国会質問

<第193通常国会 2017年06月12日 原子力問題調査特別委員会 4号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは貴重な御意見、ありがとうございます。
 私は、お話をお聞きしながら、この提言の、ダイジェスト版でもあるんですけれども、事業者と規制当局、それぞれが事故時にどういう状況だったのかということについてコメントがあるわけです。
 事業者については、規制された以上の安全対策を行わず、常により高い安全を目指す姿勢に欠け、緊急時に発電所の事故対応の支援ができない現場軽視の東京電力経営陣の姿勢、これは原子力を扱う事業者としての資格があるのかということを問い、規制当局については、規制のとりこの話が当然前提であるわけですけれども、国際的な安全基準に背を向けている、そういう姿勢が問われたということです。
 お話をお聞きしながら、東電については、率直に言って、事故後もさまざまな問題について隠蔽体質も問われてきたところです。柏崎刈羽における免震重要棟の耐震性不足を三年間も報告していなかった。こういう隠蔽体質というのも、黒川参考人のお言葉で言えば、日本の常識、マインドセットと深くかかわる問題だろうと思っております。
 そこで、黒川参考人と藤垣参考人にお尋ねをしたいんです。
 やはりこういった日本の常識、マインドセットというのが日本独特のもの、諸外国と比べて日本に固有の側面があるとするのであれば、こういった体質のものをどう変えるかということも問われるわけですけれども、規制機関のあり方として、諸外国と同等の、世界最高水準の規制基準といいますけれども、その妥当性も、先ほど言われたような第五層にかかわるような立地基準の問題なんかも問われているわけですけれども、やはり日本独特のこういう隠蔽体質を伴うようなマインドセットがあるのであれば、規制基準も、諸外国と同等ということではなくて日本独自の規制というのがあってしかるべきだろうと思うわけですが、この辺について、諸外国の例も念頭に置きながら、少しお話を聞かせていただければと思っています。

○黒川参考人 実は、規制委員会についても、私は七月六日に、これを衆参両院議院の議長に提出してから、これから、会の任を解かれておりますから、一人の人間として、個人としては田中さんのところに三回ぐらい行きました。皆さん注目しているところですので、なかなか、ノーリターンルールといってもいつの間にかずるずるなってしまいますので、どうしたらいいかという話をしに行きました。
 実を言うと、もちろん電力会社も、スリーマイルアイランドから、非常に、アメリカが何をしてきたかということを知っておりまして、実は、ワシントンその他に私も行ったときに、向こうでは、原子力のオペレーターのインスティテュート、研究というかそういうグループがありまして、しょっちゅう各電力会社が自分たちは何をしているという会をしているわけです。それは一応秘密にはしておりますけれども、保険会社には全部公開しています。というのは、もしある電力会社が、全てのオペレーションがルールに従っていないなんということになると、保険会社が保険料を変えちゃいますから、どんどん上げていくので、お互いに非常に頑張って競争して、ベストプラクティスをしようということをしているわけですよね。
 日本の電力会社も入っているんですかと言ったら、もちろん入っていて知っていますよと言っていましたけれども、だったらそれをやればいいじゃないかという話が、保険会社も日本の中は系列になっているんですね。つまり、保険会社でさえもどんどん外資を入れてしまえば、あいつらあんなことをやっているぞということをどんどん外に見せてもらった方がきちんとできるんじゃないかという話なんですね。
 実はもう、この後の電力会社もいろいろなことで努力はしていると思うんですけれども、やはり地域独占となってしまうと、甘い汁がどこでも出てくるわけですよね。それをつなごうという、今グリッドをつくろうということも、いろいろエネ庁もあの後頑張ったんですけれども、なかなか進まないですね。
 それはいろいろな、お金をめぐるような、あるいは権力、あるいは利権の闘争というのがありますから、それはもうぜひ先生方にも頑張っていただいて、できない理由はなかなかありますけれども、どうやったら国民に対して、あるいは世界の中の日本という国に対してアカウンタブルかということをぜひ頑張っていただきたいというわけです。
 そういう意味では、先生方も、日本は、IAEAの、もし事故が起きたときに実際にどうやって逃がしてどうするかということはほっぽらかしということはみんな知っています。ノーリターンのルールがなっていないということもわかっています。しかし、もうこういう報告が出たので、実は日本も横には動けない世界なんだという話もわかっています。それをどうやってやるかということがやはり立法府としては大きな責任であるし、どうやってやっていくかということがすごく大事になるんじゃないかなと思っていますので、ぜひその辺は、できない理由はいろいろありますけれども、少しずつでもいいから前進していただければ大変ありがたいんじゃないかなと思います。

○藤垣参考人 今の御質問を受けまして、一つ議論を紹介したいと思います。
 福島原発事故は果たして日本固有の災害かという議論がございまして、ノーの立場の人とイエスの立場の人に分かれました。
 ノーの立場の方は、今回の事故は技術的に発達したハイテク国家日本で起きた事故であって、同様の事故が原子力発電所を持つどんな国でも起こり得る可能性があるから対処しなくてはいけない。
 皆様御存じのように、ドイツでは、そういう、今回の事故がハイテク大国日本で起きたことを重視して、日本の事故によって、大規模な原子力事故がドイツでは起こり得ないという確信を持てなくなったので、原発事故は原発を保有するほかのどのような国でも起こり得るという認識を持ってドイツの政策を決めていった。
 つまり、この立場は、日本固有の災害かという問いに対してはノーと答えて、事故を一般化することによって今回の事故の教訓を世界の人々と共有することができます。
 それに対して、イエスの立場をとりますと、今おっしゃったように、日本固有の災害としてしまって、先ほどおっしゃった隠蔽体質が招いたとしますと、テクノオリエンタリズム、オリエンタリズムというのは日本、アジアをさげすむために使うものにテクノがついてしまう。あの事故は、グローバルなハイテク国で起きた事故というよりも、日本固有のことであってということにしてしまう。そうすると、欧米諸国は自分たちには関係ないこととして片づけることが可能になってしまいます。
 今御発言のあった、その規制、日本の隠蔽体質がもし問題だとして、規制基準も日本独自という言葉には非常なる政治性がございますので、隠蔽体質を、むしろ、世界標準である公開性と透明性をきちんと担保するような方向へ持っていくというふうに立論していった方が実はいいのではないかと考えております。