国会質問

<第195特別国会 2017年12月01日 内閣委員会 3号>




○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 退職手当法について質問をいたします。
 退職手当への平均七十八・一万円の引き下げが行われる。退職手当の五年ごとの一方的な見直しは、公務労働者の生涯設計に大きな影響を及ぼすものであります。
 退職手当は、人事院の見解にあるように、退職後の生活を支える重要なものであり、職員は現行の退職手当の支給水準を見込んで生活設計を立てています。高年齢層にとっては、総合的見直しの現給保障終了で賃下げが行われます。年金支給年齢の引き上げ、民間は退職後フルタイム再雇用だとしても、公務の場合には、定員管理のために、フルタイムではなく短時間の再任用。このように、退職後の生活に不安を抱えているわけであります。
 大臣に伺いますけれども、こういった退職手当の引き下げというのは退職後の生活に大きな不安を抱える、そういう高年齢層のお気持ちがわかりますか。

○梶山国務大臣 これは一般論として、退職後の資金というのはやはり誰も気になるところだと思っておりますし、想定していたものとそうでない形というのは、やはり人の心理に大きな影響を与えるものであるとは思っております。

○塩川委員 そういった、公務労働者の皆さんにとっての不利益変更が行われる。この問題について、退職手当は、最高裁判例で賃金とされ、解説である「公務員の退職手当法詳解」でも、賃金の後払い的な性格を有しているとしています。
 そこで、人事院にお尋ねをいたしますが、四月十一日に示された人事院の見解では、国家公務員の退職給付は職員の退職後の生活設計を支える勤務条件的な性格を有していると述べておりますが、そのとおりですね。

○千葉政府参考人 お答えを申し上げます。
 見解で述べたとおりでございます。

○塩川委員 人事院は、退職手当の労働条件性を認めているわけです。
 政府に伺いますが、政府としても、退職手当は労働条件だと認めるべきではありませんか。

○植田政府参考人 お答えいたします。
 退職手当の性格といたしましては、委員御指摘のように、賃金の後払いあるいは生活保障という側面と、加えて勤続報償という側面があると考えておりまして、政府としては、性格としては勤続報償の性格が一番強いものというふうに思っております。

○塩川委員 官民比較をしているわけですよね。長期勤続への報償だと言いながら、労働条件として扱っている民間の退職手当と官民比較を行うというのは、筋が通らないんじゃないですか。

○植田政府参考人 私ども、人事院に退職手当について官民比較のお願いをしておりますけれども、これは、いわゆる法律上に基づいた人事院の権能としての勧告を求めているわけではなくて、専門的機関としての人事院の意見を求めているという理解でございます。

○塩川委員 ですから、そもそも、官民比較をする際に、民間の場合については労働条件性を認めている。この点については、公務についても人事院はそういうことを認めているわけですから。
 これは、比較をする際に、報償的な性格ということで言っておきながら、実際には、官民比較、民の方は労働条件性を持ってやっていると。筋が通らないんじゃないのかと聞いているんですが、もう一回。

○植田政府参考人 お答えいたします。
 かつてから、あくまでも私どもは、退職手当については、人事院の官民比較については、法律上に基づいた勧告ではなく専門機関としての性格として求めているものでございまして、先ほど申し上げたとおりでございます。

○塩川委員 いや、求めたのは政府の方だから出しているというわけで。そもそも、そういう点での筋が通らないじゃないかということについては、まともな回答がありませんでした。
 そもそも、官民比較そのものなんですけれども、その中身もどうなのかということも問われるわけであります。
 人事院に伺いますけれども、官民比較に当たって、退職手当の調査内容について、民間の場合は退職した際に雇用保険の適用が受けられますが、公務は雇用保険の適用がない、そういう特殊性というのは官民比較の調査において考慮されているんでしょうか。

○千葉政府参考人 お答え申し上げます。
 国家公務員の退職給付は、職員の退職後の生活設計を支える勤務条件的な性格を有しておりまして、その水準については、同種の給付を行っている民間企業における退職給付の水準との均衡を図ることが、社会経済情勢に適応した適正な退職給付を確保することにつながると考えてございます。
 先生御指摘の、雇用保険云々ということではなくて、実際に民間において支払われている退職給付の額と公務におけます同種の退職手当額との関係の均衡を図るという考え方で、それに基づきまして調査をして、それを意見として申し上げているところであります。

○塩川委員 退職後の生活保障という点では、雇用保険を踏まえての手当だって当然入るわけですよね、民間では出るのに、公務では出ないわけですから。
 退職後の生活設計を考える上での退職手当の支給のあり方について、官民比較というんだったら、何でこういった雇用保険のあるなしについては比較の対象にしないんですか。

○千葉政府参考人 繰り返して恐縮でございますが、退職給付における民間の状況と公務における退職手当額との均衡を図るということが必要であるというふうに考えて調査をいたしております。

○塩川委員 だから、調査の中身自身が非常に限定的だし、不透明なんですよ。公務の特殊性というのはそもそも考慮されているのかという問題なんですよね。
 公務運営の公正中立性の確保が求められていることとか、厳しい再就職規制と退職後も課される守秘義務とか、今述べたような雇用保険の適用がないなど、公務の特殊性を踏まえた官民比較になっていないんじゃないのかと聞いているんですが、その点、どうですか。

○千葉政府参考人 お答え申し上げます。
 繰り返して恐縮でございますが、民間における退職一時金、退職関係の年金額と公務における退手の状況ということで、その把握をし、その均衡をとるべく調査をいたしております。

○塩川委員 だから、答えていないわけですよ。比較の対象を、官民比較というんだったら、きちっと広げてやるべきなのに、それをやっていないということじゃないですか。
 それは、そもそも、調査を求めた政府の方がそういう立場だということですか。人事院の方、何かあれば。加えて、ちょっと政府の方もどうか。内閣人事局、内閣官房。

○植田政府参考人 基本的に、専門的機関としての人事院の見解に従っているものというふうに考えております。

○塩川委員 だから、内閣官房、政府として人事院に、こういうわけでやってくれということは言っていないということですか。

○植田政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のような形では申しておりません。

○塩川委員 では、人事院、もう一回答えてください。

○千葉政府参考人 お答え申し上げます。
 雇用保険法に基づきます関係ということでございますと、雇用保険法は、その目的として、労働者が失業した場合及び労働者についての雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活の安定及び雇用の安定を図ること等を掲げてございます。この雇用保険制度は社会保険制度の仕組みとなってございまして、被保険者及びその事業主は応分の保険料を負担することとされております。
 国家公務員につきましては、法律によって身分が保障されており、民間の労働者のような景気変動による失業が予測されにくいこと等もあって、一部の者を除き雇用保険法の適用対象から除外されており、保険料負担もございません。
 雇用保険法の失業等給付は、国家公務員が保険料を負担していない公的給付でございまして、国家公務員の退職給付と趣旨、目的の異なる公的給付であることからも、退職給付水準の官民比較対象とすることは適切でないと考えてございます。

○塩川委員 実際に老後の生活、退職後の生活を考えた場合に、民間であれば、事業主負担も含めて、雇用保険に基づくような手当というのがある、そういう点での退職後の手当の支給という形が見込めるのに、公務の方にはないという、その点というのは、退職後の生活保障との観点では本来比較の対象になり得る、なり得べき中身だと。こういった点を含めて検討がされていない。その他、厳しい再就職規制や退職後も課される守秘義務を含めた公務の特殊性を考慮した官民比較になっていないということを言わざるを得ません。
 こういった点で、大臣に伺いますけれども、こういった問題について、労働組合の方と合意なんかもないわけですよ、説明するだけで。私は、こういった労働組合との合意なしに不利益変更を一方的に決めるということは、公務員労働者の権利侵害であり、決して認めることはできない、このことを強く求めるものですが、大臣、いかがでしょうか。

○梶山国務大臣 今の退職金の話につきましては、政府としては、この方針に基づいて、退職手当の支給水準の見直しについて各職員団体と話し合いを行い、政府の考え方を真摯に説明して理解を求めたところであります。
 早期に官民均衡を達成する必要があることから、今回の法案を提出させていただいたというのが現状であります。

○塩川委員 労働条件性の問題や、そもそも官民比較の中身そのものが非常に不透明だという点をいっても、今回の退職手当の引き下げというのは納得できるものではない、老後、退職後の生活保障を大きく損なう重大なものだということを言わざるを得ません。
 あと残りの時間で、給与制度の総合的見直しによる現給保障の終了の問題についてお尋ねします。
 二〇一四年の給与法などの改定によって、一五年四月から三年間で給与制度の総合的見直しが行われました。これは、月例給が引き下げとなる職員に対し、激変緩和として三年間に限って現給保障が措置されましたが、来年の三月をもって終了となります。
 この給与減額となる職員数は一万八千六百六十二人、全職員に占める割合は一三・三%、月平均五千四百八十五円と、極めて大きく職員に及ぶものとなっています。これは、一時金も含めれば、年額九万円ぐらいの賃下げにもなります。また、地方在住の高齢世帯が中心の引き下げにもなります。配偶者手当の引き下げの影響を受ける世帯も多くて、合わせて一万円を超える賃下げとなる世帯もある。
 大臣、伺いますけれども、こういった、現に賃下げとなるような公務員が生まれる、こういうことはやはり生活を考えても許されるものではない、賃下げ回避こそ政府が行うべきことではないのか、この点について伺いたい。

○梶山国務大臣 先ほど委員から御指摘ありましたように、平成二十七年四月から平成三十年三月三十一日までの三カ年にわたって現給保障措置、これは激変緩和措置でありまして、激変緩和措置である以上、当初の予定どおり終了することはやむを得ないと考えております。

○塩川委員 そもそも、こういった、労働者にとってみれば生活に大きな不安を抱えているわけであります。この間ベースアップも受けられずに、現給保障ですから現状のままで、結果として今回、給与制度の総合的見直しの完成に伴って賃下げとなる職員をつくり出すということは極めて重大でありますし、一方で本府省の業務調整手当の改善などを行っている、こういった点での減収の使い方のあり方も問われる問題だということを言わざるを得ません。
 やはり、賃下げ回避措置の実施、給与の地域間格差の解消と高齢層職員の職務に見合った賃金水準の確保が必要だということを強く述べて、質問を終わります。