国会質問

<第193通常国会 2017年05月31日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 6号>




○塩川委員 最初に、今、この委員会の出席状況なんですけれども、過半数いっていないと思うんですね。委員会が成立していないと思うんですが、確認してもらえますか。

○竹本委員長 二十人いるということです。

○塩川委員 何にしても、こういう出席状況でこういう重要法案をやっているのかということが厳しく問われるんじゃないでしょうか。
 私は、この法案に当たって、やはり、そもそも議会制民主主義の根幹にかかわる選挙制度であります、まさに国民の参政権にかかわる重要な法案について、しっかりと国会で議論することが必要だと。当然、委員として出席していただくのは当たり前のことなんですが、去年も、この法案のベースとなった衆議院の選挙制度改革法案について、国民の声を聞くべきだということを申し上げたところです。残念ながら、公聴会が行われなかった。
 今回のこの法案についても、今、委員御質問のあったように、非常に有権者、選挙人の方々にとっても混乱を招くような、また、実際の選挙実務においても大変苦労が多いような仕組みとなっている。こういった現場の声をしっかりと聞くことを含めて、参考人質疑が必要だという提案もしましたが、残念ながら、それも受け入れられるものではありませんでした。極めて残念であります。
 市区選管の連合会ですとか指定都市や都道府県の選管連合会の方、まさに実務に精通している方なんかに来てもらって、各党それぞれ質問もして議論を進めれば、いろいろな課題が出てくるはずなんですよ。こういうことこそしっかり行うべきだ、こういった審議のあり方は極めて問題だということを冒頭申し上げておくものです。
 それで、質問ですけれども、現行の小選挙区比例代表並立制が導入されて以降、二〇〇二年の区割り改定、前回、二〇一三年の〇増五減の区割り改定、そして今回の区割りと、三回の区割り見直しが行われてきております。
 お尋ねしますが、二〇〇二年の改定、それから二〇一三年の改定、そして今回の改定において、それぞれ区割り変更となる都道府県の数、小選挙区の数はどうなっているか、お答えください。

○大泉政府参考人 お答えいたします。
 二〇〇二年、平成十四年の改定におきましては、二十都道府県の六十八選挙区に異動がございました。
 二〇一三年、平成二十五年の区割りの改定におきましては、十七都県四十二選挙区の異動がございました。
 今回、区割りの改定案となっておりますのは、十九都道府県の九十七選挙区でございます。

○塩川委員 過去最大の見直しとなっているわけです。
 重ねてお聞きしますが、小選挙区において、市区町村内で分割をしている自治体数、その小選挙区数について、九四年の制度導入時は、分割市区数は十五、その小選挙区数は二十九でしたが、その後、どうだったか。〇二年の区割り改定後、一三年の区割り改定後、今回の改定、それぞれどうなっているのかについて説明してください。

○大泉政府参考人 先生御指摘のとおり、小選挙区制導入時においては、分割されていた市区が、二十九選挙区十五市区でございました。
 二〇〇二年、平成十四年の改定におきましては、三十二選挙区十六市区でございました。
 その後、市町村合併の進展、あるいは政令市に移行した市がございました関係で、二〇一三年、平成二十五年の改定におきましては、分割されていたのは百十七選挙区の八十八市区までふえております。
 今回、区割りの改定では、百三十選挙区百五市区となっております。

○塩川委員 分割市区数がどんどんふえているというのが実態であります。区割りをするたびに分割される行政区がふえ、今回の改定で分割市区が八十八から百五に増加をしています。区割り変更の選挙区数も過去最大なら、分割される行政区の数も過去最大となっているわけです。
 そこで、この分割市区の問題は、区割り審が行った関係都道府県知事からの意見聴取でも意見が出されているところであります。どのような意見があったのか、その特徴について説明してください。

○大泉政府参考人 知事意見の中には、分割に反対する意見がございました。また、分割しない形での改定を希望する意見、現在分割されている団体について可能な限り現在の組み合わせを維持すべきだというような意見もございました。
 一方で、分割する区域を明示して分割してほしいというような意見もあったところでございます。

○塩川委員 いわゆる分割されている市区の解消というのは、自治体としての大きな意見ということであります。
 区割り改定については、実際の選挙実務に携わる各地方選管連合会からも要望書が出されております。そこで、全国市区選挙管理委員会連合会及び指定都市選挙管理委員会連合会の衆議院小選挙区の区割りに関する要望事項というのは、どういう中身かわかりますか。

○大泉政府参考人 全国市区選挙管理委員会連合会からは、直近において申し上げますと、平成二十八年十二月に要望事項として出てきておりまして、衆議院小選挙区において、市区を選挙区ごとに複数に分割される市をできる限りなくすよう法を改正されたいというような要望でございました。
 また、指定都市選挙管理委員会連合会からは昨年の十月に出てきておりまして、同様に、これは指定都市でございますので、選挙区が同一の行政区内において複数の選挙区にわたるいわゆる分割市が解消されるよう改められたいというような内容の要望が出てきております。

○塩川委員 選挙事務に携わる選管連合会の方からは、分割市区の解消というのは当然の要望として出されているわけです。
 有権者にとって、行政区が分割されている選挙区はどういう問題を持っているのか。
 区割り審の知事意見の中で、北海道は、振興局の区域と国政の選挙区とが異なる状態が続いていることで住民に戸惑いが生じており、選挙時にも候補者がわかりにくい、選挙への関心が持てないといった弊害が生じていると指摘をしています。
 長崎県は、前回の区割り改定で佐世保市の一部が分断をされました、このことで住民の混乱が懸念されておりましたが、実際に分断された地区において、分断後初めて行われた平成二十六年の衆議院議員選挙における投票率の低下や無効票の増加という傾向が見受けられましたと指摘をしているわけであります。
 大臣にお尋ねいたします。
 全国市区選挙管理委員会連合会の要望事項では、選挙人からは分割選挙区が解消されない理由を求める声も多数寄せられていると指摘があり、指定都市選挙管理委員会連合会の要望事項では、選挙人に誤解や混乱を招くと指摘がありました。このように、少なくない有権者が市区町の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きを押しつけられているのが現状であります。大臣、このことについてはどのようにお考えでしょうか。

○高市国務大臣 昨年の五月に議員立法で成立をしました衆議院選挙制度改革関連法においては、各選挙区の人口に関して、次回の見直しまでの五年間を通じて人口格差が二倍未満となるよう、平成二十七年国勢調査による日本国民の人口に加えて、平成三十二年見込み人口においても格差を二倍未満とすることが求められました。
 この結果、相当数の選挙区の改定が必要になり、今回の区割り改定案の勧告では、十九都道府県九十七選挙区において改定を行うということになり、分割される市区町の数も十七ふえるということになりました。
 例えば、東京都などの都市部におきましては、格差が二倍以上もしくは二倍近くであるという選挙区が林立しておりますので、市区の分割が避けがたいという状況であったと承知をしています。
 今後、政府にできることは、今回の区割り改定法案成立の暁には、この改定の趣旨や内容を十分御理解いただくということはもとより、特に選挙区の変更について、有権者の皆様を初め、選挙管理委員会関係も含めて、関係者の皆様に混乱が生じることのないように、丁寧に周知啓発活動を行ってまいりたいと存じます。

○塩川委員 結果として、こういった、地域が分断をされる、有権者の皆さんは非常に戸惑っておられる、そういう状況があるのに対して、丁寧にと言うんじゃなくて、そもそもが、こういった状況に置かれている有権者の方の思いをどう受けとめるのかということについて、ぜひお伺いしたいんです。
 例えば、青森県五戸町の事例について、読売新聞の報道で紹介しますと、「県南東部の五戸町は隣接する八戸市と同じ新青森二区に組み込まれる。同町は前回二〇一三年の見直しで同市と別の選挙区になったばかりで、七十歳代の主婦は「(将来の見直しで)また違う選挙区に組み込まれてしまうのでは」と話した。」
 前はこっちで、次はこっちで、また戻って、そんなことなんかも起こり得る。こういう、有権者が戸惑う姿が目に浮かぶわけで、選挙のたびに不自然な選挙区変更を強いられるようなことについて、有権者の思いについて、大臣としてはどのように受けとめておられるのか、お考えをお聞かせください。

○高市国務大臣 有権者にとりましても、立候補を予定される方にとりましても、それは、選挙区の区割りが変更になるということは大変負担の大きいことであろうと思います。
 私自身も今まで立候補する区域が変わった経験を二回持っておりますので、投票できなくなった方々がどんなに残念な思いをされたかということ、自分自身も、随分混乱もし、大変だったという経験は持っております。
 ただ、今回の御審議いただいている法案につきましては、議員立法によって成立した衆議院選挙制度改革関連法に基づいて、区割り審としては、安定性にも配慮しながら、それでも一票の格差を是正していくということを第一義にして、精いっぱい御審議をいただいて、その結果の答申であったと思っております。
 私自身が有権者の皆様の思いということも十分理解しつつも、今回提案している法律案についての経緯というものはそういうものであったということ、そして、やはり選挙というのは民主主義の根幹でありますので、これは、国会で各党各会派の御議論を経て、選挙制度については御議論を進めていただきたいということを申し上げます。

○塩川委員 そういう点では、今回の法案は、去年の衆議院選挙制度改革関連法を踏まえてのものでありますから、そもそもこういう、有権者が戸惑うような選挙制度のあり方そのものが問われているということを言わなければなりません。
 幾つか数字を確認したいんですが、二〇〇五年と一四年の衆議院選挙において、管理執行上問題となった件数、いわゆる選挙事務のミスの件数はどうなっているか、また、一四年衆議院選挙における選挙事務ミスのあった都道府県の数はどうなっているのかについてお答えください。

○大泉政府参考人 総務省におきましては、国政選挙等における管理執行上問題となった事項について、選挙後に、各都道府県選挙管理委員会を通じまして報告を求めているところでございます。
 二〇〇五年、平成十七年の衆議院議員総選挙におきまして、管理執行上問題となった事項として報告のあった件数は六十四件でございました。
 二〇一四年、平成二十六年の衆議院議員総選挙におきましては、管理執行上問題となった事項として報告のあった件数は百九十四件であり、その発生した都道府県の数は四十一都道府県であったということでございます。

○塩川委員 六十四件が百九十四件と、この十年近くで選挙事務ミスが三倍にふえています。四十一都道府県という話がありましたから、ほとんどの都道府県内で選挙事務ミスがあったということは極めて重大であります。選挙の公正を損なうことにもつながりかねません。
 さらには、二〇一三年の参議院選挙では、高松市の選管での不正開票事件がありましたし、一四年の総選挙では、仙台市選管でも不正事件がありました。
 分割される選挙区について、投開票事務の非効率など問題が上がっていると思いますが、現場から問題点は聞いていませんか。

○大泉政府参考人 総務省としては、現時点では、特段、分割市区となる見込みの団体から管理執行上の具体的な問題点について報告、相談は受けていないところでございます。
 ただし、分割市区におきましては、先ほどから申し上げているとおり、投開票所などの増設や変更、増設した場合の事務従事者の確保、あるいは関係地域住民への適切な周知などの事務が新たに発生するというようなことでございます。また、選挙公報の配布誤りなどがないように注意が求められておるところでございます。
 そのため、関係団体におかれては、選挙の万全な管理、執行に向けて、必要な準備を進めていただきたいと考えているところでございまして、総務省としても、引き続き、管理、執行に関し、関係団体からの相談にきめ細かく応じるなど、必要な支援をしてまいりたいと考えております。

○塩川委員 選挙実務を行う選管の要望を見ますと、先ほども紹介した全国市区選挙管理委員会連合会は、投開票事務の非効率を招く大きな要因になると述べておりますし、指定都市選挙管理委員会連合会は、投開票事務の効率化を阻害する要因となると、今回の区割りについて指摘をしているわけであります。
 この十年近くで選挙事務ミスが三倍にふえている中で、今回のような非常に大きな区割りの見直しというのは大変大きな負担になるだろう。選管の皆さんは非常に、現場で、今でもぎりぎりのところで頑張っているわけです。苦労もしているわけですけれども、もともとミスをしようと思ってやっているわけではありませんから。しかしながら、分割選挙区が増加をすることで、選挙事務ミスがさらに増加をする懸念がある。
 こういった選挙制度、区割りのあり方というのが選挙の公正性にとって大きな障害となるのではないか、このように思いますが、どのようにお考えですか。

○大泉政府参考人 これまでの衆議院議員選挙におきましても分割市区はございまして、分割市区となった団体は適正に選挙が執行されてきていたものと考えております。
 一方で、新たに分割市区となった団体で、先ほどの管理執行上の事務ミスについて、前回の区割り改定に際しまして、一件、これは選挙公報の配布誤りでございますが、そのようなミスがあったというような報告を受けているところでございます。
 これ以上、同様の事務ミスが発生、増加しているとの事実は承知しておりません。

○塩川委員 さらなる負担が生じるという中での懸念というのは強いと言わざるを得ません。
 区割り審の知事意見の中で、北海道は、「選挙事務の管理執行上、事務の複雑化に伴う事務量の増加、迅速性の確保のための経費の増加など大きな問題も生じている。」と指摘をしています。分割する地域の多い東京都は、「期日前投票所での受付や選挙公報の配布を始めとする選挙運営のミスを防止するための体制整備などの負担が増大する。」と指摘をし、「一つの区市町村の区域を三分割することは、有権者への周知の困難さに加え、投票所入場券及び選挙公報の区分配布、開票所の三カ所設置の必要性など、結果として選挙の運営に支障をきたす可能性が高いことから行なうべきではない。」と要望したわけです。
 今回、東京都の分割は、行政区で三つ以上の選挙区となったところはありませんが、二つの選挙区の実務を行わなければならない区は多くなりました。また、今回の区割り見直しで二つの選挙区に分割をされた座間市においては、遠藤三紀夫市長が、市選管の人事や予算は一つの選挙区を前提にしている、選挙事務が煩雑になることにどう配慮してくれるのか説明がなく、国は無責任だ、このような報道もされているところです。
 この間、我が党は、国政選挙の執行経費法案の審議の際に、再三、経費削減が投票所や開票所の数の減少、投票時間の短縮、選挙事務ミスの増大に拍車をかけていると指摘をしていたことを述べておきたいと思います。
 総務省にお尋ねしますが、参議院の選挙区を合区としたときには合区選管を設けましたが、小選挙区の場合は一つの選管が複数の選挙区の事務を行っています。複数の選挙区を抱える選管は、投票所入場券や選挙公報を配布するにも、選挙区ごとに間違えないよう配布しなければなりません。役所につくる期日前投票所は、それぞれの選挙区で入り口を分けて、投票を間違わないよう工夫するとかしていると聞いております。
 しかし、これは、人員が確保できる場合であります。例えば、東京の多摩地域の選管では、市の規模などもあって、選管職員が三人とか四人しかいないというところがあって、そういう自治体で二つの選挙区を抱えているために、どうやって実務をこなせばいいのかという問題に直面していると聞いています。
 このような選挙事務の人員配置や予算配置など、実際に適切に対応できるものなのか、この点についてはどのようにお考えですか。

○大泉政府参考人 御指摘のありました投開票所の増設などでございますけれども、こういう経費につきましては、執行経費基準法に基づきまして措置をされているものでありまして、総務省としても必要な予算確保に努めてまいりたいと考えております。
 また、今回の区割り改定法案では、同一選挙区内で複数市町村の区域の全部または一部を合わせた開票区を設け、効率的な開票作業体制を構築するなど、柔軟な対応をする道を開いているというようなことでございますので、引き続き、執行機関、選挙の管理機関に対しまして、関係団体からの相談などにきめ細かく応じていくなど、必要な支援をしてまいりたいと考えております。

○塩川委員 それが、実際にお願いする方、受ける方の関係とかがどうなってくるのかという話もあるわけです。そういう意味でも、二つに分かれるような場合に、その二つに責任者を置かなくちゃいけない、人数が三人でどうできるのかとかいう現場のいろいろな悩みがあるわけですね。そういうところが実際どうなってくるのかというのが大変心配するところです。
 それと、今の答弁にありましたけれども、今回の法案で、数市町村の区域の全部または一部を合わせて開票区を設けることができるとする規定が盛り込まれたところです。
 そこで、お聞きしたいんですが、同じ選挙区内で、開票区を持たない選管と開票区を持つ選管ではどういう関係になるのか。例えば、A市内の一部が隣接するB市と同じ選挙区となった場合に、A市選管は投票まで執行して、開票はB市選管に委託するということになるのか。二つの行政区から成る選挙区の場合はまだわかりやすいかもしれませんが、東京十区のように、四つの区選管が全て分割した選挙区を持っている場合はどうするのか。その一点では具体的にどうでしょうか。

○大泉政府参考人 分割市区において、市区の区域の全部または一部を合わせて開票区を設けられることとするという規定でございますが、今後も実態に、いろいろ御相談に応じながら、どういう体制がいいのかということも考えていきたいと考えております。
 また、今後、公職選挙法施行令によりまして、手続など具体的なことを定めていくことになると思います。端的にイメージしているのは、一方の選管にその事務を他方の選管が委託するような、本体のところに分割で、それほど大きくないところを委託するような格好になるのではないかというふうに現在では想像しております。

○塩川委員 そういう点では、実際の現場の要望なんかも背景にあって、そういう手続の話も出てくるわけですけれども、実際、その人員の配置をどうするか、費用負担をどうするのか、やはり個別に対応が必要だという問題だと思いますので、そういう点での制度設計なども、現場の要望を踏まえてきちっと行っていただくところだろうと思います。
 分割選挙区が多くなったことで選挙執行が大変になるということは、よくわかります。そして、多くの自治体からも要望が上がっている周知徹底の問題ですけれども、今回の区割り改定は、過去最大の見直しとなっていますが、その施行日は、公布の日から起算して一月を経過した日となっています。こういう、一カ月間で本当に周知徹底が図れるのかということは誰もが思うところですが、この点についてはいかがお考えですか。

○冨樫大臣政務官 お答えをいたします。
 今回の区割り改定法案では、平成六年、十四年、二十五年の改定の際にも、公布の日から起算して一月を経過した日から施行することとされていたこと、先月十九日の衆議院議員選挙区画定審議会による勧告の時点から各種報道がなされていることなどから、施行までの周知期間を一カ月としております。
 有権者に混乱が生ずることなどがないよう、改定内容に、十分周知徹底を図ってまいりたいと思います。

○塩川委員 過去の例でいえば、もうちょっと早く具体の話が出されていたんですよ。それが、今回の場合には、本当に直前の話になってきていますから、今までよりも、こういう周知に係る期間が全体として事前のアナウンスを含めて短いのに、実際に区割りで改定されるのは非常に多いという点で、私はやはり、一月というので本当に大丈夫なのかということは、強い懸念を覚えざるを得ません。
 現場の話でいえば、衆議院の小選挙区の区割り改定の周知徹底を図る場合に、実際、そこの選管でほかの地方選挙をやっている場合というのがあるんですよね。東京でいえば、都議選がもう目の前です。都議選のような地方選挙が行われているのと並行するようにこういう衆議院の小選挙区割りの周知と言われても、これは有権者が混乱するだけじゃないでしょうか。
 私は、そういう点でも、ワンクッション置くようなことというのが、現場の実情を踏まえれば、当然必要なことだと思うわけです。
 区割り審の知事意見の中で、東京都は、選挙区の区域が変更される区市町村は、選挙関連システムの設定変更が必要となり、同時に住民への十分な周知も求められることから、公布から施行までの期間を十分に確保すべきと述べています。
 ですから、もう一回お尋ねしますけれども、例えば、東京のように、もう目の前、都議選です、選管はそれに目いっぱいやっています、そういうときに並行してこんな周知徹底が図れるのか、一月でいいのかというのは、大問題じゃないですか。その点、政務官、どうですか。

○冨樫大臣政務官 今回の区割りの改定では、都道府県の議員定数が減少し、選挙区が変更となる団体や、新たに分割または分割の区域が変更となる団体が生ずるところであり、有権者の方々に混乱が生じないよう、丁寧に改定内容を周知する必要があります。
 総務省としては、法案成立後直ちに、ホームページや広報誌などを活用したきめ細かな広報活動を行い、周知を徹底してまいります。
 また、関係都道府県及び市区町村の選挙管理委員会に対し、新区割り地図のデータやポスターを提供し、各自治体の広報誌への掲載や公共施設への掲示などを促すことにより、効果的に周知してまいります。
 以上です。

○塩川委員 いや、だから、都議選みたいに地方選挙をやっているような選管で、一月で大丈夫だと言える根拠はどこにあるのかというのを聞いているんですけれども。もう一回。

○高市国務大臣 この法律案を成立させていただき、また、公布された日から一カ月ということで施行になりますが、それまでの間ももちろん周知をさせていただきます。当然、東京都議会選挙というものがある中でも、法律が施行されるわけでございますから、それについての情報提供で、今できることは速やかに行います。
 先ほど来も答弁させていただいておりますように、総務省のホームページや広報誌、そしてまた、地方自治体によって可能なところには市民便りなどに掲載をしていただいたり、またポスターの掲示もさせていただきます。
 ただ、あわせて、仮に衆議院がまた解散になったというような場合には、その直前の集中的な広報、周知というものもございますから、その中でより多くの有権者の方にしっかりと、特に区割りが変更になった選挙区の有権者の方に正しく御理解をいただくように、例えば、投票カードの送付と同時に、今でも地図が入ったり投票所の住所が書いてあったりしますけれども、今度のあなたの選挙区は何々県第何区でございますと、その該当する市区町村名ですとか、また投票所もわかりやすくというような形で、より進化した周知の方法ということについても横展開をしてまいりたいと思っております。

○塩川委員 有権者が混乱するような選挙の設定を可能とするような、そういったやり方そのものが問われているんだと思いますよ。
 そういう点でも、一つ一つの選挙がきちっと適正に執行されるような選管の実務を保障するし、有権者がきちんと判断できるような取り組みという点でも、こういった一月という周知徹底の期間というのは極めて実態にそぐわないものだということは強く指摘をしておくものです。
 有権者に周知徹底するのは当然であるわけで、丁寧にと言えば事が進むわけじゃないわけですから、こういったことについても言っておきます。
 もう一つ、今回の区割り改定で確認しておきたいんですが、今回の区割り改定作業は、二〇一五年簡易国勢調査人口をもとにした選挙区間の人口格差を二倍未満にするとともに、二〇二〇年見込み人口でも選挙区間の人口格差が二倍未満であることを基本としています。
 今回の改定では、二〇二〇年見込み人口で格差一・九九九倍となる勧告を行いました。区割り審の小早川光郎会長は、四月十九日の会見で、二〇二〇年見込みで一・九九九倍とはしたものの、実際には二倍を超えないとは言い切れないというふうに述べたと紹介されています。
 政府として、二倍を超えないと言い切れるんですか。

○大泉政府参考人 お答えいたします。
 今回の改定案につきましては、昨年の選挙制度改革関連法に基づきまして、次回の見直しまでの五年間、人口格差が二倍未満となるように、平成二十七年度国勢調査に対しまして、それにトレンドで平成三十二年の見込み人口を求めまして、その平成三十二年見込み人口においても格差を二倍未満とするようなことが定められておりますので、それに基づきまして区割り審の方では区割りをして勧告をしたということでございます。
 そういう中では、現在の二十七年国勢調査の日本国民人口において格差を計算しますと、最大格差が一・九五六倍というふうになっておりまして、過去の勧告の中では一番縮減されている数字でございます。
 また、次回の見直しまでの五年間を二倍にならないように抑えて、結局、そういう意味では一・九九九倍ということでございますけれども、そういう措置で区割りを行っています関係から、すぐに二倍を超えるようなことはないのではないかと考えております。

○塩川委員 それは実際に推計した数字の伸ばし方いかんで変更し得る、もともと推計ですから。そういう点でも、本当に二倍以内におさまるのかというのはわからない話です。
 二〇二〇年の大規模国勢調査に基づく区割り改定では、アダムズ方式による都道府県への定数の再配分が行われます。
 仮に、二〇二〇年見込み人口を用いて都道府県への定数の再配分を行った場合に、定数が増減する都道府県はどこか、その増減数を紹介してください。

○大泉政府参考人 お答え申し上げます。
 これは、あくまで仮の話ということでございます。
 平成三十二年、二〇二〇年の見込み人口を用いてアダムズ方式で計算しましたところでは、定数が増加する都道府県は、埼玉県一増、千葉県一増、東京都四増、神奈川県二増、愛知県一増というふうになります。
 また、定数が減少する都道府県は、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、広島県、山口県、愛媛県、長崎県で、いずれも一減という九県というふうに計算の上ではなってまいります。

○塩川委員 定数が増減する都県だけでも十四にもなります。格差が二倍とならないようにするための見直しも含めれば、今回改定以上にさらに大きな見直しとなることは必至であります。
 区割り審の知事意見の中でも、多くの知事が、次回、五年後の区割り改定においても変更が見込まれることへの懸念が表明されています。
 首都圏に立地する九都県市首脳会議による「衆議院議員小選挙区の区割り改定案について」の意見表明では、自治体の一体性が損なわれた区割りは望ましいものではないと指摘し、平成三十二年の国勢調査に基づく区割り改定では再度の変更が想定され、関係する地域住民の一層の混乱を招きかねないとしています。
 大臣にお尋ねいたします。
 五年後には今回以上の区割り見直しが行われて、今回以上に大きな混乱も想定されるのではありませんか。

○高市国務大臣 議員立法で成立をしました衆議院選挙制度改革関連法により、衆議院議員選挙区画定審議会設置法が改正されました。
 次回、平成三十二年以降の大規模国勢調査に基づく区割り改定案の作成に当たっては、当該国勢調査の結果による日本国民の人口に基づき格差を二倍未満とするとともに、都道府県別定数配分をいわゆるアダムズ方式によって行うということが規定されています。
 平成三十二年の国勢調査に基づく区割りの見直しに当たりましては、衆議院議員選挙区画定審議会は、こうした衆議院議員選挙区画定審議会設置法の規定に基づいて改定案の作成を行われるということになります。
 平成三十二年の国勢調査に基づく区割り改正の内容ですとかその影響につきましては、現時点においてお答えすることは困難でございます。

○塩川委員 実際に見込まれるそういう推計人口でもこういった大きな変化にならざるを得ないわけで、そういったことを考えると、こういうスキームそのものの問題というのが問われてくるわけです。
 こういった小選挙区制度の区割りを続けることというのが、有権者には混乱、市区町村の一体性を損ない、また選管事務についても困難さをもたらすものとなっている。いいことは何もない。こういった混乱を招いている大もとに小選挙区制があるということを言わざるを得ません。
 小選挙区制の導入以降、区割り変更が行われても格差の問題は続き、投票価値の平等を保障する抜本的格差是正ができませんでした。
 日本共産党は、一九九三年に政治改革と称して現行の小選挙区比例代表並立制が提案されたときから、小選挙区制導入そのものに反対するとともに、小選挙区の区割りが発足当時から二倍を超える格差を容認しており、投票価値の平等を踏みにじる違憲立法だと批判をしてまいりました。
 昨年の衆議院選挙制度関連法の審議の際にも、小選挙区制のもとでは、格差是正のために市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きが避けられず、有権者は選挙区の不自然な変更を強いられることになると批判をしました。今回の区割りを見ても、まさにその指摘どおりとなっています。これは、小選挙区制がもともと投票権の平等という憲法の原則とは両立できない制度、このことを明らかにしていると言わざるを得ません。
 そこで、大臣に基本的なことを確認したいんですが、日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存する」と宣言をしています。
 主権者国民の代表をしているのが国会議員であり、政府を暴走させないようにする、それが国民の代表で構成する議会の最大の役割であります。この国民の代表たる議員を選ぶのが選挙であります。
 日本国憲法において、選挙に関する基本原則はどのようなものが定められているのか。これを踏まえ、選挙とはどういうものだと大臣は認識しておられますか。

○高市国務大臣 まず、日本国憲法では、公務員の選定及び罷免は国民固有の権利であるとされています。第十五条第一項でございます。また、第十四条の法のもとの平等、第十五条第三項の成年者による普通選挙の保障、第十五条第四項、選挙における投票の秘密、第四十四条、両議院の議員及び選挙人の資格に関する差別の禁止などが規定されております。
 これらの憲法の規定に基づいた選挙制度のあり方というものは、民主主義の根幹にかかわる重要な問題であるという認識でございます。

○塩川委員 普通選挙や平等選挙という、まさに民主主義の土台、根幹となる選挙制度のあり方というのが、憲法から当然説き起こされるところであります。
 選挙制度は民主主義の根幹であり、主権者である国民の参政権の問題であります。選挙制度を考える基本原則は、国民の多様な民意を鏡に映すように、できる限り正確に反映することでなければなりません。憲法が求める投票価値の平等は、選挙区間の人口格差是正にとどまりません。有権者が投票した票が国会に反映されているのかどうかという点も見なければならない。
 昨年の当委員会でも確認しましたが、総務省に再度確認します。
 現行小選挙区比例代表並立制の選挙結果についてですが、現行制度が導入されて以降、総選挙は七回行われました。各総選挙における第一党の得票率と獲得当選人の率はどうなっているのか。比率のみでよいので、お答えください。

○大泉政府参考人 まず、平成二十六年、一番直近の衆議院議員総選挙の小選挙区選出議員選挙の結果における第一党は自由民主党でございまして、全選挙区の有効投票総数に占める自由民主党の得票数の割合、いわゆる得票率は四八・一%で、小選挙区選出議員選挙の全選挙区の当選人数に占める自由民主党の当選人数の割合は七五・三%でございました。
 同様に、平成二十四年の衆議院議員総選挙については、第一党は自由民主党であり、得票率は四三・〇%、当選人の割合は七九・〇%でございます。
 平成二十一年の衆議院議員総選挙につきましては、第一党は民主党でありまして、得票率は四七・四%で、当選人数の割合は七三・七%でございました。
 平成十七年の衆議院議員総選挙については、第一党は自由民主党であり、得票率は四七・八%、当選人数の割合は七三・〇%でございます。
 平成十五年の衆議院議員総選挙については、第一党は自由民主党であり、得票率は四三・九%で、当選人数の割合は五六・〇%でございました。
 平成十二年の衆議院議員総選挙においては、第一党は自由民主党であり、得票率は四一・〇%、当選人数の割合は五九・〇%でございます。
 最初の平成八年衆議院議員総選挙につきましては、第一党は自由民主党でありまして、得票率は三八・六%、当選人数の割合は五六・三%であったものでございます。

○塩川委員 七回の総選挙の結果というのは、小選挙区制の根本的欠陥を浮き彫りにしています。この四回で見れば、小選挙区での第一党の得票率は四割台にもかかわらず、七から八割もの議席を占めています。得票と獲得議席に著しい乖離が生じているわけです。
 小選挙区制は、民意をゆがめて、比較第一党の虚構の多数をつくり出す一方で、少数政党は得票率に見合った議席配分が得られず、獲得議席を大幅に切り縮められます。各選挙区で最大得票の候補者一人しか当選しないため、それ以外の候補者の得票は死票となります。
 直近の二〇一四年総選挙における落選人の得票、いわゆる死票の割合というのは四七・九九%、半分が死票になっているわけですし、同じ一四年総選挙における死票率五〇%以上という小選挙区は百三十三、六〇%以上は二十二に上っているわけです。一四年総選挙は、二位以下の候補者への投票が四八%で、二百九十五選挙区のうち、死票が過半数の選挙区は百三十三にも上っています。
 このように民意を集約した虚構の多数政権による強引な政治、多数のおごり、このことが国民の民意を反映しない政治をつくっている、国民の政治不信をつくり出しているということを指摘せざるを得ません。
 大臣にお尋ねしますが、昨年度の衆議院選挙制度関連法でも、こういう小選挙区の現行制度が民意をゆがめる、過度に民意を集約するという問題点を持っていることを全政党が認めて、現行並立制の功罪を広く評価、検証することで合意しました。これまでの各党協議においてこのような合意があったところです。民意集約機能の緩和の問題を含め、抜本的な見直しについて協議していくこととなっていたわけです。
 昨年の関連法質疑の際にも、私の質問に提案者の北側議員は、集約機能が大きくなり過ぎている傾向があると述べ、逢坂議員は、確かに民意が過度に集約され過ぎていると述べておりました。
 この民意と議席の乖離という小選挙区制の根本的な欠陥を見直さなければならないのではありませんか。

○高市国務大臣 現行の衆議院の選挙制度であります小選挙区比例代表並立制というのは、選挙や政治活動を個人中心の仕組みから政策本位、政党中心の仕組みに転換するということを目指して、長年にわたる政治改革の議論を経て、平成六年に導入されました。
 小選挙区制については、第八次選挙制度審議会の答申によりますと、長所としては、政権の選択についての国民の意思が明確な形で示される、政権交代の可能性が高い、短所としては、選挙ごとの票の動きが激しい、少数意見が選挙に反映されにくいなどが挙げられています。
 選挙制度のあり方ということにつきましては、いずれにしましても、議会政治の根幹にかかわる重要な問題でございますので、各党各会派で御議論いただくべきものだと考えております。

○塩川委員 小選挙区制はよく民意の集約と言われますけれども、民意の集約というのは投票価値の平等と相入れないんですよ。私は、そういう点でも、鏡のように民意を反映する比例代表などを中心とした選挙制度に改める、小選挙区制そのものを見直すことが必要だということを申し上げたい。
 昨年の衆院選挙制度改革は、定数削減を行ったのも重大です。国会の政府監視機能が低下をすることは明らかで、議会政治史上を見ても、国際的に見ても、我が国の国会議員の総定数が少ないことは明らかで、定数削減を行うことの合理的根拠はどこにもないということも指摘をしておきます。
 最後に、被災地の定数が減らされていることについてお尋ねをいたします。
 今回の改定では、東日本大震災の被災地である比例の東北ブロックが定数一減、小選挙区では、青森県、岩手県がそれぞれ一減、また熊本地震の被災地の熊本県も一減であります。先ほどの二〇二〇年国勢調査によるアダムズ方式の導入の試算では、宮城県、福島県の小選挙区も一減とありました。
 大臣にお尋ねしますが、このように被災地の定数が削減されていることについての見解をお聞きします。

○冨樫大臣政務官 委員御指摘のとおり、今回の改正法案においては、小選挙区の定数において一減となる六県の中に東日本大震災等の被災地が含まれていることは承知をしております。
 衆議院議員小選挙区の定数削減及び六減県の決定方法については、昨年の五月に議員立法により成立した衆議院選挙制度改革関連法において定められたものであります。
 以上であります。

○塩川委員 大臣にお答えいただきたいんですが、今回の区割り改定に当たって、宮城県の意見を見ると、宮城県は、「甚大な被害を受けた東日本大震災からの復興の途上にあるため、区割りの改定案の作成に当たっては、特段の配慮をお願いしたい。」とありました。福島県は、福島県の特殊事情について、「本県は、東日本大震災に加え、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、現在でも約八万六千人もの県民が県内外に避難している。 今後の避難指示の解除等により、本県の人口は、しばらくの間は不安定かつ流動的な状況にある。 人口の算定や区割りの改定にあたっては、本県の特殊事情について十分に考慮する必要がある。」と述べているわけです。
 そこで、確認したいんですが、例えば、強制的に避難しなければならず、住民票がもとのままだった有権者の投票権行使はどうだったのか。居住実態はないわけですけれども、投票を認めなかったわけではないはずであります。さらに言えば、自主避難をしていた、避難解除が行われたが、まだ住民票のある地域での居住がままならない、そんな有権者の投票権行使はどうなっていたのか。このことについてぜひお答えください。

○大泉政府参考人 お答えいたします。
 選挙人が投票するためには選挙人名簿に登録されなければいけませんが、選挙人名簿の登録につきましては、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満十八年以上の日本国民で、その者に係る登録市町村等の住民票が作成された日から引き続き三カ月以上、その登録の市町村等の住民基本台帳に記録されている者等について行われるということでございます。
 住所は、客観的居住の事実を基礎とし、これに当該居住者の客観的居住意思を総合して決定するものとされておりますので、一般論として申し上げますと、災害等により避難元市区町村に居住することができず、やむを得ず一時的に避難をしている選挙人につきましては、避難元市町村に住所があると考えられまして、当該住所地において選挙権行使ができるもの、これは一般論でございますけれども、そういうふうに考えております。

○竹本委員長 塩川君、時間が来ていますので。

○塩川委員 はい。
 要するに、投票権の行使をどう保障するかという問題なんですよ。居住実態がどうというよりも、やはりさまざまな要件があるわけですよね。そういったときに、いろいろな環境の中でも、有権者の投票権をどう保障するのか、その行使をどう担保するのか、こういう立場で知恵を出すべきだ、このことを申し上げて、質問を終わります。