題として非常に難しかったであろうというふうに考えております。

○塩川委員 次に、原子力事業者の隠蔽体質の問題について質問をいたします。
 原子力事業者の根深い組織的隠蔽体質は極めて重大だと考えております。東京電力に限ってみても、二〇〇二年の福島第一、第二原発、柏崎刈羽原発での原子炉圧力容器内のシュラウドのひび割れデータ改ざん問題や、二〇〇七年の柏崎刈羽周辺での活断層隠蔽などを繰り返してきました。福島事故の背景には事業者の隠蔽体質があったと言わざるを得ません。
 柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性不足を三年近く報告していなかったことなど、原発事故後も、隠蔽体質は今も続いています。
 事故、トラブル隠しやデータ捏造などの原子力事業者の隠蔽体質についてどのような認識をお持ちか、また、このような事業者とこの間どう対峙をしてこられたのか、お尋ねします。

○更田参考人 隠蔽体質という言葉とは少し異なるかもしれませんけれども、ただ、やはり電気事業者には、みずからの言葉で安全を語らない、みずからの責任において安全のレベルについて発信しようとしない姿勢があるのは事実だと思っています。
 これは、これまでも電力経営層との意見交換等においてもたびたび指摘をしてきたことですけれども、国に認められているとか基準をクリアしているとか、そういった説明に終始する嫌いがあって、みずからの言葉で、みずからの責任で安全のレベルを伝えていくというような体質に欠けている部分があるというのは私自身も認識をしております。
 それから、東京電力に関して言いますと、御指摘の中にはありませんでしたけれども、格納容器の気密性試験におけるデータの捏造に関しては非常に重要な問題であったと思っていますし、当時の規制当局の対処に足らない部分はあったというふうには思っています。
 これをどう改めていくかですけれども、これはやはり、電力と規制当局、それからもちろん国民の方々も含めてですけれども、そういった間でのコミュニケーションの透明性を高めていくこと以外に方策はないだろうというふうに思っております。

○塩川委員 原子炉等規制法の質疑の際に、田中規制委員長と私もやりとりしました。その際に、田中規制委員長は、こういう東電の隠蔽体質は根深いと発言をされておられました。その点では同じような認識はお持ちではありませんか。

○更田参考人 これも、隠蔽体質そのものかどうかはわかりませんけれども、東京電力と接してきた上で実感しているのは、どうしても拭い去ることのできない、悪い意味でのプライドの高さのようなものは感じています。なかなか同一平面に立って、同じ地に立って対等に議論をするというよりは、どうしても、何といいますか、ふさわしい言葉ではないかもしれませんけれども、上から目線の体質というのは感じています。
 そういったものが、率直に、フラットに実情を伝えていこうという姿勢に欠けるというところが、先生のおっしゃる根深い隠蔽体質といった形に映ることもあろうかと思います。

○塩川委員 最後に、新規制基準の中身についてですけれども、新規制基準の策定に当たってきたのが更田氏であります。
 政府は、日本の規制基準は世界最高水準と強調します。しかし、アメリカのNRCは、避難計画を一連の規制の中に取り込んでおります。アメリカNRCの元委員長のグレゴリー・ヤツコ氏は、避難計画が不十分なら、アメリカでは原子力規制委員会が原発停止を指示すると述べております。一方で、日本の規制基準には、避難計画を含む地域防災計画に係る事項が含まれておりません。
 これで、世界最高水準という政府の説明というのは妥当なのか、その点についての認識を伺います。

○更田参考人 まず、地域の防災計画に関しては、原子力災害の特殊性に鑑みて、その基本的な考え方となる部分については、原子力規制委員会が災害対策指針を定めて、基本的考え方を示しております。
 また、地域の実情に合った防災計画が地方自治体によってつくられた後は、そのプロセスも含めて、内閣府に置かれた原子力防災の部門がそれを支援し、サポートをしております。さらに、策定された計画に関しては、原子力災害本部において、これは規制委員会もそのメンバーでありますけれども、その災害本部において、防災計画の妥当性について確認をしております。
 いわゆるプラントの規制と防災計画に関するところを一つの組織がやることのメリットとデメリットがそれぞれあろうかと思っています。深層防護の観点に立てば、防災は第五層として大きな役割を担っていますが、これは、独立した層としてそれを考える上では、防災計画をプラントの審査をやるところとは別のところで行うということには一定のメリットがあるというふうに考えております。

○塩川委員 終わります。

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○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 規制基準の一つに、特定重大事故等対処施設を設置する規定がございます。
これは、原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムに対して対処する施設を指しますが、設置をしなければ原発の運転の許可は取り消しになります。
 特定重大事故等対処施設の設置期限は、新規制基準施行日の二〇一三年七月八日ではなく、そもそも五年間の猶予期間が設定され、二〇一八年七月七日になっておりました。ところが、原子力規制委員会は、この設置期限をさらに延ばすため、それぞれの発電所の本体施設の工事認可が終わって五年以内と規定を変更しました。
 もともと猶予期間規定があった規制基準を電力会社の不利益とならないように改変したものであり、これは規制機関のあり方として問題があるのではないのか。当時の委員でもあります更田参考人にお尋ねをいたします。

○更田参考人 御質問にありましたように、新規制基準策定の時点において、特定重大事故等対処施設に関しては五年間の猶予という規定を設けました。
 しかしながら、これは率直に申し上げて、その後の新規制基準適合性審査に要する時間がはるかに当初の予想を超えた。幾つかの要件はありますけれども、自然条件等々に関する審査を行うことに、はっきり言って、予想をはるかに上回る時間を費やした。
 審査に時間がかかることをもって時間切れになってしまうというのは、これは推進とか規制とかという問題ではなくて、純粋にアンフェアであろう。
 改善のためには、どうしても猶予期間を設けざるを得ません。即時でなければ何事もというのであれば、継続的な改善というのは決して進みませんので、猶予期間というのはどうしても必要です。そして、その猶予期間をより合理的にするためにも、工事計画の認可から五年間というふうに改めた次第でありまして、これは私は改善だと思っております。