国会質問

<第193通常国会 2017年05月09日 環境委員会 15号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、野生鳥獣の中での被害、特にイノシシによる被害について質問をしたいと思います。
 当委員会でも、ニホンジカなどを初めとした野生鳥獣による被害のことも議論されてまいりました。生態系への影響やまた農林水産物などへの被害は深刻だということが取り上げられております。きょうは、最初にイノシシによる人身被害の状況について質問をしたいと思っております。
 イノシシの生息数が著しく増加をしている、また生息地の範囲が拡大をしているということが言われておりますが、どのような状況になっているのかについてまず環境省から説明を求めたいと思います。

○亀澤政府参考人 お答えいたします。
 環境省では、平成二十五年度に、それまでの捕獲実績をもとに全国のイノシシの個体数推定を実施いたしました。その時点で、イノシシの全国の生息頭数はおよそ約八十八万頭と推定をされましたし、増加傾向も確認をされたところであります。
 分布域につきましては、昭和五十三年から平成二十六年の三十六年間で、イノシシでは約一・七倍に拡大しているという状況が確認をされたところでございます。

○塩川委員 イノシシの生息数は増加傾向にあるということと、この三十六年間で生息地の範囲が一・七倍に拡大をしているという話でした。
 資料をお配りしました。一枚目が、環境省がつくっております、イノシシの分布域の拡大の図です。
 左上に、囲みのところ、今局長が答弁されましたけれども、一九七八年から二〇一四年の三十六年間で、分布域は約一・七倍に拡大、二〇一一年から二〇一四年の三年間で、東北南部、北陸地方を中心に拡大をしたと。
 左下の方に色別で説明がありますけれども、例えば緑色のところが、四十年前の一九七八年以前からイノシシが生息しているとされていた地域ですが、ダイダイ色でしょうか黄土色でしょうか、二〇〇三年に新たに確認をされるとか、青は二〇一一年、紫は二〇一四年に新たに確認をされる。
 これを見ますと、例えば、今までは群馬とか栃木はなかったものが、この間ずっとふえているということなんかも見てとれるわけですね。そういう意味では、本当に近年、急速にイノシシの分布域が拡大しているということが見てとれるわけであります。
 そうしますと、こういったイノシシの市街地への出没というのが大変問題になってきているわけです。人里、さらに市街地へとイノシシが出てくる例というのがたくさん生まれているということで、環境省が、イノシシの保護及び管理に関するレポートをまとめております。このレポートでは、「今後イノシシの市街地への出没は増加していくことが危惧される」とあるわけです。
 このような市街地出没の危険性、問題点というのはどんなものがあるのか、このことについて、レポートの中身も踏まえて説明をお願いしたいと思います。

○亀澤政府参考人 お答えいたします。
 イノシシの市街地への出没の増加によりまして、人身被害や交通事故等の生活環境被害を引き起こすということが危惧をされております。
 また、出没した場合の対応につきましては、自治体の鳥獣部局のほか、警察や消防等、さまざまな関係機関や地域住民の理解と協力を得るための調整等が必要なこと、さらには、動物由来感染症が伝播すること等にも留意する必要があるというようなことが保護管理レポートに記載をされております。

○塩川委員 動物由来感染症の伝播の話や、関係機関や地域との調整が必要となってくる、何よりも、人身被害や交通事故といった生活環境被害を引き起こす事例が頻発をしているということであります。
 イノシシによる人身被害の事例というのが多数寄せられております。私がお聞きした話として、埼玉県の神川町で昨年の二月にイノシシが出没をし、一度に三人の方がかみつかれるという被害があったということでした。
 我が党の川浦雅子町議によりますと、群馬県との境なんですけれども、群馬県側から埼玉県神川町に入ってまいりまして、小学校の南側を通り抜けてきた手負いのイノシシだったということなんですけれども、一人目の方は、自宅の庭で被害に遭って、イノシシに体当たりをされて倒れたところを肘や膝をかまれた方ですとか、倒れてもなお執拗に繰り返し体当たりをされて、口とお尻をかじられたという方もおられた。四回ぐらい体当たりをされて、あと二回ぐらい体当たりをされたら私は死んでいたと思う、こんな話もしていたということでありました。さらにもう一人の方は、ふくらはぎをかまれて玄関に逃げ込んで、閉めたドアのところにもイノシシがつけた傷が残っていたということでした。
 この三人の方は病院に救急搬送されて、一名の方は経過もよく、ふだんの生活には戻れたものの、口をかじられた方はまだ治っていないという話もありました。ふくらはぎをかまれた方は四十日間の入院になったという話であります。
 大臣にお尋ねいたします。
 こういったイノシシによる人身被害というのは全国各地で広がっていることと承知をしております。大臣の地元の愛媛県でもこういう事例もあるのではないかと思うんですが、イノシシによる人身被害の発生状況について、例えば愛媛県の事例など、大臣が承知されていることがありましたら、御紹介いただけないでしょうか。

○山本(公)国務大臣 改めて愛媛県の方に確認いたしましたら、二十四年から二十八年度の五年間で、死亡事故は愛媛県ではゼロでございましたが、負傷事例は十件あったというふうな報告を受けました。
 私自身、向こうに住んでおりますから、イノシシが最近市街地に出没しているのは、もう頻繁でございます。頻繁でございますし、いろいろな話やエピソードが伝わってまいります。先生がおっしゃるような事故という事例もございますけれども、武勇伝も結構伝わってきております。イノシシと格闘した、うそかなと思ったら本当だったわけでございますけれども、そういうのも頻繁に話が伝わってくるということは、いかにイノシシが市街地に出没しているかということの事例だろうというふうに思っております。

○塩川委員 大臣の方から、愛媛県で過去五年間の負傷事例が十件という具体のお話もいただきました。
 私、報道ベースですけれども、愛媛県の事例では、二〇一五年の十月に小学生の列にイノシシが突進をして児童三人が負傷するですとか、これはイノシシと特定されているわけでありませんが、昨年二月には、八幡浜市だったでしょうか、ミカン山でイノシシに襲われたと見られる農業をされている男性が死亡された、かみ跡もあったという話でしたけれども、そういう話なども、報道ではありますけれども、聞いているところであります。
 ほかの県でも、例えば、静岡県の浜松市の県立公園では、昨年三月、男女九人がイノシシにかまれるなどといって負傷したという例もありますし、群馬県の桐生市では死亡事故も発生をしています。このように、全国各地でイノシシによる人身被害が発生をしているわけです。
 環境省にお聞きしますが、こういったイノシシによる人身被害の発生件数、そういった件数について、都道府県とか市町村レベルでは把握をしている事例もあるんじゃないかと思うんですけれども、このように、自治体においてイノシシによる人身被害の件数を集計している事例というのは承知しておられるでしょうか。

○亀澤政府参考人 環境省といたしましては、イノシシによる人身被害に係る発生状況に関しまして、各都道府県や市町村が把握しているかどうかということにつきまして、網羅的には承知をしておりません。

○塩川委員 例えば、先ほどの環境省がまとめたレポートなどでも、兵庫県の神戸市における取り組みなども紹介されているわけです。六甲山麓で非常にイノシシがふえている、餌づけをしているのがきっかけじゃないかと言われていますけれども、人身被害の件数も多数に上る、こういう神戸市でのイノシシによる人身被害の件数などについては承知しておられませんか。

○亀澤政府参考人 御指摘のありました兵庫県につきましては、六甲山近辺における人身被害の発生状況を兵庫県が神戸市、西宮市、宝塚市の三市を通じて情報収集しており、直近のデータでは、平成二十七年度に、三市のうち神戸市におきまして四十一件の人身事故が発生したというふうに聞いております。

○塩川委員 平成二十七年に神戸市で四十一件の人身被害の報告があったということで、大変多いわけであります。
 このように、神戸市は毎年集計をしております。多数の人身被害の件数が報告されているわけです。長野県も人身被害件数を集計しております。
 環境省にお尋ねしますが、こういう自治体レベルで集計している例はあるんですけれども、環境省として、こういう全国におけるイノシシによる人身被害数というのは把握しておられませんか。

○亀澤政府参考人 イノシシの全国における人身被害の発生状況につきまして、環境省では把握しておりません。

○塩川委員 私は、それは、イノシシによる人身被害の状況を軽く見ているんじゃないかと言われても仕方がないと思います。
 今お話があったように、かなりの件数に上るんですよ。それが全国的にどういう状況になっていて、どういう傾向があって、これに対してどう対策をとるのかということがまさに求められている課題じゃないかということなんです。
 環境省は、この間、野性鳥獣の被害とのかかわりで、熊については人身被害を把握しているわけです。この熊による人身被害の状況についてはどのように把握をしておられますか。

○亀澤政府参考人 熊につきましては、都道府県からの報告を集計して公表しておりますが、熊の出没件数、人身被害発生状況につきましては、平成二十八年度は、出没件数が約一万八千件、人身被害の発生件数は約百件となっております。

○塩川委員 このように、平成二十八年でいえば、被害の人数は百件という話がありました。
 熊について人身被害の状況を把握する、そういうきっかけというのは何だったんでしょうか。

○亀澤政府参考人 熊につきましては、人身被害が発生した際には甚大な被害を及ぼす危険性が高いことや、出没件数が多い年には人身被害発生件数も多い傾向にあることから、行政担当者や一般市民などに対して注意を呼びかけることなどを目的として、ツキノワグマの大量出没が全国の広い地域で発生をいたしました平成十六年及び十八年を契機として、都道府県からの報告を集計して、十八年度から公表を行っているところでございます。

○塩川委員 ドングリ、堅果類の豊凶によって、熊の人里へのさまざまな移動が被害にもつながっている。そういう状況について把握をすることで、周知をしていく、注意喚起を行っていくということです。そういう点でいえば、イノシシについても同様のことが言えるんじゃないのかと思うわけですね。
 大臣にお尋ねしますけれども、例えば長野県の集計を見ると、どういう時期に人身被害が多いかというと、秋から冬の時期だという話なんです。それは、イノシシの発情期の時期と重なっているんじゃないのか、こういう指摘などもあるわけです。ですから、被害状況を把握して、その内容をわかりやすく周知すれば、被害を回避する注意喚起につながると思うんです。
 ですから、熊でも既に環境省は行っているわけですから、少なくとも、イノシシによる人身被害の状況を全国的に環境省として把握する、それを踏まえて施策に生かしていく、こういうことが必須だと思うんですけれども、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

○山本(公)国務大臣 まずは、都道府県における把握状況を確認いたしまして、熊と同様に都道府県を通じた集計が可能かどうか検討をしてまいりたいと思っております。

○塩川委員 既に各県ごとには集計の数字は持っているわけです、市町村から上がってくるのは手持ちにあって。ただ、それを数字として取りまとめていくという作業がないものですから、それぞれの県で、課題となっているようなところは対策をつくるということでその数字なども生かすということなんですけれども、全国的な傾向などもはっきりさせるという点では、しっかりと把握をしていく。検討というお話がありましたので、ぜひ自治体とも連携をとりながら取り組みを進めていただきたいと思っております。
 それで、そういった被害状況の把握も踏まえながら、実際にどういうふうにやはり被害を回避していくのかということも求められているわけで、そういう点では、各自治体レベルではさまざまな対応マニュアルをつくったりもしているところです。
 例えば愛媛県の話では、やはり過去五年間で十件という被害もあったということで、県として、こういった、イノシシに遭遇した場合についての対策を専門家の監修を受けながらチラシをつくるという取り組みなども行っているわけです。一般向けと子供向け、二種類の資料をつくって自治体や学校などに配付をしているということです。
 資料の二枚目の方にその一つをつけておきました。これは愛媛県の自然保護課が作成、発行しているものですが、子供向けということで小学校などに配っているものだというふうにお聞きしています。四つの四角の枠がありますけれども、「イノシシを見つけたら… ゆっくりとイノシシからはなれましょう!」「近づいてきたら… たてものに入るか、高いところに登るなどして、助けを求めましょう!」「おいかけたり、石をなげない! おこって、おそってくることがあります。」「エサをあげない! 人をこわがらないイノシシになってしまいます。」こういうことを促す、こういったチラシなども作成をしているわけです。
 こういった取り組みについて、大臣は御存じでしたでしょうか。

○山本(公)国務大臣 正直、私はこれを見るのは初めてで、同じ愛媛県で、初めてでございますけれども、やはり、これはわかりやすいチラシになっていると思いますので、ぜひ県の方に話をいたしまして、小学校あたりに広範に頒布ができるように協力したいと思っております。

○塩川委員 こういった、市街地へのイノシシの出没に対応するマニュアルの作成というのが各県で行われている。これは環境省自身が紹介をしているところですけれども、長崎県や香川県や福岡県などがそういったマニュアルもつくっているということなんです。
 簡単で結構なんですが、自治体がつくっているこのマニュアルの特徴とかというのは、環境省としては把握しておられますか。

○亀澤政府参考人 自治体が作成しているチラシ等につきましては、それぞれの自治体でそれぞれの状況に応じて工夫をされて作成をされているというふうに認識をしております。

○塩川委員 環境省がまとめているイノシシの保護及び管理に関するレポート、先ほども紹介しましたけれども、こういうときに、市街地出没についてのさまざまな課題などについても紹介しながら自治体の取り組みに生かしていただきたいということで、促す中身になっています。そういった中に、市街地出没対応マニュアルをつくっている長崎県や香川県や福岡県のアドレスなども紹介をしているわけなんです。
 そういう点でいいますと、やはり環境省の取り組みも重要で、単に自治体の取り組みを紹介するだけじゃなくて、環境省として必要なマニュアルをつくるということも求められているんじゃないのか。
 例えば、先ほども、熊については人身被害の状況を環境省として把握をしているという話がありました。こういう熊類についての出没対応マニュアルというのも環境省がつくっているわけなんです。かなりのページ数にもなるんですけれども、このクマ類出没対応マニュアルというのはどんな中身が書かれているのかについて、少し説明していただけますか。

○亀澤政府参考人 熊につきましては、堅果類、ドングリ類の豊凶による出没の頻度の違いとか、あるいは山で出会った場合の対処の仕方とか、そういうことが具体例も踏まえて記載をされているものというふうに認識をしております。

○塩川委員 このように、クマ類出没対応マニュアルというのが、「クマが山から下りてくる」とサブタイトルで書いてありますけれども、実際に熊の出没の被害マップをつくるですとかこういった取り組みについて、専門家の知恵もかりながら、地域の住民の方の協力も得ながら、取り組みを具体化しようということが書かれているわけなんです。
 そういう点でも、私は大臣にお尋ねしますけれども、イノシシについても、こういった市街地への出没に対応する、そういったマニュアルをつくる必要があるんじゃないのか。自治体任せにせず、環境省としてイノシシによる人身被害を防ぐための対応マニュアルをつくる、その考えはないか、このことについて大臣にお尋ねをいたします。

○山本(公)国務大臣 正直なことを申し上げまして、私自身も、熊とイノシシというのは根本的に意識が違っておりました。
 熊というのは、私のイメージというのが、皆さん、お読みになったことがある方もいらっしゃるだろうと思いますけれども、「羆」という日本の小説がございまして、その小説を読むと、北海道の事件なんですけれども、事実、明治時代に起きた話なんですけれども、ヒグマが集落を襲う、そして人を食べるということ等々を含めて、人を食べるものが熊だという意識を持っておりました。イノシシは人は食べない、イノシシは有害鳥獣、いわゆる農作物に被害を及ぼす有害鳥獣という意識でずっと見てきておりました。
 今先生御指摘のように、人身事故という観点から余り見てこなかった。しかし、人身事故が全国的に頻繁に起きているということ等々を踏まえましたときに、イノシシの、いわゆる熊と同じような一つの出没マニュアルといいますか、対策マニュアルというのも考えていってもいいのかなという気はいたしておりますけれども、根本的に違う面もあるんじゃないかという気もいたしております。
 私は田舎に住んでおりますから、目撃情報というのは頻繁に伝わってまいります。四国には多分、熊は生息しているのかよくわかりません、いるんじゃないかと言われておりますけれども、これも目撃情報がほとんどないに等しいので。イノシシはもう頻繁に皆が目撃をいたしておりますので、それが人身事故を起こすということになれば、やはり一つの考え方を我々としてはしていかなければいけないなと。
 ただ、今まではずっと、やはり有害鳥獣という物の考え方でイノシシ対策を環境省も農林水産省も考えてきたんだろうと思っておりますけれども、人身事故という観点からもう一回イノシシというのは見ていく必要があるのかなというふうには私自身も今思っております。

○塩川委員 実際にそういった人身被害は非常に多いというのは、私もこの質問を準備する過程で改めて実感をしたところです。
 車との衝突事故というのはかなりあるんですよね。ニホンジカなどはよく紹介もされますけれども、イノシシが車に衝突をして車が損傷する、こういった事例などというのも少なくないと思っています。それは全体像がよくわからないということでもありますので、そういう被害状況の把握と同時に、それらに対する対応策ということについても、環境省がふさわしく役割を果たしていただきたいと考えております。
 この問題で埼玉県の神川町の例を紹介したというのも、ここでは続けて三人の方がけがをされたということもあって、我が党の川浦町議が議会で提案をして、こういった被害者の方に対しての何らかの公的な補償制度とかをつくる必要があるんじゃないのかと。
 もちろん、鳥獣の、猟銃などに取り組むような方々に対して公的な共済制度などをつくる、農水省の取り組みなんかでもあるわけですけれども、実際には一般の方が鳥獣によって人身被害をこうむった場合についての補償制度がない中で、埼玉県神川町では見舞金制度をつくったということです。額も限られているものではあるんですけれども、そういった取り組みというのが、こういう提案に町長が応えて実現をしたということでもありました。
 大臣に、ぜひ、こういったイノシシなど野生動物による人身被害に対する公的な補償制度というのも何らか検討するときに至っているんじゃないのか、このことについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○山本(公)国務大臣 委員御指摘の公的補償制度というのが、実際問題、広島県において行われており、広島県において支払いの状況にもあったということも承知をいたしております。
 一応、国の責任で一律に補償制度を設けるということは考えておりませんけれども、地方自治体において、それぞれの事情に応じて地方自治体が検討されることについては、私どもは、それはそれでよろしいんではないかというふうに思っております。

○塩川委員 被害の状況がおさまれば一番いいわけで、こういう取り組みを強めながら、被害に遭われた方々に対する公的な支援というのも検討することが大事ではないかということを申し上げておきます。
 残りの時間で、改正鳥獣保護管理法についての実施状況を何点かお聞きいたします。
 二〇一四年五月に成立をし、二〇一五年五月に施行されました改正鳥獣保護管理法については、我が党は、法案審議に当たって、国による自治体などへの専門家の配置支援や捕獲事業等への財政措置の法的担保もないまま、事実上、国が都道府県や認定事業者に丸投げをして、安全性や効果の保証のない捕獲事業を進めるものだと指摘をしました。鳥獣保護という根幹思想を転換し、環境行政みずから鳥獣管理という捕獲事業に身を置くということは、鳥獣保護行政に禍根を残すとして反対したものです。
 大事なことは、科学的知見に基づく計画の策定であり、事業の推進や住民合意への役割を果たす人材確保ということです。この点で、地方自治体におけるこういう鳥獣保護管理行政を担うような専門職員の配置というのはどんな状況になっているのか、このことについては環境省としてはどのように把握をしておられますか。

○亀澤政府参考人 都道府県におきましては、鳥獣被害対策を進める観点から、専門職員の配置はそれぞれの県の工夫で進められているというふうに認識をしております。

○塩川委員 その際の法案を準備する段階で、二〇一〇年に都道府県のアンケートを行っていたわけですが、鳥獣保護管理に関する専門的な教育を受けた職員や知識を持った職員が配置されているのは十四都道府県と全体の三割程度だったということであります。
 こういうのは、本当にふえているのかどうかというのも問われるわけですし、こういった専門職員の配置に当たって国による何らかの支援策があるのかどうか。例えば、財政的な支援を行う、専門職員の配置に当たって国が支援を行う、こういうものというのはあるんでしょうか。

○亀澤政府参考人 財政的な支援の仕組みはありませんが、自治体の職員に対する鳥獣保護管理に関する研修制度、研修のようなものは実施をしております。

○塩川委員 ですから、専門人材確保への財政支援措置はないわけです。
 この間、鳥獣保護管理に係る指定管理鳥獣捕獲等事業交付金などをつくってきているというのはあるわけですけれども、もともと鳥獣保護管理法には財政的な支援の規定がないということも指摘をされているわけですが、そういったもとで安定的に事業を継続していくということが可能なのかどうか、このことの懸念というのがあるわけですが、その点についてはいかがでしょうか。

○亀澤政府参考人 指定管理鳥獣捕獲等事業交付金制度というのは鳥獣法の改正により盛り込まれたところですけれども、予算措置につきましては、毎年度必要な額を財務省に対して要求を行っているところでございます。

○塩川委員 補正も含めて毎年度予算措置を要求するということで、要するに恒常的な制度にはなっておらないわけです。
 もちろん、こういった被害を軽減するものですから、なくなっていけば財政措置は必要なくなるわけですから、しかし、計画を策定して、それを本当に実効あるものにするためには必要な財政支援を求められているわけで、そこに当たって限定的な財政措置にとどまるのでいいのかということが法制度上からも問われていると思います。
 改正法には財政支援の規定がないわけです。鳥獣保護管理を進めるためには、都道府県に司令塔となる専門的な知識や技術を有する鳥獣行政担当職員の配置を行うことや、それを支える研究機関の設置が必要であり、これらの体制を保障する財政的な支援を法律で規定する必要がある、このことを強調して、質問を終わります。